2017年7月16日

2017年7月16日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アミカス、トランプ旋風に乗って新薬承認申請へ 
  • イーライリリーもCDK4/6阻害剤を承認申請 
  • ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎に適応拡大申請 
  • ODAC、ノバルティスのCAR-Tの承認を支持 
  • ODAC、マイロターグの承認を支持 
  • JNJの乾癬治療薬が承認 
  • Blincyto、Ph+にも承認 


【新薬開発】


アミカス、トランプ旋風に乗って新薬承認申請へ
(2017年7月11日発表)

アミカス・セラピュティクス(Nasdaq:FOLD)はAmigal(migalastat hydrochloride)をファブリー病治療薬としてFDAに承認申請すると発表した。FDAとの一連の話し合いを経て、申請することが認められた。

ファブリー病はアルファ・ガラクトシダーゼの遺伝子変異が原因でGL-3などの糖脂質が組織に蓄積、神経症状や機能障害をもたらす。Amigalはファーマスーティカル・シャペロンと呼ばれる新しい機能を持つ薬で、アルファ・ガラクトシダーゼをライソゾームに誘導し本来の役割を果たせるようにする。ジェンザイムのFabrazyme(agalsidase beta)のような酵素補充療法とは異なり、患者の35~50%程度にしか有効ではないが、経口投与できる長所がある。

第三相試験はフェールしたが、反応者を組入れて継続投与群と偽薬スイッチ群を比較した離脱試験などでGL-3を有意に減らし、16年に欧州でGalafold名で承認された。一方、FDAはサロゲート・マーカーに基づく薬効評価を認めず、新たに胃腸症状改善作用を検討するクロスオーバー試験を行うよう求めた。

風向きが変わったのが、まず、Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)が昨年、デュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として米国で承認されたこと。適切な治療法が限られる希少疾患では、臨床的効用とリンクすることが検証されていないサロゲート・マーカーに基づいて新薬を評価することが必ずしも不適切ではないことを示した。鶴の一声を発したのは小分子薬などの審査を担当するCDER部門のヘッドで、反対した担当部署のヘッドはFDAを去った。

大きな追い風と推測されるのが、今年2月にトランプ大統領が連邦議会で行った施政方針演説だ。アミカスのCEOで映画『小さな命が呼ぶとき』のモデルとなったジョン・クラウリーとポンペ病の娘と会談したこと、難病の治療薬の開発にあたってはFDAの承認審査のスピードアップが重要であることを語った。ネットで公開された演説原稿を読んだ時、Amigalが承認されるかも、と思ったものだ。但し、申請が認められたとしても承認されるとは限らない。他社の例では、後になって、申請するのは申請者の権利であることを認めただけだったこともあった。

Amigalは日本でも今年6月に承認申請された。

リンク: アミカスのプレスリリース


【承認申請】


イーライリリーもCDK4/6阻害剤を承認申請
(2017年7月10日発表)

イーライリリーはLY2835219(abemaciclib)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査指定されたので、来年第1四半期中に結果が出ることになる。乳癌の経口剤で、適応・用法は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の転移性乳癌のうち、ホルモン療法と化学療法を既に受けた患者(モノセラピー)と、ホルモン薬による一次治療歴を持つ患者(fulvestrant併用)。一次治療アロマターゼ阻害剤併用試験も成功しているので、早晩、承認申請されるだろう。

abemaciclibは細胞周期進行に関わるCDK4/6を阻害する小分子薬。モノセラピーの第二相試験ではORR(客観的奏効率)19.7%、メジアン反応持続期間は8.6ヶ月だった。二次治療fulvestrant併用試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン16.3ヶ月とfulvestrantと偽薬を投与した群の9.3ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.55だった。

欧州でも第3四半期に承認申請する予定。日本も年内申請予定。

CDK4/6阻害剤はファイザーやノバルティスが既に発売しており、今後は差別化が課題になる。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
(2017年7月13日発表)

ファイザーはXeljanz(tofacitinib citrate)を潰瘍性大腸炎の治療に用いる適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。審査期限は来年3月。インターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJanus Kinase(JAK)を阻害する経口剤で、抗リウマチ薬として日米欧などで承認されている。導入療法試験では8週間の治療後の寛解率が一本は18.5%(偽薬群は8.2%)、もう一本は16.6%(3.6%)だった。

JAK阻害剤は免疫抑制作用が強く、自己免疫性疾患に有効な一方で、感染症や癌のリスクに気を付ける必要がある。承認されるかどうか、承認後に普及するかどうかは、このリスクを受け入れざるを得ないほど深刻な病気であるかどうかに依存するだろう。

リンク: ファイザーのプレスリリース


【承認審査・委員会】


ODAC、ノバルティスのCAR-Tの承認を支持
(2017年7月13日発表)

FDAは腫瘍学薬諮問委員会(ODAC)を招集し、ノバルティスが再発性難治性B細胞性急性リンパ性白血病用薬として承認申請したCTL019(tisagenlecleucel)の主として安全性について意見を聞いたところ、諮問委員の全員が便益がリスクを上回る(承認に値する)と判定した。審査期限は10月。臨床データは問題ないようなので承認されないリスクがあるとしたら生産方法だろう(夫々の患者の免疫細胞を加工する)。承認されれば、CAR(キメラ抗原受容体)-Tと呼ばれる新しい治療法の第一号になる。

CTL019は、B細胞特異的に発現するCD19を標的とする抗体の単鎖可変領域を、TCRの共刺激伝達分子である4-1BB及びCD3ゼータとスペーサーで繋げたものを、患者から採取したT細胞にレンチウイルスを使って導入し、培養活性化したもの。患者に戻すと抗原提示なしでB細胞を攻撃する。臨床試験ではORR(完全寛解率)が82.5%だった。

CAR-Tは免疫力を強化するためサイトカイン放出症候群が発生しやすい。CTL019の場合、グレード3、4のサイトカイン放出症候群が47%の患者で発生した。

諮問委員会ではレンチウイルスが活性化するリスクや遺伝子導入が引き金で将来、癌化するリスクが討議されたが、具体的な懸念材料はなさそうだ。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ODAC、マイロターグの承認を支持
(2017年7月11日発表)

FDAは腫瘍学薬諮問委員会(ODAC)を招集し、ファイザーが急性骨髄性白血病用薬として承認申請したMylotarg(gemtuzumab ozogamicin、和名マイロターグ)について意見を聞いたことろ、7人の諮問委員のうち6人が支持した。審査期限は9月。2000年にサロゲート・マーカー評価に基づき加速承認、しかし市販後薬効確認試験がフェールし致死的な毒性も見られたため2010年に販売中止(日本などは除く)、と大きな波乱があったが、再登板できそうだ。

MylotargはCD33を標的とする抗体をカリケアマイシンとリンカーで繋げた抗体薬物複合体。抗体技術を持つセルテック(後にUCBが子会社化)とワイス(後にファイザーが買収)が共同開発した。今回の適応は、CD33陽性急性骨髄性白血病のうち、化学療法不適な再発患者のモノセラピーと、新患に化学療法併用。後者は上記の市販後薬効確認試験よりも用量を減らして、投与回数を増やすことにより一回の投与量を更に減らす工夫を行ったところ、忍容性が改善、併用しなかった群と比べて死亡者が増加しなかった。

リンク: ファイザーのプレスリリース


【承認】


JNJの乾癬治療薬が承認
(2017年7月13日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、FDAがTremfya(guselkumab)を中重度乾癬の治療薬として承認したと発表した。IL-23のp19サブユニットを標的とする抗体医薬で、同社のStelara(ustekinumab)と違うサブユニットに結合するためIL-12には影響しない。臨床試験では、奏効率がTNF阻害剤のHumira(adalimumab)を上回った。乾癬はIL-17や受容体を標的とする抗体医薬が続々と承認されており、競争は激しそうだ。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

Blincyto、Ph+にも承認
(2017年7月11日発表)

アムジェンは、FDAがBlincyto(blinatumomab)の適応拡大と本承認切替を承認したと発表した。再発性前駆B急性リンパ芽球性白血病用薬として14年に米国で承認された段階ではフィラデルフィア染色体陰性(Ph-、全体の3/4を占める)に限定されていたが、今回、陽性患者に用いることも可能になった。また、Ph-に対する第三相試験で全生存期間が化学療法比で有意に長かったこともレーベル収載されることになった(メジアン7.7ヶ月対4.0ヶ月)。

リンク: アムジェンのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年7月9日

2017年7月9日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • オプジーボの術後アジュバント試験が成功 
  • FDAが鎌状赤血球症治療薬を承認 
  • オレンシア、乾癬性関節炎に承認 
  • キイトルーダの多発骨髄腫三剤併用試験は完全停止に 
  • EUが抗CD25抗体の使用制限 


【新薬開発】


オプジーボの術後アジュバント療法試験が成功
(2017年7月5日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の黒色腫アジュバント療法(切除後の再発予防)試験の成功を発表した。同社のYervoy(ipilimumab)を投与した群と比べて再発リスクが有意に小さかった。データは今後、学会などで発表される見込み。

この、CheckMate-238試験は、ステージIIIb/cまたはステージIVの黒色腫の完全切除を受けた患者のうち、再発リスクの高い906人を、Opdivo群(3mg/kg、二週間毎)とYervoy群(10mg/kg、最初は三週間毎、5回目からは12週間毎、全1年コース)に無作為化割付して、無再発生存率(RFS)を比較したもの。

