2017年11月19日

2017年11月19日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アルナイラム、hATTR治療薬を承認申請 
  • 大塚、米国でトルバプタンの適応拡大に再挑戦 
  • ムコ多糖症VII型の治療薬が米国で承認 
  • 日本発の抗体医薬が再び承認 
  • ポテリジェント抗体が米国で承認 
  • スーテント、腎癌アジュバント療法が承認 
  • センサー付き医薬品が承認 
  • FDA、フェブリクの心臓疾患死リスクを通知 


【承認申請】


アルナイラム、hATTR治療薬を承認申請
(2017年11月16日発表)

アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)は、ALN-TTR02(patisiran)のローリング承認申請を開始した。適応は遺伝性TTR調停アミロイドーシス(hATTR)の治療。同社初の承認申請で、RNA介入薬の承認申請も初。

臨床試験では、偽薬群は神経症状が悪化したがpatisiran群は若干改善した。深刻な有害事象は下痢、心不全、起立性低血圧、肺炎、心室ブロックなどで、下痢は試験薬関連有害事象とされた。死亡や有害事象による治験離脱の発生率は偽薬群より小さかった。

Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)の子会社であるAkcea Therapeutics(Nasdaq:AKCA)も前後してIONIS-TTRRx(inotersen)を欧州で承認申請、米国でもまもなく申請予定だが、夫々の臨床試験のデータを見比べると、効果も忍容性もアルナイラムに軍配が上がりそうだ。

ローリング承認申請は米国の制度で、承認申請に必要な三種類の書類のうち完成したものから逐次提出して審査を開始してもらうもの。今回も、前臨床とCMC(化学、生産、管理)を提出。年内に臨床データを提出して申請を完了する予定。

欧州で年内に、日本やブラジルでは来年、開発販売権を持つサノフィのジェンザイム部門が承認申請する見込み。

リンク: アルナイラムのプレスリリース

大塚、米国でトルバプタンの適応拡大に再挑戦
(2017年11月6日発表)

大塚製薬はバソプレシン2受容体拮抗剤のSamsca(tolvaptan、和名サムスカ)を三つの用途で販売している。心不全による体液貯留の治療、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群による低ナトリウム血の治療、そして常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の進行抑制だ。このうち、ADPKDは14年に日本で、15年にはJinarc名でEUでも承認されたが、米国は審査完了通知を受領した。被験者の腎機能が元々それほど悪くなかったせいか臨床的な効用が明確ではなく、肝毒性も懸念されるためだ。

大塚は追加試験を実施、eGFR(推算糸球体濾過量)の低下が偽薬比有意に抑制されることを確認し、学会やNEJM誌で発表した。1年間の治療で偽薬群が3.61mL/分/1.73m2低下したのに対して、tolvaptan群は2.34mL/分/1.73m2の低下に留まり、統計的に有意な差があった。前回のTEMPO試験では各3.70mLと2.72mLだったので、tolvaptan群の成績が若干よかったことになる。ランイン期間中に投与して忍容した患者だけを組入れた工夫も寄与したかもしれない。

この結果を踏まえて米国で適応拡大申請し、受理された。審査期限は来年4月24日。

リンク: 大塚のプレスリリース

【承認】


ムコ多糖症VII型の治療薬が米国で承認
(2017年11月15日発表)

FDAはMepsevii(vestronidase alfa-vjbk)をムコ多糖症(MPS)VII型の治療薬として承認した。MPS VII型は患者数が世界で150人以下と推測される超希少疾患で、ベータグルクロニダーゼの欠乏によりグリコサミノグリカンが分解されず組織に蓄積、低身長や心弁異常、肝膵肥大など様々な症状をもたらす。

Mepseviiは希少疾患用薬の開発に特化した米国カリフォルニア州の医薬品会社、Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)の開発品。欠乏酵素を二週間に一回、補充する。臨床試験ではグリコサミノグリカンデルマタン硫酸の尿排泄量を主評価項目としたが、FDAは臨床的な効能とは見なさなかった模様で、プレスリリースには6分歩行テストの結果が記されている。第三相とEAP(早期アクセスプログラム)の症例では偽薬群を平均18メートル上回った。

主な有害事象は点滴箇所反応、下痢、ラッシュ、アナフィラキシーなど。

報道によると、Ultragenyxは年37.5万ドル程度の正味価格で発売する考えのようだ。超希少疾患なのでピーク年商は1億ドル行かない見込みだが、希少小児疾患優先審査証書(RPDPRB)を取得することができた。新薬開発を促すためのインセンティブで、次に承認申請する時に優先審査を受けることができる。審査が順調に進めば半年ほど早く承認取得できるので、激しい開発競争が繰り広げられている分野では大きな価値がある。譲渡も可能で、最近ではSareptaがギリアド・サイエンシズに1億2500万ドルで売却した。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Ultragenyxのプレスリリース

日本発の抗体医薬が再び承認
(2017年5月16日発表)

FDAはHemlibra(emicizumab-kxwh)を第8因子インヒビターを持つA型血友病患者の出血予防薬として承認した。審査期限は来年2月だったが、近年のFDAは重要な薬や特に問題のない薬は早く承認する傾向がある。

A型血友病は遺伝子組換え型第8因子で出血を治療し、頻繁に出血する場合はルーチン投与して予防する。薬に対する抗体(インヒビター)ができて無効になった場合は、ノボ ノルディスクの遺伝子組換え型活性化第7因子や活性化プロトロンビン複合体製剤(シャイアの血漿由来製剤、FEIBA)を使う。

Hemlibraは血液凝固第IX因子と第X因子の二重特異性抗体で、第VIII因子に代わって活性化第XI因子による第X因子の活性化を架橋する。最初の4回は3mg/kg、その後は1.5mg/kgを週一回、皮注する。ロシュグループの中外製薬が創製、米国ではジェネンテックが販売する。

臨床試験で血栓性微小血管障害症(TMA)による死亡があったためFDAの評価や対処法が注目されたが、症例に即した順当な内容だった。枠付き警告によると、Hemlibra療法を施行中に出血しFEIBAでレスキュー治療する時は、TMAや血栓塞栓症を防ぐために、100単位/kg/24時間超のペースで24時間超投与するべきではない、症状が現れたらFEIBAを止める。

価格は44万ドル(初年度は48万ドル)程度に設定されるようだ。FEIBAはもっと高いが、Hemlibraはインヒビターを持たない患者向けにも第三相が進行中であり、長期作用性第8因子と比べて著しく割高にならないようにしたのだろう。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース

ポテリジェント抗体が米国で承認
(2017年11月14日発表)

アストラゼネカはFasenra(benralizumab)が重度好酸球型喘息症の維持療法薬としてFDAに承認されたと発表した。好酸球などで発現するIL-5受容体のアルファチェーンを標的とする抗体。グラクソ・スミスクラインのNucala(mepolizumab)やテバ・ファーマスーティカルのCinqair(reslizumab)の類薬だ。

こちらも日本のBioWa(協和発酵キリン・グループ)が創製したPOTELLIGENT抗体で、糖鎖にフコースがなく抗体依存性細胞毒性が増強されている。日本や欧州でも承認審査中。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

スーテント、腎癌アジュバント療法が承認
(2017年11月16日発表)

FDAはファイザーのSutent(sunitinib、和名スーテント)を腎細胞腫の摘出術後アジュバント療法に用いる適応拡大を承認した。9月に開催された諮問委員会で賛否が真っ二つに分かれたことを考えると、審査期限まで2ヶ月残しての承認は意外だ。

根拠となったS-TRAC試験では、5年経っても再発したり死亡したりしなかった患者の比率が59%と偽薬群の51%より有意に高かった。この試験は延命効果の検出力を持たないが、5年生存率は81.4%対81.9%で大差ない。2019年の最終解析でもっと良い数字が出るか、注目される。

同様な用途ではSutentとバイエルのNexavar(sorafenib)を偽薬と夫々比較したASSURE試験はフェールした。Sutentは効く時も効かない時もある、なんてことはないだろうから、原因を解明してほしいものだ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース

センサー付き医薬品が承認
(2017年5月13日発表)

FDAはAbilify MyCiteを承認した。大塚の非定型向精神薬aripiprazoleの中にProteus Digital Health社のセンサーを埋め込んだ錠剤で、胃腸通過時に発するシグナルを体に張り付けたパッチ型ウェラブル端末が探知し、Wi-Fiとネット経由で情報をポータルサイトにアップロードする。医師や介護者が、患者の同意を得た上で、服薬状況を監視することができるようになる。

医薬品に本物であることを示すICタグを付けるとか、ウェラブルに血圧センサーを付けるとか、胃腸診断用カプセル型カメラとかはこれまでにもあったが、遂にセンサー付き錠剤が登場した。薬にもIoT時代の到来だ。尤も、大塚は直ぐに量販する考えはない模様。コストやニーズの面でまだ改良の余地があるのだろう。

非定型向精神薬は患者が飲みたがらないことがあり、急性治療用には経口剤だけでなく注射用が、安定期用には一日一回経口投与だけでなく1ヶ月以上持続する注射用製剤も商品化されている。センサー内包型は、患者のアドヒアランスを確認したり、臨床試験でデータの頑強性を検証する上で有益だろう。ちゃんと飲まないと、ばれる、というプレッシャーを与えることもできる。

但し、FDAのプレスリリースによると、実際に患者のコンプライアンス(アドヒアランス)が改善するかどうかは確認されていない。シグナルを探知できなかったり、遅れたりすることもあるのでリアルタイム監視には適さないと記されているので、頼りない印象だ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Proteusのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、フェブリクの心臓疾患死リスクを通知
(2017年11月15日発表)

FDAは、Uloric(febuxostat、和名フェブリク、欧州名Adenuric)の心臓疾患リスクに関する安全性通知を発出した。武田薬品が実施したallopurinol対照安全性確認試験の予備的解析で、心臓関連死の増加が見られた由。データは未発表。最終解析を受領・分析した上でフォローアップする考え。

Uloricはキサンチンオキシダーゼ阻害薬。尿酸の合成を阻害し、高尿酸血による痛風を治療する。帝人が創製し日本で販売、米国はライセンシーの武田が09年に発売、最初に承認された欧州ではイプセンやメラリーニが販売している。

心血管リスク自体は既知だ。承認前の臨床試験では重要な心血管イベントの発生率(1000人年当り)が13と対照群の4倍以上だった。このため、FDAは承認に際してレーベルに記載するとともに、武田薬品に安全性確認試験の実施を要求した。

6000人以上の痛風患者を組入れて、MACE(主要心臓有害事象:心臓関連死、非致死的心臓発作、非致死的卒中、緊急血行再建術)を観察した試験の結果が承認から8年経って判明。MACE全体は増加しなかったものの、心臓関連死亡と全死亡のリスクが増加していた。

リンク: FDAのプレスリリース








今週は以上です。

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2017年11月12日

2017年11月12日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • キイトルーダのEU適応拡大申請撤回は症例数不足が遠因? 
  • ノバルティス、抗VEGF-A抗体のnAMD試験成功 
  • ノバルティス、CDK4/6阻害剤の閉経前乳癌試験成功 
  • ノバルティス、CAR-Tを欧州でも承認申請 
  • CHMPが抗IL-5抗体などの承認を支持 
  • MSDのCMV用薬が承認 
  • 第二のB型肝炎ワクチンが承認 
  • アドセトリス、CTCLにも承認 
  • ゼルボラフがBRAF-V600変異陽性エルドハイム・チェスター病に承認 
  • アレセンサも一次治療承認 


【今週の話題】


キイトルーダのEU適応拡大申請撤回は症例数不足が遠因?
(2017年11月10日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAは、承認申請が撤回された場合、審査状況を公表する。不当な審査をして撤回に追い込んだわけではないことを示す目的だろう。今回、MSDが抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の適応拡大申請を撤回したことに関する発表があった。

MSDは転移性非扁平上皮性非小細胞性肺癌の一次治療にpemetrexed及びcarboplatinと三剤併用する適応拡大を欧米で承認申請し、米国では承認されたが、EUは申請撤回したことを10月に公表した。EMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、主臨床試験の症例数が限定的であるため不確実性が残っており、承認できないという暫定的意見だったことが今回、明らかにされた。

それ以上の詳細は不明だが、症例数が足りないために延命効果が統計学的に確認できず、PD-L1発現と応答性の関係も十分に検討できないという意味なのではないだろうか。

11月5日号で書いたように、この承認申請は第1/2相KEYNOTE-021試験のGコフォートのORR(客観的反応率)とPFS(無進行生存期間)に基づくもの。前者は55%とpemetrexedとcarboplatinの二剤だけを用いる標準療法の29%を有意に上回り、PFSのハザードレシオは0.53で統計的に有意、メジアンは13.0ヶ月対8.9ヶ月だった。治療関連深刻有害事象の発生率は39%対26%で副作用も増加した。

全生存期間はメジアン10ヶ月追跡時点のハザードレシオが0.90、14ヶ月時点は0.69、18ヶ月時点で0.59と徐々に良い数値に変わっていったが、検出力不足で18ヶ月時点でも95%信頼期間が0.34-1.05と広く、有意差が出ていない。点推定値は良好なので延命効果を疑う余地は小さいが、承認審査機関は一次治療用途に関しては拙速を慎むことが少なくない。

抗PD-1/PD-L1抗体は、幾つかの臨床試験ではPD-L1発現度合いと応答性に相関が見られ、幾つかでは大差なかった。Keytrudaは肺癌の一次治療と再発治療に単剤投与することが承認されているが、一次治療の適応になるのは著高発現(TPS≧50%)だけ、再発治療は高発現(TPS≧1%)だけと、異なっている。

今回の用途は発現状況不問と、更に異なっている。探索的解析で高発現(TPS≧1%)サブグループのORRは三剤併用群が54%、標準療法群は38%、低発現(<1%)サブグループは各57%と13%と、どちらもに差がなかったので、疑う余地は大きくはないが、他の用途との整合性をどう説明したらよいのか、悩ましい。PFSやOSのサブグループ分析を見てみたいものだが症例数が少なく患者背景に偏りがあっても不思議はないので意味のある解析はできないのかもしれない。

MSDは、021試験と類似した内容の第三相KEYNOTE-189の解析計画を変更し、PFSだけでなく全生存期間も主評価項目とすることを決定した。そのため、年内にデータベースロック、18年にも成否判明する予定が19年に遅れることになったが、570人を組入れるのでPD-L1低発現サブグループの症例数も各群100人前後が予想され、応答予測性の解析を行うのに十分ではないとしてもある程度信頼できるデータが出せるのではないか。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: MSDの申請撤回通知(10月11日付)


【新薬開発】


ノバルティス、抗VEGF-A抗体のnAMD試験成功
(2017年11月10日発表)

ノバルティスは、RTH258(brolucizumab)の第三相nAMD(新生血管加齢性黄斑変性)試験二本が成功したと発表した。BCVA(最良矯正視力)の48週時点での改善が実薬であるafliberceptと比較して非劣性。二次的評価項目のうち16週時点の疾病活動性やIRF(網膜嚢胞液)/SRF(網膜下液)、網膜厚の解析は、RTH258の6mgを用いた群がaflibercept群より有意に良かった。

二本のうち一本は3mgもテストしたがもう一本は6mg群しか設定されておらず、おそらく、6mgを標準用量とする考えなのだろう。

臨床試験で用いたロットと量産ラインで生産するロットの同等性を確認し、18年に承認申請する予定。

RTH258は、aflibercept(リジェネロン/バイエルのEylea、和名アイリーア)やranibizumab(米国ではジェネンテック、それ以外ではノバルティスが販売するLucentis)と同様にVEGF-Aを標的とする抗体医薬。受容体に結合する可変領域の単鎖だけからなるフラグメントで、分子量が26kDaとafliberceptの115kDa、ranibizumabの48kDaより小さいため、分布や全身的曝露の面で優れる可能性がある。

臨床的な違いは投与頻度。afliberceptの承認用法は最初の三回は4週毎、その後は8週毎だが、RTH258の第三相は4回目からは12週毎(必要なら8週毎も可)という投与スケジュールを採用した。硝子体注射の頻度が少なく、一回当たりの薬価が同じなら年間費用が安くなる。実際の医療では病状が安定したら様子を見て悪化したら再治療というパターンが多いが、RTH258は網膜厚の悪化が少ないとのことなので、この治療方針でも投与頻度が少なくて済みそうだ。

RTH258はグループのアルコン社が09年にスイスのESBATech社を買収して入手したもの。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ノバルティス、CDK4/6阻害剤の閉経前乳癌試験成功
(2017年11月8日発表)

ノバルティスは、Kisqali(ribociclib)を閉経前転移性乳癌の治療に用いる第三相試験が成功したと発表した。ホルモン受容体陽性、her2陰性の患者を組入れて、tamoxifen、letrozole、anastrozoleのうち何れかとgoserelinを併用する標準療法と、更にKisqaliを加える三剤併用両方のPFS(無進行生存期間)を比較したもの。データは未発表。

Kisqaliはホルモン受容体陽性、her2陰性の乳癌に用いるCDK4/6阻害剤で、今年、閉経後の患者の一次治療にアロマターゼ阻害剤と併用する薬として欧米で承認されたところ。売上面では発売が2年先行したファイザーのIbrance(palbociclib、和名イブランス)の後塵を拝しているので、適応は多いほうが良い。尚、日本では開発中止になった模様だ。

CDKは細胞分裂時の細胞周期の進行を調停する酵素。KisqaliはCDK4の結晶構造を解明したAstex Pharmaceuticals(後に大塚製薬が子会社化)との共同研究の成果。

リンク: ノバルティスのプレスリリース


【承認申請】


ノバルティス、CAR-Tを欧州でも承認申請
(2017年11月6日発表)

ノバルティスはCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞療法)のKymriah(tisagenlecleucel)をEUに承認申請した。米国では8月に再発・難治性急性リンパ性白血病用薬として承認され、10月には再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に適応拡大申請したところ。EUではこの二つの適応を申請した。

米国での発売はノバルティスが先行したが、対象患者数の多い後者の適応ではギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)が買収したKite社のYescarta(axicabtagene ciloleucel)が先に承認された。EUでもYescartaが7月申請と先行している。

リンク: ノバルティスのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPが抗IL-5抗体などの承認を支持
(2017年11月10日発表)

欧州の薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月の会議で以下の新薬と適応拡大に肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

まず、新規活性成分では、アストラゼネカグループのメディミューンが協和発酵キリングループのBioWaからライセンスした抗IL-5受容体アルファチェーンPOTELLIGENT抗体、Fasenra(benralizumab、協和発酵キリンの開発コードKHK4563)。好酸球増多型の重度喘息症で吸入ステロイドとベータ2作用剤を併用しても増悪を十分に防げない患者のステップアップセラピーに用いる。日米でも承認審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

