2017年5月28日

2017年5月28日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アムジェン、骨粗鬆症新薬に副作用懸念 
  • セルジーン、多発硬化症新薬の二本目の第三相も成功 
  • キイトルーダ、胃癌に適応拡大申請 
  • オプジーボ、肝癌で承認申請 
  • サン、抗IL-23抗体を米国で承認申請 
  • FDA諮問委員会、プーマの汎erbB阻害剤を支持 
  • FDA諮問委員会が19年ぶりの鎌状赤血球症治療薬候補を支持 
  • リジェネロンの抗IL-6受容体抗体が承認 
  • キイトルーダ、MSI-H/dMMR癌に承認 
  • アクテムラ、米国で巨細胞性動脈炎に承認 
  • ノバルティス、ジカディアの一次治療が承認 


【新薬開発】


アムジェン、骨粗鬆症新薬に副作用懸念
(2017年5月21日発表)

アムジェンは昨年7月に米国でEvenity(romosozumab)を骨粗鬆症治療薬として承認申請したが、最近開票したARCH試験で心血管疾患リスク懸念が浮上した。過去の試験では見られなかった由なので只のノイズの可能性もあるが、精査が必要だ。米国の審査期限は7月19日だが、アムジェンによると、年内の承認は期待できなくなった。日本ではアステラス製薬との合弁会社が昨年12月に承認申請しており、今後、機構と相談する。欧州は引き続き承認申請の準備を進める考え。

romosozumabは2002年にセルテック(後にUCBが子会社化)のCDP7851をライセンス、AMG785として開発したもの。抗体医薬で、Wntや骨形態形成蛋白のシグナル伝達パスウェイを阻害して造骨細胞の抑制をもたらすスクロスチンを阻害する。ビスフォスフォンなどの既存の骨粗鬆症治療薬は主として破骨細胞を抑制するタイプが多い。造骨細胞活性化薬は骨密度増強作用が高いが、腫瘍リスクを高めてしまう懸念があるため、1~2年間治療してその後はビスフォスフォン酸など破骨細胞抑制型にスイッチするのが一般的な用法だ。

Evenityの承認申請用第三相閉経後骨粗鬆症治療試験(FRAME試験)も、1年目はromosozumabまたは偽薬を投与し2年目は両群ともdenosumabにスイッチした。造骨細胞増強型である遺伝子組換え型副甲状腺ホルモン、Forteo(teriparatide)と比較した試験や、骨粗鬆症の男性を組入れた試験も実施されたが、どちらも治療期間は1年だった。

今回のARCH試験は、骨折リスクが高い閉経後骨粗鬆症を対象に、romosozumabを1年間、月一回皮注して2年目はalendronateの週一回投与製剤にスイッチする治療法と、2年間alendronate週一回投与を続ける群の骨損壊リスクを比較したもの。薬効の面では優れており、romosozumab群は2年間の新脊椎損壊が50%少なく、臨床的に重要な骨折に限定しても27%少なかった。QOLに大きな影響を与える、大腿骨骨折は有意な差はなかった。

心血管疾患の偏りは、1年間の心血管深刻有害事象発生率が2.5%でalendronate群の1.9%を上回った。臨床的に重要な骨折の発生率は未公表だが、FRAME試験では年1~2%だったので、number needed to treatもnumber needed to harmも大差なかっただろう。従って、看過できるリスクではない。

FRAME試験では群間の偏りはなかったとのことだ。ARCH試験の組入れは4093人、FRAME試験は7180人なので、FRAME試験のほうが信用できそうだが、イベントリスクの比較における検出力は組入れ数ではなくイベント発生数と相関するので、詳細が発表されるまでは何とも言えない。

リンク: アムジェンとUCBのプレスリリース

セルジーン、多発硬化症新薬の二本目の第三相も成功
(2017年5月22日発表)

セルジーンは、RPC1063(ozanimod)の二本目の第三相再発性多発硬化症試験が成功したことを発表した。Gilenya(fingolimod)と同様なスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節剤だがS1P1受容体とS1P5受容体に選択的に作用するので、新毒性や肝毒性が小さいようなら優良な代替薬になりうるだろう。15年にReceptosを72億ドルで買収して入手したパイプライン。

第三相は二本とも0.5mgまたは1mgを一日一回、経口投与する群の再発率をAvonexを週一回筋注する群と2年間に亘って比較した。結果は、両試験、両用量ともAvonex群より有意に小さかった。但し、障害進行抑制効果を検討するために行ったプール分析は、Avonex群も進行が小さかったせいか、フェールした。EDSSスコアで評価したものと推測されるが、あまり鋭敏なスコアではないので、これも、実際のデータやp値が公表されるまで何とも言えないだろう。

リンク: セルジーンのプレスリリース

【承認申請】


キイトルーダ、胃癌に適応拡大申請
(2017年5月23日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の適応拡大申請を米国で行い受理されたことを発表した。難治性・末期の胃・胃食道接合部腺癌の三次治療に用いるもので、優先審査を受ける。審査期限は9月22日。

第二相試験のコフォート1のデータに基づく申請で、259人(うち、57%がPD-L1陽性)のORR(客観的反応率)は11.2%、メジアン反応持続期間は8.1ヶ月。G3からG5までの治療関連有害事象発生率は16.6%で、うち2人は急性腎障害と腹水により死亡した。

リンク: MSDのプレスリリース

オプジーボ、肝癌で承認申請
(2017年5月24日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)の適応拡大申請を米国で行い受理されたと発表した。末期肝細胞腫でNexavar(sorafenib)治療歴を持つ患者に用いるもので、優先審査を受ける。審査期限は9月24日。

第二相試験のsorafenib歴コフォートの解析では、第三者査読によるORR(客観的反応率)が15%だった。尚、この試験のsorafenib未経験者コフォートのORRは20%となっている。

リンク: BMSのプレスリリース

サン、抗IL-23抗体を米国で承認申請
(2017年5月24日発表)

インドのサン・ファーマシューティカルズは、MSDがtildrakizumabを中重度乾癬治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。サンは14年に世界での権利を取得しており、承認後はサンが開発販売する。欧州は昨年7月にサンから欧州における乾癬領域での開発商業化権を取得したAlmirallが承認申請、3月に受理されている。

MSDがMK-3222名で開発した抗IL-23p19抗体。第三相試験ではPASI75奏効率が60%台で、Enbrel(etanercept)を上回った。

ジョンソン・エンド・ジョンソンも抗IL-23p19抗体のCNTO 1959(guselkumab)を昨年11月に欧米で、今年4月には日本でも、承認申請しており、開発スピードでも、販売力でも、こちらの方が優勢のように見える。薬効の比較は直接比較試験が行われたわけでもないので難しいが、guselkumabも第三相試験で実薬であるHumira(adalimumab)を上回る効果を示した。

抗IL-23p19抗体はジョンソン・エンド・ジョンソンのStelara(ustekinumab)と異なりIL-12は阻害しないため、腫瘍リスクなど安全性面で優れる可能性があるが、稀な事象なので、臨床開発プログラム全体のデータを見ないと判定できない。FDAの分析結果が注目される。

リンク: サンのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、プーマの汎erbB阻害剤を支持
(2017年5月24日発表)

FDAの腫瘍学薬諮問委員会は、プーマ・バイオテクノロジー(NYSE:PBYI)が承認申請したPB272(neratinib)を検討し、16人の委員のうち12人が便益がリスクを上回ると判定した。適応が制限される可能性が残っているものの、承認の可能性が高まった。

ワイスがHKI-272名で開発した不可逆的汎erbBチロシンキナーゼ阻害剤で、ワイスを買収したファイザーが第三相まで持っていったがドロップ、11年にプーマに世界開発販売権を供与したもの。プーマの創立者は、クーガー・バイオテクノロジー社を設立して前立腺癌用薬Zytiga(abiraterone acetate)の開発を成功させ、会社ごとジョンソン・エンド・ジョンソンに売却した実績を持つ、元々はWells Fargoのアナリストだった人物だ。プーマ(ピューマ)はクーガーの別名らしい。

I-SPY 2試験で第三相試験の予想成功確率78%という大変良いデータが出て注目されたが、開発後期試験は一進一退で難航した。承認申請の根拠となったのは日本の施設も参加して行われた早期乳癌延長アジュバント試験、ExteNET試験だが、この試験もプロトコルが変遷した。

her2陽性の早期乳癌で摘出術後にHerceptin(trastuzumab)を含むアジュバント療法を受けた患者を対象に、更にneratinibまたは偽薬を投与したが、当初はステージ1~3でHerceptinを終えてから2年以内という条件だったが、ステージ2~3、1年以内に変更。追跡期間は5年から2年になりその後また5年に戻った。主評価項目もtime-to-eventではなく2年間のイベント発生率の分析に変わった。

結果は、2年経過時点の浸潤性乳癌無再発率(DFS)が94.2%と偽薬群の91.9%を上回り、ハザードレシオ0.66、p=0.008となった。事前に計画されたサブグループ分析では、ホルモン受容体陽性癌ではハザードレシオ0.49だったが、陰性では0.93で大差なかった。また、Herceptin終了後1年以内の患者ではハザードレシオ0.63だったが1年以上は0.92だった。承認に否定的な委員は一部の患者にしか効果が見られないことを重視した。肯定的な委員の中にも適応を狭めるべしという意見があった。

her2だけでなくEGFRも阻害すると下痢の副作用が顕著になる。neratinibは3分の2の患者が下痢で用量を減らしたり一時中断したりした。ロペラミドやブデソニドを用いて緩和することができる模様だ。

リンク: プーマ社のプレスリリース
リンク: Lancet誌の治験論文抄録(ExteNET Study Group)

FDA諮問委員会が19年ぶりの鎌状赤血球症治療薬候補を支持
(2017年5月24日発表)

FDA腫瘍学諮問委員会は、Emmaus Life Sciencesが鎌状赤血球症治療薬として承認申請したEndari(L-glutamine)を検討し、13人の委員のうち10人が便益がリスクを上回ると判定した。審査期限は7月7日。承認されれば、この病気では98年のヒドロキシウレア以来、19年ぶりの新薬になる。

医薬品として用いられている経口アミノ酸。酸化に弱い鎌状赤血球が抗酸化物質を作るのに必要なL-グルタミンを補充するアイディアに基づいて開発、第三相試験では、鎌状赤血球クリーゼ(急性増悪による痛みで治療を受ける)が48週間に平均3.2回と、偽薬群の3.9回より有意に少なかった。数字を見る限りではすごく効く訳ではなさそうだ。

リンク: Emmaus社のプレスリリース


【承認】


リジェネロンの抗IL-6受容体抗体が承認
(2017年5月22日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、FDAがKevzara(sarilumab)を承認したと発表した。中重度活性期リウマチ性関節炎の治療薬として、単剤または併用で、200mgを二週間に一回皮注する。中外製薬/ロシュのActemra(tocilizumab)と同じIL-6受容体に結合する抗体医薬で、副作用の出方もよく似ている。米国でのWAC(問屋取得価格)は年39000ドルで既存のバイオ薬より3割安く設定した由。

リンク: 両社のプレスリリース

キイトルーダ、MSI-H/dMMR癌に承認
(2017年5月23日発表)

FDAは、MSDのKeytruda(pembrolizumab)をMSI-H/dMMR腫瘍のサルベージ療法として承認した。乳癌とか結腸直腸癌とか原発部位ではなく、遺伝子署名に基づいて適応を決めたのは今回が初めて。これまでにもHerceptinがher2陽性の乳癌と胃癌に承認されるなど、類似例はあったが、今回のように多種の癌に跨る適応が増えると、治療法を検討する前に様々な遺伝子プロファイリングを行わなければならなくなるだろう。

dMMRは遺伝子が複製される過程で必然的に発生する翻訳ミスが、修復メカニズムの機能不全により修復されず、癌細胞と他の細胞の遺伝子がマッチしない。マイクロサテライトと呼ばれる特定の塩基配列が何度も繰り返され複製ミスが起こりやすい箇所を比較するのが典型的な検査方法で、繰り返し回数が違うとMSI-Hと判定される。リンチ症候群患者の結腸直腸癌の研究から発展した手法で、切除不能転移性結腸直腸癌では5%程度が該当し、そのほかに内膜腫や胃癌、頻度は低いが乳癌や前立腺癌、膀胱癌、甲状腺癌などでも見られる由だ。

加速承認で、ORRは39.6%、78%は反応が6ヶ月以上持続した。小児にも承認したが薬効や安全性のエビデンスはない由。成人には200mgを3週間毎に30分点滴静注。小児の用量は2mg/kg。最長2年間まで投与できる。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース(5/26付け)

アクテムラ、米国で巨細胞性動脈炎に承認
(2017年5月23日発表)

ロシュは、FDAがActemra(tocilizumab)を巨細胞性動脈炎の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。標準治療薬であるステロイドの用量を減らしながら寛解を目指すことが可能になる。日本では欧米に多い巨細胞性動脈炎だけでなくアジアや中近東で多い高安動脈炎も含めて、大型血管炎の治療薬として中外製薬が昨年12月に効能効果追加申請している。

リンク: ロシュのプレスリリース

ノバルティス、ジカディアの一次治療が承認
(2017年5月26日発表)

ノバルティスは、FDAがZykadia(ceritinib、和名ジカディア)をALK陽性転移性非小細胞性肺癌の一次治療に用いることを承認したと発表した。エビデンスとなったASCEND-4試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が16.6ヶ月と、pemetrexed・白金薬併用群(pemetrexed維持療法も可)の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、統計的に有意だった。脳転移にも効果が見られた。

尚、pemetrexedは扁平上皮性非小細胞性肺癌に対する効果が弱く、非扁平上皮性非小細胞性肺癌に用いられる。ASCEND-4試験もこのタイプ限定だが、Zykadiaの承認は限定されていない。もしpemetrexedの効果が偽薬並みであったとしてもそれを有意に上回るなら良し、という考え方なのだろう。

リンク: ノバルティスのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年5月21日

2017年5月21日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
  • アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請 
  • バイエル、PI3K阻害剤を承認申請 
  • Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請 
  • CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持 
  • キートルーダ、膀胱癌に承認 
  • FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大 
  • FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告 


【新薬開発】


シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
(2017年5月18日発表)

シャイアーはlanadelumabの第三相HAE(遺伝性血管浮腫)発作予防試験が成功したと発表した。18年始めまでに承認申請する考え。

HAEは有病率が3万人に一人の希少疾患。補体系に係るC1エステラーゼの遺伝子欠損・変異により、皮膚や小腸、口、喉に痛みを伴う浮腫ができ、喉で起きた場合は命に関わることもある。

lanadelumabは血漿カリクレイン(pKal)を標的とする完全ヒト化抗体で、16年に59億ドルで買収したDyax社がDX-2930として開発したもの。特徴は投与方法が簡便であること。同社の血漿由来ヒトC1エステラーゼ・インヒビター、Cinryzeは週二回点滴静注だが、二週間あるいは四週間に一回の皮注で足りる。

第三相試験では、300mgを二週間毎に投与した群では発作が偽薬比87%少なかった。150mg四週間毎、300mg四週間毎の各群も偽薬比有意に減少した。主な有害事象は注射箇所痛。

リンク: シャイアーのプレスリリース

【承認申請】


アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請
(2017年5月18日発表)

アムジェンは、AMG 334(erenumab)を片頭痛発作予防薬として米国で承認申請した。CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とする完全ヒト化抗体で、慢性片頭痛や反復性片頭痛(月に4~14日発症)の患者に、月一回、皮注する。三本の薬効確認試験では、月間発症日数の減少が偽薬群より1~2日多かった。

イーライリリーも抗CGRPヒト化抗体、LY2951742(galcanezumab)の第三相試験が成功、下期に米国などで承認申請する予定。投与頻度や試験成績は両剤とも大差ない。

アムジェンはアルツハイマー病や片頭痛領域でノバルティスと共同開発提携を結んでおり、AMG 334の販売は米国は共同、海外(日本は除く)はノバルティスが販売する。

リンク: アムジェンのプレスリリース

バイエル、PI3K阻害剤を承認申請
(2017年5月17日発表)

バイエルは、BAY 80-6946(copanlisib)を米国で濾胞性リンパ腫の三次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。希少疾患用薬指定とファーストトラック指定を持っており、優先審査を受ける。

再発性難治性低悪性度非ホジキン型リンパ腫の第二相試験に基づく加速承認申請で、濾胞性104例におけるORR(客観的反応率)は59%(うち14%は完全反応)、メジアン反応持続期間は52週間以上だった。G3以上の有害事象は高血糖が40%の患者で、高血圧症が23%で、発生した。

作用機序は、B細胞の活性化や生存、トラフィッキングに係るphosphoinositide-3 kinase(PI3K)の阻害。ファースト・イン・クラスであるギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のZydelig(idelalisib)は14年に米国で難治性濾胞性リンパ腫と再発性慢性リンパ性白血病用薬として承認された。copanlisibはPI3Kデルタだけでなくアルファも阻害する汎クラスI PI3K阻害剤であることが特徴。重篤感染症のリスクや肝毒性が小さいようなら長所になりうるのではないか。

PI3K阻害剤の開発は活発で、インフィニティ・ファーマスーティカルズやノバルティスも第三相試験中。

リンク: バイエルのプレスリリース

Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請
(2017年5月15日発表)

Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)は、Rhopressa(netarsudil)を緑内障治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年2月28日。眼球における液排出経路である小柱網を標的とする画期的新薬で、一日一回の点眼で足りる。臨床試験では、眼圧が26 mmHg未満のサブグループにおける効果がtimololの一日二回点眼と非劣性だった。

16年9月に承認申請したが、製造会社が承認前検査(新薬承認に際してFDAが行う工場査察)を受ける準備ができていないという理由で翌月に撤回した経緯がある。

リンク: Aerie社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持
(2017年5月19日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、自家軟骨細胞療法などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域などで承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

まず、ドイツのco.don AG(FSE:CNWK)が承認申請したSpheroxは、ドイツで97年以来、販売されている自家軟骨細胞療法。患者の軟骨細胞の球状凝集体をex vivoで培養し関節鏡的に移植、欠損部位の再生を促す。症候性で10平方センチメートル以下の大腿顆・膝蓋骨軟骨欠損の治療に用いる。二本の臨床試験でKOOS(疼痛や生活機能、QOLに関する患者アンケート)が有意に改善した。副作用は創傷治癒の遅れや関節拘束など。

先端医療としてCommittee for Advanced Therapiesが審査、CHMPに肯定的意見を出すよう勧告したもの。

リンク: EMAのプレスリリース

リンク: co.don社のプレスリリース(5/18付)

イタリアのDompe farmaceutici S.p.A.が承認申請したOxervate(cenegermin)は遺伝子組換え型ヒト神経成長因子の点眼液。神経栄養性角膜炎の治療に用いる。この疾患は三叉神経に損傷があり角膜の感覚が低下・欠如しており、角膜細胞のヒーリングに必要な物質が分泌されにくくなっている。重度神経栄養性角膜炎は希少疾患だが失明のリスクがある。

リンク: EMAのプレスリリース

ハンガリーのゲデオン・リヒターのReagila(cariprazine)はD3/D2受容体パーシャル・アゴニスト。統合失調症の治療に用いる。米国ではアラガン(NYSE:AGN)がインライセンスし、15年にVraylarという製品名で承認を取得した。日本周辺は田辺三菱製薬が導入。