対照薬であるYervoyはステージIIIのアジュバント療法薬として承認されている。根拠となった第三相試験では、RFSの偽薬比ハザードレシオが0.75と有意に改善し、メジアン値は26ヶ月で偽薬群の17ヶ月を上回った。RFSの構成要素のうち死亡は3倍近く多かったが、再発が24%少なかった。

この試験では今回と同様に10mg/kgを用いたが、最近開票したステージIII/IVを対象に10mg/kgと3mg/kgを比較したアジュバント試験では、RFSはどちらも大差なく、治療関連有害事象による死亡は10mg/kg群のほうが4倍多かった。詳細データは未発表だが重要なデータである。

抗体医薬は至適用量の探索が徹底していない嫌いがあるからだ。抗癌剤の用量決定は動物試験で有効だった血中濃度を目標に増量し、最大耐容量を至適用量とするが、抗体医薬は標的分子が動物とヒトで完全に同じではないため前臨床の知見が必ずしもアテにならず、本当はもっと少なくても足りるかもしれないのだ。用量が1/3で済むなら薬代も1/3前後に減るので、患者や医療制度には都合がよい。

このような背景があるので、CheckMate-238試験の結果が出たらYervoy群の数値が過去の試験と整合的であるか確認する必要があるだろう。Yervoyの用量用法が適切でないのなら、Opdivoのほうが良いとは言い切れないからだ。しかし、結論が覆る可能性は低いだろう。今回もまた、抗PD-1抗体が抗CTLA-4抗体より優れていることが示された。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認】


FDAが鎌状赤血球症治療薬を承認
(2017年7月7日発表)

FDAはEmmaus Life Sciences社のEndari(L-glutamine)を鎌状赤血球症治療薬として承認した。5歳以上の患者に経口投与してクリーゼ(重い増悪)のリスクを抑制する。

この病気はヘモグロビンベータ鎖の遺伝子変異が原因。様々な組織で酸素不足によるトラブルが生じやすくなる。米国の患者数は約10万人。アフリカ系アメリカ人に多く、有病率は新生児365人に一人とされる。臨床試験ではクリーゼの治療や入院、急性胸症候群が偽薬群より少なかった。有害事象は便秘、悪心、頭痛、腹痛など。

鎌状赤血球症の薬が承認されたのは、ヒドロキシウレア以来、19年ぶり。活性成分はNutrestore名で医薬品として承認されている(短腸症候群の治療に成長ホルモンと併用する用途)。

EmmausのCEOはUCLA医学部教授のYutaka Niihara医学博士で、鎌状赤血球症の治療や研究で長年の実績を持っている。作用機序は不明だが、酸化に弱い鎌状赤血球が抗酸化物質を作るのに必要なアミノ酸の補充が元々のアイディアであった模様だ。

リンク: FDAのリリース
リンク: Emmausのプレスリリース

オレンシア、乾癬性関節炎にも承認
(2017年7月6日発表)

BMSは、Orencia(abatacept、和名オレンシア)を中重度活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。

点滴用薬(10mg/kg)の試験では24週間の治療でACR20奏効率が47.5%と偽薬群の19.0%を有意に上回った。皮注用薬(125mg)の試験では39.4%対22.3%と、こちらも有意に上回った。

リンク: BMSのプレスリリース


【医薬品の安全性】


キイトルーダの多発骨髄腫三剤併用試験は完全停止に
(2017年7月5日発表)

6月18日号で報じたように、MSDはKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の第三相多発骨髄腫三剤併用試験二本の新規組入れを中断した。今回、FDAがフル・クリニカル・ホールドを命じたことが公表された。治験許可を停止するもので、既に組み入れられた患者に対する投与も中止となった。癌は命に係るので奏功・忍容している患者には続行を認めることも少なくない。それだけ、副作用懸念が大きいということなのだろう。

対象は一本増えて三本。第三相は一本がKEYNOTE-183試験で、再発性難治性で三次治療を受ける患者にpomalidomide(セルジーンのPomalyst/Imnovid)及び低量dexamethasoneと併用。もう一本がKEYNOTE-185試験で、初めて治療を受ける自家造血幹細胞移植不適患者にlenalidomide(セルジーンのRevlimid)と低量dexamethasoneのRdレジメンと併用をテストした。治験登録によれば日本の施設もこの二本に参加している。

もう一本は第一相試験の一部で、Rdレジメンと併用するコフォートが新たにホールドとなった。

BMSもくすぶり型多発骨髄腫の第三相試験でOpdivo(nivolumab)とRdレジメンの併用法を検討している。海外の薬品アナリストのレポートによると、Keytrudaの件を受けてデータ監視委員会がチェックしたが、続行を勧告した由だ。但し、油断はできないだろう。こちらの試験のほうが患者の全般的な状況は良好だろうから、副作用をよく忍容して致死的なところまで行かないだけかもしれない。

リンク: MSDのプレスリリース

EUが抗CD25抗体の使用制限
(2017年7月7日発表)

EMA(欧州薬品庁)は再発型多発硬化症用薬として昨年、承認したZinbryta(daclizumab)の使用を制限する旨、発表した。深刻な肝障害例が複数、報告されたため、再検討が完了するまで暫定的な措置を取るもの。

daclizumabはIL-2受容体の一部であるCD25を標的とするヒト化抗体で、プロテイン・デザイン・ラボ(PDL)が創製、ロシュが腎移植時の拒絶反応予防薬として開発し、97年に米国で承認され、ヒト化抗体の第一号となった。しかし、普及せず、適応拡大も進まなかったため、ロシュは2009年に生産販売中止を決定、権利を返還した。PDLは新たにバイオジェンと提携して多発硬化症用薬として共同開発、難航したが遂に第三相試験を成功させ、昨年、欧米で承認された。

PDLは08年にヒト化抗体技術など知的所有権を管理する会社と新薬開発会社に企業分割され、後者は10年にアッビィに買収された。このため、Zinbrytaはバイオジェンとアッヴィの共同販売となっている。

感染症や皮膚毒性など様々な深刻有害事象が見られるが、肝毒性も既知であり、治療を開始する前と治療中は月一回以上の頻度で肝機能検査を行う必要がある。規制強化の引き金になった症例は、一人が劇性肝炎で死亡、4人が深刻な肝障害を発症した。治療開始後早い時期に発症した事例もあるが、中止後数ヶ月経ってから発症したケースもあるようだ。

このため、EMAは使用を高度活性の再発性疾患で他の治療がフェールした患者や、急速に進展していて他の薬で治療できない患者に限定した。

Zinbrytaは肝障害のある患者には禁忌。多発硬化症以外の自己免疫疾患を持つ患者に用いることは推奨されない。肝障害のリスクのある薬と同時使用する時は注意する。

リンク: EMAのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年7月2日

2017年7月2日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • MSD、CEPT阻害剤の心血管アウトカム試験が成功? 
  • ロシュ、画期的な血友病治療薬の第三相試験が成功 
  • アドセトリス、一次治療試験が成功 
  • バイオマリン、フェニルケトン尿症の新薬を承認申請 
  • ファイザーの抗体薬物複合体が承認 
  • ベクティビックスの適応がRAS野生型に限定 
  • ジカディア、EUでも一次治療承認 
  • 抗IL-6受容体抗体がEUでも承認 



【新薬開発】


MSD、CEPT阻害剤の心血管アウトカム試験が成功?
(2017年6月27日発表)

MSDは、MK-0859(anacetrapib)の第三相心血管アウトカム試験が主目的を達成したと発表した。データは8月29日にESC(欧州心臓学会)で発表される予定。

anacetrapibはコレステロール・エステルをHDL-CからLDL-Cに輸送するCETPを阻害する薬物で、LDL-Cを40%削減し、HDL-Cを130%増やす。他社のCETP阻害剤のアウトカム試験は全てフェールしたことを考えるとサプライズだが、プレスリリースのトーンは抑制的で、承認申請するかどうかこれから検討する様子だ。脂肪蓄積にも言及しており、副作用面で何か懸念材料があるのかもしれない。

このREVEAL試験はオックスフォード大学の臨床試験ユニットが主導して欧州、北米、中国の医療施設で実施した。対象は心筋梗塞、脳梗塞など脳血管アテローム性疾患、末梢動脈疾患、または症候性冠動脈疾患を合併する糖尿病の患者約3万人。介入方法・対照療法はatorvastatinによるランイン治療を受けた、平均LDL-C値61mg/dL、HDL-C値40mg/dLの患者に偽薬または100mgを一日一回投与。主評価項目は冠状疾患死/心筋梗塞/冠血行再建術の複合評価項目。

仮説は偽薬群の発生率が年1.8%、anacetrapibの相対リスク削減率は15%。検出力(p<0.01)は88%。心血管アウトカム試験は費用と時間がかかるせいか、ボリュームを目一杯引き上げて小さな音でも拾えるようにデザインすることが多く、この試験もフェールするリスクを抑制している。

CETP阻害剤で最初に第三相に進んだファイザーのtorcetrapibは、約13000人の冠状心疾患患者を組み入れたILLUMINATE試験が中間解析で打ち切りとなった。心血管イベントのリスクが偽薬群の1.25倍、全死亡リスクが1.58倍と高かったからだ。原因は明らかではないが、疑われているのはアルドステロンやコルチゾルが増加することや、血圧上昇だ。

後者は投与期間依存的で、前期第二相、後期第二相、第三相、1年試験、心血管アウトカム試験とステージアップするにつれて影響が拡大していった。もう一つ気になったのは、HDL-C値が3~6ヶ月でプラトーに達せず、少しずつだが上がり続けること。HDL-Cだけなら問題ないかもしれないが、副作用も期間相関しないか、心配だ。