次に、Ocrevus(ocrelizumab)はロシュの抗CD20抗体トリオの第三弾。Rituxan(rituximab)は定常領域をヒトのアミノ酸配列に置換したキメラ抗体、Ocrevusは可変領域の一部も置換したヒト化抗体、Gazyva(obinutuzumab)もヒト化抗体だが結合するエピトープが異なり、また、BioWaのPOTELLIGENTと異なる技術を用いてフコースのない糖鎖を作り抗体依存的細胞毒性を向上、という違いがある。

適応は再発型あるいは一次進行型の多発性硬化症。Rituxanより免疫性副作用が小さいため、元々はリウマチ性関節炎など幅広い分野で臨床開発が行われたが、アジアの施設で日和見症候群が発生したのを機に戦線縮小した。再発型の臨床試験では再発率がアムジェンのAvonexより46%低く、一次進行型試験では12週間の障害進行リスクが偽薬比24%小さかった。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース

シャイアが子会社化したバクスアルタのAdynovate(rurioctocog alfa pegol)はA型血友病の血液凝固第VIII因子補充療法。頻繁に出血する患者は定期的に投与するルーチン予防を受ける。同社のAdvateは週3~4回の投与が必要だが、Nektar(Nasdaq:NKTR)の技術を用いてPEG化したAdynovateなら週2回で足りる。もっと少ない製品も存在するが、Advateを使っている患者がスイッチするには適しているかもしれない。

リンク: EMAのプレスリリース

MSDのCMV(サイトメガロウイルス)治療・予防薬Prevymis(letermovir)は前後して米国で承認されたため、後述する。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、Adcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)を再発性CD30陽性皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)に用いることが支持された。欧州などでの権利を持つ武田薬品が申請したもの。前後して米国で承認されたため、後述。

新製剤では、Dr. Falk Pharma GmbHのJorveza (budesonide)が好酸球性逆流性食道炎治療薬として支持された。様々な用途で用いられているステロイドの口内分散錠で、投与すると90%の患者で食道から好酸球がいなくなる。希少疾患用薬指定されており、加速評価を受けた。

リンク: EMAのプレスリリース

再審制度に基づき二回目の審査を受けた品目では、Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)の非定型向精神薬、Fanaptum(iloperidone)は、再び否定的意見となった。統合失調症治療薬として承認申請されたが、副作用や薬物相互作用リスクと効果のバランスを取るのが難しく、CHMPの評価によれば効果が小さく作用のオンセットが遅く、QT延長リスクがある。

FDAは09年に承認したが、QT延長リスクや用量漸増期間の長さを考慮して、他の薬の使用を先に検討するよう推奨した。

【承認】


MSDのCMV用薬が承認
(2017年11月9日発表)

MSDは、FDAがPrevymis(letermovir)をサイトメガロウイルス(CMV)治療・予防薬として承認したと発表した。12月に発売予定。

同種造血幹細胞移植を受けた、CMV抗体陽性の成人患者に一日一回、経口又は静注投与する。移植後約100日間続ける。臨床試験では臨床的に重要なCMV感染症の発生率(24週間)が37.5%と偽薬群の60.6%を下回った。死亡率は各群12%と28%だった。副作用は嘔吐と咳、末梢浮腫など。催不整脈性を持つ模様だ。

quinazolinesという新クラスの抗ウイルス剤で、CMVのテルミナーゼ複合体を阻害する。バイエルの感染症治療薬部門がスピンアウトしたドイツのAiCuris GmbHから12年に開発商業化権を取得した。

リンク: MSDのプレスリリース

第二のB型肝炎ワクチンが承認
(2017年11月9日発表)

Dynavax Technologies(Nasdaq:DVAX)は、FDAがHeplisav-Bを承認したと発表した。B型肝炎ウイルスの表面抗原とTLR9アゴニストを結合したワクチンで、18歳以上の大人が適応になる。B型肝炎ワクチンの承認はGSKのEngerix-B以来、四半世紀ぶり。

Dynavaxは07年にMSDにアウトライセンスしたが翌年、解消。臨床試験でウェゲナー肉芽腫が発生してクリニカルホールドになったり、心血管イベントに偏りが発生したりして開発や承認審査に時間がかかったが、承認申請から足掛け5年、やっと承認された。

Engerix-Bは市販歴が長く、新生児も含めて乳幼児にも使えるので、Heplisav-Bの対象は、接種歴を持たない、二型糖尿病などの高リスク患者ということになる。長所は、3回接種ではなく2回接種で同程度の予防効果を期待できること。

リンク: Dynavaxのプレスリリース

アドセトリス、CTCLにも承認
(2017年11月9日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)は、Adcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)を再発性の原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫やCD30陽性菌状息肉腫に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。どちらも皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の一般的なサブタイプ。上記のEMAのプレスリリースでは皮膚T細胞リンパ腫と記されているが、米国はシアトル・ジェネティクスが承認申請した時のプレスリリースも今回もこの二タイプを特定しており、FDAに適応を削られた訳ではなさそうだ。

リンク: シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

ゼルボラフがBRAF-V600変異陽性エルドハイム・チェスター病に承認
(2017年11月6日発表)

FDAは、ロシュのZelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ)をBRAF-V600変異を持つエルドハイム・チェスター病(ECD)の治療に用いる適応拡大を承認した。ECDは白血球の一種である組織球が異常増殖する超希少疾患で米国の患者数は500人以下とされる。V600変異は二人に一人が該当する。ZelborafはPlexxikon(後に第一三共が買収)からライセンスしたBRAF阻害剤で11年にBRAF-V600変異を持つ転移性切除不能悪性黒色腫用薬として承認されている。

適応拡大の根拠となったバスケット試験はBRAF-V600変異を持つ癌を発生部位を問わずに組入れたもの。ECD患者では最良総合反応率が54.5%だった。Keytrudaのマイクロサテライト不安定性腫瘍のように、原発部位ではなく遺伝子シグナチュアに基づいてスクリーニングする手法が少しずつ出始めている。今回のような超希少疾患の場合は、様々な病気を一度に試験することで開発費用や期間を効率化できるのではないか。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース

アレセンサも一次治療承認
(2017年11月7日発表)

ロシュは、Alecensa(alectinib、和名アレセンサ)をALK陽性の局所進行性転移性非小細胞性肺癌の一次治療に用いることがFDAに承認されたと発表した。臨床試験ではPFS(無進行生存期間、独立放射線学的評価委員会が査読)がメジアン25.7ヶ月と、一次治療が承認されている類薬であるファイザーのXalkori(crizotinib)の10.4ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.50、統計的に有意だった。

Alecensaは中外製薬が創製したALK阻害剤で、ALK阻害活性や中枢神経移行性がXalkoriより高く、特に脳転移に対する効果が高い。

リンク: ロシュのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年11月5日

2017年11月5日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 先天性TTRアミロイドーシス用新薬二剤の第三相が成功 
  • アストラゼネカの抗IL-13抗体も第三相フェール 
  • ノバルティス、CAR-Tの適応拡大申請 
  • FDA諮問委員会が長期放出性ブプレノルフィンを支持 
  • MSD、キイトルーダの適応拡大申請を撤回 
  • アストラゼネカのBTK阻害剤が米国で承認 
  • ボシュロム、緑内障治療薬が米国で承認 


【新薬開発】


先天性TTRアミロイドーシス用新薬二剤の第三相が成功
(2017年11月2日発表)

遺伝子アンチセンス技術に基づく新薬開発で鎬を削る二社が、先天性トランスサイレチン(hATTR)アミロイドーシス治療薬の第三相試験を相次いで成功させた。米国東海岸ケンブリッジのAlnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)と西海岸のIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)だ。どちらも2018年に欧米で発売される可能性がある。データを見比べるとAlnylamの開発品のほうが効果や安全性が高そうにみえる。

。hATTRアミロイドーシスは遺伝子変異したトランスサイレチンが様々な臓器に蓄積し障害を与える。AlnylamのALN-TTR02(patisiran)はsiRNA。特定のメッセンジャーRNAを沈黙させることでトランスサイレチンの生産を抑制する。治験では一回投与で最大94%減少した。

第三相試験はポリニューロパチーを合併するステージI/IIの患者225人を試験薬群2、偽薬群1の割合で無作為化割付して、mNIS+7(Modified Neuropathy Impairment Score)やQOL-DN(Norfolk-Quality of Life-Diabetic Neuropathy)の変化などを比較した。試験薬は0.3mg/kgを三週間毎に70分点滴静注。日本の大学病院も参加した模様だ。

結果はパリで開催された第一回欧州ATTRアミロイドーシス患者医師会議で発表された。主評価項目のmNIS+7は試験薬群が6.0ポイント低下(改善)、偽薬群は28.0ポイント増加、治療効果は34.0で統計学的に有意。二次的評価項目であるQOL-DNは各6.7ポイント低下と14.4ポイント上昇で治療効果21.1、統計的に有意。深刻な有害事象の発生率は36.5%で偽薬群の40.3%を上回らなかった。下痢、心不全、起立性低血圧、肺炎、心室ブロックなどが中心で、下痢以外は試験薬関連とはみなされなかった。

Ionisの開発品は後述のように肝腎毒性や血小板減少リスクが見られるが、patisiranの試験では見られなかった。

Alnylamは年内に米国で、来年には日本やブラジルでも、承認申請する予定。希少疾患用薬の研究開発でサノフィのジェンザイム部門と協業しており、patisiranは北米や欧州ではAlnylamが、日本などそれ以外の地域はジェンザイムが、開発販売を担当する。

リンク: Alnylamのプレスリリース

IonisのIONIS-TTRRx(inotersen)はトランスサイレチンの遺伝子翻訳を阻害するアンチセンス薬。こちらの第三相もポリニューロパチーを合併する患者を試験薬群と偽薬群に2対1割付して、mNIS+7とQOL-DNの変化を比較した。組入れは約170人、投与方法は週一回皮注。

15ヶ月治療後の治療効果は、共同主評価項目の一つであるmNIS+7が19.7ポイント。もう一つのQOL-DNは11.68ポイントで、試験薬群は0.99ポイント増加、偽薬群は12.67ポイント増加した。

二本の試験のQOL-DNに注目すると、偽薬群の数値は大差ないので患者背景が大きく異なるとは考えにくい。patisiranとinotersenの差はinotersenと偽薬の差とそれほど変わらないので、もし直接比較試験が行われたならば統計的に有意な差が出るかもしれない。

もう一つ差があるのが安全性。inotersenの試験では試験薬群で5人死亡、偽薬群はゼロだった。5人中4人は病気の進行に伴うもので試験薬との関連はないと判定されたが、頭蓋内出血後の死亡例は関連が疑われる。深刻な有害事象は血栓性血小板減少症や腎障害が数例報告されたが、早期に発見し対応するプロトコルの導入後は深刻例が稀になったとのこと。

Ionisは欧州で承認申請した。米国でも申請する予定。開発販売提携も模索する考え。10年にグラクソ・スミスクラインがライセンス・オプションを取得したが、研究開発分野を絞り込む戦略変更に伴い、行使しなかった。

リンク: Ionisのプレスリリース
リンク: 同(欧州承認申請、11/3付け)

セルジーン、S1PR1/5調節剤の第三相成功
(2017年10月28日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)は、S1PR1/5調節剤ozanimodの第三相再発型多発性硬化症試験、RADIANCEの結果をECTRIMS-ACTRIMSで発表した。0.5mgまたは1mgを一日一回投与する二群の年率再発率(ARR)をAvonex(interferon beta-1a)と比較したところ、各0.22、0.17、0.28となり、両用量とも有意に少なかった。

類似した内容のSUNBEAM試験も成功しており、二本の独立した試験で再発予防効果が確認されたことになる。一方、障害の進行を遅らせる効果を確認する目的で行われた二本の試験のプール分析は、3ヶ月EDSS進行率が各群6.5%、7.6%、7.8%となり、有意差がなかった。セルジーンは年内に承認申請する計画。

15年にReceptos社を72億ドルで買収して入手したコンパウンドで、S1PR調節剤の第一号であるノバルティス/田辺三菱のGilenya(fingolimod、和名ジレニア/イムセラ)と異なりS1PR3作用を持たないため、心血管・肝臓副作用が小さい可能性がある。EDSS進行抑制作用はベータインターフェロンと大差ないようだが、Gilenyaの試験も有意差がなかったので、減点にはならないだろう。

リンク: セルジーンのプレスリリース

アストラゼネカの抗IL-13抗体も第三相フェール
(2017年11月1日発表)

アストラゼネカはCAT-354(tralokinumab)の第三相喘息症試験が二本ともフェールしたと発表した。

以前に実施した第三相試験のサブグループ分析でFeNO(呼気一酸化窒素)上昇患者では増悪が減少したため、このタイプだけを組入れて新たに増悪予防試験と経口ステロイド減量試験を開始した経緯がある。CAT-354はIL-13を標的とする抗体医薬なので、IL-13の活動性更新と関連するFeNO値に基づいてスクリーニングするのは一理あったのだが、奏功しなかった。

抗IL-13抗体ではロシュのRG3637(lebrikizumab)も喘息症第三相試験が一勝一敗だった。ペリオスチン濃度を応答性予測因子に使えるという話もあったが、ワークしなかったのか、この用途は開発中止になった。

どちらもアトピー性皮膚炎など皮膚学用途で他社がインライセンスし開発中。今年、欧米でアトピー性皮膚炎薬として承認されたリジェネロン/サノフィのDupixent(dupilumab)はIL-4とIL-13の受容体の共通部位を標的としており、抗IL-13抗体もメカニズム的には可能性がありそうだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

【承認申請】


ノバルティス、CAR-Tの適応拡大申請
(2017年10月31日発表)

ノバルティスはKymriah(tisagenlecleucel)を再発性難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に用いる適応拡大をFDAに承認申請した。8月に米国で難治性再発性の前駆B急性リンパ性白血病(Pre-B ALL)に承認されたばかり。

キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法と呼ばれる新しいタイプの薬で、B細胞特異的に発現するCD19に結合する抗体の単鎖可変領域やTCR共刺激伝達領域を患者から採取したT細胞に導入して、体内に戻すと、抗原提示不要でB細胞を攻撃する。ノバルティスはペンシルバニア大学から開発販売権を取得した。

ライバルはギリアド・サイエンシズが119億ドルで買収したKite PharmaのYescarta(axicabtagene ciloleucel)で、10月に再発性難治性DLBCL用薬として承認されたところ。市場性はこの用途のほうが大きく、ノバルティスはキャッチアップする恰好だ。

Kymriahの薬剤費は47.5万ドル。寛解率が高く、費用も骨髄移植は80万ドルとのことだが、悩ましいほど高価だ。ノバルティスは1ヶ月以内に癌が反応しなかったら無料というPay-for-Performanceディールを米国の医療保険向けにオファーしており、日本でも検討している模様。DLBCL用途は反応率がPre-B ALLより低いのでノバルティスは別のアレンジメントを考えている模様だが、ギリアドの出方に左右される面もありそうだ。

リンク: ノバルティスのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会が長期放出性ブプレノルフィンを支持
(2017年10月31日、11月1日発表)

FDAの精神薬理学薬諮問委員会と薬品安全性リスク管理諮問委員会は、オピオイド使用障害(OUD)の治療補助薬として承認申請されたブプレノルフィンの長期管理放出製剤二剤を検討し、過半数の委員が承認を支持した。

米国はオピオイド系鎮痛剤が大量に消費されており、多くは疼痛治療目的ではなく遊びやオピオイド依存と言われる。キチッと規制すれば良さそうなものだが、医療や薬局の規制は州政府の管轄であり、規制の緩い一部の州にオピオイド処方箋数が集中しているらしい。過剰投与による死亡も多く、50歳以下の死因としては一番多いとのことだ。

薬物療法で良く用いられるbuprenorphine舌下錠の代替として開発されたのが今回の二剤。英国のIndivior社(LSE:INDV)が承認申請したRBP-6000は月一回皮注のデポ製剤で、サノフィのEligard(leuprolide、日本ではアステラスのエリガード)などと同じATRIGEL管理放出技術を用いている。諮問委員会では18人が承認を支持、1人が反対。300mgをずっとではなく、3回目からは100mgに減らす用法が支持された。審査期限は11月30日。

尚、Indiviorはレキット・ベンキーザーでbuprenorphine舌下錠などを販売していた部門が14年にスピンアウトして設立された会社。

リンク: Indiviorのプレスリリース(10/31付け)

米国のBraeburn Pharmaceuticalsが承認申請したCAM2038は体内で液体から結晶性ゲルに変わり、徐々に分解して内部の活性成分を放出する。14年にスエーデンのCamurus AB(NASDAQ STO: CAMX)からインライセンスした。週一回または月一回、皮注。諮問委員会では17人が一部の用量を除いて承認に賛成、3人が全用量反対だった。審査期限は来年1月19日。

リンク: Braeburnのプレスリリース(11/1付け)

MSD、キイトルーダの適応拡大申請を撤回
(2017年10月27日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療にpemetrexed及びcarboplatinと併用する適応拡大を欧米で承認申請し、米国では5月に承認されたが、EUは撤回した。承認後薬効確認試験のデザインを変更し全生存期間の解析を共同主評価項目にしたことも公表されたので、おそらく、EUは延命効果が未確認であることに難色を示しているのだろう。

この承認申請はKEYNOTE-021試験のGコフォートのORR(客観的反応率)とPFS(無進行生存期間)に基づくもので、前者は55%とpemetrexedとcarboplatinの二剤だけを用いる標準療法の29%を有意に上回り、PFSのハザードレシオは0.53で統計的に有意、メジアンは13.0ヶ月対8.9ヶ月だった。治療関連深刻有害事象の発生率は39%対26%で副作用も増加した。

全生存期間はメジアン10ヶ月追跡時点のハザードレシオが0.90、14ヶ月時点は0.69、18ヶ月時点で0.59と徐々に良い数値に変わっていったが、検出力不足で95%信頼期間は0.34-1.05と広く、有意差が出ていない。

抗癌剤は深刻な副作用リスクを伴うので体の一部に過ぎない腫瘍部位だけを見て功罪を判定することはできない。副作用で死亡するリスクと天秤にかけるためには、功罪差し引きで寿命が延びることを証明するのが望ましい。再発治療に関しては贅沢を言えないかもしれないが、一次治療で既に薬が存在するなら明確な延命効果が欲しいところである。

しかし、FDAは近年、今回のKeytrudaのようにPFSだけで承認するケースが増えてきた。癌の種類や治療段階、その医薬品の他の治療段階における効果などに基づいてケースバイケースで判断しているのだろう。決め打ちすれば空振りも増加するので善し悪しである。例えば、Keytrudaは頭頚部癌の承認後薬効確認試験がフェールしてしまった。難しい判断なので承認審査機関によって異なっても不思議はない。