デンマークのレオ ファーマが承認申請したKyntheum(brodalumab、米国名Siliq、和名ルミセフ)は抗IL-17受容体A完全ヒト化抗体。中重度乾癬を治療する。アムジェンが創製しアストラゼネカと共同開発したが、臨床試験で自殺思慮・試行が見られたためアムジェンは離脱、アストラゼネカも権利を他社に譲渡した。欧州の権利を取得したのが今回のレオ ファーマだ。

米国ではValeant(NYSE:VRX)が今年2月に販売承認を取得したが、懸念された通り、自殺思慮・試行リスクが枠付き警告された。日本は協和発酵キリンが16年に発売。

リンク: レオ ファーマのプレスリリース(pdfファイル)

スイスのVifor Pharma Group(SIX:VIFN)のVeltassa(patiromer)は高カリウム血症の治療薬。経口液用粉末で、食中に服用すると、結腸でカリウムに結合、そのまま排泄される。主な有害事象は便秘、下痢、低マグネシウム血症など。様々な薬と結合するため、数時間、離して服用する必要がある。米国では15年に承認。

リンク: Viforのプレスリリース

一方、否定的意見となったのは、まず、Xbiotech(Nasdaq:XBIT)のXilonix。抗IL-1アルファ・ヒトモノクローナル抗体で、結腸直腸癌患者のリーンマスやQOLを改善する薬として承認申請され、加速審査を受けたが、支持されなかった。リーンマスで見てもQOLでも改善効果が明確ではなく、重大な感染症リスクがあり、臨床試験用と市販用の製品の同等性にも懸念があるため。

Xbiotechは4月に否定的意見が出るであろうことを公表済み。米国では承認申請が認められず第三相試験を実施中なので、その結果を待って今後を決めることになりそうだ。

ABサイエンスのMasipro(masitinib)は今度は全身性肥満細胞症の治療薬として承認申請されたが今後も否定的意見となった。治験施設査察時に深刻なGCP(治験実施基準)違反が判明しデータの信頼性が損なわれたこと、安全性データが限定的であること、好中球減少症のような副作用が懸念されること、の三点がボトルネックとなった。

主要な適応拡大は、ノバルティスのZykadia(ceritinib、ジカディア)をALK再編成陽性末期非小細胞性肺癌の一次治療薬として単剤投与することが支持された。Alimta(pemetrexed)及び白金薬の併用療法に追加する三剤併用を検討した第三相非扁平上皮性非小細胞性肺癌試験で、PFS(無進行生存期間)のメジアン値が16.6ヶ月と二剤併用群の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、有意に優れていた。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

【承認】


キートルーダ、膀胱癌に承認
(2017年5月18日発表)

MSDのKeytruda(pembrolizumab)を末期・転移性尿路上皮細胞腫に用いる適応拡大がFDAに承認された。二次治療用途だが、cisplatin不適患者なら一次治療可。200mgを3週間毎に点滴静注する。

二次治療試験は中間解析で成功認定。メジアン生存期間が10.3ヶ月と医師が選んだ薬を投与した群の7.4ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.73、ログランクp=0.0022となった。共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間)は1.1ヶ月の差に留まりフェールした。

一次治療のエビデンスは第二相試験。16年のESMO発表によると、客観的反応率は24%だった。

抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体は多くが膀胱癌の承認を取得・申請中だが、ロシュのTecentriq(atezolizumab)の市販後薬効確認試験がフェールしたため、反応率を評価するだけで足りるのか、一抹の不安が生じている。KeytrudaもPFS解析がフェールと紙一重だが、暗中模索している人には延命効果のエビデンスが燦然と輝いてみえる。

リンク: MSDのプレスリリース

FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大
(2017年5月17日発表)

FDAは、バーテックス・ファーマシューティカルズのKalydeco(ivacaftor)の適応拡大を承認した。CFTR遺伝子に特定の変異を持つ嚢胞性線維症の治療薬で、12年の初承認以降も対象となる変異型を増やしてきた。最初はG551D変異型だけだったが、14年2月にはG1244Dなど8種類の変異型が、同年12月にはR117H変異型が、今回、23種類の変異型が追加され、合計33種類となった。

カバレッジは広がったが米国の対象患者数は初回承認時の1000人が2000~3000人になった程度だ。バーテックスは15年にOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)が承認されたが、適応になるF508ホモ欠損型は8000人以上である。経済性だけを考えたら、Kalydecoの適応を100人、200人単位で積み上げるよりも他の新薬に開発資源を投入したほうが効率が良い。

だからこそ、直ぐには適応にならない少数の患者を見捨てずに開発を一歩ずつ進めてきたバーティックスの姿勢は称賛に値する。

FDAも、患者数が少ないため十分な規模の臨床試験を実施できない条件下で、in vitroのデータを元に臨床的効用を判定する手法を採用したことをアピールするプレスリリースを出している。新規23変異型のうち臨床試験データがあるのは8変異19例だけで、承認が1年遅れたのはこれが理由と推測されるが、既存の10変異型におけるin vitroと臨床データの相関を元に、上手くブリッジングできるモデルを構築できたのだろう。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告
(2017年5月16日発表)

FDAは、Invokana(和名カナグル)を始めとするcanagliflozin配合剤について、下肢切断リスクを添付文書で枠付き警告することを発表した。昨年、心血管アウトカム試験の中間安全性評価でリスクが表面化。EUのほうが情報提供も警告強化も一歩先行しているが、FDAは、少なくとも現時点では、対象をcanagliflozinだけに留めSGLT2阻害剤全体に広げていないことが印象的だ。大西洋の東西で見解が分かれることは珍しくないが、日本の当局や学会はどう考えているのだろうか?

米国は血糖治療薬の承認に際して心血管リスクが高まらないことを要求している。血糖治療の目的は大血管性合併症や腎障害や感染症、下肢切断などの小血管性合併症のリスクを削減することなので、もし副作用で増えてしまうとしたら話が違う。

規制の発端はPPARガンマ作動剤だ。第一号のトログリタゾンは肝毒性で販売中止になったが、第二号のロジグリタゾンは心不全や心筋梗塞、第三号のピオグリタゾンも心不全のリスクが発覚、警告が強化されるとともに、新薬の心血管リスク評価が厳しくなった。尚、グリタゾンは様々な病気の治療薬としての可能性を秘めていて開発品が数多くあったが、癌原性試験を経て開発中止になったものが少なくなく、今日ではすっかり人気のない開発分野になってしまった。

さて、血糖治療薬は長期間服用する薬なので通常の臨床試験より長い期間、効果の持続性や副作用を監視する必要がある。糖尿病の患者は多いので発生率が1000人年に1例でも多くの患者が被害を受けることになるため、大規模な試験で稀だが深刻な副作用を確認する必要がある。血糖治療薬は降圧剤と比べて忍容性に難のあるものが多いが、幸い、選択肢は多いので、より安全なものを使えばよい。

このような制度・環境の下、ジョンソン・エンド・ジョンソンと田辺三菱製薬はcanagliflozinの心血管アウトカム試験CANVASと腎障害予防効果を検討するCANVAS-R試験を実施している。下肢切断リスクはこの二本の安全性監視データから表面化したもので、巨額の予算を投じてでも長期大規模試験を行う価値がまたまた確認された格好だ。

進行中の試験なのでデータは集計時点により変動するが、今回のFDAの発表によると、CANVAS試験では偽薬、100mg、300mgの各群の下肢切断発生率(1000人年当り)は2.8回、6.2回、5.5回で、ハザードレシオは両用量とも2倍以上、95%信頼区間の下限1.2以上。CANVAS-R(100mgで開始、300mgまで増量可)でも偽薬群4.2回に対して7.9回、ハザードレシオ1.8以上、95%下限1.1以上となった。二つの大規模長期試験でリスクが再現されたのだから、疑う余地は小さそうだ。

FDAは、canagliflozinによる治療を行う前に下肢切断のリスク因子を評価するよう求めている。下肢切断歴、末梢血管疾患、神経症、糖尿病性足潰瘍などだ。治療中は感染症、疼痛、下肢潰瘍などの兆候や症状に注意し、発生したら投与を止める。患者にもcanagliflozinが切断リスク上昇と関連していることと、注意すべき兆候症状を伝える。

枠付き警告は重大な副作用を表しており、TV広告などを行う時でもキチンと伝えなければならない。医師は、患者にキチンと伝えないと後で医療過誤訴訟に巻き込まれる可能性がある。何かと制約があり、販促面で不利だ。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

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2017年5月14日

2017年5月14日


【ニュース・ヘッドライン】

  • アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功 
  • ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール 
  • Array社、悪性黒色腫の第三相が成功 
  • イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功 
  • KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例 
  • アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視 
  • キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認 


【新薬開発】


アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功
(2017年5月12日発表)

アストラゼネカはImfinzi(durvalumab)の第三相肺癌維持療法試験が成功したと発表した。ステージIIIの切除不能非小細胞性肺癌で、白金薬と放射線療法を受けて進行が止まった患者を組入れて欧米や日本の施設で行われた試験で、共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)が中間解析で偽薬比有意に上回った。当局と承認申請に向けて相談する考え。尚、この試験ではPD-L1発現状況は不問。

Imfinziは今月、米国で尿路上皮細胞腫二次治療薬として承認された抗PD-L1完全ヒト化抗体。非小細胞性肺癌ではMSDの抗PD-1抗体、Keytrudaが三剤併用で一次治療に承認されたところだが、忍容性に関しては投与タイミングをずらしたほうが良好だろうから、Imfinziが承認されれば選択肢の一つとして価値がありそうだ。

Imfinziは通常の一次治療でも単剤やtremelimumab(ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体)併用で第三相試験を行っており、年内にPFS解析結果が判明する見込み。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール
(2017年5月10日発表)

ロシュのTecentriqはImfinziと同じ抗PD-L1モノクローナル抗体で尿路上皮細胞腫用薬として一年早く承認された。両剤とも第二相試験の反応率データに基づく加速承認なので、改めて第三相試験を実施して延命又はそれに準じる効果を確認する義務があるが、Tecentriqはフェールしたことが発表された。Avastin(bevacizuab)の転移性乳癌のように承認取消のリスクがあるが、Avastinと同様にセカンドチャンス、サードチャンスが与えられるのではないか。データが公表された段階で改めて考えたい。

尿路上皮細胞腫は二次治療とcisplatin不適患者の一次治療用途で承認されているが、フェールしたIMvigor211試験は白金薬治療歴を持つ患者の二次治療試験。対照群は担当医がvinflunine、paclitaxel、またはdocetaxelの中から選んだ薬を用いた。Tecentriqは尿路上皮細胞腫ではPD-L1不問で承認されているが、この試験の解析はシーケンシャルで、先ずPD-L1強陽性サブグループの全生存期間を解析する。

統計的に有意な差があれば、次に、PD-L1陽性サブグループの解析、これも成功なら陰性も含めたintent-to-treat全体の解析に進む。どの段階でフェールしたのか明記されていないが、常識的に考えれば強陽性サブグループでフェールしたのだろう。第二相の反応率はPD-L1陽性のほうがだいぶ良かったことを考えれば、PD-L1陽性サブグループやintent-to-treatのp値も0.05以上だったのではないか。

ロシュのプレスリリースによると、Tecentriq群の結果は第二相と概ね同様だったが、化学療法群が解析計画の前提より良かった。となると、Tecentriqが無効なのではなく三剤の効果が従来考えられていたより高いと考える余地がある。一方で、この三剤は少なくとも米国では尿路上皮細胞腫に承認されていないのだから、承認審査の上では偽薬と同じに扱われ、Tecentriqの効果は立証されていないと判定されるリスクがある。

この場合でも、直ぐに承認が取り消されるとは限らない。一次治療試験など他の尿路上皮細胞腫試験が成功すれば、二次治療における効用も追認される可能性がある。

抗PD-1/PD-L1抗体は尿路上皮細胞腫で承認されていたり、承認審査中だったりするものが多いが、Tecentriqの薬効確認試験のフェールは他剤にも疑いの眼差しを向けさせる結果になるだろう。

例外はMSDのKeytruda(pembrolizumab)だ。IMvigor211試験と類似したデザインのKEYNOTE-045試験が成功、メジアン生存期間が10.3ヶ月と化学療法群の7.4ヶ月を上回った。共同主評価項目であるPFSはフェールしたのでエビデンスは盤石ではなく、TecentriqのデータがKeytrudaと大差ない可能性も考えられるが、裏付けがあるのは強みだ。非小細胞性肺癌と同様に、尿路上皮細胞腫でもKeytrudaを選択するケースが増えるのではないか。

リンク: ロシュのプレスリリース

Array社、悪性黒色腫の第三相が成功
(2017年5月9日発表)

BRAF-V600変異を持つ切除不能悪性黒色腫にはBRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用が有効で、ロシュがZelboraf(vemurafenib)とCotellic(cobimetinib)、ノバルティスがTafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)を品揃えしている。

ノバルティスは当初、Array BioPharma(Nasdaq:ARRY)のLGX818(encorafenib)とMEK162(binimetinib)をライセンスしたが、GSKと事業交換を行って腫瘍学の製品・開発品を取得する過程で当局の命を受け権利返還した。

ArrayはPierre Fabreに欧州南米アジアなどの権利を供与すると共に第三相試験を続行、主目的を達成した。併用群のメジアンPFSが14.9ヶ月とvemurafenib群の7.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.54、統計的に有意だった。ところが、encorafenib単剤投与群(メジアン9.6ヶ月)との比較ではp=0.051となり、併用の必然性を立証することはできなかった。

今回成功したのはこの第三相の第二部で、binimetinibの用量は45mg一日二回で第一部と同じだが、併用群のencorafenibの用量を第一部の450mg一日一回から300mg一日一回に引き下げてencorafenib単剤投与群と統一した。結果は、PFSが12.9ヶ月対9.2ヶ月、ハザードレシオ0.77、p=0.029と有意な差があった。

有意と言っても0.029では十分に低いという感じはしないが、成功は成功だ。Arrayは7月までに承認申請する考え。

リンク: Arrayのプレスリリース

イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功
(2017年5月12日発表)

イーライリリーは、LY2951742(galcanezumab)の第三相片頭痛予防試験が三本とも成功したことを明らかにした。下期に米国などで承認申請する予定。

CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とするヒト化抗体で、アムジェンも完全ヒト化抗体のAMG 334(erenumab)の第三相を成功させ、年内に承認申請する予定。抗体医薬でも小分子薬と同様に、類薬同士の開発販売競争が珍しくなくなった。

galcanezumabの第三相は、反復性片頭痛(発生頻度が月4~14日)を組入れた試験が二本、慢性(月14日超)が一本。試験用量は120mg(初回だけ240mg)と240mgで、月一回、皮注。反復性試験は片頭痛発生日数がベースラインの9日から偽薬群は2~3日減少、試験薬群はどちらも4~5日減少し有意に上回った。慢性試験はベースラインの19.4日から偽薬群は2.7日減少、試験薬群は低量が4.8日、高量は4.6日減少し、何れも有意に上回った。用量反応相関は見られないので120mgで足りそうだ。

AMG 334の用法は月一回皮注で同じ、効果も第三相反復性片頭痛予防試験で偽薬群が月8.3日から1.8日減少、70mg群と140mg群は各3.2日と3.7日減少でgalcanezumabと大差ない。

CGRPは片頭痛発作時に増加し、鎮静化すると減少と、疾病に直接関係している可能性がある。既存薬のように癲癇など他の疾患の治療薬の転用ではないので心理的なバリアが低い。一方で、受容体は脳血管系や心血管系に広く分布しているので、安全性の確認が重要だ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例
(2017年5月8日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は、SECに提出した四半期決算報告書の中で、KTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の第三相試験で脳浮腫による死亡例が発生したことを開示した。Juno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)も脳浮腫が原因でJCAR015の開発を中止しており、クラス・イフェクトなのか、リスクに多寡はあるのか、が注目される。

KTE-C19は、3月に米国で他家造血幹細胞移植不適再発性難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫用薬として承認申請された、CAR-Tと呼ばれる新しいタイプの細胞療法。CD19抗原特定的なキメラ抗原受容体とCD28共刺激ドメインの遺伝子をレトロウイルスをベクターとして患者から採取したT細胞に導入、患者の体内に戻すと、T細胞が抗原提示を受けなくても腫瘍細胞を攻撃する。

開発後期段階のCAR-TはノバルティスがB細胞性急性リンパ芽球性白血病に承認申請したCTL019も含めて複数あるが、KTE-C19はJCAR015と組成が似ているので、臨床的な異同が注目されている。

CAR-Tの泣き所は免疫が亢進しすぎるサイトカイン放出症候群だ。Kiteはtocilizumab(ロシュの抗IL-6受容体抗体)やlevetiracetam(UCBの抗癲癇薬)を早期に用いることで重症化を回避する手法を検討するため30名を組入れて試験を行ったところ、発症を2例に抑えることに成功したが、2例のうち一人が脳浮腫を発症し死亡した。

脳浮腫による死亡はJCAR015の試験で5名、JCAR014でも1名発生しているので、CAR-T全体のクラス・イフェクトと疑う余地はある。発生頻度は違うかもしれないが、投与症例数が限られているため現状ではよくわからない。KTE-C19の臨床試験では累計で200人に投与、致死的有害事象は2%とのことなので、血液癌の薬としては特に毒性が高いようにも見えない。

リンク: Kiteの17/3四半期Form 10-Q(この話は31頁に記載)

アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視
(2017年5月10日発表)

アストラゼネカは、tralokinumab(Cambridge Antibody Technology社の開発コードはCAT-354)の第三相重度喘息症試験がフェールしたと発表した。事前に設定された、IL-13活動性が亢進していることを示すバイオマーカーでスクリーニングされたサブグループの解析では喘息増悪回数が臨床的に意味のある減少を示したため、進行中のもう一本の第三相では、このサブグループの解析を主評価項目とすることを決めた。17年下期に結果が出る見込み。

Adaptive designの試験は分かりにくいが、この第三相も、一本目がフェールしたらサブポピュレーションの解析を行い、二本目だけを仮説検証的試験とする計画だったのだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

【承認】


キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認
(2017年5月10日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)を末期非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療薬としてAlimta(pemetrexed)及びcarboplatinと三剤併用することがFDAに承認されたと発表した。EGFR阻害剤が適応になるEGFR活性化変異型やALK阻害剤が適応になるALK再編成型以外が対象になる。PD-L1発現は不問。

KEYNOTE-021試験の123例のORR(客観的反応率)に基づく承認で、三剤併用群は55%とAlimta・carboplatinの二剤併用群の29%を上回った。93%の患者は反応が6ヶ月以上持続した。二剤併用群では81%だった。用量・用法は3週間毎に200mgを30分点滴静注で、化学療法と同日だが先に投与する。

リンク: MSDのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年5月7日

2017年5月7日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗 
  • 回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請 
  • ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請 
  • Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回 
  • エダラボン、米国でもALSに承認 
  • 5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認 
  • 造骨型骨粗鬆症治療薬が承認 


【新薬開発】


大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗
(2017年5月2日発表)