イーライリリーのLY-2484595(evacetrapib)はACCELERATE試験の中間解析で無益性が認定され、開発中止となった。代理マーカーの変化を見ると、LDL-Cが37%低下、HDL-Cは130%増加しており、anacetrapibと大差ない。両剤とも血圧上昇副作用は小さく、ACCELERATE試験の収縮期血圧の群間差は1 mmHgに過ぎなかったので、副作用で違いが出るようことも考えにくい。

にも関わらず、主評価項目(不安定狭心症による入院なども含む5項目)も、ハードなエンドポイントである心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中の3項目だけの評価でも、群間差はほとんどなかった。

それでは、anacetrapibは、あるいはREVEAL試験は、何が違うのか?最初に目につくのは、REVEAL試験の主評価項目に脳卒中が入っていないことだ。尤も、evacetrapibの試験では複合評価項目を構成する個々の項目でも群間差が無かったし、torcetrapibと違って血圧は上昇しないのだから、脳卒中増加を疑う理由はない。

次に考えられるのは、相対リスク削減率が仮説より小さく臨床的な意義が限定的であった可能性。あるいは、何かの副作用の発生率がこれまでの試験より高かった可能性。ボリュームを目一杯上げればノイズも煩くなるのは当たり前だが、副作用はリアルであることを前提に検討せざるを得ない。

MSDの新薬開発は周到・徹底的なので、上記の脂肪蓄積問題について、長期的な影響を検討する前臨床試験を別途、行ったかもしれない。そこで懸念材料が浮上し、確認のために未だ時間が必要という話である可能性もありそうだ。

ESCでの発表内容が注目される。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: LandrayらのREVEAL試験デザインペーパー(American Heart Journal)
リンク: REVEAL試験の治験登録

ロシュ、画期的な血友病治療薬の第三相試験が成功
(2017年6月26日発表)

ロシュは、ACE910/RG6013/RO5534262(emicizumab)の第三相試験成功を発表した。詳細は7月10日にISTH(国際血栓止血学会)で発表される予定。

中外製薬が創製したヒト化二重特異性抗体で、第VIII因子インヒビターを持つA型血友病の出血予防に用いる。活性化第VIII因子の代わりに第IX因子と第X因子に結合・架橋して血液凝固カスケードを進捗させる。週一回皮注なので、頻繁に出血する患者が予防目的でルーチンに投与するのに適している。

第三相試験は青年成人と小児の二本行われた。前者は109人を組入れて、そのうちBPA(バイパス剤)による出血予防歴を持つ患者をemicizumabによる予防を行う群と予防せず出血時にBPAで治療する群に2対1割付して出血状況をメジアン31週間追跡した。結果は予防群が年率2.9回、出血時治療群が23.3回、リスクレシオ0.13、p<0.0001となった。

また、BPAによる出血予防歴を持つ患者24人にemicizumabによる予防を施行した群は、年率3.3回と、BPAによる予防を行っていた頃の15.7回と比べてリスクレシオ0.21、p<0.0003と、こちらも有意に減少した。

既報のように、この試験ではemicizumab群で深刻な血栓塞栓イベントが2例、血栓性微小血管症が3例、発生し、うち1名は死亡した。何れもブレークスルー出血時に活性化プロトロンビン複合体(aPCC)を投与しており、emicizumabの副作用なのか他の薬または併用に伴うリスクなのか、判然としない。薬効解析対象となった77例のうち対照群は18例、23%に過ぎず、発生率の比較は困難である。当局が個々の症例報告を精査するのを待つしかないだろう。

A型血友病の治療・出血予防は遺伝子組換え型第VIII因子が有効だが、一部の患者は生まれつき、または投与を繰り返すうちに、インヒビターができて無効になる。遺伝子組換え型活性化第VII因子などのBPAが適応になるが、血液凝固を促す薬なので必然的に血栓塞栓リスクも高まる。emicizumabも例外ではなかった。となると、問題はリスクと便益のバランスと価格だ。予防的に使う薬なので安全性のハードルは高めになり、新薬はトラックレコードが乏しいので更に高くなる。

年内に欧米日本で承認申請される予定。貴重な選択肢なので承認はされるだろうが、普及には時間がかかるかもしれない。

リンク: ロシュのプレスリリース

アドセトリス、一次治療試験が成功
(2017年6月26日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)と武田薬品は、Adcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)の古典的ホジキン型リンパ腫一次治療試験が成功したと発表した。ABCDレジメン(adriamycin、bleomycin、vinblastine、dacarbazineの四剤併用)と、bleomycinに代えてAdcetrisを併用する方法を比較したところ、修正PFS(無進行生存期間、独立放射線学的査読後)のハザードレシオが0.77、p=0.035と有意に改善した。

2年mPFS率は各群77.2%と82.1%だった。全生存解析は未成熟で有意差はなかったが、改善トレンドが見られた由。

高額な薬剤である割には2年mPFSの差は5%弱と小さい。延命効果が明確になれば説得力が増すが、正式解析は4年後のようだ。

尚、5剤併用ではなく4剤併用に留めたのは、ABCDとAdcetrisを5剤併用した試験で肺有害事象の発生率が40%と大きく上昇したからだろう。bleomycinの肺毒性が増強されたと考えられており、この二剤の併用は禁忌になっている。

リンク: シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

【承認申請】


バイオマリン、フェニルケトン尿症の新薬を承認申請
(2017年6月30日発表)

バイオマリン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:BMRN)は、PEGPAL(pegvaliase)をフェニルケトン症治療薬としてFDAに承認申請した。同社のKuvan(sapropterin dihydrochloride)などの既存療法に十分反応しない患者を想定している模様だ。欧州でも年内に承認申請の予定。

希少疾患用薬のスペシャリストで何度も承認を申請取得した経験を持つ会社だが、プレスリリースで改めてFDAの受理手続きを説明しているのが目を引く。受理されないリスクを想定しているのかもしれない。

PEGPALは遺伝子組換え型フェニルアラニン・アンモニア・リアーゼ。中和抗体ができて増量が必要になったり、反応が悪い患者がいたりするため、第三相試験はランイン期間中に投与してある程度以上の反応を示した患者だけを組入れて、継続治療群と投与を止める群を比較する離脱試験方式で行った。結果は、継続治療群の血中フェニルアラニン値が微増に留まったのに対して、中止群は倍以上に増加し、有意な差があった。

レスポンダー率が低い点ではKuvanも同じで、だからこそ代替的な治療手段が必要とも言える。許容範囲なのか。改善の余地があるのか、FDAの判断が注目される。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

【承認】


ファイザーの抗体薬物複合体が承認
(2017年6月30日発表)

ファイザーは、Besponsa(inotuzumab ozogamicin)がEUで承認されたと発表した。成人の再発性難治性CD22陽性前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病に用いる。ワイス(後にファイザーが買収)がセルテック(後にUCBが買収)と共同開発した抗体薬物複合体で、B細胞性腫瘍の9割で発現しているCD22に結合する抗体を細胞毒のカリケアマイシンと結合したもの。第三相試験では完全反応率が80.7%と、FLAGレジメンや高量cytarabineを用いた対照群の9.4%を大きく上回った。

ワイスとセルテックの抗体薬物複合体と言えばMylotarg(gemtuzumab ozogamicin)が加速承認→市販後薬効確認試験フェール→(欧米で)販売中止→用法用量を変えて再チャレンジ成功→再承認申請、という波乱万丈のプロダクトサイクルを経験している。Besponsaも非ホジキンリンパ腫の第三相が一本は組入れ不調で、一本は無益性で、中止になった過去があるが、見事に復活した。

リンク: ファイザーのプレスリリース

ベクティビックスの適応がRAS野生型に限定
(2017年6月29日発表)

アムジェンは、FDAがVectibix(panitumumab)の適応限定を承認したと発表した。抗EGFR完全ヒト化抗体で末期結腸直腸癌に用いるが、一次治療でFOLFOXレジメンに併用する場合も、代表的な薬が全てフェールした患者のサルベージ療法として単剤投与する場合も、kras及びnrasが変異していない野生型だけに用いる。

米国で最初に承認された時はrasによる限定はなかったが、一年後にEUで承認された時はkrasに変異のない患者に限定された。その後、krasのエクソン2に変異のない患者だけを組入れたFOLFOX併用試験のサブグループ分析で、nras変異型にはほとんど効果がない可能性が浮上した。今回の適応限定はこれらの試験結果に基づくものだが、なぜ今日まで変更されなかったのかが不思議だ。

リンク: アムジェンのプレスリリース

ジカディア、EUでも一次治療承認
(2017年6月29日発表)

ノバルティスは、Zykadia(ceritinib、和名ジカディア)をALK陽性末期非小細胞性肺癌の一次治療に用いる適応拡大がEUに承認されたと発表した。米国は5月に承認済み。

非小細胞性肺癌の3~7%で見られるALK活性化融合蛋白陽性患者が適応になる。非扁平上皮性非小細胞性肺癌の第三相試験ではメジアン無進行生存期間が16.6ヶ月と、白金薬とAlimta(pemetrexed)を併用しAlimta維持療法も施行された対照群の8.1ヶ月より良好だった。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

抗IL-6受容体抗体がEUでも承認
(2017年6月27日発表)

