2017年3月12日

2017年3月12日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 高リスクCLL用薬の第三相が成功 
  • PTCが『抗議による承認申請』 
  • ファイザー、SGLT2阻害剤を承認申請 
  • アレクシオン、ソリーアリスを筋無力症に適応拡大申請 
  • リオナを米国でも保存期に適応拡大申請 
  • PRACがガドリニウム造影剤の承認見直しを勧告 



【新薬開発】


高リスクCLL用薬の第三相が成功
(2017年3月6日発表)

TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)はTG-1101(ublituximab)の第三相試験成功を発表した。慢性リンパ性白血病(CLL)の二次治療を受ける高リスク患者(17p欠損、11p欠損、またはp53変異)を、Imbruvica(ibrutinib)単剤投与群とTG-1101併用群に割付けて総合反応率(第三者査読)を比較したところ、各群47%と80%となり、併用群が有意に上回った。17年下期に加速承認を申請する方向でFDAと相談する考え。

TG-1101はCD20を標的とするモノクローナル抗体で、糖鎖加工技術を用いてADCC(抗体依存性細胞毒性)活性を向上したもの。ロシュのGazyva(obinutuzumab)との違いは、IgG1型のキメラ抗体であること(GazyvaはIgG2型ヒト化抗体)と、結合するエピトープ。

LFB Biotechnologiesからライセンスしたもの。フランスとベルギーの権利はLFBが保留、韓国など東南アジアの権利は韓国の日東製薬が保有している。

リンク: TG社のプレスリリース

【承認申請】


PTCが『抗議による承認申請』
(2017年3月6日発表)

PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)は、PTC124(ataluren)の『抗議による新薬承認申請(NDA over protest)』を行いFDAに受理されたと発表した。審査期限は10月24日。

PTC124はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療に用いる経口剤。DMDの多くはジストロフィンの遺伝子に変異があり正常に機能しない。様々な変異のうち、塩基配列の途中に翻訳中止を意味するPremature Termination Codons(PTC)が出来てしまったナンセンス変異型が適応になる。米国の対象患者数は2000人、世界で7000人と推定されている。

第三相試験は6分歩行テストを主評価項目としたが48週で偽薬比15メートルしか改善せず、後期第二相試験に続いてフェールした。16年にローリング承認申請を完了したが、FDAに受理されず、不服申し立てしたが却下された。

EUはCHMPが一旦は否定的意見を出したが再審査後に条件付き承認となった。その後、第三相試験がフェールしたため承認の更新が危ぶまれたが、18ヶ月間の偽薬対照試験を行う条件で更新に成功した。

米国では昨年、Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)が特定の遺伝子変異を持つDMDの治療薬として承認された。治験では6分歩行テストが改善しなかったため審査担当者と部門長は承認に否定的だったが、上層部の鶴の一声で承認された。PTCも勇気付けられたことだろう。

リンク: PTCのプレスリリース

ファイザー、SGLT2阻害剤を承認申請
(2017年3月6日発表)

ファイザーは、SGLT2阻害剤のPF-04971729(ertugliflozin)及びmetformin配合剤、sitagliptin配合剤の三剤を二型糖尿病治療薬として欧米で承認申請し、受理されたと発表した。米国の審査期限は12月。二型糖尿病薬は開発販売競争が激しいため製薬会社は撤退したり他社と協業したリして費用負担を緩和している。ファイザーはPF-04971729の開発販売でMSDと提携し、費用や利益を折半する。但し日本は提携対象外。

リンク: ファイザーのプレスリリース

アレクシオン、ソリーアリスを筋無力症に適応拡大申請
(2017年3月8日発表)

アレクシオン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、Soliris(eculizumab、和名ソリーアリス)を全身性重症筋無力症の治療に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたと発表した。審査期限は10月23日。アセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体を持つ患者に用いる。

Solirisは補体系のC5を標的とするヒト化抗体で、発作性夜間血色素尿症や非定型的溶血性尿毒症症候群の治療薬として承認されている。全身性重症筋無力症はしばしば抗AChR抗体を持っており、神経筋接合部のAChRに結合して補体系を活性化、破壊させる。このため、補体系を阻害するSolirisが有効な可能性がある。難治性患者を組入れた第三相試験はフェールしたが、難病なので承認のハードルが下がる可能性がある。

リンク: アレクシオンのプレスリリース

リオナを米国でも保存期に適応拡大申請
(2017年3月8日発表)

Keryx Biopharmaceuticals(Nasdaq:KERX)は、Auryxia(ferric citrate、和名リオナ)を非透析期慢性腎疾患の鉄欠乏性貧血に用いる適応拡大申請をFDAに行い受理されたと発表した。審査期限は11月6日。承認されれば経口剤では初。

Auryxiaは経口鉄で透析期の慢性腎疾患鉄欠乏性貧血の治療薬として承認されている。台湾のPanion社からライセンスしたもので、日本はKeryxからサブライセンスした鳥居薬品/日本たばこが一足先に透析期・保存期ともに承認を取得し、14年に発売した。

リンク: Keryxのプレスリリース

【医薬品の安全性】


PRACがガドリニウム造影剤の承認見直しを勧告
(2017年3月10日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAで市販後監視を担うPRAC(ファーマコビジランス・リスク・アセスメント委員会)は、線形ガドリニウム造影剤に関して、販売承認停止を含む規制見直しを勧告した。次のステップは、医薬品科学的評価委員会であるCHMPが検討し最終判断することになる。一部の製品・用途については販売を容認する見込みだ。

ガドリニウム造影剤は稀に腎臓に蓄積して腎性全身性線維症を誘発するリスクが知られているが、脳にも蓄積するリスクがあることが判明。FDAも15年に注意喚起を行っているが、悪影響は確認されていないことから、承認見直しまでは打ち出していない。一方、PRACは、長期的な影響が十分に解明されていないことや他の組織に蓄積すると腎性全身性線維症や皮膚プラクの副作用が発生することから、予防的措置として勧告した。

マクロ環錯体より線形錯体のほうがガドリニウムが遊離・蓄積しやすいと考えられており、PRACの見直し勧告も静注用線形ガドリニウム薬品であるgadobenic acid、gadodiamide(Omniscan)、gadopentetic acid(Primovist/Eovist)、そしてgadoversetamide(OptiMARK)が対象になっている。

バイエルのPrimovist/Eovistを肝臓検査に用いる用途は、代替的な選択肢が限られていることから、承認継続される見込み。関節注射用ガドベンテト酸も、用量が少ないことから、今回の規制強化の対象外。このほかにも、製薬会社が十分なエビデンスや論拠を提示すれば、再検討の余地が残っている様子だ。

リンク: EMAのリリース
リンク: ガドリニウム造影剤の蓄積リスクに関するFDAのリリース(15年7月27日付)




今週は以上です。

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