大塚製薬とルンドベックは、非定型向精神薬Rexulti(brexpiprazole、和名レキサルティ)の適応拡大試験結果を発表した。アルツハイマー性認知症の典型的な症状の一つである激越を改善する効果を検討したもので、一本は主評価項目(CMAIトータルスコアの変化)で偽薬比有意な差が出たものの副次的項目(CGI-Sの変化)はダメ、もう一本は真逆で主評価項目はフェール、副次的項目は有意だった。

両社は承認審査機関と今後の方針を相談する考え。家族や介護者にとってunmet medical needsであるため、多少効果が弱くても許容されるだろうが、そもそも、広くオフレーベル使用されている非定型向精神薬が正式に承認されていないのは突然死のリスクがあるからであり、Rexultiも治験データが精査されることになるだろう。

今回の適応拡大試験で意外なのは、二本しかやっていない模様であることだ。一般的に精神症状は客観的評価が難しく、状態が不安定で、偽薬効果が大きく出ることもあるため、偽陰性リスクに備えて臨床試験を三本実施することが珍しくない。また、評価期間は二本とも12週間だが、現実の医療では半永久的に用いるだろうから、長期安全性確認試験をやっても良かったのではないか。統合失調症では長期試験が行われたが、アルツハイマー病は突然死リスクを慎重に吟味する必要がある。

リンク: 大塚ホールディングスのプレスリリース(和文、pdfファイル)

【承認申請】


回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請
(2017年5月1日発表)

英国のAtlantic Healthcare Limitedは、米国でalicaforsenの浣腸用製剤のローリング承認申請を開始した。適応は潰瘍性大腸炎の手術後に好発する回腸嚢炎の治療。

米国のIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)が創製した、ICAM-1の発現を阻害するアンチセンス薬。POC試験では12人の患者に6週間に亘って毎晩浣腸したところ、PDAI(嚢炎疾病活動指数)がベースラインの11.42から6.83に改善した。臨床症状サブスケールも3.75から2.25に改善した。深刻な有害事象は見られなかった。138人を組入れた第三相試験が進行中で年内に成否が判明する見込み。

Ionisは最初のアンチセンス薬であるVitravene(fomivirsen)が98年にCMV治療薬として米国で承認され、前途洋々と見られたが、販売不振で承認返上となってしまった。しかし、13年にコレステロール治療薬Kynamro(mipomersen sodium)、16年には脊髄性筋萎縮症治療薬Spinraza(nusinersen)と、ここ数年は新薬が続々と承認されている。核酸医薬の難点であった薬物動態の改良が成果を出し始めた。

リンク: Atlantic社のプレスリリース

ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請
(2017年5月3日発表)

ファイザーは、抗リウマチ薬として承認されているJAK阻害剤、Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)を中重度活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたことを発表した。12月に審査結果が出る見込み。臨床試験では10mgを一日二回投与する群も設定されたが、5mg一日二回と、11mg一日一回のXeljanz XRだけが申請された。

Xeljanzは元々は臓器移植後の拒絶反応防止薬として開発され、動物試験ではカルシニューリン阻害剤に引けを取らない強力な免疫抑制作用を示した。臨床入り後に自己免疫疾患の治療薬として開発の方向転換が行われたのだが、この用途では、カルシニューリン阻害剤と同様に、強すぎるきらいがある。FDAが乾癬の適応拡大を承認しなかったのは、関節炎ほど深刻な病気ではないため副作用リスクと釣り合いが取れないという判断なのだろう。一方、乾癬性関節炎はQOLに大きく影響するので、承認される可能性がありそうだ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回
(2017年5月1日発表)

Sunesis Pharmaceuticals(Nasdaq:SNSS)は、大日本住友製薬からインライセンスしたキノロン誘導体、vosaroxinを60歳以上の再発性急性骨髄性白血病の治療薬として2015年にEUで承認申請したが、撤回したことを公表した。CHMPが否定的意見を出す見込みであるため。

第三相のcytarabine併用試験はメジアン生存期間が7.5ヶ月と偽薬・cytarabine併用群の6.1ヶ月と大差なくフェールした。最初の30日間の死亡率が7.9%と偽薬群の6.6%を上回り安全性懸念も浮上した。ところが、事前に予定されていた60歳以上の患者451例だけの解析が、メジアン生存期間7.1ヶ月対5.0ヶ月、ハザードレシオ0.755、p=0.006、と良い結果になったため、EUではこのサブグループ限定で承認申請することが認められた。

一方、FDAは再試験を要求した。このような経緯があるため、今回の結果は意外ではない。

リンク: Sunesisのプレスリリース

【承認】


エダラボン、米国でもALSに承認
(2017年5月5日発表)

FDAは、田辺三菱製薬のRadicava(edaravone、和名ラジカット)をALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認した。日本で15年に効能追加されたことを知り、FDAがメーカーにアプローチした由だ。薬効と安全性のエビデンスも日本で行われた試験のようだ。

ALS Associationによると、上市は8月で一年分の価格は14.6万ドルとのこと。日本は数十万円、他にも特許切れした国があるようなので、並行輸入する動きもありそうだ。

日本で16年前に脳梗塞で発症から24時間以内の患者に使うことが承認された時は、臨床試験で24時間超の患者の転帰も有意に改善したことが信じられないというのなら24時間以内のデータも疑うべきではないかと思った。何れにせよ、そのうち治験論文が査読医学誌で刊行されれば真相に一歩近づくはずと思ったが、掲載されたのは私にとって聞いたことのない医学誌だった。抗血栓薬以外の脳梗塞治療試験が続々とフェールする中、唯一の快挙であったことを考えれば、NEJMやLancetでないのが意外だった。

何れにせよ、そのうち米国で臨床試験が行われれば白黒ハッキリするはずと思ったが、実現しなかった。

今回のALSのデータも盤石ではない。臨床試験の裏付けがあるのは状態が比較的良い患者だけだが、PDMAもFDAも適応を限定しなかったので、エビデンスレス・メディスンが行われるリスクがある。だが、ライフサイクルを考えると、改めて薬効確認試験が行われる可能性は低そうだ。

二人のALS患者がオランダで設立したTreeway社がedaravoneの経口投与用製剤、TW001を開発中で、欧米で希少疾患用薬指定を受けている。Radicavaは60分点滴静注で、28日サイクルで最初は14日間連続、その後のサイクルは10日間投与する。経口剤なら連続投与することで薬効をパワーアップできるかもしれない。また、Radicavaの深刻な有害事象として蕁麻疹や膨張、呼吸困難、添加物である亜硫酸水素ナトリウムに対するアレルギー反応が挙げられているが、この幾つかは経口剤なら回避できるかもしれない。

承認を取るだけだったら生物学的同等性試験を行えば十分だろうが、もし可能ならば、例えばALS治療薬として承認されている経口剤、Rilutek(riluzole)を活性対照薬として、改めて薬効を確認してほしいものだ(日本の試験は9割の患者がRilutekを服用していたので実質的にアドオン試験となっている)。

リンク: FDAのリリース
リンク: Radicavaの米国向け情報サイト

5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認
(2017年5月1日発表)

アストラゼネカは、Imfinzi(durvalumab)が尿路上皮細胞腫用薬として米国で承認されたと発表した。白金薬治療歴を持つ患者の二次治療として、10mg/kgを二週間に一回、60分点滴静注する。

PD-L1発現状況に関係なく使用することができるが、薬効のエビデンスとなった第2相試験では、PD-L1高発現サブグループ(被験者のほぼ半分が該当)のORR(客観的反応率)は26%、判定不能例では21%、低・無発現サブグループでは4%となっており、コストや副作用を考えると高発現に限定したほうが良いのではないだろうか。

ImfinziはPD-L1を標的とするIgG1カッパ型完全ヒト化抗体で、抗PD-L1抗体としてはロシュのTecentriq(atezolizumab)、独メルク/ファイザーのBavencio(avelumab)に次ぐ三剤目、PD-L1の受容体であるPD-1を標的とするMSDのKeytruda(pembrolizumab)やBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も含めれば5剤目。

膀胱癌は抗PD-1/PD-L1の得意分野で、5剤のうちTecentriqとOpdivoが既に承認、KeytrudaやBavencioは適応拡大申請中で審査期限は各6月と8月となっており、レッドオーシャン状態だ。

薬効を比較する上で厄介なのは、PD-L1発現検査の方法が異なること。Imfinziの試験はTecentriqと同様に、ロシュの子会社であるVentana Medical Systemsのアッセイを用いているが、高発現の評価方法が異なる模様であり、PD-L1サブグループだけのORRを比較することはできない。かといって、全ユニバースのORRは陰性患者の構成比に左右される可能性があり、使いたくない。何とかならないものか。

分かり易い違いは投与頻度。ImfinziとOpdivo、Bavencioは2週間に一回、ImfinziとTecentriqは3週間に一回。末期癌は元々のQOLが低いが、一次治療の患者が限られた日々を有効に過ごすことを考えると、医療施設に行く回数は少ない方が良い。

用量は尿路上皮細胞腫ではImfinziとBavencio以外は体重を問わず同一。体重に合わせて用量を変えるのは血中濃度を同一にするための工夫だが、太っている人は薬剤費が高くなり、また、使い残しが出やすいので、経済的には固定のほうが良い。抗PD-1/PD-L1抗体は用量反応相関があまり明確ではないので、統一する余地はありそうだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

造骨型骨粗鬆症治療薬が承認
(2017年4月28日発表)

Radius Health(Nasdaq:RDUS)はTymlos(abaloparatide)が閉経後骨粗鬆症治療薬としてFDAに承認されたと発表した。骨損壊リスクが高い患者に用いる。

甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)のアナログで、類似薬であるイーライリリーのForteo(teriparatide)と同様に、破骨細胞抑制というよりは造骨細胞を活性化するアナボリック作用を持つ。欠点もForteoと同様。レーベルには、癌原性試験でオスとメスのラットに臨床用量の4倍以上を投与したら骨肉腫が増加したと枠付き警告されている。マウスについては記されていないのでリスクがなかったと考えれば、二種類以上の動物で雄雌両方で増加という癌原性判定基準には該当しないことになるが、気持ち悪い。

Forteoと同様に、二年以上の連続投与は推奨しないことも枠付き警告された。

リンク: Radius社のプレスリリース






今週は以上です。

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2017年4月30日

2017年4月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功 
  • リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答 
  • アリアド、武田グループ入り後初の承認 
  • FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認 
  • FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認 
  • バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大 
  • EUでVarubyなどが承認 


【承認申請】


イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功
(2017年4月24日発表)

イーライリリーは、LY2835219(abemaciclib)の第三相乳癌一次治療試験の成功を発表した。ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後転移性乳癌にanastrozoleまたはletrozoleと併用する効果を検討したところ、中間解析で主評価項目のPFS(無進行生存期間)が偽薬群を有意に上回った。データは未発表。

abemaciclibは細胞周期の進行に係るサイクリン依存性キナーゼ4と6を阻害する小分子薬で、150mgを一日二回、経口投与する。先行品としてはファイザーのIbrance(palbociclib)が15年に、ノバルティスのKisqali(ribociclib)が今年3月に、米国で承認されている。イーライリリーは、追いかける側の定石通りに、サルベージと二次治療、そして一次治療の臨床試験を雁行的に進めており、今四半期中にサルベージと併用二次治療で、次四半期に今回の併用一次治療で、承認申請する計画だ。

先行二剤とは服用スケジュールが異なり、一日一回ではなく、休薬期がない。忍容性が優れる可能性もあるが、直接比較試験が行われたわけではないので、良くわからない。好中球減少症が用量制限的毒性にならないため効果が高い可能性があるので、データを見てみたい。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答
(2017年4月28日発表)

リジェネロンと開発販売パートナーであるサノフィは、Kevzara(sarilumab)を抗リウマチ薬として欧米で承認申請し、EUでは今月、CHMPの肯定的意見を得た。米国は、サノフィの充填最終製剤工場でcGMP上の欠陥が発覚し審査完了通知を受領したが、今回、指摘事項に回答、受理された。クラスIリサブミッションとなったので、2ヶ月内に審査結果が出るはず。

KevzaraはIL-6受容体アルファ・サブユニットを標的とする完全ヒト化抗体。日本発の抗体医薬である中外/ロシュのActemra(tocilizumab)の類薬だ。Kevzaraは皮注、Actemraも関節リウマチ用には皮注用製剤あり。投与頻度は二週間に一回、Actemraも同じだが100kg超の患者は毎週。Kevzaraは完全ヒト化抗体、Actemraはヒト化抗体。細かい違いはあるものの概ね同じようなものと考えておけばよいだろう。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認】


アリアド、武田グループ入り後初の承認
(2017年4月28日発表)

武田薬品は、2月に54億ドルで買収した米国の新興製薬会社、アリアド・ファーマスーティカルズが開発したAlunbrig(brigatinib)が米国で承認されたと発表した。ALK変異陽性の非小細胞性肺癌でcrizotinibに不応または不耐の患者に用いる。経口剤で、開始用量は90mgを一日一回、忍容性が良好なら8日目から180mgに増量する。

第二相試験では確認ORR(客観的反応率)が53%、メジアン反応持続期間は13.8ヶ月。脳転移患者では頭蓋内ORRが67%だった。主な有害事象は腎機能検査値異常、高血圧症、肺炎、発疹など。致死的な有害事象の発生率は3.7%で、肺炎や突然死、呼吸困難、肺不全、肺塞栓、細菌性髄膜炎、尿路性肺血症。

リンク: 武田のプレスリリース(アリアドのホームページ)

FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認
(2017年4月28日発表)

FDAは、ノバルティスのRydapt(midostaurin)をFLT3変異型AML(急性骨髄性白血病)の新患および末期全身性肥満細胞症に用いる薬として承認した。ノバルティスを始め多くの製薬会社の研究開発テーマであったFLT3阻害剤が遂に臨床デビューする。

AMLでは、cytarabineなどを用いる導入療法や地固め療法と併用で、第8~22日に50mgを一日二回経口投与する。第三相試験では全生存のハザードレシオが0.77と有意に改善した。末期全身性肥満細胞症では100mgを一日二回服用する。

主な有害事象は骨髄抑制、悪心嘔吐、粘膜炎など。妊婦は禁忌。肺障害が発生したら投与を中止する。

FLT(FMS-like tyrosine kinase)は造血前駆細胞の受容体チロシンキナーゼで、AMLの3割程度では、インターナル・タンデム・デュプリケーションなどの活性化変異が見られる。Invivoscribe TechnologiesがPMA(販売前申請)した検査アッセイも承認された。

全身性肥満細胞症は肥満細胞が増殖し肝臓などの臓器に障害を与えるとともに血球数や体重の低下が起きる。9割の患者では肥満細胞の増殖生存に係るKIT酵素の遺伝子変異が見られる。Rydaptは、他の多くの分子標的薬と同様に、KITも阻害する。

リンク: FDAのリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認
(2017年4月27日発表)

FDAはバイオマリン(Nasdaq:BMRN)が承認申請したBrineura(cerliponase alfa)を神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)治療薬として承認した。適応は幼児期後期に発症した3歳以上の患者だけで、2歳以下や早期発症型に対する効能や安全性は確立していない。

CLN2はTPP1遺伝子の変異によるトリペプチジル・ペプチダーゼ1の機能喪失/欠乏が原因で、ライソゾームで分解されるべき蛋白が蓄積する。典型的な経過は、2~4歳で発症し、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡する。米国では年間に20人の新生児が罹患と推定されている。

Brineuraは遺伝子組換え型ヒト・トリペプチジル・ペプチダーゼ1。第1/2相単群試験で24人に二週間に一回、300mgを4時間半かけて脳室内点滴投与したところ、運動・言語機能の評価スコアが48週間で0.43単位しか悪化しなかった。自然歴は2.1単位悪化と推定されている。FDAはリリースの中で症候性小児の歩行能力喪失を遅らせる薬は初と記しており、対照試験ではないが十分なエビデンスと評価したのだろう。主な治療関連深刻有害事象は過敏反応と点滴反応。

BrineuraはEUでもCHMPが今月、肯定的意見を纏めた。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイオマリンのプレスリリース

バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大
(2017年4月27日発表)

FDAはバイエルのStivarga(regorafinib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に適応拡大した。同社のNexavar(sorafenib、和名ネクサバール)による治療を既に受けた患者が適応になる。肝細胞腫用薬はNexavarが07年に適応拡大承認されて以来、10年ぶり。

StivargaはNexavarと類似した構造のVEGF受容体拮抗剤。Nexavarはオニキス・ファーマスーティカル(後にアムジェンが買収)とのras共同研究の成果で、オニキスにロイヤルティや利益シェアを払う必要がある。Stivargaは、バイエルは当初、独自に創製と主張したが、結局、オニキスへの支払いを免れることはできなかった。それでも、Nexavarより特許失効が遅いので、Stivargaを優先するメリットがある。

第三相試験ではメジアン生存期間が10.6ヶ月と偽薬群の7.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62と有意に改善した。

日本でも昨年10月に申請され、迅速審査指定を得ている。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイエルのプレスリリース

EUでVarubyなどが承認
(2017年4月26日発表)

EUの薬品承認審査機関であるEMAの医薬品専門家委員会、CHMPが2月と3月に肯定的意見を纏めた薬が続々と承認された。

まず、Tesaro(Nasdaq:TSRO)のVaruby(rolapitant)。NK-1受容体拮抗剤で、化学療法薬に誘発されて分泌されるサブスタンスPが脳の嘔吐中枢を刺激するのを防ぐ。中高度催吐性を持つ抗癌剤を施行する時に、即効性制吐剤である5-HT3受容体拮抗剤やdexamethasoneと併用すると、遅発性悪心嘔吐を抑制することができる。

米国では今年1月に審査完了通知を受領した。

NK-1受容体拮抗剤の第一号であるMSDのEmend(aprepitant、和名イメンド)と異なり3A4相互作用が小さい長所を持つが、発売が10年以上遅れたので市場性は限定的だろう。

Opko Health(NYSE:OPK)がシェリング・プラウ(後にMSDと合併)から資産取得し、MGI Pharmaで5-HT3受容体拮抗剤Aloxi(palonosetron)を開発したメンバーがエーザイ買収を機に独立して設立したTesaroに独占開発生産販売権を供与した。

リンク: Tesaroのプレスリリース(4/26付け)

次に、シャイアーのNatpar(甲状腺ホルモン、遺伝子組換え)は15年に52億ドルで買収したNPS Pharmaceuticalsの開発品。NPSは骨粗鬆症治療薬として欧米で承認申請したが、米国では承認されず、欧州では06年にPreotactという製品名で承認されたものの14年に商業上の理由で承認返上。慢性副甲状腺機能低下症に伴う低カルシウム血症の治療薬として出直した。米国では15年に限定的な内容で承認され、今回、EUでも条件付き承認された。

リンク: シャイアーのプレスリリース(4/26付け)

適応拡大では、Darzalex(daratumumab)を多発骨髄腫の二次治療に用いることが承認された。セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide )若しくはジョンソン・エンド・ジョンソン/武田薬品のVelcade(bortezomib)と、dexamethasoneを三剤併用する。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.37~0.38と、二剤併用のみより有意に優れていた。