リジェネロン(Nasdaq:RGEN)とサノフィは、Kevzara(sarilumab)がEUで抗リウマチ薬として承認されたことを発表した。米国では5月に承認済み。両社の完全ヒト化抗体に関する開発提携の産物で、IL-6受容体のアルファ・サブユニットに結合する、中外/ロシュのActemra(tocilizumab)に似た薬剤。二週間に一回皮注する。Actemraもリウマチ性関節炎に関しては1~2週間に一回、皮注が承認されている。副作用の出方はよく似ている。となると注目は価格だが、米国ではActemraの7掛けの水準に置かれる模様だ。

リンク: リジェネロンのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年6月25日

2017年6月25日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • PD-L1検査方法の違いが問題に 
  • ノバルティス、抗IL-1ベータ抗体のCVO試験成功 
  • ClovisのPARP阻害剤もBRCA変異不問 
  • 抗CD33ADCの第三相試験が中止に 
  • 抗CGRP受容体抗体、EUでも承認申請 
  • ギリアド、新規HIV治療薬を承認申請 
  • 遺伝子組換え型vWFを欧州でも承認申請 
  • アドセトリスの適応拡大申請 
  • CHMPが抗HCVコンビ薬などの承認を支持 
  • Brintellixの効能追加申請、米国はまたCRL 
  • PortolaのXa阻害剤も承認 
  • 湧永のキノロンが米国で遂に承認 
  • シャイアーのADHD治療薬が11年ぶりに承認 
  • BRAF V600E変異陽性肺癌に適応拡大 
  • ロシュ、FDAがリツキサンの皮注用製剤を承認 
  • 皮注用C1エステラーゼインヒビターが承認 


【今週の話題】


PD-L1検査方法の違いが問題に
(2017年6月22日発表)

抗PD-1抗体は従来の免疫療法に応答する黒色腫や腎細胞腫だけでなく様々な癌にも効果を示し、超大型薬化した。現在も適応拡大試験や併用試験が活発に進められているが、意外な結果も散見されるようになった。その一つがBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)のCheckMate 026試験だ。

ステージIV・難治性非小細胞性肺癌の一次治療としての効能を化学療法と比較した第三相試験で、MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の同様な試験は成功したが、こちらはフェール。PFS(無進行生存期間)が有意に上回らなかった。何故か?

New England Journal of Medicine誌に掲載された治験論文のエディトリアルは、PD-L1の閾値やアッセイの違いを指摘している。BMSはDako社のPD-L1 IHC 28-8 pharmaDxを用いている。026試験では腫瘍細胞の1%以上でPD-L1が発現していることを組入れ条件とした。

一方、Keytrudaのコンパニオン診断薬はDako社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDxで、非小細胞性肺癌の二次治療以降では発現1%以上が適応だが、一次治療は50%以上だ。

一次治療は生存期間が二次治療より長いので治療効果の多寡や副作用とのバランスが表面化しやすく、このため、一次治療の要件のほうが厳しかったとしても不思議はない。MSDは比較的早くからPD-L1検査に基づく応答予測に取り組んできたが、BMSがDakoとPD-L1アッセイの共同開発を始めたのは小野薬品と比べても遅く、一日の長が明暗を分けたのかもしれない。

尤も、話は単純ではなさそうだ。検査には偽陽性、偽陰性、判定の個人差、検体採取場所や方法の違いなど、ブレが付き物で、PD-L1アッセイも例外ではないからだ。

PD-L1アッセイは上記のほかに、ロシュのTecentriq(atezolizumab)はVentana PD-L1 (SP142)、アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)はVentana PD-L1 (SP263)がコンパニオン診断薬としてFDAに承認されている。同じようなものを4種類もストックするのは非効率なので互換性を検証する試験が複数行われているが、既に色々な課題が浮上している。

IASLC(国際肺癌学会)などのBlueprintプロジェクトのフェーズI結果(Hirschら)、NCCN主導研究(Rimmら)、アストラゼネカの研究(Ratcliffeら)の三論文が刊行されており、うち2本は抄録しか読めなかったが、共通点が多い。Dakoの二つのアッセイとSP263アッセイは概ね同じ結果が出るがSP142は陽性率が低い。判定の個人差は腫瘍細胞では小さいが免疫細胞のPD-L1発現評価では比較的大きい。腫瘍細胞でも閾値を50%に設定するのと比べて1%だと判定一致率が低下する、などなどだ。

画像処理による自動判定など、工夫の余地がありそうだ。現段階では、PD-L1によるプリスクリーニングを過信せず、偽陽性の存在を頭の片隅に置いて、今後の治験結果発表や技術進歩を見守るしかなさそうだ。

尚、これは蛇足だが、上記はあくまで互換性の検討であり、優劣は別問題である。コンパニオン診断薬にとって大事なのは薬との相性で、陽性率が高いとか低いとかではなく、ピッタリであることが一番だ。

リンク: CarboneらのCheckMate 026治験論文(NEJM)
リンク: Garonのエディトリアル(NEJM)
リンク: Hirschらの試験論文(Journal of Thoracle Oncology誌、リンク先はPubMed)
リンク: Rimmらの試験論文(JAMA Oncology誌)
リンク: Ratcliffeらの試験論文(Clinical Cancer Research誌)


【新薬開発】


ノバルティス、抗IL-1ベータ抗体のCVO試験成功
(2017年6月22日発表)

ノバルティスは、ACZ885(canakinumab)の心血管アウトカム(CVO)試験成功を発表した。hsCRPの高い患者を組入れた点ではCrestor(rosuvastatin)のJUPITER試験と類似しているが、スタチンならともかく、抗IL-1ベータ完全ヒト化抗体が心筋梗塞再発リスクを削減したのは衝撃的だ。これを機に、アテローム硬化に関与する炎症・免疫・血栓反応のうち炎症免疫反応に介入する臨床研究が進むかもしれない。

データは学会・論文発表待ち。今回は事実関係だけを纏める。ACZ885はIlaris(和名イラリス)という製品名で複数の希少疾患に承認・承認申請されている。クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、周期熱症候群(PFS)、全身性小児特発性関節炎(SJIA)、成人発症型活性期Still病(AOSD)だ。

今回のCANTOS試験は、心筋梗塞を発症してから30日以上経った、hsCRPが2mg/L以上の患者約1万人を、偽薬、50mg、150mg、または300mgを3ヶ月に一回皮注する各群に無作為化割付して、心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中の何れかが発生するリスクを比較したもの。二重盲検期間は9ヶ月で、その後は全員が150mgにスイッチする。

常識的に考えれば最初の9ヶ月間が勝負だろう。成功したということはカプランマイヤー・カーブが比較的早く乖離したことになる。

さて、ノバルティスのプレスリリースはIlarisという製品名ではなく開発コードと一般名で呼んでいる。もし適応拡大が承認された場合、年間の薬剤費が数百万円に達し費用対効果が悪くなるので、値下げを視野に入れているのだろう。同社は新規作用機序の薬の開発にあたって、その薬に最も適していて開発成功率が高そうな病気を患者数を問わずに最優先し、雁行的に他の用途を探索する戦略を取っている。canakinumabは好例であり、大きな適応拡大が実現して価格を引き下げるのは想定の範囲内だろう。

ノバルティスの発表を受けて、米国のリジェネロン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:REGN)がロイヤルティ権に関するアップデートを行った。リジェネロンはIL-1阻害剤Arcalyst(rilonacept)の開発などでノバルティスと提携していたことがあり、解消に際して、canakinumabの売上高の4~15%を得る権利を取得した。年商が15億ドルを超えると15%に上がる由であり、今回のCVO試験成功は同社にとっても商業的な意義が大きいことになる。

リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: CANTOS試験の治験登録(ClinicalTrials.gov)
リンク: リジェネロンのプレスリリース

ClovisのPARP阻害剤もBRCA変異不問
(2017年6月9日発表)

Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)は、Rubraca(rucaparib)の第三相卵巣癌維持療法試験が成功したと発表した。4週間以内に米国で適応拡大申請する予定。欧州でも申請する考えだ。

ファイザーがAG-014699あるいはPF-01367338という開発コードで臨床開発していたPARP阻害剤を2011年にライセンスしたもので、遺伝子の複製間違いの修復に関わるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼを阻害することにより、細胞分裂・遺伝子複製が活発であるが故に複製ミスも頻発する癌細胞の増殖を妨げる。

昨年12月に米国で、末期卵巣癌の三次治療薬として承認された。適応になるのは生殖細胞系または体細胞系のBRCA有害変異を持つ癌で、コンパニオン診断薬としてロシュ・グループのFoundation Medicine社の次世代シーケンシング検査が承認されている。

今回のARIEL3試験は、白金感受性卵巣癌で白金薬による二次以降の治療に反応したが高リスクの患者を組入れて、偽薬またはRubraca(600mg)を一日二回、経口投与して、PFS(無進行生存期間)を比較したもの。担当医評価に基づく解析が主評価項目、第三者が盲検で中央査読したデータに基づく解析が副次的評価項目とされた。

また、解析対象ユニバースとしては、生殖細胞系/体細胞系BRCA有害変異型196例→HRD陽性(BRCA有害変異を含む相同組換え不全)354例→intent-to-treat564例と、シーケンシャルに対象を拡大していくプロトコルが採用された。

結果は、何れの解析でもPFSが偽薬比有意に延長。BRCA変異は生殖細胞系、体細胞系を問わず有効、変異のない患者だけの解析も良好な結果になった。

PARP阻害剤ではTesaro(Nasdaq:TSRO)がMSDからライセンスして開発したZejula(niraparib)が一足先に同様な試験に成功、今年3月に米国で承認された。アストラゼネカのLynparza(olaparib)を含む三剤のうち二剤が有効だったのだから、PARP阻害剤を再発性卵巣癌の維持療法に用いる場合はBRCA変異を問わないと考えるべきなのだろう。