MSDは、021試験と類似した内容の第三相KEYNOTE-189の解析計画を変更し、PFSだけでなく全生存期間も主評価項目とすることを明らかにした。年内にデータベースロック、18年にも成否判明するはずだったが、19年に遅れることになった。

KeytrudaはBMSのOpdivo(nivolumab)と並ぶ抗PD-1抗体の双璧だが、肺癌一次治療ではOpdivoに差を付けており、Keytrudaの米国需要の過半を占めるようになった。それだけに、Opdivoやロシュやアストラゼネカの抗PD-L1抗体には追い付くチャンスが生まれた。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認】


アストラゼネカのBTK阻害剤が米国で承認
(2017年10月31日発表)

FDAはアストラゼネカのCalquence(acalabrutinib)をマントル細胞リンパ腫の二次治療薬として加速承認した。承認申請受理が8月、審査期限は来年第1四半期だったのでスピード承認だ。第二相試験の独立評価委員会評価に基づくORR(客観的反応率)に基づくもので、完全寛解率40%、部分反応率41%、合計81%だった。深刻な有害事象は出血、感染症、心房細動、二次性原発腫瘍など。bendamustine及びrituximabと併用で承認後薬効確認試験が進行中。

15年にAcerta Pharmaを子会社化して入手したBTK阻害剤で、B細胞の増殖、移行、走化性、接着に関わるBruton tyrosine kinaseを阻害する。一日二回、経口投与。BTK阻害剤としては13年に米国で承認されたジョンソン・エンド・ジョンソン/アッヴィのImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)に次ぐ第二号だが、マントル細胞リンパ腫におけるORRはImbruvicaの試験より高く、忍容性も上回るように見える。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ボシュロム、緑内障治療薬が米国で承認
(2017年11月2日発表)

Valeant Pharmaceuticals(NYSE:VRX)の完全子会社であるボシュロムとフランスの眼科用薬開発会社Nicox(Euronext Paris:COX)は、FDAがVyzulta(latanoprostene bunod)点眼液を承認したと発表した。開放隅角緑内障または高眼圧症の眼内圧治療に用いる。第三相試験ではtimolol maleateと降圧作用が非劣性で、優越性の解析でもpが0.05を下回った。

点眼後にプロスタグランジンF2アルファと酸化窒素に分離する、NO供与薬。2010年にボシュロムがライセンスしたもので、NicoxのNO供与技術を用いた薬が米国で承認されたのは初めて。

リンク: Valeantのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年10月29日

2017年10月29日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アッヴィの抗IL-23p19抗体も第三相試験成功 
  • アムジェン、CETP阻害剤の自社開発を断念 
  • ロシュ、アバスチンの卵巣癌一次治療適応拡大を申請 
  • atalurenはやっぱり承認されず 
  • GSKの帯状疱疹ワクチンが米国で承認 
  • ソリリス、重症筋無力症に承認 
  • EU、Zinbryta(daclizumab)の規制を強化へ 


【新薬開発】


アッヴィの抗IL-23p19抗体も第三相試験成功
(2017年10月26日発表)

アッヴィはABBV-066/BI 655066(risankizumab)の第三相中重度乾癬治療試験が成功したことを明らかにした。偽薬や実薬とPASI90奏効率を比較したもので、ジョンソン・エンド・ジョンソンのStelara(ustekinumab、和名ステラーラ)を投与する群が設定された二本は何れも75%となり偽薬群(一本は2%、もう一本は5%)やStelara群(42%と48%)を上回った。Humira(adalimumab)対照試験では72%対47%で有意に上回った。

IL-23はTh17細胞が誘導する免疫に関与するサイトカインで、活性化した抗原提示細胞が発現し、T細胞をTh17細胞に分化させる。StelaraはIL-23とIL-12のサブユニットであるp40に結合するがrisankizumabはIL-23だけに関わるp19サブユニットに結合するヒト化抗体で、IL-12阻害に伴う有害事象を誘導しにくい可能性がある。

16年にベーリンガー・インゲルハイムから共同開発商業化権を取得したもの。Humiraで皮膚科チャネルに実績を持つアッヴィが販売、ベーリンガーは喘息症領域でコプロモするオプションを留保している。抗IL-23p19抗体は7月にジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab)が米国で承認、MSDのMK-3222(tildrakizumab)が欧米で承認審査中と、開発競争が活発化している。

リンク: アッヴィのプレスリリース

アムジェン、CETP阻害剤の自社開発を断念
(2017年10月25日発表)

アムジェンは、17/12期第3四半期決算発表リリースの中で、AMG 899の開発を断念し導出する考えであることも明らかにした。13年に田辺三菱製薬がオランダのデジマファーマに導出したCETP阻害剤で、アムジェンは15年にデジマを買収したばかりだが、MSDのanacetrapibの心血管アウトカム試験がフェールしたため見切りを付けた。

リンク: アムジェンのプレスリリース


【承認申請】


ロシュ、アバスチンの卵巣癌一次治療適応拡大を申請
(2017年10月26日発表)

ロシュは、Avastin(bevacizumab)を末期卵巣癌の一次治療に用いる適応拡大申請を米国で行い、受理されたと発表した。審査期限は来年6月25日。carboplatinとpaclitaxelのコースに併用し、終了後はAvastinだけの維持療法を続ける。GOG-0218試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン18.2ヶ月間とcarboplatin・paxlitaxelだけのコースの12.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.64で統計的に有意な差があった。

欧州や日本では既に承認されているが、米国はAvastinのPFS延長効果が必ずしも延命効果につながらないことからFDAが慎重なスタンスを取っており、適応拡大が遅れている。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認審査・委員会】


atalurenはやっぱり承認されず
(2017年10月25日発表)

PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)はTranslarna(ataluren)をナンセンス変異を持つデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として開発、EUでは14年に条件付き承認を取得したが、米国はFDAから審査完了通知を取得したことが発表された。第三相試験がフェールしたこと、承認申請を断行したがFDAに受理されず不服申立て手続きに訴えたこと、諮問委員会で11人の委員中10人が薬効確認不十分と判定したことを考えれば、意外感はない。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの多くはジストロフィン遺伝子に機能喪失変異を持つ。Translarnaは、変異により生まれた翻訳終了箇所を示す塩基配列を「読み過ごす」よう仕向ける作用を持つと考えられているが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーや嚢胞性線維症の臨床試験がフェールしたため、疑義も生じている。

リンク: PTCのプレスリリース

【承認】


GSKの帯状疱疹ワクチンが米国で承認
(2017年10月23日発表)

グラクソ・スミスクラインはShingrixが米国で承認されたと発表した。遺伝子組換え型帯状疱疹ワクチンで、MSDのZostavaxのような生ワクチンではなく、AS01Bアジュバントで免疫原性を強化している。Zostavaxは60歳以上が対象だがShingrixは50代に対する効果も確立しており、また、70歳以上でも効果が落ちない。二回接種で、合わせて280ドルで販売される模様。

ACIPワクチン委員会も50歳以上に接種を勧奨した。Zostavaxとどちらを選好すべきかも採決になり、15人の委員のうち8人がShingrixを選んだ。

Shingrixは昨年11月にEUで、今年4月には日本でも、承認申請された。

リンク: GSKのプレスリリース(10/23付)
リンク: 同(ACIP勧奨について、10/25付)

ソリリス、重症筋無力症に承認
(2017年10月23日発表)

カナダのアレクシオン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、Soliris(eculizumab、和名ソリリス)を難治性全身性重症筋無力症の治療に用いる適応拡大をFDAが承認したと発表した。神経筋接合部のアセチルコリン受容体を攻撃する自己免疫抗体を持つ患者が適応になる。米国の全身性重症筋無力症患者6~8万人のうち5~10%が対象になる模様。

EUでは今年8月に承認。日本でも3月に効能追加申請されたところ。

リンク: アレクシオンのプレスリリース

【医薬品の安全性】


EU、Zinbryta(daclizumab)の規制を強化へ
(2017年10月27日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの薬物監視・リスク評価委員会、PRACは、Zinbryta(daclizumab)の適応や肝機能監視を厳格化することを勧告した。医薬品科学的評価委員会であるCHMPの検討を経て実施される見込み。

ZinbrytaはIL-2の受容体のアルファチェーン、CD25に結合するヒト化抗体で、再発寛解型多発性硬化症の治療に用いる。規制強化の原因は自己免疫性肝障害のリスク。臨床試験では1.7%の患者で深刻な肝反応が発生、致死例もあった。自己免疫性なので予測は困難、投与を止めた後も6ヶ月間は発症の可能性がある。

PRACは、適応を二種類の疾病緩和的薬を試みても十分に反応せず他に適当な薬がない患者に限定し、治療開始前から終了の6ヶ月後まで少なくとも月一回の肝機能検査を行うことを勧奨した。

内容的にはEUと前後して承認した米国の適応・検査頻度を踏襲した格好だ。

Zinbrytaはアッヴィとバイオジェンが共同開発販売。活性成分はロシュが臓器移植時の免疫抑制剤として発売したことがあるが、商業上の理由で打ち切られた。

リンク: EMAのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年10月22日

2017年10月22日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • JNJ、抗IL-6抗体と抗CD123抗体でセットバック 
  • セルジーン、クローン病用薬の第三相を中間解析で打ち切り 
  • テバも抗CGRP抗体を承認申請 
  • BMS、オプジーボの黒色腫再発予防を適応拡大申請 
  • アストラゼネカ、抗PD-L1抗体を肺癌維持療法に適応拡大申請 
  • アストラゼネカ、PARP阻害剤を転移性乳癌に適応拡大申請 
  • VEGFR阻害剤が腎細胞腫一次治療に適応拡大申請 
  • FDA諮問委員会がsemaglutideの承認を支持 
  • FDAが第二のCAR-Tを承認 



【新薬開発】


JNJ、抗IL-6抗体と抗CD123抗体でセットバック
(2017年10月17日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗IL-6完全ヒト化抗体のCNTO 136(sirukumab)を中重度リウマチ性関節炎の治療薬として日米欧で承認申請していたが、断念することを決めた。2017年第3四半期決算に関するプレスリリースの中で公表したもの。

8月に開催されたFDA関節炎諮問委員会では13人の委員のうち12人が承認に反対した。臨床試験で100人年当りの死亡率が50mg群(4週毎皮注)で0.5、100mg群(2週毎皮注)で0.8と、偽薬群の0.2を大きく上回ったため。類薬が既に存在することもあり、FDAは安全性の確認が不十分と判定、審査完了通知を送付した。

CNTO 136はグラクソ・スミスクラインが共同開発していたが、今年7月に、パイプラインの選択と集中戦略に基づいて権利を返還した。

IL-6や受容体を標的とする抗体医薬は中外/ロシュのActemra(tocilizumab)が代表格で、リジェネロン/サノフィのKevzara(sarilumab)も今年、欧米で承認された。JNJも抗IL-6キメラ抗体のSylvant(siltuximab)が多発骨髄腫用薬として欧米で14年に承認されている。

JNJは、JNJ-56022473/CSL362(talacotuzumab)の臨床試験中止も発表した。オーストラリアのCSLがXencor(Nasdaq:XNCR)の固定領域改変技術を用いて創製しヤンセンにライセンスした抗CD123抗体で、急性骨髄性白血病のP2/3段階だった。理由は開示されていないが、CD3とCD123に結合するバイスペシフィック抗体のJNJ-63709178は、昨年、クリニカルホールドになった。

CD123を標的とする抗体医薬では、協和発酵キリンのポテリジェント抗体、KHK2823も第一相段階。

リンク: JNJのプレスリリース

セルジーン、クローン病の第三相を中間解析で打ち切り
(2017年10月19日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)はGED-0301(mongersen)の第三相クローン病試験を中止すると発表した。データ監視委員会が中間無益性評価に基づき勧告したもの。安全性に関しては群間の大きな偏りは見られなかったとのこと。二本目の第三相試験の開始は見送りになった。セルジーンは第二相潰瘍性大腸炎試験の全分析結果を待って次の方策を決定する考え。

GED-0301は、免疫抑制的サイトカインであるTGF-ベータ1の細胞内シグナル伝達を阻害するSMAD7を標的とする、核酸アンチセンス薬。アイルランドのNogra Pharmaから頭金7.1億ドルと開発販売目標達成金最大18.65億ドルで世界独占開発販売権を取得したもの。NEJMに論文刊行された第二相試験は良さそうな結果だったが、意外な転帰になった。

リンク: セルジーンのプレスリリース


【承認申請】


テバも抗CGRP抗体を承認申請
(2017年10月17日発表)

テバ(NYSE:TEVA)は米国でTEV-48125(fremanezumab)を片頭痛予防薬として承認申請したことを発表した。アムジェンを皮切りに各社が続々と承認申請する見込みの抗CGRP抗体の一つで、偏頭痛発作時に増加し鎮静化すると減少する、片頭痛に関与している可能性のあるcalcitonin gene-related peptideを標的としている。

ジェネンテックの中枢神経系スピンアウトであるRinatがRN-307として開発していたもので、Rinatを買収したファイザーが導出した企業をテバが14年に頭金2億ドルと後発債務6.25憶ドルで買収し入手した。

リンク: テバのプレスリリース

BMS、オプジーボの黒色腫再発予防を適応拡大申請
(2017年10月16日発表)

BMSはOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の適応拡大をFDAに申請し、受理されたことを明らかにした。ステージIIIbからIVまでの黒色腫の完全切除後に、高リスク患者の再発予防に用いる。エビデンスとなるCheckMate-238試験は中間解析で目的を達成。対照薬であるYervoyと比べて、無再発生存のハザードレシオが0.65と有意に優れていた。有害事象による治験離脱率は9.7%とYervoy群の42.6%を下回り、症例数906人のうち、治療関連の死亡はゼロだった(Yervoy群は2人)。

優先審査を受ける。審査期限は公表されていない。

リンク: BMSのプレスリリース

アストラゼネカ、抗PD-L1抗体を肺癌維持療法に適応拡大申請
(2017年10月17日発表)

アストラゼネカはImfinzi(durvalumab)を切除不能非小細胞性肺癌で化学放射線療法後の維持療法に用いる適応拡大を米国で承認申請し受理された。優先審査を受ける。審査期限は公表されていない。

承認申請の根拠となった第三相試験(日本の施設も参加)は、ステージIIIの非扁平上皮非小細胞性肺癌で白金薬レジメンによる一次治療と放射線療法を受けて疾病安定化あるいは部分・完全反応だった患者をImfinzi群と偽薬群に無作為化割付した。PD-L1発現は不問。結果は、Imfinzi群のPFS(無進行生存期間)がメジアン16.8ヶ月、偽薬群は5.6ヶ月となり、ハザードレシオは0.52、統計的に有意だった。共同主評価項目である全生存の解析は今後、行われる。

この用途で承認されればPD-L1/PD-1を標的とする抗体医薬では初めて。既に腫瘍学領域の代表的なガイドラインであるNCCNガイドラインには9月に採用されたとのこと。MSDのKeytruda(pembrolizumab)は一次治療に承認されているが適応はPD-L1高発現だけ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

アストラゼネカ、PARP阻害剤を転移性乳癌に適応拡大申請
(2017年10月18日発表)

アストラゼネカは、Lynparza(olaparib)を転移性乳癌に用いる適応拡大申請をFDAに行い、受理された。優先審査を受ける。審査期限は来年第1四半期。切除後再発予防または転移後にアンスラサイクリン系とタクサン系の薬による前治療歴を持ち(ホルモン陽性癌の場合はホルモン療法も)、生殖細胞系BRCA1/2変異がありher2陰性の転移性乳癌が適応になる。

第三相試験(日本も参加)では第三者査読後のメジアンPFS(無進行生存期間)が7.0ヶ月と化学療法群(capecitabine、vinorelbineまたはeribulin)の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.58、統計的に有意だった。全生存の解析は元々検出力不足で、ハザードレシオ0.90、95%信頼区間0.63-1.29となっている。有害事象による治験離脱は4.9%対7.7%でやや下回り、G3以上の有害事象の発生率も36.6%対50.5%で低かった。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

VEGFR阻害剤が腎細胞腫一次治療に適応拡大申請
(2017年10月16日発表)

Exelixis(Nasdaq:EXEL)はCabometyx(cabozantinib)を腎細胞腫一次治療に用いる適応拡大をFDAに承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は来年2月15日。

承認申請の根拠となった中高度リスクの転移性腎細胞腫を組入れた第二相試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が8.2ヶ月と一次治療の標準療法であるファイザーのSutent(sunitinib)の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.69、統計的に有意だった。全生存期間の解析は未成熟だがメジアン30.3ヶ月対21.8ヶ月、ハザードレシオ0.80、95%信頼区間0.50~1.26だった。

リンク: Exelixisのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がsemaglutideの承認を支持
(2017年10月18日発表)

FDA内分泌学代謝学薬諮問委員会は、ノボ ノルディスクが二型糖尿病治療薬として承認申請したNN9535(semaglutide)の臨床成績を検討し、17人の委員のうち16人が便益がリスクを上回ると判定した。一人は棄権したが、網膜安全性をもっと検討すべきという見解のようだ。

NN9535は週一回投与型のGLP-1作用剤で、血糖値だけでなく体重も減少する。3297人を組入れた心血管アウトカム試験では、MACE(主要有害心血管イベント)の発生率が6.6%と対照群(8.9%)比で非劣性だった。ポストホック分析だが優越性解析も成功。主として非致死的脳卒中と非致死的心筋梗塞が少なかった。

意外なのは糖尿病性合併症(硝子体出血、失明、治療など)の発生率が3.0%と対照群の1.8%を上回ったこと。特に、治験開始前から糖尿病性網膜症だった患者の発生率が8.2%対5.2%と増加した。

FDAの分析によると血糖値が短期間に上昇あるいは低下すると網膜に悪影響が出る。糖尿病の代表的なアウトカム試験の一つであるDCCTでも、血糖値の強化治療(今日の標準療法)を行った群は当時の標準療法群よりも網膜症が多く発生したが、3年目以降は逆転したとのことだ。網膜合併症の判定方法が必ずしも厳格でなかったこともあり、FDAは重要視していないようだ。他の新薬の心血管アウトカム試験では見られなかった現象なので釈然としないが、一般的に、FDAの判断は信憑性が高い。

ノボはEmisphere TechnologiesのEligen技術を用いてsemaglutideを錠剤化、第三相試験を実施している。GLP-1作用剤の経口剤は初めてなので注目される。

リンク: ノボのプレスリリース


【承認】


FDAが第二のCAR-Tを承認
(2017年10月18日発表)

FDAはYescarta(axicabtagene ciloleucel)を大細胞型B細胞リンパ腫の三次治療薬として承認した。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、転換濾胞性リンパ腫(TFL)、そして原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)が適応になる。