Darzalexはジョンソン・エンド・ジョンソンがデンマークのジェンマブからライセンスした抗CD38完全ヒト化抗体。EUでは16年にRevlimidのような免疫調節薬及びVelcadeを既に使った患者に単剤投与するサルベージ用途で承認された。

リンク: ジェンマブのプレスリリース(4/28付け)

BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)は頭頸部扁平上皮腫に適応拡大。白金ベースのレジメンによる治療中・治療後に進行した患者に用いる。3mg/kgを2週間に一回投与する。第三相試験では延命効果が医師が選んだ薬(Erbitux(cetuximab)など)を投与した群を有意に上回った。

リンク: BMSのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年4月23日

2017年4月23日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 先進国初の遺伝子療法が承認返上に 
  • アッヴィ、PARP阻害剤の第三相二本がフェール 
  • ライジェル、Syk阻害剤をITP治療薬として承認申請 
  • CHMP、新薬4品などに肯定的意見 
  • Tecentriqが一次治療薬として承認 


【今週の話題】


先進国初の遺伝子療法が承認返上に
(2017年4月20日発表)

オランダのuniQure biopharma(Nasdaq:QURE)は、Glybera(alipogene tiparvovec)のEUにおける販売承認を更新しないことを決めた。先進国で初めて承認された遺伝子療法だが残念な結果になった。

この薬は、重度家族性リポプロテイン・リパーゼ欠乏症(高カイロミクロン血症)という100万人に1~2人が罹患する超希少疾患の治療薬で、リポプロテイン・リパーゼの遺伝子をアデノ随伴ウイルスをベクターとして導入する。高脂血症の治療で優れた実績を持つアムステルダム大学アカデミック・メディカル・センター出身のバイオベンチャー、uniQureが2012年に承認を取得、Chiesi Farmaceuticiが販売している。

15年にベルリンで承認後初めての患者が治療を受けたと報じられたが、結局、最初で最後の患者になった模様だ。年110万ユーロと著しく高価だが、超希少疾患薬は数十万ユーロ級の薬が珍しくない。個人負担は大きくはないだろうし、健康保険にとっては高血圧症や高脂血症、糖尿病に係る支出のほうがはるかに大きい。従って、費用の問題というよりは薬の効果やリスクの問題なのだろう。臨床的な転帰を改善する効果が実証されていないため、適応が膵炎を頻繁に発症する患者に限定されていることなどが影響したのだろう。

Glyberaは、例外的環境条項に基づいて承認された。治療が難しい深刻な疾患で、患者が少ないために十分な規模の臨床試験を行うことができない場合に、承認のハードルを引き下げる制度だ。販売許可保有者は、患者登録などの市販後監視、追加的な臨床試験、リスク管理などの実施が課せられる。uniQureはこれらの負担や供給体制維持に関わる費用を節減するために、5年間の承認期間が終了する今年10月25日をもって販売終了を決めた。Chiesiに対する補償を考慮しても年200万ユーロのコスト削減になる由だ。

欧州では、昨年、グラクソ・スミスクラインもStrimvelisの承認を取得している。イタリアの研究機関が開発したex vivo遺伝子療法で、ADA-SCID(アデノシンデアミナーゼ欠損症による重症複合免疫不全症)の治療に用いる。これも年60万ユーロと高いが、病気が極めて深刻で治療法の選択肢が限られているため効用が大きい。グラクソは成功報酬制度を用意するなどの工夫も行っている。

折角の画期的新薬が不発に終わるのは残念だが、便益と費用・副作用リスクのバランスが取れないのならば止むを得ない。患者が欲しているのは新しい薬ではなく有益な薬なのだから。

リンク: uniQureのプレスリリース

【新薬開発】


アッヴィ、PARP阻害剤の第三相二本がフェール
(2017年4月19日発表)

アッヴィはPARP阻害剤ABT-888(veliparib)の第三相試験を様々な癌に実施しているが、扁平上皮非小細胞性肺癌のcarboplatin・paclitaxel併用一次治療試験と、早期トリプルネガティブ乳癌ネオアジュバント試験がフェールしたことが発表された。残りは非扁平上皮非小細胞性肺癌とBRCA1/2型の乳癌と卵巣癌の三本。

他社のPARP阻害剤はBRCA1/2型の乳癌や卵巣癌を狙うことが多く、肺癌で第三相を行うのは珍しいため、フェールしても意外感はあまりない。今回の試験の主評価項目は喫煙経験者だけの解析となっているので、おそらく、このサブグループなら成功すると信じる根拠があったのだろう。一方、乳癌のほうは大変意外だ。

ABT-888は政府や医学者が臨床開発をスピードアップするために導入した画期的な試みで用いられたことで有名だ。例えば、フェーズ・ゼロ試験。ファースト・イン・マンを前倒しして、ごく少量を投与することによって早い段階で人間における薬物動態を把握する。あるいは、I-SPY 2。様々な会社の様々な分子標的薬を様々な遺伝子プロファイルを持つ癌に次々と投与することによって、ベストな組み合わせを早く見つける。

ABT-888はI-SPY 2の最初の卒業生だった。トリプルネガティブ乳癌のネオアジュバント療法(摘出術前に腫瘍を小さくする目的で施行する)として300人規模の第三相試験を行えば、成功確率92%と予測された。それなのに、フェールしてしまった。

ベイズ確率は考え方としては有望であるように感じられ、I-SPY 2卒業生の第三相試験に注目していたのだが、第一号は意外な結果になった。

リンク: アッヴィのプレスリリース

【承認申請】


ライジェル、Syk阻害剤をITP治療薬として承認申請
(2017年4月17日発表)

ライジェル・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:RIGL)はR788(fostamatinib disodium)を慢性・持続性免疫性血小板減少症(ITP)治療薬として米国で承認申請した。

マスト細胞やマクロファージ、B細胞などの免疫グロブリンG受容体の細胞内シグナル伝達に係るspleen tyrosine kinaseを阻害し、IL-6やMMP-3を2~3割減少させる効果を持つ。第三相試験は100mgを一日二回、経口投与したところ、一本では奏効率が18%と偽薬群の0%を有意に上回ったがもう一本は18%対4%でフェールした。主な有害事象は悪心、下痢、血圧上昇など。

リンク: ライジェルのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMP、新薬4品などに肯定的意見
(2017年4月21日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPが、4月の会議で脊髄性筋萎縮症用薬などの承認とオプジーボの適応拡大などに肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヵ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

肯定的意見を得た新薬は、まず、バイオジェンがIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスして開発したアンチセンス薬、Spinraza(nusinersen)。脊髄性筋萎縮症の治療に用いる。希少疾患で、日米欧の患者数は3~3.5万人と推定されている。殆どの患者がSurvival Motor Neuron(SMN)の遺伝子であるSMN1に変異を持ち、十分に機能するSMNを産生できない。発症時期や重篤さが異なるI型、II型、III型がある。

これまでのアンチセンス薬は特定の蛋白の発現を阻害するメカニズムだったが、Spinrazaは、短いSurvival Motor Neuron(SMN)しか作れないSMN2遺伝子のスプライシングを変えることによって、SMN1遺伝子の代わりに正常なSMNを作らせる、正の作用であることがユニークだ。I型(幼児発症型)試験では、反応率が51%と文献データの0%を大きく上回った。人工呼吸器が恒久的に必要になったり死亡したりするリスクも半減した。II型試験では筋肉機能評価スコアが用量依存的に改善した。

髄腔内投与で最初は2ヶ月間に4回投与、その後は4ヶ月に一回投与する。米国では昨年12月に承認された。日本も臨床試験に参加しており、昨年12月に承認申請された。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: バイオジェンのプレスリリース

次に、バイオマリン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:BMRN)のBrineura(cerliponase alfa)は、同社お得意の超希少疾患用の酵素補充療法。適応はCLN2(神経セロイドリポフスチン症2型)。TPP1/CLN2遺伝子の変異が原因でトリペプチジルペプチダーゼを作ることができず、この酵素で分解されるべき蛋白が蓄積してしまう。2~4歳で発症、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡することが多い、深刻な疾患だ。罹患率は20万人に一人。

Brineuraは遺伝子組換え型のヒトTPP1で、二週間に一回、脳室内に点滴投与する。臨床試験では運動機能や言語機能の悪化が文献データ比8割少なかった。

昨年7月に欧米で承認申請された。米国の審査期限は4月27日。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: バイオマリンのプレスリリース

ファイザーのBesponsa(inotuzumab ozogamicin)は抗CD22ヒト化抗体とカリケアマイシンを結合した抗体薬物複合体。再発難治性、CD22陽性の前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病に用いる。第三相試験では完全寛解率が80.7%と標準療法群の29.4%を上回り、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオは0.45で統計的に有意、全生存期間はメジアン値が各7.7ヶ月と6.7ヶ月、ハザードレシオ0.77で有意ではなかったが方向的には好ましい結果だった。

ワイスがセルテックからライセンスしてCD22陽性非ホジキンリンパ腫でrituximab併用第三相試験を実施したがフェール。ワイスはファイザーに、セルテックはUCBに買収されたが開発は継続され、今日に至った。米国でも承認審査中で8月に結果が出る見込み。

リンク: ファイザーのプレスリリース
リンク: Kantarjianらの第三相試験論文(NEJM誌、オープンアクセス)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発したKevzara(sarilumab)はIL-6受容体アルファ・サブユニットを標的とする完全ヒト化抗体。中重度活性期リウマチ性関節炎の治療に用いる。

抗IL-6受容体抗体という点では日本発の抗体医薬、中外/ロシュのActemra(tocilizumab)と同じ。皮注薬で、Actemraも関節リウマチ用には皮注用製剤も用意されている。投与頻度は二週間に一回、Actemraも同じだが100kg超の患者は毎週。こちらは完全ヒト化抗体、向こうはヒト化抗体、等々、細かい違いはあるものの概ね同じようなものと考えておけばよいだろう。

米国では昨年10月に審査完了通知を受領した。サノフィの充填最終製剤工場でcGMP上の欠陥が指摘されたようだ。日米欧の規制局はこのような情報の交換協定を結んでいる。欧州でも承認遅延の可能性があるのか、4月23日夕方現在、両社ともCHMP通過に関するプレスリリースを出していない。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)を切除不能な局所進行性・転移性尿路上皮細胞腫に用いることが支持された。白金薬による治療がフェールした患者が適応になる。用量は体重相関ではなく、240mg。60分点滴静注を二週間毎に施行する。第二相試験では持続的反応率が19.6%。PD-L1発現が1%以上のサブグループでは23.8%、1%未満では16.1%と、それほど大きな差はなかった。

抗PD-1抗体Opdivoは、EUでは以下の適応症に承認されている。悪性黒色腫(モノセラピーまたはYervoy併用)、非小細胞性肺癌(モノ、二次治療限定)、腎細胞腫(モノ、二次治療限定)、古典的ホジキン型リンパ腫(モノ、自家造血幹細胞移植及びAdcetrisによる治療を既に受けた患者に限定)、頭頸部扁平上皮腫(モノ、白金薬による治療に不応・再発した患者に限定)。

Yervoy併用試験が活発に実施され学会発表も盛んであるためか、EMAのプレスリリースは黒色腫以外ではモノセラピーしか承認されていないことを明記している。

リンク: BMSのプレスリリース

さて、EMAのプレスリリースには言及されていないが、米国テキサス州のバイオベンチャーであるXbiotech(Nasdaq:XBIT)は、結腸直腸癌用薬として承認申請した抗IL-1アルファ・ヒトモノクローナル抗体、Xilonixに関して、CHMPが否定的な『トレンド』投票を行った旨を公表した。5月の会合で正式に否定的意見が出る見込みである模様だ。

第三相試験では偽薬比有意なQOL改善効果が見られたが、QOLの評価が独自であるため議論の余地が大きそうだ。米国承認申請に向けて別途、第三相試験を実施中なので、この結果を待つことになるのではないか。

リンク: XBiotechのプレスリリース(4/20付け)

【承認】


Tecentriqが一次治療薬として承認
(2017年4月17日発表)

ロシュの米国子会社であるジェネンテックは、抗PD-L1抗体医薬Tecentriq(atezolizumab)を局所進行性・転移性尿路上皮細胞腫の一次治療に用いることがFDAに承認されたと発表した。cisplatinに不適な患者が適応になる。これまでは白金薬による治療を受けた患者の二次治療限定だった。

どちらも第二相試験の反応率データに基づく承認で、一次治療コフォートでは反応率が23.5%、うちPD-L1の発現が5%以上のサブグループは28%、未満では22%とそれほど大きな差はなかった。主な有害事象は肺炎、肝炎、結腸炎、ホルモン分泌障害、神経障害など。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース




今週は以上です。

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2017年4月16日

2017年4月16日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イムブルビカを移植片対宿主病に適応拡大申請 
  • BMSもオプジーボをMSI-H腫瘍に適応拡大申請 
  • イーライリリーのJAK阻害剤は審査終了 
  • ニューロクラインの遅発性ジスキネジア治療薬が承認 
  • テバのハンチントン舞踏病治療薬が承認 
  • ノバルティス、BRAF変異型肺癌用薬がEUで承認 
  • EUがウプトラビの無垢を認めた 


【承認申請】


イムブルビカを移植片対宿主病に適応拡大申請
(2017年4月4日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、FDAがImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)の適応拡大申請を受理したと発表した。造血幹細胞移植後に慢性移植片対宿主病(GvHD)を発症し、ステロイドなどの全身性治療がフェールした患者に用いる。昨年、ブレークスルー・セラピー指定と希少疾患用薬指定を受けており、第二相試験に基づいて承認申請された。プレスリリースには審査期限は記されていない。

Imbruvicaは、B細胞のアポトーシスや細胞接着、組織移行・帰還を制御するBruton's tyrosine kinaseを阻害する小分子薬。マントル細胞リンパ腫や慢性リンパ性白血病などに欧米日で承認されている。42人を組入れたGvHDの第二相試験では、客観的反応率が67%に達した。一次治療の第三相試験が進行中。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

BMSもオプジーボをMSI-H腫瘍に適応拡大申請
(2017年4月4日発表)

BMSのOpdivo(nivolumab、オプジーボ)をdMMR(不十分なミスマッチ修復)型転移性結腸直腸癌に用いる適応拡大申請がFDAに受理された。優先審査を受け、審査期限は8月2日。MSDもKeytruda(pembrolizumab)で同様な適応拡大申請を行っており、審査期限は当初は3月8日だったが6月9日に延期されたため、リードが2ヶ月弱に縮小している。

dMMRは細胞分裂時に遺伝子の複製ミスが発生しても修復できない。リンチ症候群ではミスマッチ修復に関わる遺伝子の生殖細胞系変異が大腸癌の発生に関与している。特定の塩基配列パターンが繰り返されるマイクロサテライトと呼ばれる部位は複製ミスが起きやすいので、当該部位の繰り返し回数を調べてMSI-H(マイクロサテライト不安定性高)と判定されたらdMMRと見なす、代替的な検査がリンチ症候群以外にも使われるようになった。このdMMR/MSI-H型は、転移性結腸直腸癌の早期患者では15%、末期では5%を占めるようだ。

第二相試験では、ORR(客観的反応率)が担当医評価で31%、独立査読委員会の評価で27%。12ヶ月PFS(無進行生存率)は各48.4%と45.6%だった。

リンク: BMSのプレスリリース

Opdivoに関しては、第三相多形性膠芽腫二次治療試験がフェールしたことも発表された。全生存期間がAvastin(bevacizumab)を上回らなかった。放射線療法や化学療法と併用する一次治療試験二本は予定通り進める予定。一次治療試験は、予後やtemozolomide応答性を予測する上で重要なMGMT(O6-methylguanine-DNA methyltransferase)メチル化のある患者とない患者を分けて分析することが特徴で、日本の施設も参加している。

リンク: BMSのプレスリリ-ス(17/4/3付)

【承認審査・委員会】


イーライリリーのJAK阻害剤は審査終了
(2017年4月14日発表)

イーライリリーはインサイト(Nasdaq:INCY)からライセンスしたJAK1/2阻害剤、Olumiant(baricitinib)を中重度活性期リウマチ性関節炎治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領したと発表した。副作用懸念からか、FDAは至適用量を再検討する臨床試験の実施や、安全性に係る追加分析を求めた由。

臨床試験では4mg群で致死的な脳基底細胞血栓症や非ST上昇型心筋梗塞などの稀だが深刻な有害事象が増加した。2mgの印象は悪くなかったが、個人差を考慮すればセーフティマージンが十分とは言えないだろう。また、JAK阻害剤は癌や感染症のリスクが高まる恐れがある。

イーライリリーはFDAの結論に同意しないと明記している。トランプ大統領が規制緩和に前向きであることを踏まえて、FDAに揺さぶりを掛ける考えなのかもしれない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認】


ニューロクラインの遅発性ジスキネジア治療薬が承認
(2017年4月11日発表)

FDAはニューロクライン(Nasdaq:NBIX)のIngrezza(valbenazine)を遅発性ジスキネジア治療薬として承認した。この病気は、向精神薬の高量、長期投与などが原因で、無意識な反復動作が現れる。Ingrezzaは神経終末の小胞モノアミントランスポータタイプ2(VMAT2)を阻害する小分子薬で、ドパミンなどの神経伝達物質がシナプス前小胞に取り込まれるのを妨げ、不随意運動に関与するドパミン神経系機能を正常化する。第三相試験ではAIMスコアが偽薬比3ポイント改善した。

遅発性ジスキネジア治療薬の承認は初。他には次項のAustedo(deutetrabenazine)が適応拡大申請中だが、Igrezzaは一日一回服用で足り、精神性副作用が小さい長所を持つ。

Ingrezzaの日本やアジアの権利は田辺三菱製薬が保有している。

リンク: FDAのリリース
リンク: ニューロクラインのプレスリリース

テバのハンチントン舞踏病治療薬が承認
(2017年4月3日発表)

テバ(NYSE:TEVA)は、FDAがAustedo(deutetrabenazine)をハンチントン舞踏病治療薬として承認したと発表した。VMAT2阻害剤Xenazine(trabenazine)の水素基を重水素で置換して、活性代謝物の分解を遅らせ作用を長期化するとともに、忍容性や個人差、薬物相互作用を改善したもの。Xenazineと同様に、うつ病や自殺思考・行動のリスク警告がレーベルに記載された。テバは問屋取得価格を年6万ドルとする考え。

昨年12月に遅発性ジスキネジアの適応拡大も申請された。優先審査指定を受け、審査期限は8月30日。

テバが35億ドルで買収したAuspex社の開発品。

リンク: テバのプレスリリース

ノバルティス、BRAF変異型肺癌用薬がEUで承認
(2017年4月3日発表)

ノバルティスは、BRAF-V600変異型非小細胞性肺癌にTafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMekinist(trametinib、和名メキニスト)を併用する適応拡大がEUで承認されたと発表した。小規模な臨床試験で初めて治療を受ける患者のORR(総合反応率)が61%、再発治療例では66%だった。メジアン反応持続期間は前者は未達、後者は9.8ヶ月。一次治療試験の詳細は今後、学会発表される予定。

BRAF-V600変異型は腺腫肺癌の1~3%程度なので決して多くない。悪性黒色腫では5割程度と多く、BRAF阻害剤TafinlarはV600変異型悪性黒色腫に単剤、またはMEK1/2阻害剤Mekinistと併用で用いることが承認されている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