リンク: Clovisのプレスリリース

抗CD33ADCの第三相試験が中止に
(2017年6月19日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)は、SGN-CD33A(vadastuximab talirine)の第三相試験を途中で打ち切ることを発表した。死亡リスクに群間の偏りが見られたため独立データ監視委員会が中止勧告したもの。昨年、治験許可停止を受けた時は静脈閉塞性疾患など肝毒性が理由だったが、今回は肝臓疾患ではなく感染症などによる死亡が対照群より増えた由だ。何れにせよ、このADC(抗体薬物複合体)の開発は中止あるいは大幅後退するのではないか。

同社の抗CD33抗体プログラムは05年にPDL(当時)からライセンスしたもの。PDLより高量を使ってヒト化抗体であるlintuzumabの急性骨髄性白血病試験に再挑戦したがフェール。改良抗体に薬物を結合した複合体で再挑戦したが、残念な結果になった。

抗CD33ADCといえば、ワイス(後にファイザーが買収)がセルテック(UCBが子会社化)と共同開発したMylotarg(gemtuzumab ozogamicin)は2000年に米国で加速承認された後、市販後薬効確認試験が次々とフェール。FDAの働きかけによりファイザーが自発的に販売承認返上する事態になったが、その後も研究者主導試験が続けられ、遂に適切な用量用法を発見。欧米で昨年、承認申請された。

米国の審査期限は今年9月。承認されれば17年ぶりの復活となる。ダメと決め付けず、リコールの必要なしとも決め付けず、研究を続けた医師たちは称賛に値する。一方で、SGN-CD33Aの第三相中止を聞いて改めて感じるのは、抗CD33ADCの難しさだ。

リンク: シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

【承認申請】


抗CGRP受容体抗体、EUでも承認申請
(2017年6月21日発表)

ノバルティスはAMG 334(erenumab)をEUで承認申請し受理されたと発表した。抗CGRP受容体完全ヒト化抗体で、慢性/反復性片頭痛の予防に用いる。米国は創薬者であるアムジェンが5月に承認申請済み。両社はアルツハイマー病や片頭痛領域で共同開発提携を結んでおり、AMG 334は米国では共同販売、それ以外はノバルティスが販売する(日本は除く)。CGRPやその受容体をブロックする抗体は複数の製薬会社が前後して承認申請しており、開発販売競争が激化している。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ギリアド、新規HIV治療薬を承認申請
(2017年6月12日発表)

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)は、新開発のインテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビターであるbictegravirを配合した三剤合剤を米国で承認申請した。HIV/AIDSの治療に用いる。欧州でも7~9月に承認申請の予定。

核酸系逆転写阻害剤のemtricitabine(200mg)とtenofovir alafenamide fumarate(25mg)にbictegravir(50mg)を加えたもので、一日一回服用。JTからライセンスしたインテグラーゼ阻害剤elvitegravirを配合したGenvoya(和名ゲンボイヤ)と似た組み合わせだが、cobicistatを配合する3A4ブーストを用いていないことが特徴で、薬物相互作用の懸念が小さいかもしれない。

第三相試験ではGSKのインテグラーゼ阻害剤であるdolutegravirを標的に直接比較試験やスイッチ試験などを行ったが、前者は非劣性に留まり優越性を示すことはできなかった。

リンク: ギリアドのプレスリリース

遺伝子組換え型vWFを欧州でも承認申請
(2017年6月22日発表)

英国のシャイアは、遺伝子組換え型vWFをEUで承認申請し受理されたと発表した。米国で15年にVonvendi名で承認された重度先天性フォン・ヴィレブランド病用薬だが、EUではVeyvondi名となる模様だ。遺伝子組換え型は初。適応は、18歳以上の患者の出血予防・治療そして周術期の出血管理を求めたが、米国では予防は認められなかった。

リンク: シャイアのプレスリリース

アドセトリスの適応拡大申請
(2017年6月20日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)はAdcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)をCD30陽性の再発皮膚T細胞リンパ腫に単剤投与する適応拡大を米国で申請した。第三相試験ではORR(客観的反応率、4ヶ月以上持続例のみ)が56.3%と、化学療法群(methotrexateまたはbexaroteneを医師が選ぶ)の12.5%を大きく上回った。

Adcetrisは抗CD30抗体と抗癌剤のMMAEを結合した抗体薬物複合体で、ホジキン型リンパ腫などに承認されている。北米以外ではミレニアム・ファーマシューティカルズが、日本はその親会社である武田薬品が販売。

リンク: シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが抗HCVコンビ薬などの承認を支持
(2017年6月23日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、6月の会議で以下の新薬や適応拡大について肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全加盟国などで承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

新薬は、まず、アッヴィのMaviret(glecaprevir、pibrentasvir)は慢性C型肝炎の治療薬で、配合成分のうち前者はEnanta Pharmaceuticals(Nasdq:ENTA)提携の成果であるNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、後者はNS5A複製複合体阻害剤。1型から6型まで有効な汎遺伝子型直接作用性抗ウイルス剤で、初治療/再発治療を問わず、代償性肝硬変や重度慢性腎疾患にも有効。ribavirinを併用する必要がなく、治療期間は8~12週間と短い。一日一回、三錠服用する。

リンク: アッヴィのプレスリリース

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)のVoseviも慢性C型肝炎治療用コンビ薬で、Sovaldi(和名ソバルディ)の活性成分であるNS5Bポリメラーゼ阻害剤、sofosbuvirと、汎遺伝子型NS5A複製複合体阻害剤のvelpatasvir、そして新開発の汎遺伝子型NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、voxilaprevirを配合している。こちらも遺伝子型1~6型の初回・再発治療に一日一回、8~12週間投与する。直接作用性抗ウイルス剤未経験者に対する効果はsofosbuvirとvelpatasvirの併用だけでも十分高く、三剤併用の出番は8週間コースの価値が確立している用途に限定されるのではないか。

リンク: ギリアドのプレスリリース

抗ウイルス剤の輩出はヒト・ゲノム・プロジェクトなどによるゲノム研究技術の進歩が齎したものだ。もう一つの成果が抗癌剤で、今月は比較的最近の新作用機序であるCDK4/6阻害剤と一昔前のVEGFR阻害剤が肯定的意見を得た。ノバルティスのKisqali(ribociclib)はCDK4/6阻害剤で、ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後転移性乳癌の一次治療にアロマターゼ阻害剤と併用する。第三相試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.556とアロマターゼ阻害剤だけの群より有意に優れていた。

CDKは細胞周期に関わる酵素で、Kisqaliは、CDK4の結晶構造を解明したAstex Pharmaceuticalsとの細胞周期制御に関する共同研究の成果。尚、Astexは13年に大塚製薬が子会社化した。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

Fotivda(tivozanib)はVEGFR阻害剤で、末期腎細胞腫の第三相一次治療試験でメジアンPFSが11.9ヶ月とNexavar(sorafenib)の9.1ヶ月を有意に上回ったが、p値は0.04とボーダーライン上で、全生存のハザードレシオが1.24と有意ではないが好ましくない結果となったため、FDAは承認しなかった。第三相試験が進行中で来年、結果が出る見込み。今回、CHMPが肯定的意見を出したことは大番狂わせと言えるだろう。一次治療、またはVEGFR阻害剤以外の治療歴が適応。

tivozanibはアヴェオ・オンコロジー(Nasdaq:AVEO)が協和発酵キリンからアジア以外の権利を取得して開発したもの。アステラスが一時期、共同開発していたが、治験フェールを経て解消。代わって、欧州の権利は専門薬専業の新興企業、EUSA Pharmaが取得した。

リンク: アヴェオのプレスリリース(pdfファイル)

ドイツのメルクのMavenclad(cladribine)は高活性度再発性多発硬化症用薬。抗癌剤を経口投与に変えて転用するもので、承認申請は2009年、8年かけてやっとここまで来た。再発リスク削減効果の点では問題ないが、癌など深刻な副作用の懸念が中々払拭できなかった。今回の肯定的意見はCLARITY試験の事後的サブグループ分析に基づくもので、年率再発リスクが偽薬比67%低下、EDSS病状評価スコアの悪化が82%抑制とのことだが、逆に言えば、全ユニバースに承認するのは躊躇われたのだろう。

リンク: メルクのプレスリリース

適応拡大では、カナダのアレクシオン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALXN)のSoliris(eculizumab、和名ソリリス)を難治性全身性重症筋無力症に用いることが支持された。AChR(アセチルコリン受容体)に対する抗体を持つ患者が適応になる。第三相試験はフェールしたが、有効な薬が少ないこともあり、様々な分析の総合的な評価に基づいて是認したのではないか。米国や日本でも適応拡大申請中。

Solirisは補体系のC5に結合するヒト化抗体で、発作性夜間血色素尿症や非定型溶血性尿毒症症候群など、補体系の過剰活性が関与する疾患の治療に承認されている。筋無力症における作用機序も、抗体が神経筋接合部のAChRに結合して補体系を動員、攻撃させるのを抑制する模様だ。

リンク: アレクシオンのプレスリリース

最後に、バイエルのStivarga(regorafenib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に用いる適応拡大。切除不能でNaxavar(sorafenib)による治療を既に受けた患者に用いる。第三相試験では全生存のハザードレシオが0.63(95%信頼区間0.50-0.79)、メジアンは10.6ヶ月で偽薬群の7.8ヶ月を上回った。米国では4月に承認、日本でも5月に第二部会を通過した。