ギリアド・サイエンシズが8月に119億ドルで買収したKite Pharmaが承認申請したCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法で、患者からアフェレーシスで採取したT細胞に、B細胞リンパ腫で発現するCD19とT細胞活性化副刺激因子であるCD3ゼータやCD28などを繋げた遺伝子を導入し、患者の体内に戻すと、B細胞を攻撃する。8月に急性リンパ性白血病に承認されたノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel)に次ぐCAR-Tの第二号。

報道によると価格は37.3万ドルで、企業買収プレミアム(市場価格に対する上乗せ)を転嫁したのか、想定より高い。Kymriahは47.5万ドルだが白血球アフェレーシスの費用を含んでいて、また、治療に反応しなかったら無料という成果報酬制を医療保険などに提案している。

第二相試験では完全寛解率が51%と、既存のサルベージ療法が5%に留まるのと比べて良い成果を上げた。深刻な有害事象はサイトカイン放出症候群や神経学的毒性。第二相では治療時発現有害事象による死亡が3例あったが、早期に発見して中外/ロシュのActemra(tocilizumab)や抗癲癇薬levetiracetam(UCBのイーケプラの活性成分)で治療するプロトコルを導入した後は改善した模様だ。

日本は今年1月に第一三共が製造開発販売権を取得している。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ギリアドのプレスリリース







今週は以上です。

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2017年10月15日

2017年10月15日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • JNJ、『第二のイクスタンジ』を承認申請 
  • イーライリリー、Verzenioの一次治療適応拡大申請と肺癌適応拡大フェール 
  • 今月のCHMPは新薬なし 
  • 米国初の遺伝子療法が諮問委員会を通過 
  • Rhoキナーゼ阻害剤も諮問委員会を通過 


【承認申請】


JNJ、『第二のイクスタンジ』を承認申請
(2017年10月11日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはARN-509(apalutamide)を非転移性去勢抵抗性前立腺癌用薬として米国で承認申請した。この用途で正式に承認されれば初。

ファーザー/アステラス製薬のXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)と同じ学者が創製した高力価アンドロゲン・シグナル・インヒビターで、JNJは13年に開発会社を一時金6.5億ドル、達成報奨金最大3.5億ドルで買収した。

第三相試験は、前立腺癌のアンドロゲン枯渇療法を施行中にPSA値が急上昇し始めた、しかしまだ転移はしていない患者1200人を組入れて、240mgを一日一回経口投与する群と偽薬群の無転移生存期間を比較した。データは今後、学会発表される予定。

前立腺癌の治療は進行段階に応じて細分化されており、XtandiもJNJのZytiga(abiraterone)も一つ一つ、適応を増やしてきた。ARN-509も今後は他剤とバッティングする用途で開発を進めることになる。Zytigaとの併用がどの程度上手く行くかが注目点の一つになりそうだ。

リンク: JNJのプレスリリース

イーライリリー、Verzenioの一次治療適応拡大申請と肺癌適応拡大フェール
(2017年10月12日発表)

イーライリリーのCDK4/6阻害剤、Verzenio(abemaciclib)は9月に米国でホルモン受容体陽性her2陰性乳癌に承認されたところ。内分泌療法歴を持つ患者にFaslodex(fulvestrant、和名フェソロデックス)と、または、内分泌療法と化学療法歴を持つ患者のサルベージに単剤で、用いる。CDK4/6阻害剤の開発・販売はファイザーやノバルティスが先行しているので適応拡大が急務だが、先週は、一次治療適応拡大申請と肺癌の第三相試験フェールが発表された。

一次治療はアロマターゼ阻害剤併用で、PFS(無進行生存期間)がメジアン16.4ヶ月とアロマターゼ阻害剤だけの群の9.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、統計的に有意だった。治療時発現有害事象は好中球減少症や下痢が対照群より多かった。下痢の発生率は他社のCDK4/6阻害剤と見比べてもやや高い。米国で承認申請が受理され、優先審査指定された。

また、欧州や日本で9月に承認申請したことも明らかにされた。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

一方、肺癌適応拡大試験は、変異krasを持つ非小細胞性肺癌の二次・三次治療における効用をロシュのEGFR阻害剤、Tarceva(erlotinib)と比較したが、全生存期間を有意に延長することはできなかった。Tarceva群の成績が過去の治験より良かったとのことだ。データは今後、学会発表される予定。

PFS(無進行生存期間)やORR(客観的反応率)では活性が見られた由だが、盲検ではないので、主観的評価より全生存のような客観性の高いデータのほうを信じるべきだろう。

リンク: イーライリリーのプレスリリース(10/10付け)


【承認審査・委員会】


今月のCHMPは新薬なし
(2017年10月13日発表)

欧州の薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、10月の会議で以下の適応拡大に肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。尚、今月はロシュが多発硬化症用薬として申請した抗CD20ヒト化抗体、Ocrevus(ocrelizumab)の結論が期待されたが意見がまとまらなかったようで、画期的新薬に関する肯定的意見はゼロだった。

リンク: EMAのプレスリリース

まず、ジョンソン・エンド・ジョンソンのテストステロン合成阻害剤、Zytiga(abiraterone)。転移性ホルモン感受性前立腺癌で高リスクの新患にアンドロゲン枯渇療法(ADT)と併用することが支持された。癌の進行の早い段階で用いることができるようになり、対象患者数が広がる。日米でも適応拡大承認審査中。

現在の適応は、ADTがフェールしたが症状は未だない、あるいは軽いため化学療法が適応にならない患者と、ADTも化学療法(docetaxel)も受けたが進行した患者。

リンク: EMAのプレスリリース

次に、中外製薬が創製し海外ではロシュが販売するAlecensa(alectinib)。現在は、同じALK阻害剤であるファイザーのXalkori(crizotinib)がフェールしたALK陽性非小細胞性肺癌に承認されているが、二次治療限定を解除することが支持された。日本で実施されたJ-ALEX試験がエビデンス。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカがBMSから買収したGLP-1作用剤、Bydureon(exenatide、和名ビデュリオン)は二型糖尿病治療薬として承認されているが、基礎インスリンに併用することも支持された。Byetta(exenatideの即放製剤)の開発段階で実施された試験の成績が悪く、インスリンを減らしてGLP-1作用剤で補うのは難しい印象があったが、用量に注意すれば不可能ではないのだろう。

リンク: EMAのプレスリリース

米国初の遺伝子療法が諮問委員会を通過
(2017年10月12日発表)

FDAのCTGT(細胞、組織、遺伝子療法)諮問委員会は、Spark Therapeutics(Nasdaq:ONCE)が承認申請したLuxturna(voretigene neparvovec)の臨床成績を検討し、16人の諮問委員全員が便益がリスクを上回ると判定した。承認審査期限は来年1月12日。Spark社はフィラデルフィア小児病院(CHOP)の遺伝子治療研究を商業化するために設立された会社。遺伝子療法が承認されれば米国初。

適応・効能は、両アレルRPE65調停性遺伝性網膜疾患による視力低下の改善。RPE65は光を感じるのに必要なレチナールのリサイクルに係る遺伝子で、変異があると視力が次第に低下する。患者数は欧州5ヶ国と米国で合わせて3500人と推定されている。Luxturnaはアデノ随伴ウイルスをベクターとしてRPE65遺伝子を網膜下に導入する。臨床試験では一回だけ投与した。

第三相試験ではMLMTという新しい検査方法を用いて薬効を評価した。暗い部屋の中で矢印などに従ってドアまで歩行する能力を様々な光量の下でテストするもので、試験薬群は偽薬群を1.6点上回り、統計的に有意な差があった。偽薬対照試験終了後に偽薬群からクロスオーバーした患者も含めると29人中27人で改善が見られた。視力は偽薬比9文字改善したが統計的に有意ではなかった。臨床試験全体で深刻な有害事象は施術関連中心窩間伐による視力低下と細菌性眼内炎の二例。軽中度の副作用も、専ら、注射に伴うものだった。

FDAは、MLMTで1.6点という治療効果が臨床的に重要であるかどうか、そして、深刻副作用に配慮して対象を限定すべきかどうか(年齢制限や、効果が小さいので進行した患者を除外するなど)を諮問したが、諮問委員の評価は概ね良好だった。

リンク: Sparkのプレスリリース

Rhoキナーゼ阻害剤も諮問委員会を通過
(2017年10月13日発表)

FDA皮膚科眼科用薬諮問委員会は、Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)が承認申請したRhopressa(netarsudil mesylate)を検討し、薬効に関しては10人全員が、便益がリスクを上回るかどうかは9人が、支持した。大きな問題はなさそうなので来年2月28日の審査期限までに承認されるのではないか。

緑内障の治療に用いるRhoキナーゼ阻害剤の点眼液で、一日一回投与で足りることが特徴。効果は完璧ではなく、第三相試験の一本目は降圧作用がtimolol比非劣性ではなかった。サブセグメント分析で眼圧が26mmHg以上の患者(緑内障の新患の2割が該当)の成績が見劣りしたため、二本目の試験の解析対象を20~25mmHgの患者だけに変更したところ、非劣性解析に成功した。従って、26mmHg以上は適応外とされるだろう。

効果がやや弱い場合は増量を考えることになるが、Rhopressaは一日二回投与試験のドロップアウトが多かったので、無理そうだ。18年に米国で承認申請する予定のlatanoprost配合剤は、眼圧が各活性成分だけより2~3mmHg大きく低下するので、高眼圧患者の代替的選択肢になりそうだ。

リンク: Aeria社のプレスリリース





今週は以上です。

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2017年10月8日

2017年10月8日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • aTTP治療薬の第三相が成功 
  • iclaprim、10年を経て再承認申請へ 
  • イグザレルト、ESUS試験はフェール 


【新薬開発】


aTTP治療薬の第三相が成功
(2017年10月2日発表)

ベルギーのAblynx(Euronext Brussels:ABLX)は、ALX-0081(caplacizumab)の第三相試験が成功したと発表した。後天性血栓性血小板減少性紫斑症(aTTP)の急性期治療効果を検討したもので、主評価項目である血小板数正常化までの期間が偽薬比有意に短かった。数値は未発表。

臨床的効能を検証する副次的評価項目は、四項目のうち二項目が成功。aTTP関連死亡・再発・主要血栓塞栓イベントの複合評価項目が偽薬比74%減(主として再発が少なかった)。投与中止後28日間のフォローアップ期間も含めて試験期間中のaTTP再発が67%減少した。

一方、出血性有害事象の発生率は66%と偽薬群の49%を上回ったが、多くは軽中度だった。

aTTPは、フォン・ヴィレブランド(vW)因子を切断するADAMTS13という酵素の機能不全が原因でvW因子の塊ができて毛細血管が狭隘化、赤血球が通過できず破壊される。急性期治療は血漿交換が有効だが、それでも死亡率15%と言われている。

ALX-0081はvW因子を標的とする抗体医薬で、特徴は軽鎖を持たないこと。同社がナノバディと呼ぶ技術で、通常の抗体と比べて分子量が12~15kDaとやや小さく、親和性が高く安定的で、投与方法がフレキシブルとのこと。第三相では、毎日血漿交換療法を行い、免疫抑制剤も使った上で、偽薬またはALX-0081を、初回は10mgをボーラス静注、その後は同量を一日一回、皮注した。

Ablynxは18年に米国で承認申請する計画。EUは今年2月に第二相試験のデータ(血小板数正常化まで3日、偽薬群は4.9日)に基づいて承認申請済み。

リンク: Ablynxのプレスリリース

iclaprim、10年を経て再承認申請へ
(2017年10月4日発表)

Motif Bio(Nasdaq:MTFB)は、MTF-100(iclaprim)の二本目の第三相試験成功を発表した。急性細菌性皮膚皮膚構造感染症(ABSSSI)の治療効果をvancomycinと比較したもので、一本目と同様に、奏効率が米国基準でもEU基準でも非劣性だった。18年第1四半期に欧米で承認申請する計画。

iclaprimはMRSA作用性広スペクトラム抗生剤でグラム陽性菌による感染症の治療に用いる。ロシュが創製、抗生剤分野のスピンアウトであるArpidaが開発して08年に複雑皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認申請したが、FDAも諮問委員会も、EUのCHMPも、承認を認めなかった。

難点は二つあり、一つは非劣性解析の方法。第三相試験は二本とも奏効率がlinezolid比非劣性と判定されたが、非劣性マージン(奏効率の差の95%下限)が12.5%とやや甘く、FDAの基準である10%を用いるとフェールする。第二はQT延長リスク。linezolid群は1~2ミリ秒延びる程度だったが、iclaprim群は6~8ミリ秒延びた。QT延長は必ずしも不整脈につながるとは限りないが、稀だが突然死のリスクを高める可能性があり、回避できるなら回避したほうが良いし、甘受するなら便益を明確にしたい。

Arpidaは開発を断念。その後、iclaprimの開発販売権は転々としたが、最終的にMotif Bioが入手、FDAや諮問委員会の意見に則したデザインで再挑戦。今回の成功につながった。

FDAからABSSSI及びHAP(院内感染肺炎・・・別途、第三相試験中)用途でQIPD(認定感染症治療薬指定)を得ており、承認時には一定期間の市場独占権や換金可能な優先審査バウチャーを獲得できる。大手製薬会社が抗生物質の開発に熱意を喪失したことに危機感を感じて米国議会が導入した制度がよくワークしており、もしインセンティブが無かったらiclaprimはお蔵入りしていたかもしれない。

それはそれとして、承認されるかどうか、売れるかどうかは未だ不透明なところが残っている。最初の第三相と対照薬を変えたのは、FDA諮問委員会の助言も得ているので、おそらく問題はないだろうが、他に何か弱点が見つかった時に減点材料になりかねない。安全性はQT延長リスクが減点だが、腎毒性が小さく腎臓疾患を持つ患者に使いやすいのは加点材料。抗生物質は承認審査の過程で稀だが深刻なリスクが表面化することがしばしばあり、油断を自戒しなければならない。

尚、治療時出現有害事象は、それによる治験離脱は一本はvancomycin群と同程度、もう一本は少ない。深刻例も一本は同程度、もう一本は少なく、死亡例は二本とも試験薬群がゼロ、vancomycin群一例だった。

リンク: Motifのプレスリリース

イグザレルト、ESUS試験はフェール
(2017年10月5日発表)

バイエルとジョンソン・エンド・ジョンソンは、経口Xa阻害剤、Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)のNAVIGATE ESUS試験がフェールしたことを明らかにした。発症後間もない、塞栓源を特定できない塞栓性脳卒中(ESUS)の患者7214人を31ヶ国の施設で組入れて、Xarelto(15mgを一日一回)とアスピリン(100mg一日一回)の二次予防効果を比較したが、独立データ監視委員会が中間解析で無益性を認定した。

効果の面ではアスピリンを有意に上回る確率は極めて低いと判定された。安全性主評価項目である大出血(ISTH基準)は両群とも少なかったが、Xarelto群のほうが多かった。

Xareltoは様々な血栓塞栓性疾患に承認されていて、脳梗塞では心原性脳卒中予防に用いられている。心房細動患者は心臓の血流が滞って血栓ができることがあり、流れて脳血管で詰まると心原性脳梗塞になる。一方、ESUSは検査をしても血栓ができた原因が分からない。虚血性脳卒中の25%が該当すると言われる。塞栓ならXa阻害剤が有効であっても不思議はなかったが、残念な結果になった。

リンク: 両社のプレスリリース





今週は以上です。

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2017年10月1日

2017年10月1日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • フェンフルラミンのドラベ症候群試験が成功 
  • 5HT6アンタゴニストのアルツハイマー病試験がまたフェール 
  • ロシュ、パージェタのアジュバント適応拡大を申請 
  • FDA諮問委員会はPTCの筋ジストロフィー用薬を支持せず 
  • イーライリリーのCDK4/6阻害剤が早くも承認 
  • ノボ、アスパルトの新製剤が米国でも承認 
  • DupixentがEUでも承認 


【新薬開発】


フェンフルラミンのドラベ症候群試験が成功
(2017年9月29日発表)

米国カリフォルニア州の希少疾患用薬開発会社、Zogenix(Nasdaq:ZGNX)は、ZX008(fenfluramine hydrochloride)の第三相ドラベ症候群試験が成功したと発表した。もう一本進行中で、結果を見て18年下期に欧米で承認申請する計画。

ドラベ症候群は乳幼児期から痙攣発作を起こす。多くはナトリウムチャネル遺伝子の機能低下変異を持つ。fenfluramineは1990年代にダイエット薬としてブームになったが、心臓弁膜症や肺高血圧症のリスクが表面化、メーカーは数兆円のPL訴訟和解金を拠出した。当時の用量は一日60~120mg。ZX008は経口液で用量は小さい。今回の試験では一日0.8mg/kgと0.2mg/kgをテストしたところ、痙攣発作頻度が治療前(平均で40回/月)と比べて各72%と33%減少、両群とも偽薬群の17%減を有意に上回った。

二次的評価項目の多くも有意差があった由だ。深刻有害事象は各群12.5%、10.3%、10.0%。有害事象による治験離脱は各群39~40人のうち5人、ゼロ、ゼロとなっており、高用量は効果も高いが忍容性も若干悪化するようだ。尚、この試験は滴定を導入している。

上記のデータは、北米試験と欧豪試験の事前に計画された統合解析とのこと。治験登録によれば目標症例数はどちらも120人だが、統合解析対象は119人なので、患者組入れが進まず途中でプロトコルを変更したのかもしれない。

もう一本の第三相は、ドラベ症候群の標準的治療法であるstiripentol、valproate、そしてclobazamの三剤併用している患者に追加する効果を検討しており、こちらの方がハードルは高そうだ。薬物相互作用がある模様で、第1コフォートで薬物動態などを探索、モノセラピー時の0.8mg/kgに相当する0.5mg/kgを選択し、第2コフォートで偽薬対照試験を実施している。組入れは各群40例。

リンク: Zogenixのプレスリリース

5HT6アンタゴニストのアルツハイマー病試験がまたフェール
(2017年9月26日発表)

Axovant Sciences(Nasdaq:AXON)は、intepirdineの第三相軽中度アルツハイマー病試験がフェールしたと発表した。認知機能評価スコアであるADAS-Cogも、日常生活機能スコアであるADCS-ADLも偽薬群比有意な差が無かった。

intepirdineはスミスクライン・ビーチャムがSB742457として開発した5HT6アンタゴニスト。後期第二相試験がフェールし開発中止となったが、14年にAxovantの親会社であるRoivant Neurosciencesが開発販売権を取得、第三相を断行した。5HT6アンタゴニストはルンドベックのLu AE58054(idalopirdine)も第三相試験二本がフェールした。

intepirdineはレヴィ―小体性認知症の後期第二相試験も進行中で、年内に開票する見込み。アルツハイマー試験で用いた35mgに加えて、5-HT2A作用が増強される70mgもテストしている。