【医薬品の安全性】


EUがウプトラビの無垢を認めた
(2017年4月7日発表)

EUは、アクテリオンが日本新薬からライセンスして開発した肺動脈高血圧症治療薬、Uptravi(selexipag、和名ウプトラビ)の危険と便益を再検討していたが、承認内容の変更は必要なしと結論した。

事の発端は1月にフランスで服用患者5名の死亡が報告されたこと。EUの薬品審査機関であるEMAが承認した薬なので、フランスの要請により、EMAのPRAC薬品安全性監視委員会が検討を開始した。
しかし、データを分析しても死亡リスクの増加は示唆されず、今回の無垢宣言に至った。

フランスは数年前に一部の医薬品で承認審査や安全性監視の不備が表面化、批判を浴びた。それ以来、周辺の国と比べても副作用情報に敏感に反応する傾向がある。

リンク: EMAのリリース






今週は以上です。

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2017年4月2日

2017年4月2日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ヴァーテックス、嚢胞性線維症の新薬を承認申請へ 
  • ノバルティス、CAR-Tの承認申請が受理 
  • KiteもCAR-Tの承認申請を完了 
  • Cempra、solithromycinの欧州での承認申請を撤回 
  • アトピーの画期的新薬は年37000ドル 
  • Tesaro、PARP阻害剤が米国で承認 
  • ロシュ、多発性硬化症用薬が米国で承認 
  • ファイザー、ゼルヤンツが欧州でやっと承認 


【新薬開発】


ヴァーテックス、嚢胞性線維症の新薬を承認申請へ
(2017年3月28日発表)

嚢胞性線維症治療薬Kalydeco(ivacaftor)とOrkambi(lumacaftor 、ivacaftor)を開発したヴァーテックス・ファーマスーティカルズ(Nasdaq: VRTX)が、第三の新薬tezacaftorの第三相試験に成功した。今年第3四半期に欧米で承認申請する予定。

嚢胞性線維症は遺伝子変異が原因でCFTRの機能が低下、気道の粘液などが除去されずに蓄積する。ivacaftorがCFTRチャネルの開口を長期化するポテンシエイターとして作用するのに対して、tezacaftorはCFTRが細胞表面に移行するのを促すコレクター(矯正薬)として作用する。lumacaftorと同じで、改良版という意味合いがあるだろう。

嚢胞性線維症で最も多いF508欠損ホモ接合型はCFTRが移行しにくいとされ、コレクターのほうが適している可能性がある。臨床成績もKalydeco単剤では十分な効果がなかったが、Orkambiは良績を上げ、このタイプに承認された。尤も、効果は必要最低限で、もっと有効な薬が登場する可能性がある。有力候補と考えられているのがtezacaftorだ。

第三相試験は四本実施された。F508欠損ホモ接合型を組入れた試験が一本、ヘテロは三本で、もう一つのアレルの特性に応じて、CFTR機能が残っていると推定されるアレルの試験、ミニマム機能のアレルの試験、そしてivacaftorに応答するゲーティング変異アレルの試験だ。このうち、F508欠損/CFTRミニマム機能患者の試験は途中で無益性が認定され打ち切られたが、今回、ホモ接合型とF508欠損/CFTR機能残存型の試験が成功した。

ホモ接合型試験では、tezacaftor(100mg)を一日一回とivacaftor(150mg)を一日二回、経口投与して24週間治療したところ、%1秒量(FEV1 % predicted)がベースラインの60%から3.4ポイント改善、偽薬だけを投与した群は0.6ポイント悪化したため、偽薬調整後の治療効果は4.0ポイント、p<0.0001となった。

F508欠損/CFTR機能残存型試験はクロスオーバー試験で、%1秒量がベースラインの62%から6.5ポイント改善した。ivacaftorだけを投与した期間は4.4ポイント改善し、どちらも、偽薬期間(0.3ポイント悪化)を有意に上回った。

Orkambiのデータと見比べると、ホモ接合型の治療効果は0.5~1ポイント、高そうだ。有害事象の発生率もOrkambiほどではない。勿論、直接比較試験ではないので明確なことはいえない。承認されている薬があるのだから偽薬対照ではなくOrkambi対照試験でも良かったのではないかと思われる。

F508欠損/CFTR機能残存型試験では、併用とKalydeco単剤の比較でも有意差があるのかどうかが気になるところだ。クロスオーバー試験であることも弱い。更に、Orkambiの試験はフェールしたがこのサブタイプだけの試験を行えば成功するかもしれない。ヘテロ接合型に関しては、三剤間の比較が十分に行われていないため、釈然としないものがある。それでも、単剤比2ポイントの差があるなら良いのではないかという気もする。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

【承認申請】


ノバルティス、CAR-Tの承認申請が受理
(2017年3月29日発表)

ノバルティスは、CTL019(tisagenlecleucel-T)を米国で承認申請し受理されたことを発表した。予定適応は青少年の再発難治性B細胞急性リンパ芽球性白血病。優先審査を受ける。

CTL019はCAR-Tと呼ばれる細胞療法で、B細胞特異的に発現するCD19に結合する抗体の単鎖可変領域とTCRの共刺激伝達領域である4-1BB及びCD3ゼータチェーンを融合した遺伝子を、患者から採取したT細胞に導入し、培養・活性化したもの。患者に戻すと、T細胞が抗原提示がなくてもB細胞を攻撃する。FDAが小児と成人の再発難治性急性リンパ芽球性白血病用薬としてブレークスルー・セラピー指定している。

ペンシルバニア大学から共同開発販売権を取得したノバルティスが日米欧などの施設で実施した試験では、客観的反応率が82%となった(50例のうち、血球数の回復が不十分な症例も含めて41人が完全寛解)。CAR-Tはサイトカイン放出症候群がボトルネックで、G3/4だけでも48%の患者で発生し、人工心肺や透析を必要とする低血圧も起きたが、致死例はなかった。G3神経学的精神学的有害事象(脳症、せん妄など)も15%で発生したがG4はなかった。

CAR-Tは次項のKite Pharmaも含めて三社が先陣争いしているが、今のところ、CTL019が承認第一号になりそうだ。ノバルティスは、年内にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の適応も申請する予定。EUでも年内申請予定。

最近の画期的新薬は信じられないほど高い。NICE(英国政府の医療技術評価組織)によると、急性リンパ芽球性白血病のCAR-Tによる治療は64.9万ドルでも正当化できるとのことなので、保健機関にとってまた頭痛の種になりそうだ。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

KiteもCAR-Tの承認申請を完了
(2017年3月31日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)はKTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の米国におけるローリング承認申請を完了したと発表した。予定適応は他家造血幹細胞移植不適の再発難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫。EUでも年内に承認申請する計画。日本では第一三共が1月に製造開発販売権を取得した。

CTL019と同様なCAR-T療法で、主な違いは共刺激ドメインに4-1BBではなくCD28を採用していることと、組換え遺伝子を導入する時のベクターがレンチウイルスではなくレトロウイルスであること。

101人を組入れた第二相試験では、客観的反応率が82%、完全寛解率は54%、但し8.7ヶ月後時点では各44%と39%に低下した。サブグループの客観的反応率は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が82%、転換濾胞性リンパ腫(TFL)と原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)は83%だった。主なG3以上の有害事象は骨髄抑制、脳症、サイトカイン放出症候群、神経学的毒性など。治療時発現有害事象による死亡は3例。

もう一社、CAR-Tの先陣争いに加わっていたJuno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)は、JCAR015の開発が脳浮腫による死亡が数例発生したため打ち切りとなり、後退した。プリコンディショニングに用いた化学療法の用量用法が原因とも言われているが、真相はわからない。FDAは詳細な報告を受けているだろうから他のCAR-Tの承認審査に影響したとしても不思議はないだろう。このJCAR015はCD28、レトロウイルスなのでどちらかと言えばKTE-C19に似ている。

リンク: Kiteのプレスリリース
リンク: LockeらのAACR抄録

【承認審査・委員会】


Cempra、solithromycinの欧州での承認申請を撤回
(2017年3月28日発表)

Cempra(Nasdaq:CEMP)は、CEM-101(solithromycin)の欧州における承認申請を撤回した。米国と同様に承認の見込みが遠退いたため。日本は16年に富山化学が第三相試験を開始したところ。

Optimer Pharmaceuticalsから取得したマクロライド/ケトライド系開発プログラムの成果で、市中細菌性肺炎治療薬として欧米で承認申請されたが、FDAから大規模な肝安全性試験の実施を求められた。ケトライドの第一号であるKetek(telithromycin)も肝毒性が見られ、大規模肝安全性試験でリスクは限定的であることが立証されたが、後に不正報告が発覚した経緯がある。

Cempraはモルガン・スタンレーに事業戦略のオプションについてアドバイスを求めている。欧州の申請手続きを打ち切るのは豊富な手元流動性を維持する意図であり、開発を諦めたわけではなさそうだ。

リンク: Cempraのプレスリリース

【承認】


アトピーの画期的新薬は年37000ドル
(2017年3月28日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィが中重度アトピー性皮膚炎の治療薬として日米欧で承認申請したDupixent(dupilumab)が、まず米国で承認された。ステロイドなどの局所性治療薬に十分反応しない、あるいは適さない患者に用いる。

Th2型免疫反応の惹起・維持に関わるIL-4やIL-13をブロックする抗IL-4受容体アルファサブユニット抗体で、初日は二回、その後は二週間毎に皮注する。二本の第三相試験では全般的奏効率が36~38%となり偽薬群の8~10%を有意に上回った。痒みも改善した。主な有害事象は過敏反応、結膜炎、角膜炎など。好酸球性喘息症用薬としても承認されていることを踏まえてか、喘息症を併発する患者に用いる時も喘息用薬を止めないよう注意している。

WAC(問屋取得コスト)は年37000ドル、正味価格でも3万ドル前後と推測されている。米国の対象患者数は30万人と推定されているので希少疾患用薬ではなく、何十年も使う可能性があることを考えれば驚かされるが、承認と前後してInstitute for Clinical and Economic Researchが公開した評価報告書案によると、年3万ドルでも妥当とのことだ。

リンク: FDAのリリース
リンク: 両社のプレスリリース(PR Newswire)
リンク: Atopic Dermatitis: Draft Evidence Report(ICER)

Tesaro、PARP阻害剤が米国で承認
(2017年3月27日発表)

FDAは、Tesaro(Nasdaq:TSRO)が申請したZejula(niraparib)を審査期限の3ヶ月も前に承認した。難治性白金感受性卵巣癌で白金薬ベースの治療に反応した患者の維持療法に用いる。BRCA変異限定ではないことが感慨深い。12年にMSDからPARP阻害剤MK-4827をインライセンスしたもので、達成報奨金や売上ロイヤルティを払う。

PARPは遺伝子の複製ミスを修復する二つのメカニズムの一つに関わる酵素で、これまでは、もう一つに関わるBRCAに機能喪失変異を持つ患者の癌に有効と考えられていた。Zejulaの第三相試験でも生殖細胞系BRCA変異を持つ患者ではPFS(無進行生存期間)がメジアン21.0ヶ月で偽薬群の5.5ヶ月を上回りハザードレシオ0.26だったが、持たない患者では各9.3ヶ月、3.9ヶ月、0.45と、前者の方が効果が高い。しかし、持たない患者でも統計的に有意であり、5ヶ月延びるなら臨床的にも大きな価値がありそうだ。

BRCA1/2機能喪失変異は卵巣癌や乳癌のリスクが高いことで知られているが、卵巣癌のうち生殖細胞系BRCA変異は10~15%、米国では年2000人程度である模様。それ以外の患者にも承認されたことは商業的な意義も大きい。

特徴的な副作用は、PARP阻害剤は骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病が増加する可能性があり、発生頻度は稀だが注意が必要だ。

さて、生殖細胞系BRCA変異陽性の転移性乳癌を組入れた第三相化学療法対照試験も行われているが、対照群で治験を離脱しPARP阻害剤にスイッチする患者が多く発生し、データの頑強性が損なわれたことが公表された。クロスオーバーを認めることは被験者を集める上で重要な施策だが、このようなリスクが付き物だ。他社の類似薬が承認された場合にも起こりがちである。治験のデザインや実施地域を吟味して再挑戦するのではないか。

PARP阻害剤の第一号はアストラゼネカのLynparza(olaparib)。生殖細胞系または体細胞系BRCA変異を持つ白金薬感受性卵巣癌の維持療法として欧米で承認申請され、欧州では承認されたが、米国では認められず、代わりに生殖細胞系BRCA変異卵巣癌の四次療法として承認された。その後、第三相試験が成功し、米国で改めて生殖細胞系BRCA変異白金感受型卵巣癌の維持療法用薬として承認申請され、受理されたことが先日、公表された。優先審査指定されたので今年第3四半期までに結果が出ることになる。

リンク: FDAのリリース
リンク: Tesaroのプレスリリース(pdfファイル)

ロシュ、多発性硬化症用薬が米国で承認
(2017年3月28日発表)

ロシュのOcrevus(ocrelizumab)が米国で一次進行型と再発型の多発性硬化症の維持療法薬として承認された。患者数の多い再発型はインターフェロンから免疫抑制剤まで様々な薬が承認されているが、一次進行型は殆どの新薬の治験がフェールしており、意義がある。尤も、Rituxan(rituximab)では駄目なのか、という疑問は残る。

ロシュの抗CD20抗体フランチャイズはキメラ抗体のRituxan、ヒト化抗体のOcrevus、フコース欠如ヒト化抗体Gazyva/Gazyvaro(obinutuzumab)が出揃った。このほかにジェネンテックがバイオワのポテリジェント技術を用いてADCC活性を増強した抗CD20抗体を開発していたが、ロシュが完全子会社化した後に開発中止となっている。

OcrevusはRituxanよりマウス由来のアミノ酸が少なく過敏反応リスクが小さい可能性があるため自己免疫疾患に適すると考えられていたが、第三相試験でアジアの施設を中心に深刻な感染症が増加したため、多発性硬化症以外は開発打ち切りとなった。再発型の第三相試験は二本実施され、再発頻度が年率0.15回とRebif(ベータインターフェロン)を投与した群の0.29回を有意に下回った。障害の進行を抑制する効果も見られた。有害事象は点滴箇所反応が多かったが深刻な有害事象は少なかった。

一次進行型では障害進行リスクを偽薬比24%削減した(p=0.0321)。

投与は最初の二回は300mgを二週間置いて、その後は24週毎に600mgを3.5時間以上かけて、点滴静注する。点滴反応を抑制するためにステロイドと抗ヒスタミンなどでプリトリートするのはRituxanと同じ。有害事象で印象的なのは、乳癌が781人中6人で発生、対照群は668人中ゼロなので、リスクがあるのかもしれない。

WAC(問屋取得コスト)は年65000ドル。既存薬の価格はいつの間にか暴騰したらしく、多発性硬化症用薬としては安いほうとのことだ。尤も、Rituxanならもっと安いのではないか。バイオシミラーが発売されたら猶更だ。再発型はRituxanの第二相試験より数字が良いが、偽薬対照試験ではないしこの程度の差なら直接比較試験を行っても有意差は出ないのではないかと思われる。

Rituxanの一次進行型第2/3相試験はフェールしたが、Ocrevusの試験とは主評価項目が異なり、再発頻度のデータは有意ではないもののOcrevusとそれほど変わらない。プリトリートの手間も変わらないので安全性も大差ないのではないか。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース

ファイザー、ゼルヤンツが欧州でやっと承認
(2017年3月27日発表)

ファイザーは、Xeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)がEUで承認されたと発表した。選択的Janus Kinase阻害剤で、疾病装飾的抗リウマチ薬に十分反応しない、または不適な、中重度活性期リウマチ性関節炎の治療に用いる。

米国では12年に、日本でも13年に承認されたが、EUはCHMPが感染症や癌、胃腸穿孔のリスクを懸念したため、承認が遅れた。元々は臓器移植後の拒絶反応予防薬として臨床入りした経緯を持つ強力な免疫抑制剤なので、カルシニューリン阻害剤と同様なリスクがあっても不思議はない。

リンク: ファイザーのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年3月26日

2017年3月26日号


【ニュース・ヘッドライン】



  • ジャズ、DNRIの第三相OSA試験が成功 
  • イーライリリーのCDK4/6阻害剤も第三相成功 
  • ノバルティス、serelaxinの薬効確認再試験はフェール 
  • 抗IL-23p19抗体がEUで承認申請 
  • CHMPが希少疾患用薬などの承認に肯定的意見 
  • Array社、MEK阻害剤の承認申請を撤回、併用で申請へ 
  • メルクの抗PD-L1抗体が米国で承認 
  • ニューロンのパーキンソン病薬が米国でも承認 
  • EMAが一部のジェネリック薬の承認停止を勧告 

  • 【新薬開発】


    ジャズ、DNRIの第三相OSA試験が成功
    (2017年3月20日発表)

    ジャズ・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:JAZZ)は、JZP-110の第三相OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)試験の成功を発表した。ナルコレプシー試験の結果を待って年内に承認申請する予定。

    JZP-110は選択的ドパミン・ノルエピネフィリン再取込阻害剤(DNRI)で、14年にAerial BioPharmaから世界開発生産販売権を取得したもの。第三相試験でOSA患者の眠気や覚醒度を改善する効果を検討したところ、37.5~300mgの用量域で偽薬比有意な改善が見られた由。詳細は6月のAPSSで発表される予定。

    リンク: ジャズのプレスリリース

    イーライリリーのCDK4/6阻害剤も第三相成功
    (2017年3月20日発表)

    イーライリリーはLY2835219(abemaciclib)の第三相乳癌ホルモン療法併用試験が成功したと発表した。第2四半期(4~6月)に第二相試験に基づき承認申請する予定だが、今回の成功を受けて第3四半期に併用を追加申請する考えだ。

    abemaciclibは細胞周期進行に係るCDK4とCDK6を阻害する経口剤で、ファイザーが15年に発売したIbrance(palbociclib)、ノバルティスが今月、米国で承認を取得したKisqali(ribociclib)に次ぐサード・イン・クラス。先行品は三週間連続服用して一週間休むスケジュールだが、abemaciclibは好中球減少症がDLT(投与制限的毒性)にならず、連続服用可能なことが特徴。効果が高い可能性があり、データ発表が待望される。

    リンク: イーライリリーのプレスリリース

    ノバルティス、serelaxinの薬効確認再試験はフェール
    (2017年3月22日発表)

    ノバルティスは、Reasanz(serelaxin)の第三相急性心不全試験がフェールしたと発表した。死亡リスクを削減する効果も、心不全の悪化を抑制する効果も、確認されなかった。最初の第三相と同様であり、治験登録によればもう一本進行中だが、好結果は期待できなくなった。

    serelaxinは、relaxinという血管拡張作用を持つぺプチドホルモンの遺伝子組換え品。第三相試験で呼吸困難を改善したが、効果は小さく、もう一つの主評価項目である中程度以上症状改善成功率はフェールした。死亡リスク削減効果も見られなかった。開発した会社を買収したノバルティスが欧米で承認申請に踏み切ったが、臨床的転帰を改善する効果が小さいことや、解析にインピュテーション(欠落値を推定値で補完)が多用されたこと、同時に施行された標準療法に群間の偏りがあることなどから、承認されなかった。