StivargaはNexavarの水素原子をフッ素に置換したもので、どちらもOnyx(後にアムジェンが買収)との共同研究の成果。結腸直腸癌や消化管間質腫瘍のサルベージ療法薬として承認されている。ファイザーのSutent(sunitinib)などVEGFR阻害剤の多くが肝癌試験では苦戦しており、Stivarga/Nexavarは他の作用が貢献しているのかもしれない。

リンク: バイエルのプレスリリース

Brintellixの効能追加申請、米国はまたCRL
(2017年6月23日発表)

ルンドベックと共同開発販売パートナーである武田薬品は、抗鬱剤のTrintellix(vortioxetine、欧州などではBrintellix)のレーベル追加申請を行っていたが、FDAから二度目のCRL(審査完了通知)を受領した。2年前の諮問委員会で10人中8人が支持したことを考えると意外だが、理由は今回も公表されなかった。

FOCUS試験やCONNECT試験で鬱病患者の認知障害症状を改善したことをレーベルに収載すべく申請したのだが、初めての効能なので慎重になっているのかもしれない。

EUのレーベルには掲載されているが、臨床成績の箇所に様々な評価スコアの変化が列挙されているだけで、効能として記されているわけではない。承認と非承認の境界線は曖昧のように感じられる。

リンク: ルンドベックのプレスリリース


【承認】


PortolaのXa阻害剤も承認
(2017年6月23日発表)

Portola Pharmaceuticals(Nasdaq:PTLA)はFDAがBevyxxa(betrixaban)を承認したと発表した。心不全や脳卒中、深刻な感染症や肺疾患などで入院した要安静患者の静脈血栓塞栓を予防するのに用いる。

第三相試験では80mgを一日一回、35~47日間に亘って経口投与するコースをサノフィの低分子量ヘパリン、Lovenox(enoxaparin)の40mg皮注、6~14日コースと比較したところ、シーケンシャルな解析の最初であるD-dimer上昇コフォートの解析がフェールした。その後のより大きな母集団に関する解析はp値が0.05を下回ったが、治験成功とは言えず、FDAの評価が注目されていた。

04年にミレニアム・ファーマシューティカルズからライセンスした経口Xa阻害剤プログラムの成果で、09年にMSDにライセンスアウトしたが、競合が多いせいか、提携解消となった。最優先プロジェクトではなかったため他のXa阻害剤より開発が遅れた。

Portolaによると、この薬の適応である静脈血栓塞栓リスクが高い『メディカル』患者はG7の合計で年2400万人、うち100万人が発症し15万人が死亡するとのことだ。薬物療法は出血リスクを伴うため、電気刺激や弾性ストッキングなども広く用いられており、Bevyxxaの市場性はそれほど大きくないだろう。

リンク: Portolaのプレスリリース

湧永のキノロンが米国で遂に承認
(2017年6月19日発表)

米国コネチカット州の未上場新興製薬会社、Melinta Therapeuticsは、FDAがBaxdela(delafloxacin)を急性細菌性皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認したと発表した。湧永製薬が創製したキノロン系合成抗菌剤で、過去には大日本製薬やアボット(何れも当時の社名)に導出したこともあるが返品。06年にRib-X Pharmaceuticalsが世界権を取得し、経口剤に加えて新たに点滴用製剤を開発して承認申請。社名変更を経て、今回、遂に承認に漕ぎ着けた。

フルオロキノロンと比べて耐性菌や肺炎球菌に対する力価が高く、広スペクトラムとされる。QT延長や光毒性は見られない由。第三相試験ではvancomycinとatreonamを用いるレジメンと比べて治療効果が非劣性だった。

キノロン系なので腱炎や腱断裂、末梢神経症や中枢神経副作用に関する枠付き警告が付された。

リンク: Melintaのプレスリリース

シャイアーのADHD治療薬が11年ぶりに承認
(2017年6月20日発表)

シャイアーは、FDAがMydayis(混合amphetamine)を注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療薬として承認したと発表した。13歳以上が適応になる。作用が最大16時間と長く、ADHD患者の半数を占める大人に適している。シャイアーによると、米国成人のADHD有病率は4.4%、推定1000万人とのこと。

申請は06年なので、承認まで11年かかったことになる。何か問題があったわけではなく、米国で07年に承認されたVyvanse(lisdexamfetamine dimesylate)のライフサイクルマネジメントを優先して、その特許切れ後の穴を埋める薬として取っておいたのである。

リンク: シャイアーのプレスリリース

BRAF V600E変異陽性肺癌に適応拡大
(2017年6月23日発表)

ノバルティスのBRAF阻害剤であるTafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMEK1/2阻害剤のMekinist(trametinib、和名メキニスト)の適応拡大がFDAに承認された。BRAF V600変異陽性悪性黒色腫に承認されている併用療法を、BRAF V600E変異陽性非小細胞性肺癌に用いるもの。

該当するのは非小細胞性肺癌の1~3%程度なので、ちゃんと検査してもらえるか心配していたのだが、丁度良いコンパニオン診断薬が同時に承認された。Thermo Fisher Scientific社のOncomine Dx Target Testで、BRAF V600Eに加えて、ROS1やEGFRも診断できるとのこと。

第二相試験では、Tafinlarは150mgを一日二回、Mekinistは2mgを一日一回投与したところ、一次治療患者ではORR(客観的奏効率、第三者査読後)が61%、メジアン反応持続期間は未達(95%下限6.9ヶ月)、二次治療では各63%と12.6ヶ月だった。

この二剤は元々、グラクソ・スミスクラインが承認取得・販売していたものだが、ノバルティスのワクチン事業と同社の腫瘍学事業をアセットスワップした。

リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: FDAのリリース(診断薬についても言及)

ロシュ、FDAがリツキサンの皮注用製剤を承認
(2017年6月23日発表)

ロシュはRituxan HycelaがFDAに承認されたと発表した。血液癌などに承認されているrituximabの皮注用製剤で、Halozyme(Nasdaq:HALO)の遺伝子組換え型ヒト・ヒアルロニダーゼが配合されており、2時間半の点滴静注ではなく5~7分で自己注可能。フル用量の点滴静注を一回以上受けた患者がスイッチできる。欧州ではMabThera皮注用として14年に承認されたが、FDAは、静注用と取り違え事故を懸念して名前を変えたのかもしれない。

リンク: ロシュのプレスリリース

皮注用C1エステラーゼインヒビターが承認
(2017年6月23日発表)

CSL(ASX:CSL)は、FDAがCSL BehringのHaegardaを承認したと発表した。遺伝性血管浮腫の発作予防に用いるヒト血漿由来のC1エステラーゼインヒビターで、同社のBerinertの皮注用製剤という位置づけ。週二回、自己注することができる。米国の遺伝性血管浮腫の患者数は6000~10000人とのこと。

リンク: CSLのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年6月18日

2017年6月18日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ADA:カナグルの心血管アウトカム試験の意義 
  • ADA:トレシーバの心血管リスクはランタス比非劣性 
  • キイトルーダの三剤併用試験で死亡リスク懸念 


【新薬開発】


ADA:カナグルの心血管アウトカム試験の意義
(2017年6月12日発表)

ADA米国糖尿病学会やNew England Journal of Medicine誌でInvokana(canagliflozin、和名カナグル)の心血管アウトカム試験の結果が発表された。心筋梗塞などのリスクを削減する効能が示された一方で、下肢切断や骨粗鬆症のリスクが表面化。この二つのリスクは他のSGLT2阻害剤では観察されておらず、この薬独自の問題なのか、臨床試験実施方法の細部が違うのか、今後の探索課題になるだろう。この臨床試験を行った医療関係者や製薬会社は称賛されるべきである。

思えば、米国でFDAや高名な医学者が血糖治療薬の心血管アウトカム試験を要求した時、日本では、糖尿病患者の死因として最も多いのは癌であって心血管疾患ではないという屁理屈を盾に、必要なしと結論した。こういうのを曲学阿世と呼ぶのだろうか。

血糖治療薬は生存にとって重要なエネルギー代謝システムに影響するせいか様々な副作用を持つ。糖尿病の患者は何十年もの間、薬を飲み続けなければならないのだから、3ヶ月や半年の試験だけでは全ての功罪を洗い出すことはできない。患者数が多いので、1万人年に一人の副作用でも世界では年数千人、数万人が被害を受けることになるから軽視できない。長期、大規模な心血管アウトカム試験を行えば、様々な副作用に関して統計学的にある程度価値のある情報を収集することができる。

今回の試験は、医学研究において謙虚な姿勢がいかに重要か、真実に対する謙虚さを失った権威が如何に有害であるかを示した。

発表されたデータはCANVAS試験とCANVAS-R試験の統合分析結果で、通常と異なるので最初に経緯を説明しよう。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、当初、CANVAS試験の中間解析で心血管リスクが大きく増えないことを確認した上で販売承認を取得し、最終解析でFDAの要求基準(リスクが1.3倍以上高まらない)を満たす考えであった。しかし、中間解析の結果がアンブラインドされたために、試験医や患者に先入観を与えて盲検が機能しなくなる可能性が生じた。そこで、新たにCANVAS-R試験をロンチした。