リンク: Axovantのプレスリリース


【承認申請】


ロシュ、パージェタのアジュバント適応拡大を申請
(2017年9月29日発表)

ロシュはPerjeta(pertuzumab、和名パージェタ)をher2陽性早期乳癌の切除術後アジュバント療法に用いる適応拡大申請を米国で行い、受理された。優先審査で、期限は来年1月28日。

Perjetaはher2のHercetptin(trastuzumab)とは異なった箇所に結合する抗2C4ヒト化抗体で、her2がher1やher3とヘテロダイマーを形成するのを妨げる。これまでにher2陽性転移性乳癌の一次治療とher2陽性早期乳癌のネオアジュバント(切除前に腫瘍を小さくしておく)療法に承認されている。今回も含めて、Herceptin及び化学療法薬と併用するので費用が嵩む。

アジュバントにおける効用はAPHINITY試験で明らかにされた。浸潤性乳癌の再発・死亡のハザードレシオは0.81(95%信頼区間0.66~1.00)、p=0.045。3年浸潤性乳癌無再発生存率は94.1%と偽薬群の93.2%を上回った。統計的に有意だがギリギリセーフなので強いエビデンスとは言えず、治療効果自体もそれほど大きくない。薬にも限界効用逓減則が当てはまることを思い出させる。

全生存期間の解析は未成熟で、ハザードレシオ0.89、95%信頼区間は0.66~1.21となっている。方向性は悪くないが、乳癌の薬は心毒性を持つものが少なくなく、HerceptinもPerjetaも心臓有害事象が若干増加するので、リスクを明確に上回る便益が欲しいところだ。くどいようだが、費用が嵩むし。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会はPTCの筋ジストロフィー用薬を支持せず
(2017年9月28日発表)

FDAの末梢中枢神経系薬諮問委員会は、PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)がデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬として承認申請したTranslarna(ataluren)を検討し、11人の委員のうち10人が薬効の確認が不十分と判定した。審査期限は10月24日。大方の予想通り、承認されないだろう。

DMDの多くはジストロフィンの遺伝子に欠損があり機能喪失・低下している。ストップコドンという翻訳中止箇所を示す塩基配列が出来てしまったタイプにアミノグリコシドを投与すると変異箇所をリードスルー(読み過ごす)、という発見を受けて長期投与できる物質を探索した結果、生まれたのがatalurenだ。話は似ているが、昨年米国で承認されたSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)のような、核酸医薬ではない。

臨床成績は失望的で、第二相試験がフェール。それでも事後的サブグループ分析に基づいてEUに承認申請し、一旦は否定的意見を受けたものの、不服申し立てが奏功し、ジストロフィン遺伝子にナンセンス変異を持つ、5歳以上で歩行可能な患者に限定して条件付き承認を得ることができた。

米国はFDAが承認申請を認めなかったため第三相試験を開始してからローリング承認申請を開始したが、治験がフェールした。しかし、EU承認で強気になったのか、再び申請し、一旦は受理拒否となったものの、不服申し立てが奏功して受理させることができた。

もう一つ、PTCを勇気付けたであろうことはExondys 51の承認だ。FDAの承認審査担当部署は承認に反対したが、鶴の一声で逆転した。その後、担当部署のヘッドはFDAを去り、鶴女史は健在、米国大統領とFDA長官は規制緩和論者に交代した。エビデンスの弱い薬の承認を取ろうと思ったら、チャンスだ。

尤も、Exondys 51がジストロフィンを増やすことは確認されており、論点は、測定方法の妥当性と、臨床的な意義(筋力増強に結び付くかどうか)だった。atalurenはナンセンス型嚢胞性線維症の第三相試験もフェールしており、作用機序が疑わしくなっている。それだけに、神風が吹かない限り、承認されないだろう。


【承認】


イーライリリーのCDK4/6阻害剤が早くも承認
(2017年9月28日発表)

イーライリリーがホルモン受容体陽性her2陰性転移性乳癌用薬として申請したVerzenio(abemaciclib)がFDAに承認された。適応・用法は、ノバルティスのFemara(letrozole)のような内分泌療法の治療歴を持ち化学療法は未経験の患者にfulvestrant(アストラゼネカのFaslodex)と併用、または、内分泌療法及び化学療法を経験済みの患者にモノセラピーで用いる。承認申請が受理されたのは7月なのでスピード承認だ。

細胞周期進行に関わるCDK(サイクリン依存キナーゼ)4と6を阻害する経口剤で、前者の用途では150mgを、後者は200mgを、一日二回服用する。CDK4/6阻害剤は15年に米国で承認されたファイザーのIbrance(palbociclib)、今年3月承認のノバルティスのKisqali(ribociclib)に次ぐ三剤目。

CDK4/6阻害剤はin vitroでエストロゲンブロッカーとシナジーが見られ開発が活発化したがモノセラピー試験の成績は今一つで、好成績を上げて承認されたのはVerzenioが初。同じCDK4/6阻害剤でも力価が他の薬より4寄りであるため、好中球減少症のリスクが比較的小さく、休薬期なしに連続投与できることが寄与しているのかもしれない。

三剤の併用効果を比べると、まず、一次治療letrozole併用。Verzenioは未承認だが試験は既に成功しており早晩、承認申請されるだろう。PFS(無進行生存期間)をletrozole単剤群と比べたハザードレシオは、Ibranceが0.57、Kisqaliは0.55、Verzenioは0.54で大差なく、95%信頼区間はかなり重なっている。主戦場になりそうな一次治療に関しては三剤大差ないと考えておけば良さそうだ。

尚、Verzenioの試験はletrozoleの代わりにanastrozoleを用いることも可能だったが、単剤投与群のメジアンPFSは三試験とも14ヶ月余で同程度。

二次治療はIbranceがハザードレシオ0.46、Kisqaliは未承認、Verzenioは0.55。信頼区間はかなり重なっているが点推定値は結構違う。fulvestrant単剤投与群のメジアンPFSが各4.6ヶ月と9.3ヶ月で大きな差があり、この二本の試験を単純比較しないほうが良いかもしれない。

個性が出るのが副作用だ。Verzenio以外はG3以上の好中球減少症が高頻度で発生する。一方、Verzenioは他の二剤と異なりG3下痢の発生率が20%と高くG3血小板減少症が4%程度で発生する一方で、静脈血栓塞栓も観察されている。一次治療試験では有害事象による死亡が2.4%と対照群の1.2%を上回ったが、死因は肺感染症3例、塞栓2例、脳虚血1例などだった。

三剤とも、骨髄抑制をモニターするために治療開始前と治療中は全血球計算を行う。KisqaliとVerzenioは肝機能検査も必要。KisqaliはQT延長が見られるためECGも行う。

こうしてみると、最初に発売され適応患者数が一番多いIbranceの優位は、モノセラピー用途を除いて、揺るがないだろう。ノバルティスがFemaraを同梱したパッケージを割安な価格で発売したような、マーケティング面の工夫が必要だろう。

リンク: FDAのプレスリリース

ノボ、アスパルトの新製剤が米国でも承認
(2017年9月29日発表)

ノボ ノルディスクのFiaspがFDAに承認された。糖尿病の治療に用いるミールタイム・インスリンで、同社のインスリン・アスパルトにビタミンとアミノ酸を添加して薬力学・動態を食後のインスリン分泌に近づけた。EUでは今年1月に承認。

リンク: ノボのプレスリリース

AAAのGEP-NET用薬がEUで承認
(2017年9月29日発表)

フランスのAdvanced Accelerator Applications(Nasdaq:AAAP)のLutatheraがEUで承認された。ソマトスタチン様ペプチドにLu-177放射性核種を結合したもので、胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP-NET)のうち、ソマトスタチン受容体陽性で、切除不能、転移性、進行性、G1/G2分化腫瘍の成人に用いる。

米国でも審査中で審査期限は来年1月26日。日本は富士フィルムRIファーマが権利を取得し、今月、ブリッジング試験を開始したところ。

AAAと言えば、GEP-NET用薬を複数ラインアップしているノバルティスがAAA社の買収を狙っていると一部で報道されている。

リンク: AAAのプレスリリース

DupixentがEUでも承認
(2017年9月28日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発した抗IL-4受容体アルファサブユニット抗体、Dupixent(dupilumab)がEUで承認された。中重度のアトピー性皮膚炎で全身性治療の対象者が適応になる。300mg(初回は600mg)を二週間に一回、皮注する。米国では今年3月に承認。日本は2月に承認申請された。 喘息症でも開発中。

米国では薬剤費が年間2~3万ドル前後の高価な薬だが、医薬品の費用対効果を査定するInstitute for Clinical and Economic Researchは年3万ドル相当と踏んでおり、効果や代替的治療法の少なさを考えると、贅沢は言えないのだろう。

リンク: 両社のプレスリリース






今週は以上です。

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2017年9月24日

2017年9月24日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • hATTRアミロイドーシス治療試験が成功 
  • bcl-2阻害剤のリツキサン併用試験が成功 
  • プレウロムチリン系抗生剤の最初の第三相が成功 
  • FDA諮問委員会、スーテントの適応拡大に意見分かれる 
  • JNJの抗IL-6抗体はFDA審査完了 
  • オプジーボ、米国は肝細胞腫を承認 
  • EUでバベンチオなどが承認 
  • Ocalivaは適正使用されていない? 


【新薬開発】


hATTRアミロイドーシス治療試験が成功
(2017年9月20日発表)

Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq: ALNY)は、ALN-TTR02(patisiran)の第三相遺伝性ATTRアミロイドーシス試験が成功したと発表した。年内の米国を皮切りに世界で承認申請する予定。サノフィ・グループのジェンザイムが販売権を持つ日本の施設も第三相に参加しており、18年に承認申請予定。

AlnylamはsiRNA技術を元に遺伝子疾患の治療薬などを開発している。他の開発品で副作用が表面化し、patisiranの第三相試験のデータ監視委員会が続行の当否を検討するなど、心配な話が続いただけに、一安心だ。

この試験はポリニューロパチーを合併する患者225人を、試験薬群(0.3mg/kgを3週毎に70分点滴)と偽薬群に2対1割付してニューロパチー改善効果を検討した。主評価項目である18ヶ月間のmNISの変化でも主要な副次的項目であるQOL指標でも有意差が見られ、試験薬群は指標が改善した。データは未発表。

深刻有害事象発生率は36.5%で偽薬群の40.3%より低く、死亡率は4.7%対7.8%、有害事象による治験離脱も4.7%対14.3%と良好だった。病気の症状に関連する有害事象が少なかったのだろう。できすぎのような感じもするが...

リンク: Alnylamのプレスリリース

bcl-2阻害剤のリツキサン併用試験が成功
(2017年9月18日発表)

ロシュは、Venclexta(venetoclax、欧州名Venclyxto)の第三相再発性難治性CLL(慢性リンパ性白血病)試験が成功したと発表したRituxan併用で、PFS(無進行生存期間)を標準療法の一つであるRituxan(rituximab、和名リツキサン)とTreanda(bendamustine、和名トレアキシン)の併用と比較したところ、有意に上回った。データは未発表。

16年に欧米でCLL用薬として承認されたが、適応は17p欠損型など一部に限られていた。今回の用法が承認されれば市場が拡大する。

Venclextaは、CLLで過剰発現するアポトーシス抵抗性に係る酵素、bcl-2を阻害する。深刻有害事象は肺炎、熱性好中球減少症、自己免疫性溶血性貧血、腫瘍壊死症候群などで、少なくとも初回投与時は入院してモニターする必要がある。ロシュ・グループのジェネンテックとアッヴィの共同開発で、米国はこの二社が共同販売、海外はアッヴィが販売する。

リンク: ロシュのプレスリリース

プレウロムチリン系抗生剤の最初の第三相が成功
(2017年9月18日発表)

Nabriva Therapeutics(Nasdaq:NBRV)は、BC-3781(lefamulin)の第三相市中細菌性肺炎試験が成功したと発表した。最初は静注用製剤、数日後に経口投与製剤にスイッチ可、という用法で、効果をmoxifloxacin(最初は静注、経口剤にスイッチ可、MRSA疑い例はlinezolidを追加)と比較したところ、奏効率が若干下回ったものの95%下限が閾値を上回り、非劣性解析が成功した。

抗生剤の薬効評価基準は米国とEUで異なるため本試験は両方解析した。米国基準であるECR(早期臨床的反応率)は87.3%対90.2%で2.9%下回ったが、95%下限は-8.5%となり非劣性マージンの-12.5%をクリアした。EU基準のCE-TOC(治療終了数日後の臨床的反応率)も点推定値が2~3%下回ったが95%下限は-8%強で非劣性マージンの-10%を上回った。

治療時発現有害事象は各群38%程度、治療時発現有害事象による治験離脱は2.9%対4.4%、死亡率は2.2%対1.8%で両群大差なかった。

もう一本、静注用製剤だけの第三相試験の結果が18年第1四半期に出た後で、承認申請する考え。

リンク: Nabrivaのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、スーテントの適応拡大に意見分かれる
(2017年9月19日発表)

FDA腫瘍学薬諮問委員会がファイザーのSutent(sunitinib、和名スーテント)の適応拡大申請を検討した。腎細胞腫の摘出術を受けたが再発リスクが高い患者にアジュバント療法を施行して再発・死亡リスクを削減するもので、臨床試験は成功したが、諮問委員会の評価は賛成6人、反対6人と真っ二つに分かれた。

Sutentは末期腎細胞腫などに用いるVEGFR阻害剤。腎摘出術後アジュバント試験は北米の施設でSutentとバイエルのNexavar(sunitinib)をテストしたASSURE試験が中間解析で無益判定となった。受容体ではなくVEGFを標的とするロシュのAvastin(bavacizumab)も余命の長い疾患の試験が今一つだったので、アジュバントには適さないのかと思っていたが、Sutentを偽薬と比較したS-TRAC試験が成功した。

一日50mgを4週間服用して2週間休むスケジュールで1年間施行したところ、DFS(無病生存期間)がメジアン6.8年と偽薬群の5.6年を上回り、ハザードレシオは0.76、95%信頼区間0.59~0.97、p=0.03となった。5年無病生存率は59%対51%で、最低限望まれる治療効果の目安である10%に近い差が出ている。

全生存期間は元々十分な検出力がなく、現状ではイベント数が少ないために、ハザードレシオ0.92、95%信頼区間0.66~1.28、5年生存率81.4%対81.9%と、効くのか効かないのか分からない。

有害事象による永続的中止率は28%、原因は手掌足底発赤知覚不全症候群や高血圧など。偽薬群は5%だった。G3/4有害事象発生率は各60%と15%だった。

この試験の論点は、第一に、病状の放射線学的評価は腎細胞腫でも余命とリンクするか。他の癌とは異なり腎細胞腫では評価方法が確立していない模様だ。本試験の再発判定は殆どが放射線学的評価だった。全生存の解析結果と食い違ったのは、放射線学的評価手法が妥当ではないことを示しているのかもしれない。

第二に、エビデンスの頑強性。95%上限やp値は閾値とそれほど乖離しておらず、ボーダーライン上と言えなくもない。もう一本の試験はフェールしたのだから、真の治療効果はASSURE試験とS-TRAC試験の中間程度と考えるべきかもしれない。

第三は、副作用。高リスクとは言え今現在は完治し今後も再発しないかもしれない人に副作用の苦しみを与えるのはいかがなものか、First, Do not halmという意見だ。延命効果がないなら再発してから使っても遅くないかもしれない。

難しい問題だが、サブグループ分析で再発リスクが著しく高い人たちにも有効であったことが確認できるならば、適応拡大を承認して個々の患者に対する採否は医師に委ねるという方法もあるだろう。

リンク: ファイザーのプレスリリース

JNJの抗IL-6抗体はFDA審査完了
(2017年9月22日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、CNTO 136(sirukumab)を中重度活性期リウマチ性関節炎の治療薬として日米欧で承認申請していたが、米国に関しては審査完了通知を受領した。安全性に関する臨床データが不十分と判定されたようだ。

8月の関節炎諮問委員会でも13人の委員のうち12人が反対した。死亡リスクや心血管イベント、感染症、腫瘍などが高まる傾向が見られたからだ。ノイズに過ぎないかもしれないが、CNTO 136のIL-6と少し違うがIL-6受容体を標的とする抗体医薬(ロシュのActemra)が既に存在するので、承認を急ぐ必要はないと考えたのだろう。

CNTO 136は11年にグラクソ・スミスクラインが共同開発販売提携を結んだが、今年7月に権利返還を決定した。

リンク: JNJのプレスリリース


【承認】


オプジーボ、米国は肝細胞腫を承認
(2017年9月22日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)を肝細胞腫の二次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。EUはCHMPが難色を示し申請撤回となったが、FDAは第二相試験の反応率データに基づいて加速承認した。バイエルのNexavar(sorafenib)による治療歴を持つ患者が適応になる。PD-L1の発現状況は不問。治験での反応率は14%だった。

臨床試験では3mg/kgを二週間毎に投与したが、承認された用量は240mgを3時間点滴静注で二週間毎に変わっている。バイアルは100mgと40mgなので複雑だが、例えば60kgの患者は使用量が増えることになる。

米国で承認されている用量用法を整理すると、多発骨髄腫にYervoyと併用する場合は3mg/kgを三週間毎、但し4回投与後の単剤維持療法は240mgを二週間毎。古典的ホジキン型リンパ腫や頭頚部扁平上皮腫は3mgを二週間毎。それ以外の、黒色腫、非小細胞性肺癌、腎細胞腫、肝細胞腫、尿路上皮細胞腫、そしてマイクロサテライト不安定性高/ミスマッチ修復不全結腸直腸癌は240mgを二週間毎と、覚えるのが大変だ。

リンク: BMSのプレスリリース

EUでバベンチオなどが承認
(2017年9月21日発表)

7月にCHMPが肯定的意見を纏めた新薬や適応拡大が、続々と承認された。

ドイツのメルクのBavencio(avelumab、和名バベンチオ)はPD-L1を標的とする完全ヒト化抗体で、転移性メルケル細胞腫という欧州で年に2500人が発症する希少疾患に用いる。PD-L1発現状況は不問、一次治療に用いることも可。ニッチだが他社がまだ手掛けていない疾患をリードインディケーションとすることで開発リードタイムを縮小、欧州に関してはロシュの抗PD-L1抗体であるTecentriq(atezolizumab)と同じタイミングで承認されたので、狙いが的中したと言えるだろう。

メルケル細胞腫は進行の早い皮膚癌で5年生存率は20%以下といわれる。臨床試験では二次治療の総合反応率が33%、一次治療は62%だった。米国では今年3月に承認。日本でも今月、第二部会を通過した。米国では再発性難治性尿路上皮細胞腫にも承認されている。ファイザーと開発販売提携。

リンク: ファイザーのプレスリリース(9/21付)