    学会で大々的に発表され好評を得た臨床試験がこのような結果になったのは残念だが、学会発表や論文に記されていることはごく一部なので第三者が細部に潜む悪魔を発見することは困難である。一本目の試験はノバルティスが子会社化する前に開始されており、ベンチャー企業が陥りがちな頑強性を軽視した治験デザインになってしまった。

    リンク: ノバルティスのプレスリリース

    【承認申請】


    抗IL-23p19抗体がEUで承認申請
    (2017年3月24日発表)

    スペインのAlmirallとインドのSun Pharmaは、tildrakizumabをEUで承認申請し受理されたと発表した。Sunが14年にMSDから世界開発販売権を取得した抗IL-23p19抗体で、中重度プラク乾癬の治療に用いる。第三相試験では12週間でPASI75奏効率が61~64%となり偽薬やetanercept(Enbrel)を有意に上回った。

    乾癬では様々なインターロイキンを標的とする抗体医薬が輩出している。ジョンソン・エンド・ジョンソンの抗IL-12/23p40抗体Stelara(ustekinumab)、ノバルティスの抗IL-17A抗体Cosentyx(secukinumab)などである。

    Stelaraはp40サブユニットに結合するためIL-23だけでなくIL-12もブロックしてしまうが、p19ユニットならIL-23だけなのでIL-12阻害による副作用を回避できる可能性があり、開発が活発化している。ジョンソン・エンド・ジョンソンが一足先にCNTO 1959(guselkumab)を昨年、欧米で承認申請した。ベーリンガー・インゲルハイムもアッヴィと提携してBI 655066(risankizumab)の第三相試験を実施中。

    リンク: 両社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    CHMPが希少疾患用薬などの承認に肯定的意見
    (2017年3月24日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、3月の会議で以下の新薬と適応拡大の承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAのプレスリリース

    今月は希少疾患用薬が多い。まず、ウイーンのアペイロン・バイオロジクス社が承認申請したApeiron(dinutuximab beta)。例外的環境条項に基づいて、高リスク神経芽腫の12歳以上の患者に用いることが支持された。神経芽腫細胞などで発現するGD2抗原を標的とするキメラ抗体。日本では14年に第一相が開始された模様だ。

    次に、ミューニッヒの製薬会社であるbene-Arzneimittelが申請したElmiron(pentosan polysulfate sodium)。glomerulation(五月雨様出血)やHunner潰瘍を伴う膀胱痛症候群の治療に用いる。

    ポリ硫酸ペントサンナトリウムは同社の創業者であるBenend博士が1947年に合成した物質で、日本では旭化成ファーマが変形性関節症試験を行うなど、様々な用途がある模様。膀胱痛症候群(間質性膀胱炎)における作用機序は損傷した膀胱粘膜のグリコサミノグリカン層に結合し修復をもたらすとのこと。

    Axumin(fluciclovine (18F))はMRI造影剤。膀胱癌でアップレギュレートされているアミノ酸トランスポータによって細胞内に取り込まれる性質を持っており、治癒的切除術を受けた患者のPSA値が上昇した時の、再発の画像診断に用いる。

    GEヘルスケアから英国のBlue Earth Diagnostics社がライセンスしたもの。14年にウェルカム・トラスト系のファンドなどが出資して設立した会社で、社名はウェルカム社(後にグラクソが買収)の創立者が少年時代を過ごした米国ミネソタ州の地区名に因んでいる由だ。

    リンク: Blue Earth Diagnosticsのプレスリリース

    ノボ ノルディスクのRefixia(nonacog beta pegol)はB型血友病の出血治療・予防薬。第IX因子に糖ポリエチレングリコールを結合して半減期を5倍に伸ばしたもので、出血リスクが高い患者のルーチン予防に用いる場合、週一回投与で足りる。

    リンク: ノボ ノルディスクのプレスリリース

    ファイザーのTrumenbaはB群髄膜炎菌ワクチン。B群は様々な株があるが、TrumenbaはサブファミリーAとBのfHbp(H因子結合蛋白)を抗原としている。B群髄膜炎菌による侵襲性髄膜炎を予防する目的で10歳以上に接種する。米国では14年に承認。

    リンク: ファイザーのプレスリリース

    適応拡大では、MSDとBMSの抗PD-1抗体が夫々、異なった用途で支持された。まず、MSDのKeytruda(pembrolizumab)は、再発難治性古典的ホジキンリンパ腫の適応拡大。ASCT(自家幹細胞移植)とbrentuximab vedotin(Adcetris)が無効になった患者に、200mgを3週間に一回、投与する。

    リンク: MSDのプレスリリース

    BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)は頭頸部扁平上皮腫で白金ベースのレジメンによる治療中・治療後に進行した患者に適応拡大。3mg/kgを2週間に一回投与する。第三相試験では延命効果が医師が選んだErbitux(cetuximab)などの薬を投与した群を有意に上回った。

    リンク: BMSのプレスリリース

    この二剤は用途開発が活発なので、今回の肯定的意見も含めてEUでの承認用途を整理すると、悪性黒色腫はモノセラピーに関してはどちらも承認、Yervoy(ipilimumab)併用はOpdivoだけだがOpdivo単剤と比べて上乗せ効果が期待できるのはPD-L1発現度が低い癌のみ。非小細胞性肺癌はKeytrudaはPD-L1陽性癌の二次治療と強陽性癌なら一次治療も可、Opdivoは陽性陰性を問わないが二次治療のみで、どちらも、EGFR活性化変異型はEGFR阻害剤、ALK変異型はALK阻害剤を先に使う。

    古典的非ホジキン型リンパ腫の適応内容は同じ、再発腎細胞腫はOpdivoのみ。頭頸部扁平上皮腫はOpdivoが先行したがKeytrudaも米国では承認されているので時間の問題だろう。

    最後に、Bial-Portela社の抗癲癇薬、Zebinix(eslicarbazepine acetate)は新患に単剤投与する用法追加が支持された。

    抗癲癇薬は有効な薬が既に数多く存在するため、偽薬だけを投与する群が設定されるモノセラピー試験を新患を組入れることは、かっては、忌避されていた。製薬会社が難治性の患者に追加投与するアジャンクト試験を行って承認を取れば、専門医はオフレーベルのままでも新患モノセラピー投与するというのが暗黙の合意であった。しかし、近年はキチンと承認を取るようになった。

    製薬会社がCHMPの薬効や安全性、生産体制などに対する懸念を解消できず申請撤回に至ったのは、まず、CTI BioPharma(Nasdaq:CTIC)のEnpaxiq(pacritinib)。臨床試験で骨髄線維症の脾臓肥大症状を改善する効果などが示されたが、CHMPは、他のJAK阻害剤と比べて効果が小さく、血小板減少リスクを持ち、臨床試験で出血や心臓疾患による死亡が対照群(医師が最善と考える治療を施行)より多かったため、承認に否定的だった。

    PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)はTranslarna(ataluren)をナンセンス型嚢胞性線維症に用いる適応拡大申請を行っていたが、撤回した。薬効確認試験がフェールしたため。EUによると、Translarnaはアミノグリコシド系抗生剤やバンコマイシンの腎臓における効果を減弱させるため、嚢胞性線維症のように感染症を合併しやすい疾患に用いると腎臓有害事象が増加する懸念がある。

    Array社、MEK阻害剤の承認申請を撤回、併用で申請へ
    (2017年3月19日発表)

    Array BioPharma(Nasdaq: ARRY)はMEK阻害剤のMEK162(binimetinib)をNRAS変異陽性悪性黒色腫用薬として米国で承認申請していたが、撤回した。FDAが効果不十分と判定したため。第三相試験ではPFS(無進行生存期間)のdacarbazine対比ハザードレシオが0.62となり成功したが、メジアン値は2.8ヶ月対1.5ヶ月で差が小さく、全生存期間では有意差がなかった。

    MEK阻害剤はノバルティスやロシュがBRAF阻害剤併用試験を成功させている。ArrayもBRAF-V600変異型悪性黒色腫の第三相LGX818(encorafenib)併用試験を実施中で、LGX818の二種類の用量のうち450mg(一日一回投与)を併用した群は主評価項目のPFSがメジアン14.9ヶ月とvemurafenib(ロシュのBRAF阻害剤、Zelboraf)単剤投与群の7.3ヶ月を上回りハザードレシオ0.54であったことが既に発表されている。

    但し、LGX818単剤投与群との比較は有意差がなかった模様。ArrayはLGX818のもう一つの用量を投与した群の結果を待って承認申請する考え。

    第三相試験で一つの群だけ開票が遅れるのは盲検が毀損しかねない奇妙な話だ。安全性懸念が生じて低用量群を追加したのではないか。だとしたら、治験の全体像が明らかになるまで結論を留保したほうがよさそうだ。

    この二剤は当初のアウトライセンス先であるノバルティスがGSKの腫瘍学事業を買収してMEK阻害剤やBRAF阻害剤を入手したため、反トラスト規制をクリアするために、ライセンス返還となった。その後、欧州や南米、アジアの権利をPierre Fabreに供与している。

    リンク: Array社のプレスリリース

    【承認】


    メルクの抗PD-L1抗体が米国で承認
    (2017年3月23日発表)

    FDAは、Bavencio(avelumab)を転移性メルケル細胞腫用薬として承認した。メルケル細胞腫は進行の早い皮膚癌で、米国では年2500人が発症する。Bavencioはドイツのメルクがファイザーと共同開発した抗PD-L1完全ヒト化抗体で、第二相試験では全般的反応率が33%(完全反応率11%)、反応例の86%は6ヶ月以上持続した。加速承認なので別途、臨床試験を行って臨床的効用を確認する必要がある。

    PD-1/PD-L1をブロックする抗体医薬は特許の壁が低いようで応用分野が多いため開発競争が活発だ。PD-L1を標的とするものではロシュのTecentriq(atezolizumab)が昨年、尿路上皮細胞腫と非小細胞性肺癌の二次治療薬として承認されたのに次ぐセカンド・イン・クラスで、アストラゼネカのMEDI4736(durvalumab)も順調なら今年6月までに尿路上皮細胞腫で承認されるだろうから、1年の間に3剤が相次いで承認されることになりそうだ。

    メルケル細胞腫は用途としてはニッチだが、既存薬が承認されていない疾患なら迅速に承認を得ることが可能だ。適応拡大試験が成功し学会発表すれば、販売されている薬なら未承認でも普及が始まる。後発であることに変わりはないが、ビハインドは少しでも小さいほうが良い。

    リンク: FDAのリリース
    リンク: メルクとファイザーのプレスリリース

    ニューロンのパーキンソン病薬が米国でも承認
    (2017年3月21日発表)

    FDAは、イタリアのニューロン・ファーマスーティカルズ(SIX:NWRN)のXadago(safinamide)をパーキンソン病用薬として承認した。MAO-B阻害剤で、レボドパなどに十分反応しない患者のオフタイムを減らすために追加投与する。副作用はジスキネジア、傾眠、眩暈、起立性低血圧など。

    EUでは15年に承認されたが米国は申請手続きが書類目次や添付文書、利益相反情報などに関する不備という余り聞かない理由で何度も遅れ、結局、承認が2年遅れとなった。レーベルで特徴的なのは禁忌。重度肝障害に加えて、併用禁忌となるのが他のMAO阻害剤やオピオイド、SNRIなどの抗鬱剤、そしてOTC薬の成分でもあるデキストロメトルファン、ハーブの成分であるセイヨウオトギリソウと多彩。血圧上昇やセロトニン症候群のリスクがある模様だ。

    日本では15年にMeiji Seikaファルマが第2/3相試験を開始した。

    リンク: FDAのリリース
    リンク: ニューロンのプレスリリース(BusinessWire)

    【医薬品の安全性】


    EMAが一部のジェネリック薬の承認停止を勧告
    (2017年3月24日発表)

    EMAは、加盟国で承認されたジェネリック薬の一部について、承認停止を勧告した。インドのCRO会社であるMicro Therapeutic Research Labsが行った生物学的同等性試験の信頼性に疑問が生じたため。対象品目は、国毎にリストアップされているので重複があるかもしれないが、22頁、数百品目に及んでおり、製薬会社名も大手が数多く含まれていることが目を引く。

    きっかけは、オーストリアとオランダの当局が同社の二拠点を査察した時にGCP(臨床試験基準)違反が発覚したこと。データの不実表示や資料作成やデータ取り扱いの欠陥が判明した。これらの施設で12年6月から16年6月までに実施された試験のデータは受け入れられないと判断した。尚、効果不足や毒性を疑う根拠があるわけではないことをEMAは明記している。

    リンク: EMAのリリース
    リンク: EMAが販売停止勧告した薬のリスト(pdfファイル)
    リンク: EMAが販売継続可能と判定した薬のリスト(pdfファイル)




    今週は以上です。

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    2017年3月19日

    2017年3月19日号


    【ニュース・ヘッドライン】

    • ACC:抗PCSK9抗体の心血管アウトカム試験が成功 
    • アストラゼネカ、PARP阻害剤の適応拡大試験が成功 
    • Catalyst社、筋無力症の第三相へ 
    • アストラゼネカ、ZS-9は再び審査完了 
    • ノバルティスのCDK阻害剤が米国で承認 
    • キイトルーダもホジキン型リンパ腫に承認 
    • FDA、Viberziの禁忌を追加 


    【新薬開発】


    ACC:抗PCSK9抗体の心血管アウトカム試験が成功
    (2017年3月17日発表)

    アムジェンの抗PCSK9完全ヒト化抗体、Repatha(和名レパーサ)の心血管リスク削減効果を検討したアウトカム試験の結果がACC米国心臓学会とNew England Journal of Medicine誌で発表された。ハザードレシオは0.85と、リスクが偽薬比有意に低下したが、NNT(number needed to treat)は約120人年で費用対効果の点では物足りないものだった。

    抗PCSK9抗体はproprotein convertase subtilisin/kexin type 9が肝細胞のLDL受容体に結合して零落・リソソームで分解させるのを阻害する。効果は強力でLDL-Cを50~60%下げることができる。二週間に一回、皮注する(Repathaは四週間に一回皮注用の製剤もある)。

    Repathaと、リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発販売しているPraluent(alirocumab、和名プラルエント)が15年に欧米で、16年には日本でも、承認された。ファイザーもPF-04950615/RN316(bococizumab)で第三相試験を行ったが、開発中止になった(後述)。

    また、RNA介入技術を用いてPCSK9の合成を阻害するALN-PCSsc(inclisiran)もアルナイラム・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALNY)がメディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)と共同開発している。これも皮注用薬だが、RNA介入の一般的なイメージとは異なり作用が長期間持続するため、2~6ヶ月毎の投与で足りる可能性がある。

    今回のFOURIER試験は、心筋梗塞などの心血管疾患歴を持ち中度以上の力価のスタチンを服用しているLDL-Cが70mg/dL以上の患者約27000人を偽薬群とRepatha群に無作為化割付けして、メジアン2.2年間フォローした。主評価項目は心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症入院、冠血行再建術の複合評価項目。一般的な指標であるMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)は主要副次的評価項目とされた。

    結果は、主評価項目のハザードレシオが0.85、95%信頼区間0.79~0.92、p<0.001。カプランメイヤー推定による2年間の発生率は偽薬群10.7%、Repatha群9.1%だった。MACEは各0.80(0.73~0.88)、p<0.001、6.8%対5.5%となった。心筋梗塞、冠血行再建術、脳卒中がそれぞれ偽薬群より2割少なく、心血管死や不安定狭心症入院は各群大差なかった。

    Repatha群のLDL-C値はベースライン時点の92mg/dLから30mg/dLに67%低下した。事前の予想以上だが、心血管リスク削減率は予想以下だった。

    安全性面では深刻な有害事象、スタチンで見られる糖尿病や筋障害、白内障のリスク、毒性試験で浮上した懸念材料である神経認知有害事象、高分子薬のチェックポイントであるアレルギー反応の何れも、両群大差なかった。注射箇所反応は2.1%で発生、偽薬群の1.6%を少し上回った。良好な内容だが、スタチンのアウトカム試験の5年間追跡と異なり本試験は2年強なので、今後さらに追跡する必要があるだろう。

    この試験は三つの点で意義がある。第一に、抗PCSK9抗体の心血管リスク削減効果を立証した。フィブレートのように期待外れな薬剤もあったので、確認することは重要だ。第二に、30~90mg/dLという超低域でもLDL-Cを引き下げれば心血管リスクを削減でき、副作用面では大きな問題はないことを明確にした。

    第三に、但し、NNTは決して小さくはなく、Repathaがコレステロール治療薬としては著しく高価であることを考えると、費用対効果面で疑問が残った。日本の薬価ベースで計算すると、MACEを一例減らすために必要な薬剤費は1億円だ。

    さて、上記のようにファイザーは昨年11月にbococizumabの開発中止を発表したが、ACCとNEJMで理由が明らかにされた。中和抗体リスクである。薬剤に対する抗体が48%の患者で発生、中和抗体発生率は29%で、発生した患者ではLDL-C低下作用が減衰した。第三相の心血管アウトカム試験二本のうち一本しか成功しなかったのは、中和抗体によるLDL-C治療の失敗が原因である可能性がある。

    Repathaは抗体発生率0.3%、中和抗体はゼロだった。NEJMに掲載されたRothらのCorrespondenceによるとPraluentは各5%と1.3%だった。検査方法が違う模様なので比較は難しいが、bococizumabはヒト化抗体でマウス由来の塩基配列が少し残っていること、PraluentはIgG2ではなくIgG1型抗体であることを考えれば、リスクが違っていても不思議はない。

    bococizumabの開発中止は、この薬剤に特有のリスクなのか、クラスイフェクトの可能性があるのかが重要な関心事だった。今回、三剤の開発に携わる製薬会社と研究者が夫々の知見を持ち寄って同じ学会、医学誌で発表したことは賞賛すべきである。医学は人類共通の財産だ。

    リンク: アムジェンのプレスリリース
    リンク: Sabatineらの治験論文(NEJM誌)
    リンク: Ridkerらのbococizumabに関する治験論文(NEJM誌)

    アストラゼネカ、PARP阻害剤の適応拡大試験が成功
    (2017年3月14日発表)

    アストラゼネカは昨年10月にLynparza(olaparib)の適応拡大試験成功を発表したが、具体的な内容がSGO(婦人科腫瘍学会)年次総会で明らかにされた。他社の開発品と見比べても良い結果だ。

    LynparzaはDNA修復に係るポリ(ADP-リボース)合成酵素(PARP)を阻害する経口剤で、14年にBRCA変異型卵巣癌向けに承認されたが、EUがメーカーの申請通り、白金薬に反応した患者の維持療法として承認したのに対して、米国は、臨床試験のエビデンスが明確でないせいか、それとも血液癌による死亡例が散見されたせいか、サルベージ用途しか認めなかった。

    今回のSOLO2試験は、生殖細胞性BRCA変異を持つ卵巣癌で白金ベースの二次治療に反応した患者の維持療法としての効果を偽薬と比較した。結果は、担当医評価PFS(無進行生存期間)がメジアン19.1ヶ月と偽薬群の5.5ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.30、p<0.0001だった。第三者が盲検で査読したPFSも各30.2ヶ月、5.5ヶ月、0.25、p<0.0001。G3以上の有害事象の発生率は36.9%対18.2%で、悪心嘔吐や疲労、骨髄抑制が増加した。