その後、ベーリンガー・インゲルハイム/イーライリリーのJardiance(empagliflozin)の心血管アウトカム試験が成功、主目的である非劣性解析だけでなく、リスク削減効果を検討した優越性解析も成功し、他の血糖治療薬との違いを明らかにした。刺激されて、Invokanaも二本の試験のプール分析で優越性解析を行うことを決めたのである。

対象は二型糖尿病で心血管疾患リスクが高い患者。CANVAS試験は約4300人をメジアン5.7年間追跡。CANVAS-Rは約5800人を2.1年間追跡した。どちらも日本の医療施設は参加していない。CANVAS試験は偽薬、100mg、300mgの三群、CANVAS-Rは100mgで開始し必要なら300mgに増量すると偽薬の二群。統合分析では用量不問で試験薬群とした。

他の血糖治療薬や心血管疾患用薬の使用は夫々の地域の治療ガイドラインに則って行われた。従って、本来なら血糖値の群間差は小さいはずだが、他の試験と同様にCANVAS試験でも偽薬群のA1cは8%超のまま推移し、試験薬群と0.58%の差が生じた。時間の経過とともに試験薬群の値が上昇し群間差が縮小したことも合わせて考えると、国際的な心血管アウトカム試験に参加するような医療施設でも血糖値を良好に管理することはしない/できないことが見て取れる。

主評価項目の心血管疾患死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中(MACE)はハザードレシオが0.86(95%信頼区間0.75~0.97)となり、95%上限が1.3を下回ったため、非劣性解析が成功。プロトコルに則ってシーケンシャルに実施された全死亡の優越性解析がフェールしたため、その後に予定された解析は有意性を失った。

MACEの優越性解析は、p値が0.02となったため、成功認定された。但し、この解析が上記のシーケンスの中に納まっているのか、それとも多重性のリスクが内包されているのかは明らかではない。カプランマイヤー・カーブを見ると、1年半経った辺りから二本の曲線が乖離している。

MACEの1000人年当り発生率は偽薬群31.5、Invokana群26.9なので、number needed to treatは結構大きい。一方、深刻な有害事象の1000人年当り発生率は各120.0対104.3なので、Number needed to harmのほうが小さい。問題の下肢切断は1000人年当り6.3対3.4でハザードレシオ1.97(95%信頼区間1.41~2.75)。

骨損壊は同じく15.4対11.9、ハザードレシオ1.26(1.04~1.52)。CANVAS-R試験では増加しなかったが、追跡期間がかなり異なることが原因かもしれない。

JardianceのEMPA-REG OUTCOME試験はハザードレシオが0.86(95%信頼区間0.74~0.99)、優越性解析のp値は0.04なので全体的に大差ない。偽薬群の主評価項目発生率は100人年当り4.39とやや高いので、EMPA-REG OUTCOME試験のほうが高リスクの患者を組入れたことになる。

心不全入院の減少はどちらも同じ。EMPA-REG OUTCOME試験では骨折が増えなかった。下肢切断は、この試験でもJardianceの全臨床試験のプール解析でも増えなかったことが今年のADAで発表された。尤も、メジアン追跡期間が3.1年とCANVAS試験より短いので、長期的な転帰は不透明なところがある。

下肢切断リスクに関する欧米の当局の判断は分かれており、EUはSGLT2阻害剤のクラス・イフェクトと判断したがFDAはInvokanaについてだけ警告した。難しいところだが、現時点では、Invokanaを使わなければならない理由はないように感じられる。

リンク: ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース(pdfファイル)
リンク: Nealらの治験論文(NEJM)
リンク: ベーリンガーらのADA発表に関するプレスリリース(6/13付)

ADA:トレシーバの心血管リスクはランタス比非劣性
(2017年6月12日発表)

ADAではノボ ノルディスクの持効性インスリン、Tresiba(insulin degludec、和名トレシーバ)の心血管アウトカム試験であるDEVOTE試験の結果も発表された。二型糖尿病で心血管リスクの高い約7600人をTresiba群とサノフィの持効性インスリンのベストセラー、Lantus(insulin glargine、和名ランタス)群に無作為化割付して心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中の複合評価項目の発生リスクを比較したもの。

結果は、ハザードレシオが0.91(95%信頼区間0.78~1.06)となり、95%上限が1.3を下回ったため、非劣性であることが確認された。イベント発生率は各群8.5%と9.3%、死亡率は5.3%と5.8%だった。Tresibaの長所はインスリンの血中濃度が安定的に推移するため低血糖リスクが小さいこと。本試験でも、重度低血糖のオッズレシオは0.79(95%信頼区間0.60~0.89)と、有意に小さかった。ノボは今回のデータをEUで承認申請した。他の地域でも申請予定。

リンク: ノボのプレスリリース

【医薬品の安全性】


キイトルーダの三剤併用試験で死亡リスク懸念
(2017年6月12日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の臨床試験のうち二本の新規組入れを中断すると発表した。死亡者数に群間の偏りが見られたため、データ監視委員会が勧告しMSDが受け入れた。既組入れ患者に対する投与は続行する。勿論、被験者に今回の情報を伝えて同意書を撤回するかどうか確認することが最優先だろう。

何れも多発骨髄腫の第三相三剤併用試験で、KEYNOTE-183試験は再発性難治性で三次治療を受ける患者にpomalidomide(セルジーンのPomalyst/Imnovid)と低量dexamethasoneを併用する標準療法と三剤併用、KEYNOTE-185試験は初めて治療を受ける自家造血幹細胞移植不適患者にlenalidomide(セルジーンのRevlimid)と低量dexamethasoneのRd療法と三剤併用を、夫々、比較するもの。

抗PD-1/PD-L1抗体も深刻な有害事象が発生することがあり、多剤併用の組み合わせによっては副作用が許容範囲を超えることもあるだろう。メーカー各社は併用法の開発をアグレッシブに進めているが、危険な兆候が生じた時は、今回のMSDのように、一旦立ち止まって足元を確かめることが肝要だ。

BMS/小野のOpdivo(nivolumab)もRd療法と併用でくすぶり型多発骨髄腫に第三相試験を実施している。この状況も気になるところだ。

リンク: MSDのプレスリリース







今週は以上です。

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2017年6月11日

2017年6月11日号


【訂正】


6月4日号のZytigaの臨床試験に関する記述に間違いがありました。対照群の治療法をADTとprednisoneを併用する標準療法と書きましたが、ADTだけでした。以下、訂正再掲致します。

【ニュース・ヘッドライン】

  • (訂正再掲)ASCO:ザイティガはホルモン・ナイーブにも有効 
  • ICML:CTL019もリンパ腫に有効 
  • ASCO:パージェタのアジュバントはケースバイケースに 
  • ASCO:アレセンサは海外でもザーコリに勝つ 
  • ASCO:肝臓癌試験が久々に成功 
  • ASCO:PARP阻害剤の乳癌試験が成功 
  • ASCO:オプジーボとヤーボイは悪性胸膜中皮腫に有効 
  • ASCO:ヤーボイの用量は多すぎる? 


(訂正再掲)ASCO:ザイティガはホルモン・ナイーブにも有効
(2017年6月3日発表)

ASCOではジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大試験成績も発表された。転移性前立腺癌用薬で、2011年の初承認時の適応はホルモン療法に反応しなくなり癌の症状が悪化して化学療法を受けたが再発/無効だった患者、翌年の適応拡大はその一歩前の段階であるホルモン療法抵抗性無/軽度症候性患者だったが、今回は更に手前の試験が成功、日本も含めて、適応拡大申請した。対象患者数が再び大きく増加することになる。

このLATITUDE試験は、転移性前立腺癌で初めてホルモン療法を受ける(ナイーブ)患者のうち、Gleason scoreや骨転移、内臓転移の状況などから高リスクと判定された患者を組入れて、ADT(アンドロゲン除去療法薬)群とZytigaとprednisoneを併用する三剤併用群の全生存期間を比較した。結果は、ハザードレシオが0.62、p値は0.0001未満、メジアン値は標準療法群が34.7ヶ月、三剤併用群は未到達と大変良い結果になった。主なG3以上の有害事象は高血圧や低カリウム血症。

前立腺癌は進行の遅いものが少なくないため副作用のきつい化学療法は癌が進行して骨転移痛などの症状が強くなるまで待つことが多い。今回のデータは便益と危険のバランスが取れているように見えるので、再考の契機になるのではないか。適応拡大なので今週(6月4日号)のトピックスの3番目に置いたが、臨床的な重要性は一番かもしれない。

リンク: ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

【新薬開発】


ICML:CTL019もリンパ腫に有効
(2017年6月7日発表)

ノバルティスは、CTL019(tisagenlecleucel)の第二相リンパ腫試験の中間解析結果をICML(国際悪性リンパ腫会議)で発表した。単純比較はできないが、Kite Pharma(Nasdaq:KITE)の競合品と見比べても良い成績だ。急性リンパ性白血病用薬として米国で承認申請済みだが、年内に適応拡大申請する予定。

CTL019はペンシルバニア大学からライセンスしたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法。B細胞特異的に発現する表面分子であるCD19に結合する抗体の細胞外単鎖可変領域を、TCRの共刺激伝達領域であるCD137(4-1BB)およびCD3ゼータ鎖とスペーサーで繋げた組換え遺伝子を、患者から採取したT細胞にレンチウイルスをベクターとして導入したもの。患者に戻すと抗原提示なしでB細胞を攻撃する。

ペンシルバニア大学/ノバルティス、Kite、そしてJuno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)/セルジーンの三グループがCAR-Tの早期発売に向けて激しい先陣争いを繰り広げている。CTL019は今年3月に3~25歳の再発性難治性B細胞急性リンパ性白血病用途で米国で承認申請、7月12日の諮問委員会を経て10月までに審査結果が判明する予定。