ノバルティスのRydapt(midostaurin)はFLT3阻害剤。適応は、FLT3変異陽性急性骨髄性白血病、侵襲性または血液学的新生物を伴う全身性肥満細胞症、そして肥満細胞白血病。cytarabine及びdaunorubicinと併用したmFLT3+急性骨髄性白血病試験ではメジアン生存期間が74.7ヶ月と偽薬群の25.6ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.77(95%信頼区間0.63~0.95)だった。

リンク: ノバルティスのプレスリリース(9/20付け)

ロシュは三件、承認された。Tecentriq(atezolizumab)はEU初承認。局所進行性/転移性の膀胱癌の二次治療(cisplatin不適は一次治療も可)と非小細胞性肺癌の化学療法後再発治療(ALKまたはEGFRに活性化変異のある患者はALK阻害剤またはEGFR阻害剤治療歴も必要)に用いる。米国で16年5月から17年4月にかけて三段階で取得した適応を一気にキャッチアップした。

リンク: ロシュのプレスリリース(9/22付け)

Gazyva(obinutuzumab)を濾胞性リンパ腫の導入療法・維持療法に用いる適応拡大も承認された。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.71とMabThera(rituximabの欧州での製品名)より有意に優れていた。

MabTheraと同じ抗CD20抗体だがマウス由来のアミノ酸が少なく、翻訳後装飾でフコースが付与されていないので抗体依存的細胞毒性が高い。既存の適応は、慢性リンパ性白血病でfludarabineが適さない患者の一次治療と、濾胞性リンパ腫の再発治療(bendamustine併用)。

リンク: ロシュのプレスリリース(9/22付け)

RoActemra(tocilizumab、和名アクテムラ)を巨細胞性動脈炎の治療に用いることも承認された。米国では5月に承認。日本ではアジアや中近東に多い高安動脈炎と合わせて8月に承認。

抗IL-6受容体ヒト化抗体で、最近の話題は、CAR-Tと呼ばれる画期的な自家T細胞療法の副作用でサイトカイン放出症候群が発生した時の標準的治療法になっている。

リンク: ロシュのプレスリリース(9/22付け)

最後に、Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)のXermelo(telotristat ethyl)はカルチノイド症候群の治療薬。消化器官系神経内分泌腫瘍の合併症でセロトニンの過剰分泌により下痢などを発症する。Xermeloはセロトニン調律酵素であるTPH(トリプトファン水酸化酵素)1/2阻害剤で下痢を改善する。北米や日本以外ではイプセンが販売する。

リンク: Lexiconのプレスリリース(9/19付け)


【医薬品の安全性】


Ocalivaは適正使用されていない?
(2017年9月21日発表)

先週号のIntercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)のドクターレターに関する記事で、PBC(原発性胆汁性肝硬変)治療薬Ocaliva(obeticholic acid)の過剰投与副作用は病気が進行して肝機能が低下したことに気付く、あるいは、対処する前に発生してしまったのではないかと推測したが、性善説すぎたようだ。FDAが安全性情報を発出し、ある程度の症例情報を公表した。治療開始時点で既に中度以上の肝機能障害であったのに通常のスケジュール通りに投与した症例が少なくないようで、医療ミスが疑われる。

FDAによると、市販後の13ヶ月間に19人の死亡例が有害事象報告システムに報告された。死因が報告されている8例は病状悪化やCVDが原因とされているが、うち7例は中重度肝機能低下にも係わらず毎日5mgを服用していた。正しくは、5mgを週一回で開始して反応が不十分なら週二回、それでも不十分なら10mg週二回まで増量可、であり、この7人は倍量投与されたことになる。

深刻な肝臓障害は11例報告されており、うち6例はベースライン時点で中重度肝機能障害だったが、毎日5mg服用中に重度肝障害を発症し、3名が死亡した(上記19例に含む)。

発売以来、毎月一人以上が死亡しているというのは酷い話だ。対応をメーカーと協議中とのことなので、枠付き警告やREMS(リスク評価緩和戦略)を導入する考えかもしれない。

Ocalivaの用途で最も期待されているのはNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)だ。第三相試験中で、用量は一日10mgと25mgをテストしている。PBCでの標準用量(一日5mgで開始して10mgまで増量可)の倍以上なので、中重度肝機能低下以外の人でも肝毒性が高いかもしれない。PBC用途で適正使用を徹底させないと、NASH適応拡大も難しくなる。

Ocalivaは日本では大日本住友製薬がインライセンス、NASHの第二相試験はフェールしたが効果は概ね用量依存的だった由。この試験では10mg、20mg、40mgをテストした。

リンク: FDAの安全性情報




今週は以上です。

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2017年9月18日

2017年9月18日


【ニュース・ヘッドライン】

  • 死ね、デニース 
  • 抗IL-4Rアルファ抗体は喘息症にもある程度の効果 
  • ヌーカラはCOPDにもある程度の効果 
  • ビデュリオンは心血管リスクを高めない 
  • イクスタンジ、非転移性去勢抵抗性前立腺癌試験が成功 
  • アッヴィのJAK阻害剤もリウマチ試験成功 
  • 黒色腫アジュバント試験のデータ発表 
  • ザイティガを転移性前立腺癌に適応拡大申請 
  • CHMPがPARP阻害剤などの承認を支持
  • FDA諮問委員会がGSKの帯状疱疹ワクチンを支持 
  • バイエルのPI3K阻害剤が米国で承認 
  • Ocalivaのドクターレター 


【今週の話題】


死ね、デニース
(2017年9月11日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、慢性C型肝炎治療薬JNJ-4178の開発を中止すると発表した。Olysio(和名ソブリアード)の活性成分であるNS3/NS4Aプロテアーゼ阻害剤simeprevirとNS5Bポリメラーゼ阻害剤AL-335、そしてNS5A阻害剤ACH-3102(odalasvir)の三剤合剤で後期第二相段階だったが、優れた類薬が既に複数販売されていることや市場の成長が見込み難いことに鑑みたのだろう。今後はB型肝炎治療薬の開発に経営資源をシフトする。

慢性C型肝炎治療薬の研究開発は、米国政府の支援とゲノム技術の進歩に後押しされて、開花。C型肝炎ウイルスのゲノムが解析され、増殖に必要な上記酵素を標的とするDAA(直接作用性抗ウイルス剤)が、2011年承認のtelaprevirを皮切りに、続々と登場した。

近年の三剤配合薬はSVR12(治療終了後12週間経ってもウイルスが検出されない、持続的ウイルス学的奏功率)が90%を超えるものが少なくない。ウイルスはどこかに隠れてしまうことがあり完全に駆除するのは難しいが、C型肝炎の場合はSVR12ニアリーイコール完治と考えられており、大変重要な成果だ。

一方、今から新薬を開発して既存薬の効果を上回るのは容易ではないだろうし、何とか発見しても発売する頃には治療すべき患者が減っている可能性が高い。第二相試験の発表を見聞きする度に、まだやるのかと思っていたが、今回のJNJの発表は、遂にXデイが来たことを意味する。

病気の進行を抑える薬は長く使ってもらえるが、治癒する薬はやがて使われなくなる。製薬業界のジレンマだ。我々第三者としては、成果を正しく評価し称賛することで応えたい。18世紀ロシアの政治家、ポチョームキンは、デニース・フォンヴィージンの風刺劇の初演を見て、こう言った。「死ね、デニース、これ以上のものはもはや書けまい」(アントン・チェーホフ、『犬を連れた奥さん』、神西清訳より)

リンク: JNJのプレスリリース


【新薬開発】


抗IL-4Rアルファ抗体は喘息症にもある程度の効果
(2017年9月11日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Dupixent(dupilumab)の第三相難治性喘息症試験が成功したと発表した。適応拡大申請する予定。IL-4受容体のアルファサブユニットを標的とする抗体医薬で、IL-4やIL-13をブロックする。今年3月に米国で中重度アトピー性皮膚炎治療薬として承認されたところ。

このLiberty Asthma Quest試験(NCT02414854)は、ICS(吸入コルチコステロイド)を含む二種類のコントローラーを使っても発作を十分に管理できない患者1902人を組入れて、Dupixentを追加する効果を偽薬と比較した。試験薬は200mg群と300mg群が設定された(二週毎の皮注、初回は倍量投与)。

結果は、300mg群の重度喘息発作頻度(年率)が偽薬比46%減少し、FEV1は12週時点で9%、130mLの群間差があった。どちらも統計的に有意で、好酸球が多いサブグループのほうが効果が高かった。この点ではNucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)などの抗IL-5抗体と似ている。主な有害事象は注射箇所反応。

200mg群のデータは300mgと概ね同様とのことなので、敢えて300mgを使う必要はないかもしれない。

第三相はこの一本だけ。後期第二相試験の後にFDAと相談の上、一本だけで承認申請することを決めた経緯がある。抗癌剤の第一相試験で組入れが最終的に200例を超えたり、後期第二相と第三相試験の二本を薬効のエビデンスとして承認申請したり、今日では相と実態が噛み合わなくなっている。

難治性喘息症の治療薬では、アムジェンとアストラゼネカが共同開発している抗TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)抗体、AMG 157/MEDI9929(tezepelumab)の後期第二相試験の結果が先日発表された。喘息発作頻度が6~7割減少と、効果が大変高く注目できる。TSLPは胸腺など上皮細胞が分泌するサイトカインで、IL-4、IL-5、IL-13の川上で機能し、アレルギー性炎症のマスタースイッチとも言われているようだ。データ面でもメカニズム面でも、Dupixentが霞んでしまった。

リンク: 両社のプレスリリース

ヌーカラはCOPDにもある程度の効果
(2017年9月12日発表)

グラクソ・スミスクラインの抗IL-5抗体、Nucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)は、重度好酸球性喘息症のアドオン薬として日米欧で承認されている。COPD(慢性閉塞性肺疾患)の維持療法薬としても開発されており、第三相試験二本の結果がNew England Journal of Medicine誌に刊行された。二連勝ではないが、GSKは承認申請する予定。

METREX試験は、主評価項目の一つである好酸球増多フェノタイプの解析が成功。100mgを4週毎皮注したところ、増悪頻度が年1.40回と偽薬群の1.71回を下回った。率比は0.82、p=0.036で、ギリギリ統計的に有意。しかし、もう一つの主評価項目である全ユニバースの解析は率比0.98でフェールした。一方、好酸球増多だけを組み入れたMETEOは率比0.80、p=0.068とフェール。この試験だけ設定された300mg群も率比0.86、p=0.14に留まった。

METREX試験では好酸球フェノタイプに対する効果が伺われたがMETEO試験では再現されなかったことになる。METEOの100mg群のほうが率比が若干低く、症例数は大差ないのにp値が悪いのは奇妙だが、この二本の試験は多重性の調整手法が異なるので、その影響かもしれない。細かいことを忘れて健全な常識を適用すれば、p値が0.036でも0.068でもボーダーライン上であることに変わりない。効果が解析計画の前提(増悪頻度が30~35%減少)より弱かったのだから、期待外れの結果と言わざるを得ないだろう。

リンク: GSKのプレスリリース

ビデュリオンは心血管リスクを高めない
(2017年9月14日発表)

アストラゼネカが販売する長期作用性GLP-1作用剤、Bydureon(exenatide、和名ビデュリオン)の心血管アウトカム試験の結果がEASD欧州糖尿病研究学会とNEJM誌で発表された。MACE(主要有害心血管イベント)の偽薬比ハザードレシオは0.91、95%信頼区間0.83~1.00となり、非劣性解析は成功したが優越性解析はフェールした。リスクは高まらないが有意に減るわけでもないという良くも悪くもない内容だ。

ノボ ノルディスクのGLP-1作用剤、Victoza(liraglutide)は有意に減らしたので物足りなさが残るが、Victozaのハザードレシオの95%信頼区間は0.78~0.97なので、かなり重なっている。全死亡ハザードレシオはVydureonが0.86(95%信頼区間0.77~0.97)、Victozaは0.85(同0.74~0.97)なので、これも大差ない。

それでも、ノボと異なり心血管リスクを削減する薬として販促することができないので、紙一重、二重の差が大きなインプリケーションを持つ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

イクスタンジ、非転移性去勢抵抗性前立腺癌試験が成功
(2017年9月14日発表)

アステラス製薬とファイザーは、Xtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)のPROSPER試験が成功したと発表した。先般、治験プロトコルを変更したおかげで治験完了が2年早まった。メカニズムの異なる他の新薬との開発・販売競争が激化しているので、今までより早い段階で使えるようになれば販促の追い風になるだろう。

前立腺癌はアンドロゲン除去療法(ADT)が有効だが、治療を続けるうちにPSA値が再び上昇することがあり、タイミングを見て他の薬を追加したりスイッチしたりする。典型的には転移して症状が重くなった段階でdocetaxelのような化学療法薬にスイッチする。Xtandiは化学療法の次に使う薬として最初の承認を取り、その後、転移したり症状が出始めた後に化学療法より前に用いることが承認された。抗癌剤は出番が前の段階になればなるほど市場性(患者数x投与期間)が大きくなる。

今回のPROSPER試験は、転移も症状もない患者に追加投与する用法を偽薬と比較したもので、無転移生存期間の延長が達成されたとのこと。データは未発表。今後、承認申請に向かうことになりそうだ。

リンク: アステラスのプレスリリース(和文)

アッヴィのJAK阻害剤もリウマチ試験成功
(2017年9月11日発表)

アッヴィ(NYSE:ABBV)は、ABT-494(upadacitinib)の第三相リウマチ性関節炎試験成功を発表した。バイオ薬に不耐又は反応不十分な患者を偽薬、15mg、30mgの各群に無作為化割付して12週間経口投与したところ、ACR20が各群28%、65%、56%となり、両用量とも偽薬群を有意に上回った。

深刻有害事象の発生率は各群ゼロ、5%、7%。死亡者は各群ゼロ、1人、1人となっており、15mgの症例は死因不明、30mg症例は肺塞栓や心不全などを発症していたとのことなので、試験薬との関係を疑う余地がありそうだ。症例数が各群160人強と少ないので、全第三相試験のプール分析結果が明らかになるまで何とも言えない。

ABT-494はJAK1阻害剤。ファイザーのXeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)はJAK1と3に選択的、インサイト/イーライリリーのJakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)はJAK1と2に選択的と、選択性が多少異なるが、副作用リスクはそんなに変わらないように感じられる。本来の作用である免疫抑制が強力なので感染症や癌のリスクも警戒しなけれなならず、その意味でも、安全性はプール分析のデータ発表待ちだ。

リンク: アッヴィのプレスリリース

黒色腫アジュバント試験のデータ発表
(2017年9月10日発表)

ステージIIIbからIVの黒色腫を完全切除した後に薬物療法で再発を防ぐ、アジュバント試験の結果が複数、発表された。まず、BMS/小野薬品の抗PD-1抗体、Opdivo(nivolumab、オプジーボ)をBMSの抗CTLA-4抗体、Yervoy(ipilimumab)と比較したCheckMate-238試験。中間解析で目的を達成したことが7月に発表済みだが、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)でデータが発表された。無再発生存期間のハザードレシオは0.65、97.56%信頼区間は0.51~0.83だった。

有害事象による治験離脱率はOpdivoが9.7%、Yervoyは42.6%と大きな差があった。治療関連死亡はOpdivoがゼロ、Yervoyは2人(被験者数は両群合わせて906人)。

リンク: BMSのプレスリリース(9/10付け)

次に、ノバルティスのBRAF阻害剤Tafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMEK1/2阻害剤、Mekinist(trametinib、和名メキニスト)の併用。BRAF-V600E/K変異を持つステージIII黒色腫の完全切除後アジュバント試験で、無再発生存期間の偽薬比ハザードレシオが0.47、95%信頼区間0.39~0.58となった。3年無再発生存率は58%で偽薬群の39%を上回った。

全生存の解析は、ハザードレシオ0.57、p=0.0006と良い数字が出たが、事前に設定された中間解析の閾値である0.000019を上回ったため、統計的に有意とは言えない。

有害事象による治験離脱は26%と偽薬群の3%をだいぶ上回った。

リンク: ノバルティスのプレスリリース(9/11付け)

最後に、ロシュのBRAF阻害剤Zelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ)はフェールした。ノバルティスの試験との違いは、単剤投与であることと、ステージIIIだけでなくIICも対象であったこと。但し、後者が原因とは考え難い。事後的解析によると、IICからIIIBまでのサブグループの無病生存ハザードレシオは0.54、IIICは0.80となっており、進行した癌に対する効果が小さかった。

リンク: ロシュのプレスリリース(9/11付け)


【承認申請】


ザイティガを転移性前立腺癌に適応拡大申請
(2017年9月14日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大をFDAに申請した。6月にASCO米国臨床腫瘍学会で結果発表されたLATITUDE試験に基づくもので、高リスク転移性前立腺癌にアンドロゲン除去療法及びprednisoneと併用する。臨床試験ではアンドロゲン除去療法だけの群と比べた全生存ハザードレシオ0.62と有意に優れていた。

リンク: JNJのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPがPARP阻害剤などの承認を支持
(2017年9月15日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、9月の会議で、PARP阻害剤や抗IL-23抗体などの新薬承認などに肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域などで承認されることになる。一方、Opdivo(nivolumab)については、BMSが肝細胞腫適応拡大申請を撤回する意向を7月に連絡していたことが判明した。

リンク: EMAのプレスリリース

肯定的意見を得た新薬は、まず、Tesaro(Nasdaq:TSRO)のZejula(niraparib)。遺伝子の複製にはミスが付き物だが、通常は修復メカニズムが機能する。二種類のメカニズムの一つに係るポリ(ADP-リボーゼ)ポリメラーゼ(PARP)を阻害するのがZejulaで、PARPとDNAの複合体がDNAに損傷を与え、細胞死を誘導する。再発高悪性度卵巣癌で白金薬レジメンに部分反応以上した患者の維持療法として用いる。

PARP阻害剤は、もう一つの修復メカニズムが十分に機能しないBRCA1/2変異を持つ患者の乳癌や卵巣癌に有望と考えられてきたが、Zejulaの承認の根拠となった試験では、生殖細胞系BRCA変異の有無を問わず、進行・死亡リスクを大きく削減した。

Zejulaは米国で今年3月に承認。アストラゼネカなど三社のPARP阻害剤のうち、現時点では最も適応患者数が多い。乳癌の適応拡大試験も進行中。日本と韓国などの権利は武田薬品が7月に取得。

リンク: Tesaroのプレスリリース

Steba biotechのTookad(padeliporfin)は、前立腺癌のフォトダイナミック・フォーカル・セラピーに用いる光感受性物質。投与後にターゲット部位にレーザーを照射すると、活性酸素が血管閉塞などを誘導、数日内に焦点的壊死をもたらす。主な副作用は泌尿器や再生産系の障害。初治療、片側性、低リスク、余命10年以上などの条件を満たす患者が適応になる。前立腺癌は進行が遅く手術や放射線療法が必ずしも必要ではないケースが少なくない。低侵襲性の焦点治療手段が増えれば多くの患者にメリットがありそうだ。