    PARP阻害剤の開発はヒートアップしており、Clovis Oncologyはファイザーからrucaparibを導入、昨年12月にBRCA変異陽性卵巣癌の三次治療薬としてFDAの承認を取得した。Tesaro(Nasdaq:TSRO)はMSDからniraparibを導入して難治性白金感受性卵巣癌用薬としてFDAに承認申請した。Lynparzaのデータは、異なった試験のデータなので直接比較することはできないが、niraparibよりかなりよく見える。

    リンク: アストラゼネカのプレスリリース

    【承認申請】


    Catalyst社、筋無力症の第三相へ
    (2017年3月15日発表)

    Catalyst Pharmaceuticals(Nasdaq:CPRX)は、amifampridine phosphateの第二相重症筋無力症研究者主導試験の結果を発表した。ヘッドラインは良さそうだが小規模な試験なので何とも言えない。詳細は学会発表の予定。第三相ステージアップを決めたので、その結果を待ってから判断しても遅くないだろう。

    amifampridine phosphateはカリウムチャネルブロッカーで、09年にEUでランバート・イートン筋無力症候群用薬として承認されたが、文献データに基づく、例外的環境規定による承認なので、エビデンスは明確ではない。米国はバイオマリンから権利を取得したCatalystが15年に承認申請したが受理されなかった。

    今回の試験は、MuSK-MG(K筋特異的受容体型チロシンキナーゼに対する抗体を保有する重症筋無力症)の患者7名を組入れたクロスオーバー試験で、4週間のランイン期間に滴定し、1週間ずつ3回のクロスオーバーを行って、QMGスコアとMG-ADL総合スコアの変化を偽薬投与期間と比較した。何れもp値が0.001を下回っており、短期間で大きな効果が出たことになる。

    Catalystは米国で多施設ピボタル試験を行う予定。

    重症筋無力症はアセチルコリン受容体に対する抗体を保有している患者が多く、抗MuSK抗体保有は全体の数パーセント、米国では4500人と推測されている。

    リンク: Catalystのプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    アストラゼネカ、ZS-9は再び審査完了
    (2017年3月17日発表)

    アストラゼネカはZS-9(sodium zirconium cyclosilicate)を高カリウム血症治療薬として承認申請中で、EUでは2月にCHMPの肯定的意見を得たが、米国は難航している。昨年5月に審査完了通知を受領、その後、問題点に回答したが、再び審査完了通知を受領した。ZS Pharmaを27億ドルで買収して入手したコンパウンドだけに遅延は痛い。

    リンク: アストラゼネカのプレスリリース

    【承認】


    ノバルティスのCDK阻害剤が米国で承認
    (2017年3月13日発表)

    ノバルティスはFDAがKisqali(ribociclib)をホルモン受容体陽性her2陰性閉経後乳癌の一次治療薬として承認したと発表した。アロマターゼ阻害剤と併用で、一日一回、21日連続で経口投与し7日間休むスケジュール。

    第三相試験で同社のFemara(letrozole)と併用したところ、PFS(無進行生存期間)がFemaraだけの群より有意に改善した(ハザードレシオ0.556、p=0.000003、メジアンは未達でFemara群は14.7ヶ月)。WACは21日分が10950ドルである模様。

    05年にAstex Pharmaceuticals(13年に大塚製薬が子会社化)と開始した細胞周期制御に関する共同研究の成果で、細胞周期進行に関わるCDK4/6を高度選択的に阻害する。ファイザーのIbrance(palbociclib)に次ぐセカンドインクラス。

    リンク: ノバルティスのプレスリリース

    キイトルーダもホジキン型リンパ腫に承認
    (2017年3月14日発表)

    MSDはFDAがKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を難治性古典的ホジキン型リンパ腫の四次治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。ホジキン型リンパ腫のうち古典的は9割超を占める。200mgを3週間毎に投与したKEYNOTE-087試験では、ORR(総合反応率)が69%、完全寛解率は22%、反応患者のメジアン反応期間は11ヶ月だった。

    BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も日米欧で承認されており、先にOpdivoを使った患者が四次治療でKeytrudaを使う可能性は低いのではないか。

    Keytrudaは高マイクロサテライト不安定性腫瘍の適応拡大も審査中だが、追加データ提出に伴い審査期限が6月9日に3ヶ月延期されたことも発表された。

    リンク: MSDのプレスリリース(古典的ホジキン型リンパ腫承認)
    リンク: MSDのプレスリリース(高マイクロサテライト不安定性腫瘍の審査期間延長)

    【医薬品の安全性】


    FDA、Viberziの禁忌を追加
    (2017年3月15日発表)

    FDAは、アラガン(NYSE:AGN)の下痢型過敏性腸症候群治療薬、Viberzi(eluxadoline)について、膵炎のリスクを改めて警告するとともに胆嚢を持たない患者は禁忌とすることを発表した。致死的あるいは入院に至る深刻な膵炎のリスクが高いため。既知のリスクだが、投与量を減らすだけでは足りないことが判明した。

    15年5月の米国承認から17年2月までの期間に、FDAの有害事象報告システム(FAERS)に120例の深刻な膵炎・死亡例が報告された。76人が入院し、二人が死亡した。120例のうち6例はオディ括約筋の痙攣も、16例は腹痛も、併発していた。

    胆嚢の状況が報告されている68例のうち、56例は胆嚢を持たない患者だった。うち44例は現在承認されている用量(75mg一日二回、標準用量は100mg一日二回)を用いていた。アルコールもリスク要因だが、胆嚢のない症例ではアルコール乱用ではないことが確認された症例も多い。一回目の服用で死亡した患者もいるようだ。

    15年5月から16年7月までに米国で処方された患者は34000人。

    Viberziはミューとカッパ型のオピオイド受容体にアゴニストとして、デルタ型にはアンタゴニストとして作用する。胃腸運動性を調節し、デルタ受容体を阻害することでミュー受容体作動による便秘副作用を中和する。麻薬取締局が管理物質指定(スケジュールIV)。ジョンソン・エンド・ジョンソンからライセンスして開発したFuriexをForestが買収、そのForestをActavisが買収、そのActavisがアラガンと合併という経緯。

    リンク: FDAの安全性情報





    今週は以上です。

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    2017年3月12日

    2017年3月12日号


    【ニュース・ヘッドライン】

    • 高リスクCLL用薬の第三相が成功 
    • PTCが『抗議による承認申請』 
    • ファイザー、SGLT2阻害剤を承認申請 
    • アレクシオン、ソリーアリスを筋無力症に適応拡大申請 
    • リオナを米国でも保存期に適応拡大申請 
    • PRACがガドリニウム造影剤の承認見直しを勧告 



    【新薬開発】


    高リスクCLL用薬の第三相が成功
    (2017年3月6日発表)

    TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)はTG-1101(ublituximab)の第三相試験成功を発表した。慢性リンパ性白血病(CLL)の二次治療を受ける高リスク患者(17p欠損、11p欠損、またはp53変異)を、Imbruvica(ibrutinib)単剤投与群とTG-1101併用群に割付けて総合反応率(第三者査読)を比較したところ、各群47%と80%となり、併用群が有意に上回った。17年下期に加速承認を申請する方向でFDAと相談する考え。

    TG-1101はCD20を標的とするモノクローナル抗体で、糖鎖加工技術を用いてADCC(抗体依存性細胞毒性)活性を向上したもの。ロシュのGazyva(obinutuzumab)との違いは、IgG1型のキメラ抗体であること(GazyvaはIgG2型ヒト化抗体)と、結合するエピトープ。

    LFB Biotechnologiesからライセンスしたもの。フランスとベルギーの権利はLFBが保留、韓国など東南アジアの権利は韓国の日東製薬が保有している。

    リンク: TG社のプレスリリース

    【承認申請】


    PTCが『抗議による承認申請』
    (2017年3月6日発表)

    PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)は、PTC124(ataluren)の『抗議による新薬承認申請(NDA over protest)』を行いFDAに受理されたと発表した。審査期限は10月24日。

    PTC124はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療に用いる経口剤。DMDの多くはジストロフィンの遺伝子に変異があり正常に機能しない。様々な変異のうち、塩基配列の途中に翻訳中止を意味するPremature Termination Codons(PTC)が出来てしまったナンセンス変異型が適応になる。米国の対象患者数は2000人、世界で7000人と推定されている。

    第三相試験は6分歩行テストを主評価項目としたが48週で偽薬比15メートルしか改善せず、後期第二相試験に続いてフェールした。16年にローリング承認申請を完了したが、FDAに受理されず、不服申し立てしたが却下された。

    EUはCHMPが一旦は否定的意見を出したが再審査後に条件付き承認となった。その後、第三相試験がフェールしたため承認の更新が危ぶまれたが、18ヶ月間の偽薬対照試験を行う条件で更新に成功した。

    米国では昨年、Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)が特定の遺伝子変異を持つDMDの治療薬として承認された。治験では6分歩行テストが改善しなかったため審査担当者と部門長は承認に否定的だったが、上層部の鶴の一声で承認された。PTCも勇気付けられたことだろう。

    リンク: PTCのプレスリリース

    ファイザー、SGLT2阻害剤を承認申請
    (2017年3月6日発表)

    ファイザーは、SGLT2阻害剤のPF-04971729(ertugliflozin)及びmetformin配合剤、sitagliptin配合剤の三剤を二型糖尿病治療薬として欧米で承認申請し、受理されたと発表した。米国の審査期限は12月。二型糖尿病薬は開発販売競争が激しいため製薬会社は撤退したり他社と協業したリして費用負担を緩和している。ファイザーはPF-04971729の開発販売でMSDと提携し、費用や利益を折半する。但し日本は提携対象外。

    リンク: ファイザーのプレスリリース

    アレクシオン、ソリーアリスを筋無力症に適応拡大申請
    (2017年3月8日発表)

    アレクシオン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、Soliris(eculizumab、和名ソリーアリス)を全身性重症筋無力症の治療に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたと発表した。審査期限は10月23日。アセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体を持つ患者に用いる。

    Solirisは補体系のC5を標的とするヒト化抗体で、発作性夜間血色素尿症や非定型的溶血性尿毒症症候群の治療薬として承認されている。全身性重症筋無力症はしばしば抗AChR抗体を持っており、神経筋接合部のAChRに結合して補体系を活性化、破壊させる。このため、補体系を阻害するSolirisが有効な可能性がある。難治性患者を組入れた第三相試験はフェールしたが、難病なので承認のハードルが下がる可能性がある。

    リンク: アレクシオンのプレスリリース

    リオナを米国でも保存期に適応拡大申請
    (2017年3月8日発表)

    Keryx Biopharmaceuticals(Nasdaq:KERX)は、Auryxia(ferric citrate、和名リオナ)を非透析期慢性腎疾患の鉄欠乏性貧血に用いる適応拡大申請をFDAに行い受理されたと発表した。審査期限は11月6日。承認されれば経口剤では初。

    Auryxiaは経口鉄で透析期の慢性腎疾患鉄欠乏性貧血の治療薬として承認されている。台湾のPanion社からライセンスしたもので、日本はKeryxからサブライセンスした鳥居薬品/日本たばこが一足先に透析期・保存期ともに承認を取得し、14年に発売した。

    リンク: Keryxのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    PRACがガドリニウム造影剤の承認見直しを勧告
    (2017年3月10日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAで市販後監視を担うPRAC(ファーマコビジランス・リスク・アセスメント委員会)は、線形ガドリニウム造影剤に関して、販売承認停止を含む規制見直しを勧告した。次のステップは、医薬品科学的評価委員会であるCHMPが検討し最終判断することになる。一部の製品・用途については販売を容認する見込みだ。

    ガドリニウム造影剤は稀に腎臓に蓄積して腎性全身性線維症を誘発するリスクが知られているが、脳にも蓄積するリスクがあることが判明。FDAも15年に注意喚起を行っているが、悪影響は確認されていないことから、承認見直しまでは打ち出していない。一方、PRACは、長期的な影響が十分に解明されていないことや他の組織に蓄積すると腎性全身性線維症や皮膚プラクの副作用が発生することから、予防的措置として勧告した。

    マクロ環錯体より線形錯体のほうがガドリニウムが遊離・蓄積しやすいと考えられており、PRACの見直し勧告も静注用線形ガドリニウム薬品であるgadobenic acid、gadodiamide(Omniscan)、gadopentetic acid(Primovist/Eovist)、そしてgadoversetamide(OptiMARK)が対象になっている。

    バイエルのPrimovist/Eovistを肝臓検査に用いる用途は、代替的な選択肢が限られていることから、承認継続される見込み。関節注射用ガドベンテト酸も、用量が少ないことから、今回の規制強化の対象外。このほかにも、製薬会社が十分なエビデンスや論拠を提示すれば、再検討の余地が残っている様子だ。

    リンク: EMAのリリース
    リンク: ガドリニウム造影剤の蓄積リスクに関するFDAのリリース(15年7月27日付)




    今週は以上です。

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    2017年3月5日

    2017年3月5日号


    【ニュース・ヘッドライン】

    • アムジェン、カイプロリスが全生存でもベルケイドに勝つ 
    • Kite PharmaのCAR-Tは反応率41% 
    • Juno、CAR-Tの一つを開発中止 
    • La Jolla、合成ヒトAT2の第三相が成功 
    • セルジーン、IDH2阻害剤をFDAに承認申請 
    • テバ、遅発性ジスキネジア治療薬を米国で承認申請 
    • 米国で夜間多尿用薬が承認 
    • 米国でカルチノイド症候群の下痢治療薬が承認 
    • ミティキュアダニ舌下錠が米国でも承認 



    【新薬開発】


    アムジェン、カイプロリスが全生存でもベルケイドに勝つ
    (2017年3月3日発表)

    アムジェンは、多発骨髄腫の二次治療における直接比較試験、ENDEAVORの全生存期間の解析結果をIMW(国際骨髄腫ワークショップ)で発表した。Kyprolis(carfilzomib、和名カイプロリス)は武田薬品/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib、和名ベルケイド)を有意に上回った。この二剤のシェア動向に与える影響は明確ではないが、プラスにはなるだろう。最近の新薬に対抗する上でも役立つだろう。

    ENDEAVORは、Kyprolisとdexamethasoneを併用するKdレジメンとVelcade・dexamethasoneのVdレジメンを比較した第三相試験。主評価項目であるPFS(無進行生存期間)は15年に中間解析で成功した。Kd群のメジアンは18.7ヶ月、Vd群は9.4ヶ月、ハザードレシオ0.53、95%信頼区間0.44~0.65だった。

    G3以上の有害事象でKd群の発生率が高かったのは、高血圧が各群9%と3%、心不全4.7%と1.8%、急性腎不全4.0%と2.6%。G2以上の神経症は6%と32%で過去の試験と同様にVelcadeより低かった。

    IMWで発表された全生存データは、メジアン値が47.6ヶ月と40.0ヶ月、ハザードレシオは0.79、95%信頼区間0.65~0.96、p=0.01。被験者の半分は一次治療でVelcadeを用いていたが、このサブグループのハザードレシオは0.84、未経験者では0.75だった。

    一次治療で用いた薬をもう一度使うよりは違う薬、できれば異なった作用機序の薬を使うほうが有効だろう。ENDEAVOR試験のVelcade経験者のデータは、多発骨髄腫用薬の選択肢が増えた今日では、あまりインプリケーションがないのではないか。同じ作用機序のKyprolisを使うのと新作用機序の薬のどちらが適当か、エビデンスが欲しいところだ。

    未経験者のデータは二次治療におけるKyprolisの優位性を示唆したが、一次治療での雌雄は決していない。melphalan及びprednisoneと併用する効用を比較したCLARION試験では有意差は出なかった。最近流行りのRevlimid・dexamethasoneとプロテアソーム阻害剤を三剤併用するレジメンではどちらが良いか、忍容性はボトルネックにならないか、も検討課題だ。

    リンク: アムジェンのプレスリリース

    Kite PharmaのCAR-Tは反応率41%
    (2017年2月28日発表)

    Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は、KTE-C19(axicabtagene ciloleucel)のZUMA-1試験の解析結果を発表した。化学療法難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL、n=77)のコフォートではORR(客観的反応率)が82%、完全反応率は49%、転換濾胞性リンパ腫(TFL)と原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)のコフォート(n=24)では各83%と71%で、合計では各82%と54%となった。

    これらのデータは反応の持続性は考慮していないのだろう。6ヶ月時点のORRと完全反応率はDLBCLでは36%と31%、TFL/PMBCLでは54%と50%、合計で41%と36%となっている。DLBCLはずいぶん低下するがそれでも良い数値であることに変わりはない。

    G3以上の有害事象では、CAR-Tの特徴的な副作用であるサイトカイン放出症候群の発生率が13%、神経学的イベントが28%。治療時発現有害事象による死亡は3例で、血球貪食性リンパ組織球増多症とサイトカイン放出症候群発症患者の心停止、肺塞栓。

    既にFDAにローリング承認申請を開始しており、今月中に今回のデータを提出して完了する予定。

    KTE-C19はB細胞表面抗原であるCD19に結合する抗体の短鎖フラグメントと膜貫通ドメイン、そしてT細胞に活性化刺激を送るCD3ゼータとCD28で構成される。患者の血液細胞を採取してから加工・培養された薬剤が医療施設に届くまでの平均リードタイムは17日間、生産成功率は99%とされる。

    日本での製造開発販売権は第一三共が取得した。

    リンク: Kiteのプレスリリース

    Juno、CAR-Tの一つを開発中止
    (2017年3月1日発表)

    Juno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)は、2016年12月期の決算発表と合わせてパイプライン・アップデートを行い、JCAR015の開発中止決定を明らかにした。

    JCAR015は、上記のKite Pharma(Nasdaq:KITE)のKTE-C19や、ノバルティスがペンシルバニア大学からインライセンスし年内にB細胞性非ホジキン型リンパ腫及びB細胞性急性リンパ性白血病で承認申請予定のCTL019と同じ、B細胞の表面分子であるCD19を標的とするCAR-T療法。ファースト・イン・クラスの名誉と富を目指して開発競争は激烈だ。

    Junoはセルジーン(Nasdaq:CELG)と開発販売提携を結んで2017年中の承認取得を目指してきたが、急性リンパ性白血病の第二相で脳浮腫による死亡が5例発生、FDAがクリニカルホールド(治験許可の停止)を命じたため、出遅れてしまった。

    なぜ発生したのか?CAR-Tの組成、プリコンディショニングで用いた薬の種類や用量、など色々考えられるようだ。Junoはプロトコルを見直しプロセスを改善すれば対処可能と信じながらも、JCAR017などの次世代品にシフトすることを決めた。

    JCAR017がJCAR015と異なる点は、副刺激ドメイン(CD28ではなく4-1BB、細胞の増殖が当初は穏やかだが長期持続的になる由)、細胞(CD4陽性のT細胞とCD8陽性のそれが1対1の割合)、製法(ナイーブ細胞や静止細胞が多い)、ベクター(ガンマ・レトロウイルスではなくレンチウイルスを使用)とのこと。

