2017年4月16日

2017年4月16日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イムブルビカを移植片対宿主病に適応拡大申請 
  • BMSもオプジーボをMSI-H腫瘍に適応拡大申請 
  • イーライリリーのJAK阻害剤は審査終了 
  • ニューロクラインの遅発性ジスキネジア治療薬が承認 
  • テバのハンチントン舞踏病治療薬が承認 
  • ノバルティス、BRAF変異型肺癌用薬がEUで承認 
  • EUがウプトラビの無垢を認めた 


【承認申請】


イムブルビカを移植片対宿主病に適応拡大申請
(2017年4月4日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、FDAがImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)の適応拡大申請を受理したと発表した。造血幹細胞移植後に慢性移植片対宿主病(GvHD)を発症し、ステロイドなどの全身性治療がフェールした患者に用いる。昨年、ブレークスルー・セラピー指定と希少疾患用薬指定を受けており、第二相試験に基づいて承認申請された。プレスリリースには審査期限は記されていない。

Imbruvicaは、B細胞のアポトーシスや細胞接着、組織移行・帰還を制御するBruton's tyrosine kinaseを阻害する小分子薬。マントル細胞リンパ腫や慢性リンパ性白血病などに欧米日で承認されている。42人を組入れたGvHDの第二相試験では、客観的反応率が67%に達した。一次治療の第三相試験が進行中。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

BMSもオプジーボをMSI-H腫瘍に適応拡大申請
(2017年4月4日発表)

BMSのOpdivo(nivolumab、オプジーボ)をdMMR(不十分なミスマッチ修復)型転移性結腸直腸癌に用いる適応拡大申請がFDAに受理された。優先審査を受け、審査期限は8月2日。MSDもKeytruda(pembrolizumab)で同様な適応拡大申請を行っており、審査期限は当初は3月8日だったが6月9日に延期されたため、リードが2ヶ月弱に縮小している。

dMMRは細胞分裂時に遺伝子の複製ミスが発生しても修復できない。リンチ症候群ではミスマッチ修復に関わる遺伝子の生殖細胞系変異が大腸癌の発生に関与している。特定の塩基配列パターンが繰り返されるマイクロサテライトと呼ばれる部位は複製ミスが起きやすいので、当該部位の繰り返し回数を調べてMSI-H(マイクロサテライト不安定性高)と判定されたらdMMRと見なす、代替的な検査がリンチ症候群以外にも使われるようになった。このdMMR/MSI-H型は、転移性結腸直腸癌の早期患者では15%、末期では5%を占めるようだ。

第二相試験では、ORR(客観的反応率)が担当医評価で31%、独立査読委員会の評価で27%。12ヶ月PFS(無進行生存率)は各48.4%と45.6%だった。

リンク: BMSのプレスリリース

Opdivoに関しては、第三相多形性膠芽腫二次治療試験がフェールしたことも発表された。全生存期間がAvastin(bevacizumab)を上回らなかった。放射線療法や化学療法と併用する一次治療試験二本は予定通り進める予定。一次治療試験は、予後やtemozolomide応答性を予測する上で重要なMGMT(O6-methylguanine-DNA methyltransferase)メチル化のある患者とない患者を分けて分析することが特徴で、日本の施設も参加している。

リンク: BMSのプレスリリ-ス(17/4/3付)

【承認審査・委員会】


イーライリリーのJAK阻害剤は審査終了
(2017年4月14日発表)

イーライリリーはインサイト(Nasdaq:INCY)からライセンスしたJAK1/2阻害剤、Olumiant(baricitinib)を中重度活性期リウマチ性関節炎治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領したと発表した。副作用懸念からか、FDAは至適用量を再検討する臨床試験の実施や、安全性に係る追加分析を求めた由。

臨床試験では4mg群で致死的な脳基底細胞血栓症や非ST上昇型心筋梗塞などの稀だが深刻な有害事象が増加した。2mgの印象は悪くなかったが、個人差を考慮すればセーフティマージンが十分とは言えないだろう。また、JAK阻害剤は癌や感染症のリスクが高まる恐れがある。