Stebaはルクセンブルク籍のフランス企業である模様。Tookadはイスラエルのワイツマン科学研究所の技術を用いて創製、オックスフォード大学やメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターなどと臨床開発を進めた由。

リンク: Stebaのホームページ

ジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab)は抗IL-23p19サブユニットを標的とするHuCAL抗体。中重度乾癬症の全身的療法で、直接比較試験でPASI90やIGA改善率がHumira(adalimumab)を有意に上回った。米国では7月に承認、日本でも4月に承認申請された。

リンク: JNJのプレスリリース

グラクソ・スミスクラインのTrelegy Elliptaはコルチコステロイドのfluticasone furoate、長期作用性ムスカリン阻害剤umeclidinium、長期作用性ベータ2作用剤vilanterolを配合した吸入用薬で、COPDのステップアップセラピーに用いる。

リンク: GSKのプレスリリース

ムンディファーマはオピオイド関連の二剤が肯定的意見を得た。Nyxoidはnaloxoneの点鼻用新製剤。オピオイド過剰摂取の救急治療に用いる。もう一つはスエーデンのOrexo社からライセンスしたZubsolv(buprenorphine、naloxone)。オピオイド依存の治療に用いる舌下崩壊錠。乱用者は即効性を求めて注射で使う傾向があるが、Zubsolvを分解するとnaloxoneがオピオイドの作用を拮抗するため十分な効果が得られない。

リンク: Orexoのプレスリリース

スペインの血液製剤会社であるInstituto Grifols(MCE:GRF)のVeraSealはヒト・フィブリノーゲンとヒト・トロンビン。液状で、手術中の止血に用いる。

一方、否定的意見が出たのはSovrima(idebenone)の適応拡大。往年の脳循環改善薬アバンの活性成分で、欧州では例外的条項に基づいて15年にLHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)治療薬として承認された。他にも様々なミトコンドリア疾患に承認申請され、否定的意見を受けている。今回はデュシェンヌ型筋ジストロフィーで呼吸機能が低下し始めた、ステロイドを服用していない患者に承認申請されたが、CHMPは、効果が限定的でQOLも改善せず、治験の実施方法や解析方法にも懸念ありと判定した。

米国で承認申請するためにステロイド利用者を組入れた臨床試験が進行中なので、まだチャンスは残っている。

BMSはOpdivo(nivolumab)を肝細胞腫の二次治療に用いる適応拡大申請を行っていたが、7月に撤回する意向をCHMPに連絡していたことが明らかになった。根拠となった第二相試験は対照群がなく、外挿に必要な情報も不足しているため、CHMPは否定的な見方をしていた。尤もな意見で、特に意外感はない。

FDA諮問委員会がGSKの帯状疱疹ワクチンを支持
(2017年9月13日発表)

FDAのワクチン及び関連生物学的製品諮問委員会(VRBPAC)は、グラクソ・スミスクラインが承認申請した帯状疱疹ワクチン、Shingrixの承認を全員一致で支持した。既存の弱毒化生ワクチンと異なり、抗原はウイルスの糖タンパクEだけで、アジュバントはAS01-Bを用いている。50歳以上がヘルペス感染後神経痛などの発症を防ぐために、2~6ヶ月おいて2回、筋注する。臨床試験では免疫力が低下してワクチンが効き難い70歳以上でも高い予防効果を示した。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認】


バイエルのPI3K阻害剤が米国で承認
(2017年9月14日発表)

バイエルは、FDAがAliqopa(copanlisib、開発コードBAY 80-6946)を濾胞性リンパ腫の三次治療薬として加速承認したと発表した。第二相単群試験では、ORR(客観的反応率)が59%、メジアン反応持続期間は12.2ヶ月、完全寛解率は14%だった。深刻有害事象が26%の患者で発生した。

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のZydelig(idelalisib)と同じphosphatidylinositol-3-kinase(PI3K)阻害剤で、B細胞の活性化、増殖、生存に必要な酵素を阻害する。ZydeligがPI3Kデルタ選択的であるのに対して、Aliqopaはアルファとデルタをベータ比10倍優先的に阻害する。Zydeligは肺炎など深刻な感染症のリスクが見られるが、Aliqopaも同様なので要注意。

リンク: バイエルのプレスリリース

【医薬品の安全性】


Ocalivaのドクターレター
(2017年9月8日発表)

インターセプト・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ICPT)は、PBC(原発性胆汁性肝硬変)の治療薬でNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)治療薬としても開発中のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、Ocaliva(obeticholic acid)について、Dear Health Care Professionalレターを送付した。

16年の発売後に、中重度肝機能低下患者に過剰投与して肝不全が起きた致死例を含む症例が報告されていること、中重度肝機能低下患者にはレーベル通りに間歇投与すること、そして肝毒性の兆候が見られたら速やかに減量・中止することを伝えた。

Ocalivaは肝機能を問わず肝毒性があり、定期的に肝機能検査を行う必要がある。中重度肝機能低下患者では血漿濃度が著増するため、治療開始時は5mgを毎日ではなく週一回に抑え、増量する場合も10mg毎日ではなく10mg週二回までとなっている。重要な副作用なので医療従事者が無視して過剰投与したとは考え難い。PBCが悪化して肝機能が低下し、減量する前に副作用が発生してしまったのではないだろうか。肝臓治療用なのに肝臓副作用を持つ薬のジレンマだ。

DHCPレターにも記されているように、投与を止めても病気は直ぐには増悪しないが、肝副作用の兆候を軽視して続行すると深刻な転帰になりかねない。治療の便益とリスクを慎重に評価すべき薬なのだろう。

Ocalivaは欧米で2016年に承認。日本では大日本住友製薬が開発中。

リンク: Ocalivaの米国医療従事者向け情報サイト(ポップアップからDHCPレターをダウンロードできる)





今週は以上です。

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2017年9月10日

2017年9月10日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ESMO:タグリッソ、一次治療試験でタルセバやイレッサに勝つ 
  • ESCO:Imfinziの肺癌維持療法試験成功 
  • オプジーボとヤーボイの腎細胞腫併用試験成功 
  • アッヴィのJAK1阻害剤はアトピーにも有効 
  • 血友病のRNA介入薬が治験許可停止に 
  • アッヴィ、子宮内膜症用薬を米国で承認申請 
  • 大日本住友、ADHD用薬を米国で承認申請 
  • キイトルーダ、EUで膀胱癌に適応拡大 
  • 抗PD-1/PD-L1抗体の多発骨髄腫試験が治験停止に 


【新薬開発】


ESMO:タグリッソ、一次治療試験でタルセバやイレッサに勝つ
(2017年9月8日発表)

ESMO(欧州臨床腫瘍学会)でアストラゼネカのTagrisso(osimertinib、和名タグリッソ)の直接比較試験の結果が発表された。EGFR活性化変異を持つ局所進行性転移性非小細胞性肺癌の一次治療におけるPFS(無進行生存期間)をTarceva(erlotinib)またはIressa(gefitinib)を用いる標準療法群と比較したところ、メジアンPFSが18.9ヶ月と標準療法群の10.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.46、統計的に有意な差があった。

全生存期間のハザードレシオは0.63、p=0.0068となったが、まだイベント数が少なく有意性を判定するための閾値が保守的に設定されているため、有意水準には達していない。忍容性面ではG3以上の有害事象の発生率は33.7%対44.8%、有害事象による治験離脱は13.3%対18.1%で何れも低かった。

EGFRチロシンキナーゼ阻害剤のうち、TagrissoはTarcevaやIressaに抵抗性を持つT790M変異型にも有効で、15年に米国で、16年には日欧でも、承認された。米国はEGFR阻害剤による治療歴があるT790M変異型だけが適応なので対象が狭い。一次治療試験の成功を受けて適応拡大申請が行われる見込み。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ESCO:Imfinziの肺癌維持療法試験成功
(2017年9月8日発表)

アストラゼネカの抗PD-L1抗体、Imfinzi(durvalumab)の肺癌維持療法試験の結果がESMOやNew England Journal of Medicine誌で発表された。ステージIII切除不能非小細胞性肺癌で白金薬と放射線療法による一次治療を受けて癌が進行しなかった患者を、Imfinzi群と偽薬群に無作為化割付してPFSを比較したところ、中間解析でハザードレシオ0.52となり、統計的に有意な差が見られた。PD-L1発現の高低を問わず効果があった。

共同主評価項目である全生存の解析はまだ結果が出ていない。

抗PD-1/PD-L1抗体は様々な癌に有効で市場性が大きいため、BMS/小野薬品やMSDを追いかけて多くの製薬会社が臨床試験を進めている。先行会社と同じことをやっても差別化できないので、今回のように独自の用途用法を開拓することが重要だ。アストラゼネカは適応拡大申請に向けて審査機関と相談する考え。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース
リンク: Antoniaらの治験論文(NEJM誌)

オプジーボとヤーボイの腎細胞腫併用試験成功
(2017年9月7日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)の末期腎細胞腫一次治療試験が成功したと発表した。夫々3mg/kgと1mg/kgを三週間に一回、合計4回投与して、その後はOpdivoだけを同じ用量で2週間に一回投与するレジメンと、ファイザーのSutent(sunitinib)を投与する群と反応率やPFS、全生存期間を比較したもの。主解析対象は全体の75%を占める中重度リスク因子を持つ患者。

主評価項目のうちORR(客観的奏効率)は41.6%対26.5%で有意に上回ったが、PFSに関してはハザードレシオが0.8と数値は良さそうだが解析の多重性を排除するために閾値が低く設定されていたことから、有意差は出なかった。今回は新たに全生存の解析で有意差が出たことが発表された。データはESMOでアップデートされる予定。

リンク: BMSのプレスリリース

アッヴィのJAK1阻害剤はアトピーにも有効
(2017年9月7日発表)

アッヴィ(NYSE:ABBV)は、ABT-494(upadacitinib)の後期第二相中重度アトピー性皮膚炎試験が成功したことを発表した。局所性治療薬だけでは十分に管理できない患者を一群当り40名程度組入れて、7.5mg、15mg、30mg(一日一回経口投与)の症状改善効果を偽薬群と比較したところ、各群のEASIが39%、62%、74%減少し、偽薬群の23%減を有意に上回った。EASI75奏効率は29%、52%、69%となり、偽薬群の10%を上回った。

深刻有害事象は各群ゼロ、一人、二人となり、偽薬群の一人と大差なかった。症例数が少ないので先に第三相入りした関節リウマチなどのデータを見たほうがよいだろう。

リンク: アッヴィのプレスリリース

血友病のRNA介入薬が治験許可停止に
(2017年9月7日発表)

Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)と開発パートナーのサノフィは、FDAがALN-AT3/SAR439774(fitusiran)の治験許可を停止したと発表した。致死的血栓イベントが一例、発生したため。第三相試験入りしたところなので遅れは痛いが、副作用自体はありがちなものなので、数が増えない限り大きな問題にはならないのではないか。

fitusiranはRNA介入と呼ばれるタイプの核酸医薬で、肝臓選択的に抗トロンビンを抑制する。A型やB型の血友病の出血治療やルーチン予防薬として7月に第三相試験が始まったところ。月一回皮注という用法なので頻繁に出血する患者にルーチンに投与する用途に向いている。

治験許可停止(クリニカルホールド)は、第二相のオープンレーベル延長試験でインヒビターを持たない患者の一人が脳静脈洞血栓症を発症、死去したことが原因。血栓ができない患者をできる患者に変える薬なので血栓塞栓性有害事象が発生するのは止むを得ないところがある。

リンク: 両社のプレスリリース


【承認申請】


アッヴィ、子宮内膜症用薬を米国で承認申請
(2017年9月6日発表)

アッヴィ(NYSE:ABBV)とライセンス元であるNeurocrine Biosciences(Nasdaq:NBIX)は、NBI-56418(elagolix)を子宮内膜症用薬として米国で承認申請した。経口ゴナドトロピン放出ホルモン阻害薬で、子宮内膜症による疼痛を改善する。

リンク: アッヴィのプレスリリース

大日本住友、ADHD用薬を米国で承認申請
(2017年9月1日発表)

大日本住友製薬は、米国子会社のサノビオンがdasotralineを成人と青少年のADHD治療薬としてFDAに承認申請したことを発表した。サノビオンの前身で09年に買収したSepracorがSEP-225289という開発コードでADHDや鬱病に開発していた、ドパミンとノルエピネフィリンの再取込を阻害する小分子薬。半減期が長いため一日一回投与で足りる。

リンク: 大日本住友のプレスリリース


【承認】


キイトルーダ、EUで膀胱癌に適応拡大
(2017年9月5日発表)

MSDはKeytruda(pembrolizumab)を末期尿路上皮癌に用いる適応拡大を承認したと発表した。白金薬歴を持つ患者の再発治療、またはcisplatin不適患者の一次治療に用いる。米国では5月に承認取得済み。

リンク: MSDのプレスリリース

【医薬品の安全性】


抗PD-1/PD-L1抗体の多発骨髄腫試験が治験停止に
(2017年9月6日発表)

BMSとアストラゼネカは、夫々、FDAが抗PD-1/PD-L1抗体の多発骨髄腫臨床試験の治験許可を停止したことを発表した。

9月3日号で書いたように、MSDのKeytruda(pembrolizumab)の183試験と185試験は、死亡に群間の偏りが発生したためフルクリニカルホールドとなった。FDAは、他社の抗PD-1/PD-L1抗体に関しても、多発骨髄腫に単剤またはpomalidomideやlenalidomideのような免疫調停剤と併用する用法や、他の血液癌に免疫調停剤と併用する用法は、リスクが便益を上回る可能性があると判断した模様だ。

BMSのOpdivo(nivolumab)は再発難治性多発骨髄腫四剤併用第三相試験など3本が部分停止となった。アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)は多発骨髄腫新患の第二相がフルに、他の5本は部分的に、治験停止となった。

抗癌剤はオフレーベル使用が少なくなく、臨床試験も活発に行われているので、FDAのプロアクティブな対応は評価できるだろう。

リンク: BMSのプレスリリース(9/6付け)
リンク: アストラゼネカのプレスリリース(9/7付け)





今週は以上です。

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2017年9月3日

2017年9月3日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ESC:抗IL-1ベータ抗体が心筋梗塞リスクを削減 
  • ESC:CETP試験の心血管アウトカム試験が遂に成功したが 
  • ESC:イグザレルト、安定期アテローム硬化試験は成功 
  • 家族性カイロミクロン血症候群のアンチセンス薬が承認申請 
  • 低血圧ショック治療薬が承認申請 
  • バイエル、PEG化第VIII因子を承認申請 
  • ファイザー、ボシュリフの一次治療を欧米で適応拡大申請 
  • ロシュ、Gazyvaの適応拡大を米国でも承認申請 
  • CAR-Tの第一号が米国で承認 
  • カルバペネム耐性菌にも有効な複合抗生剤が承認 
  • ファイザーのマイロターグが米国で復活 
  • アヴェオのVEGFR阻害剤がやっと欧州で承認 
  • FDA、キイトルーダの骨髄腫試験の詳細を公表 


【新薬開発】


ESC:抗IL-1ベータ抗体が心筋梗塞リスクを削減
(2017年8月27日発表)

ギャンブルには金持ちには勝てないという金言がある。千三つの新薬開発も、カネがあれば何でもできるとは言わないまでも、莫大な臨床試験予算を持つビッグファーマのほうが成功確率が高いのではないか。疑うものは、今年のESC欧州心臓学会を見ればよい。今回取り上げる三本の心血管アウトカム試験は、何れも、多くの患者を長期間フォローして治験の検出力を弓のようにギリギリ引き絞ったことが勝因で、NNT(一人を有害イベントから救うために治療すべき人数)自体は小さく、深刻な有害事象またはその懸念も見られた。

私の感想は、使うべきか、避けるべきか、それが問題だ。

それはそれとして、ノバルティスの抗IL-1ベータ抗体、Ilaris(canakinumab、和名イラリス)を高hsCRP心筋梗塞歴患者の再発予防に用いたCANTOS試験は大変な成果を上げた。炎症と免疫、血栓は互いに関係しているのでIlarisのような抗炎症免疫薬がアテローム硬化の進行緩和に有効であっても不思議はないが、キチッと立証されたのは今回が初めてだろう。

今後、抗IL-6抗体なども含めて様々な抗炎症薬スクリーニングが行われ、その中から、心筋梗塞予防効果が高く免疫抑制副作用が小さい、最もバランスが優れた薬が選抜されることになるのではないか。

また、今回の試験も、Ridkerらが主導したもう一つのランドマーク的試験、rosuvastatinのJUPITER試験も高hsCRP患者だけを組入れたが、低値患者には本当に無効なのか、hsCRPを用いて高リスク患者をスクリーニングする手法の特許を保有していない第三者に研究してもらいたいものだ。

本題に入ると、CANTOS試験は30日以上前に心筋梗塞を経験した、高感度CRP値が2mg/dL以上の患者10061人を偽薬、50mg、150mg、300mgの4群に無作為化割付して、メジアン3.7年間追跡した。用法は3ヶ月に一回、皮注。主評価項目は心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的卒中の複合評価項目。複数の群が設定されているため、多重性を補正するためにpの閾値は0.05より低くなっている。

尚、当初の計画では17200人を組入れるはずだったが開始後にノバルティスの要望を受けて組入れ規模を縮小した。17000人以上がスクリーニングを受けたが、セントラルラボの検査でhsCRP値が2mg/dLを下回ったり、結核菌感染歴などの理由で、4割がドロップした。実用性を考える上で重要な情報である。

当初の解析計画では、主評価項目イベント1400例、相対リスク削減20%という仮説に基づき、一つ以上の用量で有意差が出る検出力が90%だった。組入れは減ったが追跡期間1年延長の結果、イベント数が1400を超えたので、プロトコル変更後の検出力も90%程度と推測される。

各群の100人年当り主評価項目イベント発生率は4.50、4.11、3.86、3.90となった。150mgの偽薬比ハザードレシオ(HR)は0.85(95%信頼区間0.74-0.98)、p値は0.02075で閾値の0.02115をギリギリ下回った。300mgのHRは0.86(0.75-0.99)と150mgより多少劣る程度だったが、フェールした。効能は主として心筋梗塞の減少。心血管死は全用量とも、偽薬群より少なかったが有意ではなかった。全死亡も同様。