    開発競争が激しいとフライングによる失敗も増える。一部企業がドロップアウトしても残りは無事ゴールインすることもあれば、一部企業の開発品で表面化したボトルネックが後にクラスイフェクトであることが判明することもある。CAR-Tは注目に値する新技術だけに、他山の石とすべきだろう。

    リンク: Junoのプレスリリース

    La Jolla、合成ヒトAT2の第三相が成功
    (2017年2月27日発表)

    La Jolla Pharmaceuticals(Nasdaq:LJPC)は、LJPC-501(合成ヒト・アンジオテンシンII)の第三相試験成功を発表した。カテコラミン抵抗性低血圧の重症患者を組入れて、昇圧剤に加えてLJPC-501を点滴静注したところ、3時間後の昇圧成功率が70%と偽薬群の23%を大きく上回り、検出力不足のため有意には届いていないものの死亡リスクが数値上22%小さかった。17年下期に承認申請すべくFDAと相談する考え。事前に特別プロトコル評価(SPA)を受けているので、安心感がある。

    リンク: La Jollaのプレスリリース

    【承認申請】


    セルジーン、IDH2阻害剤をFDAに承認申請
    (2017年3月1日発表)

    セルジーン(Nasdaq:CELG)は、FDAがCC-90007/AG-221(enasidenib)の承認申請を受理し、優先審査指定したことを発表した。審査期限は8月30日。IDH2(イソクエン酸脱水素酵素2)を阻害する経口剤で、変異IDH2型再発性難治性急性骨髄性白血病(AML)の治療に用いる。IDH2変異はAMLの8~19%とされる。判定に必要なアボットのm2000リアルタイム・システムもPMA(販売前承認)申請された。

    同社がAgios Pharmaceuticalsと6年間に亘って行った癌代謝領域の戦略的協業の成果で、Agiosは達成報奨金と売上ロイヤルティを得る。

    リンク: セルジーンのプレスリリース

    テバ、遅発性ジスキネジア治療薬を米国で承認申請
    (2017年2月28日発表)

    テバ(NYSE:TEVA)は、deutetrabenazineを遅発性ジスキネジア治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査指定され審査期限は8月30日。VMAT-2(小胞モノアミントランスポーター2型)阻害剤でドパミンを抑制する。

    ハンチントン舞踏病用薬として欧米で承認されているtetrabenazineの水素基を重水素基で置換し、不活化を遅らせることで半減期を伸ばすと共に、忍容性や代謝酵素に関わる個人差・薬物相互作用を改善した。15年に35億ドルで買収したAuspex Pharmaceuticalsの開発品。

    15年にはハンチントン舞踏病治療薬として承認申請したが、FDAから審査完了通知を受領した。代謝物に関する検討を要請された由であり、もし未回答であったならば、今回も同じ壁にぶつかるリスクがある。

    VMAT-2阻害剤はNeurocrine Biosciences(Nasdaq:NBIX)もIngrezza(valbenazine)を昨年8月に米国で遅発性ジスキネジア治療薬として承認申請しており、審査期限は来月11日。2月に諮問委員会の予定だったがキャンセルされた。

    リンク: テバのプレスリリース

    【承認】


    米国で夜間多尿用薬が承認
    (2017年3月3日発表)

    FDAは、米国ペンシルバニア州のSerenity Pharmaceuticalsが夜間多尿治療薬として申請したNoctiva(desmopressin acetate)点鼻スプレーを承認した。一日一回、就寝30分前に用いる。腎臓で再吸収される水分を増やす作用があり、臨床試験では夜間の排尿回数を減らす穏やかな効果が見られた。

    治療開始前に夜間頻尿の原因が多尿であることを確認する。低ナトリウム血症のリスクがあるため、治療開始前と開始後も定期的に検査し、高齢者など高リスク患者には低量で開始することが推奨されている。症候性鬱血性心不全や管理不良高血圧は病状が悪化するリスクがあるため禁忌。

    Serenity社はNoctivaの開発販売でアラガンと提携している。

    リンク: FDAのリリース

    米国でカルチノイド症候群の下痢治療薬が承認
    (2017年2月28日発表)

    FDAは、米国テキサス州のLexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)がカルチノイド症候群の下痢の治療薬として申請したXermelo(telotristat ethyl)を承認した。ソマトスタチン・アナログによる治療だけでは不十分な患者に一日三回、経口投与する。

    カルチノイド症候群は消化管などの神経内分泌腫瘍の1割程度で発症する疾患で、セロトニンが過剰に生産され重度の下痢や紅潮、長期的には栄養障害や心臓病を発症する。Xermeloはセレトニン生産の調律酵素であるTPH(トリプトファン水酸化酵素)を阻害する作用があり、第三相試験では腸の活動回数が29%減少した(偽薬群は17%)。

    主な有害事象は重度の便秘。第三相では500mgを一日三回投与する群も設定されたが承認されたのは250mgだけだった。臨床試験で承認量を超えて投与したところ一人が便秘で入院、二人が腸の穿孔・閉塞を発症した由。

    北米や日本以外の権利はイプセンが保有している。

    リンク: FDAのリリース
    リンク: Lexiconのプレスリリース

    ミティキュアダニ舌下錠が米国でも承認
    (2017年3月1日発表)

    FDAは、Odactraをイエダニによるアレルギー性鼻炎の治療薬として承認した。ダニから抽出調製したエキスを舌下錠にしたもので減感作療法に用いる。

    コペンハーゲン証券取引所上場のAlk Abelloが元々はシェリング・プラウに北米などの権利を導出したもので、同社を買収したMSDが承認申請したが、昨年7月に提携解消した。草アレルギー性鼻炎の減感作療法用舌下錠として承認されているGrazaxやRagwitekと同様に、宙に浮いた格好だ。

    Odactraは欧州では15年にAcarizax名で承認。日本では鳥居薬品が導入してミティキュアダニ舌下錠として販売している。

    リンク: FDAのリリース
    リンク: Alk Abelloのプレスリリース






    今週は以上です。

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    2017年2月26日

    2017年2月26日号


    【ニュース・ヘッドライン】

    • MSD、癌患者向け帯状疱疹ワクチンの第三相が成功 
    • sapacitabineの第三相はやっぱりフェール 
    • ロシュ、ACE910の第三相で死亡例 
    • ファイザー、抗CD22抗体を承認申請 
    • ノバルティス、ジカディアを一次治療にも申請 
    • CHMPが遺伝子組換え型副甲状腺ホルモンなどの承認を支持 
    • セルジーン、レブラミドの新患維持療法が欧米で承認 
    • ロシュ、アレセンサがEUで承認 
    • EMAがSGLT2阻害剤の下肢切断リスクを通知 



    【新薬開発】


    MSD、癌患者向け帯状疱疹ワクチンの第三相が成功
    (2017年2月24日発表)

    MSDは不活化水痘帯状疱疹ワクチンのV212の第三相試験が成功したことを発表した。自家造血幹細胞移植を受ける患者の帯状疱疹リスクを64%削減し、中重度帯状疱疹痛を69%、ヘルペス後神経痛を83%、抑制した。

    癌の治療に伴い免疫力が低下した患者は帯状疱疹のリスクが高いが、同社の水痘帯状疱疹ワクチンであるZostavaxは生ワクチンなので使えない。V212に期待がかかるところだ。もう一本、血液癌や固形癌の患者を組入れた第三相も進行中。

    リンク: MSDのプレスリリース

    sapacitabineの第三相はやっぱりフェール
    (2017年2月23日発表)

    Cyclacel Pharmaceuticals(Nasdaq:CYCC)は、CYC682(sapacitabine)の第三相試験フェールを発表した。二次的評価項目やサブセグメント分析に基づいて当局と相談する考えだが、楽観できないだろう。

    03年に第一三共からライセンスした細胞周期調節剤で、第三相は高齢で強化療法不適な急性骨髄性白血病患者を組入れて、しばしばオフレーベル使用されるDacogen(decitabine)と併用する効果をDacogen単剤と比較した。14年に行われた中間解析で独立データ監視委員会が無益性を認定したが、治験続行は容認した。

    今回の解析でも主評価項目である全生存期間はフェールした。一方、完全反応率や、階層化要素の一つである末梢白血球数が少ないサブグループ(全集団の2/3を占めた)における全生存期間は改善した模様だ。

    末梢白血球数が多いサブグループは併用群のほうが生存期間が短かった。反応率の高さが延命効果につながらなかったことと合わせて考えると、安全性は両群同様だったとプレスリリースに記されているが、忍容性がボトルネックになった可能性を想像せざるを得ない。

    リンク: Cyclacelのプレスリリース

    ロシュ、ACE910の第三相で死亡例
    (2017年2月21日発表)

    ロシュのRG6013/ACE910(emicizumab)の第三相試験で死亡例が発生したことが明らかになった。EHC(欧州血友病コンソーシアム)がロシュに照会し回答をホームページに掲載したもの。

    中外製薬が創製した抗第IX因子/第X因子ヒト化二重特異性抗体で、第VIII因子に代わって第IX因子と第X因子をバイパスし、後者を活性化する。A型血友病のうち第VIII因子に対するインヒビターを持つ患者や、頻繁に出血するためルーチン予防的投与が必要な患者は週一回あるいは二週間に一回の投与で足りるため、適している可能性がある。第三相はインヒビターを持つ患者を対象とするHAVEN 1試験と持たない患者のHAVEN 3試験の二本で、日本の施設も参加している。

    HAVEN 1試験は昨年12月に主目的達成が発表されたが、ルーチン予防的投与群で血栓塞栓イベントが2例、血栓性微小血管障害症(TMA)が2例、発生したことも明らかにされた。目標症例数120例程度の試験なので結構多い。今回のロシュのレターによると、死亡例は深刻な直腸出血を発症、aPCC(活性化プロトロンビン複合体)などによる治療を受けた後にTMAを発症、死亡した。

    ACE910の副作用かどうかは不明。治験医はACE910の投与と関連なしと判定。また、この患者は輸血を拒否した経緯がある。治験プロトコルではaPCCの使用を回避し承認されているバイパス製剤を低量用いるよう推奨していたとのことなので、順守すればリスクを回避できるのかもしれない。

    何れにせよ、インヒビターを持つ患者のルーチン予防的投与用途の薬は少ないが、出血時の治療やインヒビターを持たない患者のルーチン予防的投与なら他にも方法があり、一生使う薬なので新薬には既存薬並みの安全性が求められる。ACE910の副作用とは限らないがそうであっても不思議はなく、そもそも血栓カスケードの一部をバイパスする薬をルーチン投与すること自体が不適切である可能性もあるので、リスクの十分な検討が求められる。

    リンク: EHCの発表内容

    【承認申請】


    ファイザー、抗CD22抗体を承認申請
    (2017年2月21日発表)

    ファイザーは、inotuzumab ozogamicinを欧米で承認申請し米国では優先審査指定されたと発表した。再発性難治性CD22陽性前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病に用いる。第三相試験では、共同主評価項目のうち血液学的完全寛解率が80.7%と標準療法群の9.4%を有意に上回った。一方、全生存期間はメジアン7.7ヶ月対6.7ヶ月、ハザードレシオ0.77となり有意差はなかった。

    2年生存率は23%対10%、幹細胞移植に進むことができた患者の比率は41%対11%と、全体的に良さそうな数字が出ている。安全性では静脈閉塞性肝疾患の発生率が11%対1%と高かった。

    抗CD22ヒト化抗体とカリケアミシンという抗生物質を結合した抗体薬物複合体で、元々はワイス(後にファイザーが買収)とセルテック(UCBが買収)が、抗CD33抗体とカリケアミシンを結合した急性骨髄性白血病用薬であるMylotarg(gemtuzumab ozogamicin)とともに、共同開発したもの。

    リンク: ファイザーのプレスリリース

    ノバルティス、ジカディアを一次治療にも申請
    (2017年2月23日発表)

    ノバルティスは米国でALK阻害剤Zykadia(ceritinib、ジカディア)の一次治療適応拡大申請を行い優先審査指定を受けたと発表した。現在は、ALK活性化変異型非小細胞性肺癌でファイザーのXalkori(crizotinib、和名ザーコリ)による前治療歴を持つ患者の二次治療薬として承認されている。

    ALK活性化変異型非扁平上皮性非小細胞性肺癌を組入れた第三相試験ではPFS(無進行生存期間)のメジアン値が16.6ヶ月と、白金薬とAlimta(pemetrexed)の標準療法及びAlimta単剤による維持療法を施行した群の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、統計的に有意だった。

    リンク: ノバルティスのプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    CHMPが遺伝子組換え型副甲状腺ホルモンなどの承認を支持
    (2017年2月24日発表)

    EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、2月の会議で、Natpar(遺伝子組換え型ヒト全長副甲状腺ホルモン)の新薬承認などに肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域などで承認されることになる。

    リンク: EMAのプレスリリース

    Natparはシャイアーが15年に52億ドルで買収したNPS Pharmaceuticalsの開発品。NPSは骨粗鬆症治療薬として欧米で承認申請したが、米国では承認されず、欧州では06年にPreotactという製品名で承認されたものの14年に商業上の理由で承認返上した。今回の申請は慢性副甲状腺機能低下症に伴う低カルシウム血症の治療用途で、CHMPは条件付き承認を勧告した。米国では15年に限定的な用途で承認された。

    リンク: EMAのプレスリリース
    リンク: シャイアーのプレスリリース

    次に、Lokelma(sodium zirconium cyclosilicate)はアストラゼネカが15年に27億ドルで買収したZS Pharma社の開発品で、高カリウム血症の治療に用いる。陽イオン交換剤で、胃腸のカリウムイオンに優先的に結合し、体内に吸収されずに排泄される。米国は審査完了通知に留まったが承認前検査の指摘事項に回答した模様なので、EUと前後して承認されるのではないか。

    リンク: EMAのプレスリリース
    リンク: アストラゼネカのプレスリリース

    次に、Tesaro(Nasdaq:TSRO)のVaruby(rolapitant)はNK-1受容体拮抗剤。中高度催吐性の抗癌剤による遅発性悪心嘔吐の抑制に、dexamethasoneや5-HT3受容体拮抗剤と併用する。米国では今年1月に審査完了通知を受領した。

    NK-1受容体拮抗剤は、サブスタンスPが催吐中枢の神経を刺激するのを妨げる。VarubyはMSDのEmend(aprepitant、和名イメンド)と異なり3A4相互作用が小さいが、発売が10年以上遅れるので市場性は限定的だろう。

    TesaroはMGI Pharmaで5-HT3受容体拮抗剤Aloxi(palonosetron)を開発したメンバーがエーザイに買収されたのを機に独立して設立した会社。MSDと合併したシェリング・プラウからrolapitantの権利を取得したOpko Health(NYSE:OPK)から独占開発生産販売権を取得したもの。

    リンク: EMAのプレスリリース

    適応拡大では、ノバルティスのBRAF阻害剤Tafinlar(dabrafenib)とMEK阻害剤Mekinist(trametinib)を併用でBRAF V600変異型の末期非小細胞性肺癌に用いる適応拡大が支持された。57人の小規模な試験でORR(全般奏効率)が63%、反応持続期間がメジアン9ヶ月だった。適応になるのは非小細胞性肺癌の1%未満とごく少ないので、変異検査が行われないリスクもありそうだ。この二剤併用はBRAF V600変異型悪性黒色腫に承認されている。

    リンク: EMAのプレスリリース
    リンク: ノバルティスのプレスリリース

    ジョンソン・エンド・ジョンソンがデンマークのジェンマブからライセンスした抗CD38完全ヒト化抗体、Darzalex(daratumumab)を多発骨髄腫の二次治療に用いることも支持された。セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide )若しくはジョンソン・エンド・ジョンソン/武田薬品のVelcade(bortezomib)及びdexamethasoneと三剤併用する。現在は、Revlimidのような免疫調節薬及びVelcadeを既に使った患者に単剤投与するサルベージ用途で承認されている。

    リンク: EMAのプレスリリース
    リンク: JNJのプレスリリース

    【承認】


    セルジーン、レブラミドの新患維持療法が欧米で承認
    (2017年2月24日発表)

    セルジーン(Nasdaq:CELG)は、Revlimid(lenalidomide、和名レブラミド)の新患維持療法が欧米で承認されたと発表した。再発患者や自家造血幹細胞移植(ASCT)に不適な患者の一次治療は以前から承認されているが、今回、ASCTを受けた新患の再発抑制目的で単剤投与し地固めすることが可能になった。

    米国中心に実施されたCALGB 100104試験ではメジアンPFS(無進行生存期間)が5.7年と維持療法を行わなかった群の1.9年を大きく上回り、欧州中心のIFM 2005-02試験では各3.9年と2年だった。

    G3以上の主な有害事象は好中球減少症、血栓性血小板減少症、白血球減少症など。Revlimidの維持療法は異なった血液癌を誘導することがあるので注意が必要。治験では血液学的SPM(第二原発性腫瘍)の発生率が7.5%と偽薬群の3.3%より高かった。血液学的及び固形癌SPM(扁平上皮腫と基底細胞腫は除く)の発生率は14.9%対8.8%だった。

    リンク: セルジーンのプレスリリース(米承認、2/22付け)
    リンク: 同(EU承認、2/24付け)

    ロシュ、アレセンサがEUで承認
    (2017年2月21日発表)

    ロシュはAlecensa(alectinib、和名アレセンサ)がEUで条件付き承認されたと発表した。ALS活性化変異を持つ末期非小細胞性肺癌でXalkori(crizotinib)による前治療歴を持つ患者に用いる。第二相試験ではORR(全般反応率)が52%だった。64%で中枢神経転移が縮小した。深刻な有害事象は間質性肺疾患/肺炎、肝障害、筋痛、CPK上昇、徐脈など。

    中外製薬の開発品で日本では14年、米国でも15年に承認されている。

    リンク: ロシュのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    EMAがSGLT2阻害剤の下肢切断リスクを通知
    (2017年2月24日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAは、二型糖尿病治療薬の一種であるSGLT2阻害剤に関して、下肢(主として足趾部)切断リスクを持つ可能性があることを発表した。リスクが表面化したきっかけは、ジョンソン・エンド・ジョンソン/田辺三菱製薬のInvokana(canagliflozin、和名カナグル)の心血管アウトカム試験、CANVAS試験。昨年4月に、1000人年当りの発生数が偽薬群は3例であったのに対して、100mg群は7例、300mg群は5例だったことが公表された。

    もう一本の大規模試験、CANVAS-R試験では偽薬群5例、canagliflozin群(100mgで開始して300mgに増量)7例とそれほど差がなかったが、今回発表された16年9月時点のデータでは4例対8例と差が拡大している。

    他のSGLT2阻害剤の試験では観察されていないが、EMAはデータが限定的であることからクラスイフェクトと見なし、SGLT2阻害剤すべてのSPC(添付文書)に1000人中1~10人に発生する副作用として記載することを決めた。

    SGLT2阻害剤は腎臓でグルコースを尿から血液中に戻すトランスポーターを阻害し、グルコースの排出を促す。ベーリンガー・インゲルハイム/イーライリリーのJardiance(empagliflozin、和名ジャディアンス)の心血管アウトカム試験が成功し、ADA米国糖尿病協会が心血管リスクを持つ二型糖尿病患者に使用を検討するよう推奨するなど、期待を集めている。

    リンク: EMAのプレスリリース






    今週は以上です。

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