イーライリリーはFDAの結論に同意しないと明記している。トランプ大統領が規制緩和に前向きであることを踏まえて、FDAに揺さぶりを掛ける考えなのかもしれない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認】


ニューロクラインの遅発性ジスキネジア治療薬が承認
(2017年4月11日発表)

FDAはニューロクライン(Nasdaq:NBIX)のIngrezza(valbenazine)を遅発性ジスキネジア治療薬として承認した。この病気は、向精神薬の高量、長期投与などが原因で、無意識な反復動作が現れる。Ingrezzaは神経終末の小胞モノアミントランスポータタイプ2(VMAT2)を阻害する小分子薬で、ドパミンなどの神経伝達物質がシナプス前小胞に取り込まれるのを妨げ、不随意運動に関与するドパミン神経系機能を正常化する。第三相試験ではAIMスコアが偽薬比3ポイント改善した。

遅発性ジスキネジア治療薬の承認は初。他には次項のAustedo(deutetrabenazine)が適応拡大申請中だが、Igrezzaは一日一回服用で足り、精神性副作用が小さい長所を持つ。

Ingrezzaの日本やアジアの権利は田辺三菱製薬が保有している。

リンク: FDAのリリース
リンク: ニューロクラインのプレスリリース

テバのハンチントン舞踏病治療薬が承認
(2017年4月3日発表)

テバ(NYSE:TEVA)は、FDAがAustedo(deutetrabenazine)をハンチントン舞踏病治療薬として承認したと発表した。VMAT2阻害剤Xenazine(trabenazine)の水素基を重水素で置換して、活性代謝物の分解を遅らせ作用を長期化するとともに、忍容性や個人差、薬物相互作用を改善したもの。Xenazineと同様に、うつ病や自殺思考・行動のリスク警告がレーベルに記載された。テバは問屋取得価格を年6万ドルとする考え。

昨年12月に遅発性ジスキネジアの適応拡大も申請された。優先審査指定を受け、審査期限は8月30日。

テバが35億ドルで買収したAuspex社の開発品。

リンク: テバのプレスリリース

ノバルティス、BRAF変異型肺癌用薬がEUで承認
(2017年4月3日発表)

ノバルティスは、BRAF-V600変異型非小細胞性肺癌にTafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMekinist(trametinib、和名メキニスト)を併用する適応拡大がEUで承認されたと発表した。小規模な臨床試験で初めて治療を受ける患者のORR(総合反応率)が61%、再発治療例では66%だった。メジアン反応持続期間は前者は未達、後者は9.8ヶ月。一次治療試験の詳細は今後、学会発表される予定。

BRAF-V600変異型は腺腫肺癌の1~3%程度なので決して多くない。悪性黒色腫では5割程度と多く、BRAF阻害剤TafinlarはV600変異型悪性黒色腫に単剤、またはMEK1/2阻害剤Mekinistと併用で用いることが承認されている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

【医薬品の安全性】


EUがウプトラビの無垢を認めた
(2017年4月7日発表)

EUは、アクテリオンが日本新薬からライセンスして開発した肺動脈高血圧症治療薬、Uptravi(selexipag、和名ウプトラビ)の危険と便益を再検討していたが、承認内容の変更は必要なしと結論した。

事の発端は1月にフランスで服用患者5名の死亡が報告されたこと。EUの薬品審査機関であるEMAが承認した薬なので、フランスの要請により、EMAのPRAC薬品安全性監視委員会が検討を開始した。
しかし、データを分析しても死亡リスクの増加は示唆されず、今回の無垢宣言に至った。

フランスは数年前に一部の医薬品で承認審査や安全性監視の不備が表面化、批判を浴びた。それ以来、周辺の国と比べても副作用情報に敏感に反応する傾向がある。

リンク: EMAのリリース






今週は以上です。

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