IlarisはIL-1やIL-6が関与する周期熱症候群やStill病、そしてある種の関節炎に承認されているが、免疫抑制作用を持つため、感染症や癌が懸念されるところである。CANTOS試験は長期試験なのでリスクを観察するには丁度良く、担当医の自発的報告ではなく密接な監視・診断が行われたものと推測する。この副作用分析で、驚くべき仮説が浮上した。三用量合計と偽薬群の比較で致死的な感染症・敗血症が有意に増えたが、癌は数値上少なく、癌による死亡は有意に少なかった(p=0.02)。特に肺癌が減った。

今回の試験だけでは何とも言えないが、300mg群の肺癌HRは0.33、p<0.0001、肺癌による死亡は0.23、p=0.0002と中々のものなので、改めて癌治療試験を行う価値があるかもしれない。

ノバルティスは心筋梗塞再発予防で適応拡大を申請する考え。09年に希少疾患用薬として発売した薬なので現状では年20万ドルと非常識な価格になってしまうが、承認されたら値下げするのではないか。CANTOSには日本の施設も参加した模様なので日本でも承認申請されるだろう。

ノバルティスは、先月、Xoma(Nasdaq:ZOMA)から抗IL-1ベータ・アロステリック抗体であるgevokizumabの権利をライセンスした。色々な治験がフェールし開発中止となった薬だが、潜在的なライバルの芽を摘んだのだろう。抗IL-1抗体は数多く臨床入りしたが、今現在生き残っているのはリジェネロン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:REGN)のArcalyst(rilonacept)位だ。

リンク: Ridkerらの治験論文(NEJM誌)
リンク: ノバルティスのプレスリリース

ESC:CETP試験の心血管アウトカム試験が遂に成功したが
(2017年8月29日発表)

MSDは6月にCETP阻害剤MK-0859(anacetrapib)の心血管アウトカム試験成功を発表した。他社のCETP阻害剤は全てフェールしており、プレスリリースのトーンが抑制的で脂肪細胞蓄積リスクにも言及していたためESCでのデータ発表が注目されたが、案の定、治験が成功したのは検出力が高く効果が小さくても有意差が出たからだった。

CETP阻害剤はコレステロール・エステル転送蛋白がコレステロール・エステルをHDL-CからLDL-Cに移送するのを妨げる。善玉コレステロールと呼ばれる血清HDL-Cを大きく増やす効果がある。HDL-Cだけを増やす薬の心血管アウトカム試験は全滅と言っても良い状態だが、anacetrapibとイーライリリーのevacetrapibはファイザーのtorcetrapibや日本たばこ/ロシュのdalcetrapibと異なりLDL-C値を大きく減らす効果も持つ。

LDL-C値低下幅と心血管リスク削減率は相関するという法則があるので、HDL-C矯正が無効でもLDL-C低下で補えると考えていたが、見込み違いだったのは、LDL-C低下作用が当初考えられていたほどではなかったことだ。

LDL-C値の検査方法といえば数年前に直接法とFriedewald法の優劣が議論されたことがあるが、CETP阻害剤についてはどちらも不適で、ベータ定量法を使うべきであることがanacetrapibのDEFINE試験のサブスタディで判明。DEFINE試験では10~12mg/dL、今回のサブスタディによると15mg/dL程度、LDL-C値が過小評価(低下作用は過大評価)されたようだ。偽薬群との群間差が11mg/dL程度ならば、リスク削減率が10%弱に留まっても驚きではない。

このHPS3/TIMI55/REVEAL試験はMSDのコレステロール治療薬の心血管アウトカム試験であるHPSやHPS2を主導したオックスフォード大学の臨床試験ユニットが、米国の血栓学共同治験グループであるTIMIなどと実施したグローバル試験。安定期心筋梗塞、脳血管疾患、末梢動脈性疾患、または糖尿病を併発する慢性心疾患の患者30449人を偽薬群とanacetrapib(100mgを一日一回、経口投与)群に無作為化割付して、メジアン4.1ヶ月フォローした。

主評価項目は冠動脈死、非致死的心筋梗塞、冠血行再建術の複合評価項目。解析計画は、偽薬群のイベント発生率が年1.8%、ハザードレシオ0.85という仮説でpが0.01を下回る検出力88%というもので、元々オーバーパワーだったのだが、イベント発生率が想定を上回ったため、更にオーバーパワーになった。

結果は、偽薬群のイベント発生率が11.8%、試験薬群は10.8%、率比(レート・レシオ)は0.91(95%信頼区間0.85-0.97)、p=0.004で、有意な差があった。心筋梗塞と冠血行再建術が有意に減少。冠動脈死、心血管死、全死亡も偽薬群より少なかったが有意ではなかった。副次的評価項目である冠動脈死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合評価項目は率比0.93、p=0.052でフェールしたが、脳卒中が増えなかったことは一安心。

両群のカプランマイヤー・カーブは最初の2年間は殆どオーバーラップしていて乖離したのはその後。evacetrapibの試験のメジアンフォロー期間は26ヶ月なので、フェールしたのは組入れ数だけでなく追跡期間も足りなかったことになる。但し、カプランマイヤー・カーブの右側部分はノイズの影響を受けやすいので、「CETP阻害剤の心血管リスク削減効果は2年経ってから発揮される」と結論するには早いだろう。

この試験ではランイン期間中にatorvastatinによる治療を行ったため、ベースライン時点のLDL-C値は61mg/dLと低かった。偽薬群は64mg/dLに若干上昇、anacetrapib群は38mg/dLに低下し26mg/dLの群間差が生じたが、上述のように、ベータ定量法を用いたサブスタディでは11mg/dLしか差が無かった。HDL-C(ベースライン値40mg/dL)は治療後に43mg/dL、104%の群間差が生じた。非HDL-Cコレステロールは17mg/dL、18%の差に留まった。

anacetrapibは血液中からは除去されるが脂肪細胞に結合したら殆ど消失しない由だ。今のところ有害影響は観察されていないとはいえ、気持ち悪い。MSDは薬効や副作用リスクを検討したうえで承認申請の当否を決定する考え。

リンク: 共同治験グループの治験論文(NEJM誌)
リンク: MSDのプレスリリース

ESC:イグザレルト、安定期アテローム硬化試験は成功
(2017年8月27日発表)

経口Xa阻害剤は薬物動態の個人差や食事影響が小さく、血栓カスケードが亢進している時だけ作用するので、血栓性疾患予防効果と出血リスクのバランスが良いはず、と期待されたが、それほどでもなかった。尤も、用途は多岐に亘り、併用薬の組み合わせも元々多いところに新薬も出てきているため、探索の余地は大きい。

用途がオーバーラップするワーファリンは、心筋梗塞と心原性脳梗塞の両方を予防しなければならない患者にclopidogrelやアスピリンと三剤併用すると出血リスクが高まる。

バイエルがジョンソン・エンド・ジョンソンと開発販売提携しているXa阻害剤、Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)も、急性冠症候群にアスピリンと併用しclopidogrelの三剤併用も可とした再発予防試験が成功したが、効果は小さく深刻な出血リスクも見られたことから、米国では適応拡大が承認されず、EUは承認されたが心臓バイオマーカー上昇例に限定された。

ESCで結果発表されたCOMPASS試験は、安定期アテローム性血管疾患の患者約27000人をアスピリン(100mg)、アスピリンとXarelto(2.5mg一日二回)、Xareltoのみ(5mg一日二回)の三群に無作為化割付して、平均23ヶ月追跡した(中間解析で成功認定されたため短い)。アスピリンとclopidogrelのような抗血小板薬を併用するDAT療法を受けている患者は除外条件とされた。

結果は、主評価項目発生率が各群5.4%、4.1%、4.9%となり、二剤併用群はアスピリン単剤群より有意に低かった。ハザードレシオは0.76(95%信頼区間0.66-0.86)、p<0.001。心血管死はハザードレシオ0.78、p=0.02で、心筋梗塞や虚血性脳卒中は数は少なかったが有意ではなかった。大出血は各群1.9%、3.1%、2.8%でXarelto併用群も単剤群も有意に増加した。

この結果は、急性冠症候群試験とよく似ている。通常の虚血性疾患予防薬と異なり心筋梗塞を防ぐ効果が弱く、出血リスクが泣き所だが、なぜか、心血管死が減少した。イベント数は決して多くないので注意が必要だが、もし作用機序が検証できるならば、検証してもらいたいものだ。

急性冠症候群試験と比べると再発予防効果はやや大きく、出血リスクの増加は大差ない。従って、今回の適応のほうが承認の確率が高いのではないか。

リンク: Eikelboomらの治験論文(NEJM誌)
リンク: バイエルのプレスリリース


【承認申請】


家族性カイロミクロン血症候群のアンチセンス薬が承認申請
(2017年8月31日発表)

Akcea Therapeutics(Nasdaq:AKCA)は、AKCEA-APOCIII-LRx(volanesorsen)を家族性カイロミクロン血症候群の治療薬として米国で承認申請した。欧州でも7月に承認申請済み。

世界で3000~5000人が罹患する希少疾患で、リポ蛋白リパーゼの遺伝子欠損によりカイロミクロンを代謝できず、トリグリセライドが増加、膵炎のリスクが高まる。

AkceaはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のスピンアウトで、脂質異常による深刻な心臓代謝性疾患の治療薬に特化している。volanesorsenはIonisが創製した核酸医薬で、肝臓でトリグリセライドのクリアランスを調停するApoC-IIIの遺伝子をアンチセンスする。トリグリセライドが7割程度減る。注射薬なので注射箇所反応が発生することがあり、または、血小板減少リスクもある。

リンク: Akceaのプレスリリース

低血圧ショック治療薬が承認申請
(2017年8月28日発表)

La Jolla Pharmaceuticals(Nasdaq:LJPC)は、LJPC-501を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年2月28日。合成ヒト・アンジオテンシンIIで、標準療法に反応しない血管拡張性ショック患者の治療薬として連続点滴静注する。第三相試験では、70%の患者で3時間以内の昇圧に成功した。偽薬群は23%だった。死亡リスクが22%小さかったが検出力不足で有意水準には達しなかった。

リンク: La Jollaのプレスリリース

バイエル、PEG化第VIII因子を承認申請
(2017年8月31日発表)

A型血友病のうち出血リスクが高い患者は、第VIII因子をルーチン投与して予防する。この用法に適した、通常の製剤(週3~4回投与)より効果が持続する製品が次々発売されているが、バイエルもPEG化第VIII因子、BAY 94-9027を米国で承認申請した。第三相試験では週二回投与で開始して出血予防良好なら5~7日毎に切り替える手法を検討した。

リンク: バイエルのプレスリリース

ファイザー、ボシュリフの一次治療を欧米で適応拡大申請
(2017年8月29日発表)

ファイザーは、Bosulif(bosutinib、和名ボシュリフ)を慢性骨髄性白血病の一次治療に用いる適応拡大申請が欧米で受理されたと発表した。米国の審査期限は今年12月。src/abl阻害剤で、現在はGleevec(imatinib)など他のabl阻害剤を既に用いた患者の二次治療薬として承認されている。

Bosulifといえば、iPS細胞研究所の井上教授がALSに有効な可能性を指摘、改めて注目されている。

リンク: ファイザーのプレスリリース

ロシュ、Gazyvaの適応拡大を米国でも承認申請
(2017年8月28日発表)

ロシュは、Gazyva(obinutuzumab)をCD20陽性濾胞性リンパ腫の一次治療に用いる適応拡大申請を米国で行い、受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は今年12月23日。

Rituxan(rituximab、和名リツキサン)と同様にCD20に結合する抗体医薬だが、翻訳後装飾でフコースが付与されないよう糖鎖が改変されており、ADCC活性が高い。現在は慢性リンパ性白血病や濾胞性リンパ腫の再発治療に承認されており、直接比較試験の多くでRituxanを上回る延命効果を示した。

今回の適応拡大申請はGALLIUM試験に基づくもの。化学療法と併用し、単剤による維持療法も行う群と、GazyvaではなくRituxanを用いる標準療法群のPFS(無進行生存期間)を比較したところ、ハザードレシオ0.68と有意に優れていた。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認】


CAR-Tの第一号が米国で承認
(2017年8月30日発表)

FDAは、ペンシルバニア大学発のCAR-T(キメラ抗原受容体発現T細胞)療法を承認した。ノバルティスが権利を取得し承認申請したKymriah(tisagenlecleucel)で、適応は、難治性または2回目以降の再発となった前駆B急性リンパ性白血病(ALL)の25歳以下の患者。承認の根拠となった第二相試験では、総合寛解率が83%だった。

FDAは初の遺伝子療法と呼んでいる。B細胞特異的に発現するCD19に結合する抗体の単鎖可変領域とTCRの共刺激伝達領域である4-1BB、そしてCD3ゼータ鎖をスペーサーで繋げた遺伝子を、レンチウイルスを用いて、患者から採取したT細胞に導入・培養したもので、患者の体内に戻すとT細胞が抗原提示不要でB細胞を攻撃する。

深刻な副作用は、サイトカイン放出症候群と神経学的イベント(脳症やせん妄など)が枠付き警告された。前者は中外のActemra(tocilizumab)が有効で、完全解消率69%となっている。今回、Actemraの適応拡大が承認されるとともに、REMS(リスク評価緩和戦略)の中で、Kymriahを使う医療施設はActemraも用意することが求められた。

治療後8週間は自動車運転など危険を伴う行為を行うべきではない。治療を受けた患者は二次性腫瘍や白血病再発を永遠にモニターする必要がある。

遺伝子導入・培養はニュージャージーの工場で行われる。上記治験には日本の施設も参加した模様なのでロジスティクス面は克服可能なのだろう。当面は米国でも治療を受けられる医療施設を段階的に増やしていく考えのようだ。今回の適応は米国で年600人と少ないが、年内にびまん性大細胞性巨大B細胞リンパ腫に適応拡大申請される予定。欧州でも年内申請予定となっている。

Kymriahの価格は47万5000ドル。反応率が高く、多くで効果が持続し、子供の癌は完治の可能性もあり、治癒的治療である骨髄移植は米国では80万ドルかかるのでフェアなプライシングと考えているようだ。公的医療制度を担うCMSとの間では、1ヶ月以内に応答した患者だけから費用を徴収するPay-for-Performanceディールが結ばれる模様。民間医療保険も倣うのではないか。前途のある若者、子供が何十万ドルの借金を背負って生きなくても良いように、工夫してもらいたいものだ。

ノバルティスはCAR-Tの開発でKite Pharma(Nasdaq:KITE)などとしのぎを削っているが、Kiteはギリアド・サイエンシズが119億ドルで買収することで合意した。抗PD-1/PD-L1抗体に続いてブームがヒートアップしている。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: ロシュのActemra適応拡大に関するプレスリリース

カルバペネム耐性菌にも有効な複合抗生剤が承認
(2017年8月29日発表)

FDAは、メディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)のVabomereを複雑尿道感染症の治療薬として承認した。meropenemとvaborbactamの合剤で、カルバペネム耐性菌のように新種のベータラクタマーゼを分泌するグラム陰性菌にも有効。8時間毎に3時間点滴静注する。piperacillinとtazobactamの合剤(Zosyn)と比較した第三相試験では、臨床的治癒率が98.4%対94.0%と有意に上回った。深刻有害事象はアレルギー反応と癲癇。

2013年に達成報奨金も含めて5億ドル弱で買収したRempex Pharmaceuticalsの開発品。メディスンズは熱帯病優先審査バウチャーを取得した。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: メディスンズ社のプレスリリース

ファイザーのマイロターグが米国で復活
(2017年9月1日発表)

FDAは、ファイザーのMylotarg(gemtuzumab ozogamicin、和名マイロターグ)を承認した。抗CD33抗体と細胞毒性を持つカリケアマイシンのADC(抗体薬物複合体)で、2000年にCD33陽性急性骨髄性白血病の再発治療薬として加速承認されたが、市販後薬効確認試験が相次いでフェールしたため、FDAの要請に基づきメーカーが自発的に承認を返上した。当時は市販後薬効確認試験をネグる新興製薬会社が少なくなかったため、FDAも諮問委員も、ルール通りに厳しいスタンスを取ったのである。

ファイザーは日本を除く多くの国で販売を中止したが、医師主導で用量を減らしたり、一度ではなく数回に分けて投与することで致死的肝静脈閉塞症のリスクを緩和する手法が開発され、複数の臨床試験が成功した。今回の承認もこの用法用量に基づくもので、新患に化学療法併用、高度集中療法不適の新患に単剤投与、再発患者に単剤投与、の三種類のエビデンスがある。

欧州でも承認審査中。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース

アヴェオのVEGFR阻害剤がやっと欧州で承認
(2017年8月28日発表)

アヴェオ・オンコロジー(Nasdaq:AVEO)のFotivda(tivozanib)が欧州で末期腎細胞腫用薬として承認された。一次治療、またはサイトカイン薬による治療歴を持つがVEGFR阻害剤は未経験の患者の二次治療に用いる。第二相離脱試験に基づくもの。米国では承認されず、18年に第三相三次治療試験の結果が出てから再挑戦する予定。

tivozanibは10年前にキリンからアジア以外の権利を取得したもの。開発が進んだ段階でアステラス製薬が欧米のサブライセンスを取得したが、米国で承認されずアステラスが主導した結腸直腸癌試験などがフェールしたことから権利を返還。欧州では新たな提携先であるEUSA Pharmaが販売する。

リンク: アヴェオのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、キイトルーダの骨髄腫試験の詳細を公表
(2017年8月31日発表)

MSDの抗PD-1抗体、Keytruda(pembrolizumab)は非小細胞性肺癌など様々な癌に単剤、あるいは化学療法併用で承認されている。開発中の癌や併用法は数多いが、そのうち、多発骨髄腫のdexamethasone(以下、DEX)・免疫調停薬併用第三相試験二本で死亡リスクが観察され、今年6月にMSDが新規組入れ停止、7月にはFDAが投与中止を決定した。今回、FDAは、骨髄腫に承認されていないことも含めて、改めて警告するとともに解析結果を公表した。

一本は183試験で、三次治療としてセルジーンのPomalyst(pomalidomide)及びDEXと三剤併用したところ、死亡者が29人とPomalyst・DEX二剤併用群の21人を上回った。ORR(客観的反応率)は34%で二剤併用の40%を下回り、深刻有害事象発生率は63%対46%で上回った。

もう一本の185試験は自家造血幹細胞移植不適の新患にセルジーンのRevlimid(lenalidomide)とDEXを併用するRdレジメンと三剤併用したところ、死亡者数が19人とRdレジメン群の9人を上回った。ORRは64%対62%で大差なく、深刻有害事象は54%対39%で上回った。

抗PD-1/PD-L1抗体は天然の免疫回避メカニズムを阻害することによって免疫賦活するが、自己免疫性疾患のリスクが高まりこれまでの抗癌剤とは異なった副作用が出る。Revlimidなどの作用機序も免疫強化と考えられており、併用すると副作用ばかり増強されてしまうのかもしれない。

リンク: FDAのアラート



今週は以上です。

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