2018年5月13日

2018年5月13日


【ニュース・ヘッドライン】

  • テセントリク、大腸癌の第三相がフェール 
  • ファセンラ、COPDの第三相がフェール 
  • ロシュ、テセントリクの肺癌一次治療併用をBLA 
  • FDA諮問委員会、FCS治療薬の承認を過半の委員が支持 
  • ダラザレックス、多発骨髄腫一次治療で承認 


【新薬開発】


テセントリク、大腸癌の第三相がフェール
(2018年5月10日発表)

ロシュは、結腸直腸癌の三次治療におけるTecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)とCotellic(cobimetinib、MEK阻害剤)の併用効果を検討した第三相試験がフェールしたと発表した。Tecentriqは膀胱癌や非小細胞性肺癌に承認されている抗PD-L1ヒト化抗体。抗PD-1抗体と同様に、結腸直腸癌に関しては一部のタイプに限定する必要があるのかもしれない。

この、IMblaze370試験は、局所進行性・転移性結腸直腸癌で二種類以上の全身性化学療法レジメンの治療歴を持つまたは不耐の患者を両剤併用群、Tecentriqモノセラピー群、または標準療法であるStivarga(regorafenib、和名スチバーガ、VEGF受容体阻害剤)群に2:1:1で無作為化割付して、オープンレーベルで延命効果を比較したもの。

開発が先行する抗PD-1抗体は、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)もOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)も結腸直腸癌のサブタイプに限定して承認されている。MSI-H(マイクロサテライト不安定性-高)/dMMR(ミスマッチ修復不十分)と呼ばれるタイプで、細胞分裂時に発生する遺伝子の複製ミスを十分に修復できない。該当するのは転移性結腸直腸癌の5%程度とのこと。

IMblaze試験はMSH/dMMRに基づくスクリーニングを行っていないため、被験者の95%がマイクロサテライト安定であった由なので、モノセラピーがフェールしたのは意外ではないことになる。割付数から推測すると、MEK阻害剤で免疫細胞を賦活して抗PD-L1抗体を援護射撃する併用群が本命だったのだろうが、プレスリリースは狙いや敗因について言及していない。

この二剤の併用は、第二相転移性結腸直腸癌一次治療後維持療法試験で4人が死亡し組入れ中断となったことが今年4月に公表されている。

リンク: ロシュのプレスリリース

ファセンラ、COPDの第三相がフェール
(2018年5月11日発表)

アストラゼネカのFasenra(benralizumab、和名ファセンラ)は、重度好酸球型喘息症治療薬として日米欧で承認されている。COPD(慢性閉塞性肺疾患)でも第三相試験中だが、一本目はフェールしたことが発表された。

二種類以上の薬を吸入しても十分に増悪を防げない中等度から極高度のCOPD患者を組入れて、52週間治療して期中の増悪頻度を追跡したが、偽薬群と有意差がなかった。アストラゼネカは、もう一本の結果が今四半期中に判明するのを待って、今後の開発方針を決する考え。

FasenraはIL-5受容体のアルファ鎖を標的とするPOTELLIGENT抗体。協和発酵キリンのBioWAからライセンスした。類薬ではグラクソ・スミスクラインが抗IL-5抗体のNucala(mepolizumab)を重度好酸球型喘息症治療薬として販売しており、COPDでも第三相試験が成功、昨年11月に適応拡大申請した。第三相の全集団の解析はフェールしており、好酸球増多サブタイプだけが適応になる。

翻って、Fanseraの試験は好酸球の多寡は不問だったようだ。Tecentriqと同様に、投げ網を広げすぎたのかもしれない。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


【承認申請】


ロシュ、テセントリクの肺癌一次治療併用をBLA
(2018年5月7日発表)

ロシュは、Tecentriq(atezolizumab)を非小細胞性肺癌の一次治療レジメンに併用する適応拡大をFDAに申請し、受理されたことを公表した。優先審査を受ける。

転移性の非扁平上皮性非小細胞性肺癌で初めて薬物療法を受ける患者に、Avastin(bevacizumab)、paclitaxel、carboplatinと四剤併用する。IMpower150試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン8.3ヶ月とTecentriqを併用しない標準療法群の6.8ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.617で統計的に有意だった。全生存の解析も成功したことが今年3月に発表されている。

Avastin、paclitaxel、carboplatinの三剤併用試験が成功した頃はAvastinが日の出の勢いであったため大きな喝采を浴びたが、今日ではAlimta(pemetrexed)とcarboplatinのレジメンのほうが人気があるようだ。今回の四剤併用レジメンの延命効果や忍容性は、Keytruda、Alimta、carboplatinの三剤併用レジメンと比べてどうなのだろうか?

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、FCS治療薬の承認を過半の委員が支持
(2018年5月10日発表)

FDAの代謝内分泌学製品諮問委員会は、Akcea Therapeutics(Nasdaq:AKCA)が家族性カイロミクロン血症候群(FCS)治療薬として承認申請したWaylivra(volanesorsen)を検討し、12人の委員が承認を支持したものの、8人は反対した。

肝臓で発現し血中トリグリセライドの除去を制御する、ApoC-IIIの発現を妨げるアンチセンス薬。AkceaをスピンアウトしたIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)が開発した。 週一回、皮注する。FCSはリポ蛋白リパーゼの欠乏によりカイロミクロン代謝機能が低下、トリグリセライドが増加し、膵炎を合併するリスクが高まる。世界で5000人程度の超希少疾患だ。

委員会の意見が分かれたのは、治療しないリスクと、治療に伴う血小板減少症のリスクのどちらを重視するかという点であったようだ。臨床試験ではグレード3、4の血小板減少症・深刻出血が8例発生した。投与実績は80例程度である模様なので、発生頻度は1割程度となる。FDAは、REMS(リスクを周知徹底し早期発見を促す施策)が必要と考えている。

審査期限は8月30日。FDAの諮問委員会は特定の事項について専門家や患者組織代表などの意見を聞くもので、承認を支持する委員が過半を占めたとしても、承認されるとは限らない。過去には、守秘義務の関係で諮問委員会では言及されなかった事項が原因で承認を見送ったことも少なくない。今回も票決が12対8程度では承認されるとは限らないだろう。

リンク: Akceaのプレスリリース


【承認】


ダラザレックス、多発骨髄腫一次治療で承認
(2018年5月7日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンは、Darzalex(daratumumab、和名ダラザレックス)を多発骨髄腫の一次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。自家造血幹細胞移植が適応にならない患者に、標準療法の一つであるVMPレジメン(VELCADE(bortezomib)、melphalan、prednisoneの三剤併用)と併用する。VMPレジメンとPFSを比較した臨床試験ではハザードレシオが0.50(95%信頼区間0.38-0.65)だった。深刻有害事象の発生率は42%対33%で上回った。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)






今週は以上です。

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