Kiteも3月に自家造血幹細胞移植不適の再発性難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、転換濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫)用途で米国承認申請、審査期限は11月29日となっている。

一方、JunoはJCAR015の臨床試験で脳浮腫が複数発生、開発中止となり一歩後退した。三社の開発品は構成やプリトリートメントに用いる化学療法の内容が若干異なるので単純ではないが、脳浮腫が、サイトカイン放出症候群と同様に、CRA-Tのクラスイフェクトである可能性も考えられるので、重要なチェックポイントになる。

さて、今回の第二相試験は、再発性難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、二次以上の治療歴を持つ、18歳以上の自家造血幹細胞移植不適の患者を組入れた単群試験。中間解析の対象となった51人の3ヶ月ORR(客観的反応率)は45%で、完全反応37%、部分反応8%だった。ベストORRは59%だった。

KiteのKTE-C19(axicabtagene ciloleucel)は3ヶ月ORRが39%、うち完全反応33%だった。別々に実施された小規模な試験なので数値の比較は困難だが、数値上はCTL019のほうが良い。

忍容性は、G3/4の有害事象はサイトカイン放出症候群、神経学的有害事象、骨髄抑制など。サイトカイン放出症候群の致死例はなし。脳浮腫は発生せず。ex vivo細胞療法は得率が重要だが、CTL019の生産成功率は試験の最後の30例では97%まで上昇した由。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ASCO:パージェタのアジュバントはケースバイケースに
(2017年6月5日発表)

ロシュは、Perjeta(pertuzumab、和名パージェタ)のAPHINITY試験の結果をASCO米国臨床腫瘍学会議で発表した。成功したこと自体は3月に公表済みなので治療効果の多寡が注目されたが、悪くはないものの格別に良くもなかった。適応拡大申請すれば承認されるのだろうが、使用の当否は夫々の医師が患者毎に判断することになるのではないか。

PerjetaはHerceptinのターゲットであるher2の異なったエピトープに結合する抗2C4ヒト化抗体で、her2がher1やher3とヘテロダイマーを形成するのをブロックする。Herceptinの効果を増強・補完するイメージだ。12年に米国で、翌年には日本でも、her2陽性転移性乳癌の一次治療にdocetaxel及びHerceptinと併用する用途で承認され、13年には早期乳癌切除術前のネオアジュバント用途米国で承認された。

今回のAPHINITY試験は、her2陽性の早期乳癌の切除を受け、再発防止目的で化学療法とHerceptin(trastuzumab)によるアジュバント治療を行う患者約4800人を組入れて、Perjetaを併用する効果を偽薬と比較した。用量用法は、初回は840mg、その後は3週間毎に420mgを点滴静注。投与期間はHerceptinと同じ1年コース。

結果は、主評価項目であるiDFS(浸潤性乳癌無再発生存率)のハザードレシオが0.81(95%信頼区間0.66~1.00)、p=0.045、3年iDFS率は94.1%(偽薬群は93.2%)となった。成功は成功だが、95%上限やp値はボーダーラインぎりぎりであり、もしこれがPerjetaの唯一の薬効確認試験だったら薬効のエビデンスが不十分と言わざるを得ないところだろう。

サブグループ分析を見ると、リンパ節転移のある3005例ではハザードレシオ0.77(95%信頼区間0.62~0.96)、3年iDFS率92.0%(偽薬群90.2%)、未転移の1799例では各1.13(0.68~1.86)、97.5%(98.4%)となっている。前者の方が再発リスクが高いので治療効果が高くても不思議はないが、交絡p値は0.17なので、保守的に考えて、リンパ節転移に有効というよりは未転移には使わない方がよいという重み付けをすべきなのだろう。

G3以上の有害事象発生率は64%と偽薬群の57%を上回るのでnumber needed to treatだけでなくharmも考慮する必要がある。発生率は低いが、アンスラサイクリンやHerceptinと同様に、心臓イベントが増加している。また、次元の異なる話だが、Perjetaの1年コースは日本の薬価ベースで約450万円かかるので、体だけでなく財布も痛む。Herceptinだけでも高いのに患者は泣きっ面に蜂だ。

延命効果の解析は未成熟で、ハザードレシオ0.89(95%信頼区間0.66~1.21)となっている。次の解析は2.5年毎のことなので、当面はエビデンスレス。

今後、もっと長期間追跡すればデータが改善すると期待する声もあるようだが、New England Journal of Medicineの電子版に刊行された治験論文の論評者は、Herceptinのアジュバント試験の経験から、期待薄と予想している。her2標的薬以外でも、過去の乳癌アジュバント試験では、3年生存率は改善したのに5年生存率は改善しなかったとか、5年間服用するのは有効だがそれ以上続けても無効、とか、一筋縄で行かなかったケースが散見される。

Herceptinはher2陽性乳癌用薬だが、初承認時と比べるとher2の定義が狭くなっている。今回のAPHINITY試験も検査結果3+だけが対象だ。高い薬をできるだけたくさんの患者に使ってもらうことが製薬会社の利益だが、患者の利益は自分に有効で副作用や費用が許容範囲内であることだ。高額薬剤費の太宗を担う社会保障制度とその原資を担う国民・企業の利益も費用次第だ。製薬会社は患者や社会を敵に回すべきではない。誰に有効で誰に不適なのか、承認を取るだけで満足せずに最後まで探求すべきである。

リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: Minckwitzらの治験論文(NEJM)

ASCO:アレセンサは海外でもザーコリに勝つ
(2017年6月5日発表)

ロシュは、Alecensa(alectinib、和名アレセンサ)の直接比較試験の結果をASCOで発表した。4月に成功発表済みなので治療効果のマグニチュードが注目点。日本で実施された試験ほどではなかったが良い数字だった。

Alecensaは中外製薬発のALK阻害剤で、14年に日本でALK融合遺伝子陽性(該当率1~5%)の切除不能進行再発非小細胞性肺癌用薬として承認。海外でもXalkori(crizotonib、和名ザーコリ)不耐不応患者の二次治療薬として米国で15年に、EUでも17年に、承認された。

一次治療薬としての便益や危険をXalkoriと直接比較した試験は、まず日本で実施、中間解析で成功。PFS(独立効果判定委員会が評価)のハザードレシオは0.34(99.6826%信頼区間0.17~0.70)、メジアンは未達でXalkori群は10.2ヶ月だった。G3/4の有害事象発生率は27%対51%で少なかった。

ASCOで発表された海外試験の結果は、PFS(同)のハザードレシオが0.50(95%信頼区間0.36~0.70)、メジアンは25.7ヶ月でXalkoriの10.4ヶ月を上回った。日本試験の点推定値は海外試験の信頼区間からはみ出ているが、信頼区間自体は重なっている。中間解析で成功認定される試験はデータが真の値と比べて良すぎることがあり、日本試験はこのパターンなのかもしれない。

AlecensaやノバルティスのZykadia(ceritinib、和名ジカディア)はXalkoriより脳血管移行性に優れる。この試験でも、中枢神経系腫瘍進行のハザードレシオが0.16と、大変良い結果が出た。

G3-5の有害事象の発生率は41%対50%で、日本試験ほどではないが、少なかった。致死的な有害事象の発生率は3%(5人)対5%(7人)で大差なかった。

リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: Petersらの治験論文(NEJM)

ASCO:肝臓癌試験が久々に成功
(2017年6月5日発表)

VEGFを標的とする薬は多数ある。抗体医薬ならロシュのAvastin(bevacizumab)、Lucentis(ranibizumab)、リジェネロンのEylea(aflibercept)など。VEGF受容体チロシンキナーゼを標的とする小分子薬はファイザーのSutent(sunitinib)、バイエルのNexavar(soratinib)等々、特に数が多く、逆に言えば、差別化が難しいので、後発組は工夫が必要だ。

比較的無風だった肝細胞腫用途でも、Nexavarの対抗馬が現れた。エーザイのLenvima(lenvatinib)だ。Nexavar対照非劣性試験の成功がASCOで発表された。

この304試験は、切除不能肝細胞腫で全身的治療を初めて受けるChild-Pugh分類Aの患者954人を、Lenvima群(12mgを一日一回経口投与、但し体重60kg未満は8mgに減量、どちらも既承認用途より少量)とNexavar群(400mg一日二回)に無作為化割付して、全生存期間を比較した。結果は、ハザードレシオ0.92(95%信頼区間0.79~1.06)、メジアン値は13.6ヶ月と12.3ヶ月となり、95%上限が非劣性マージンの1.08を下回ったため非劣性と認定された。

治療時発現有害事象の発生率は両群大差なかった模様。

リンク: エーザイのプレスリリース(和文)
リンク: ASCOの抄録

ASCO:PARP阻害剤の乳癌試験が成功
(2017年6月4日発表)

PARP阻害剤の第三相BRCA1/2生殖細胞系変異型乳癌試験が成功したと聞いても、10年前なら、さもありなんと首肯するだけで驚きはしなかっただろう。しかし、過去10年間に実施された数々の試験がフェールし、卵巣癌に転戦してやっと花咲いた後だけに、アストラゼネカのLynparza(olaparib)の第三相乳癌試験成功は新鮮な驚きだ。

Lynparzaは14年に欧米でBRCA1/2変異型卵巣癌に承認されたPARP阻害剤。PARPは遺伝子の複製ミスを修復する二つの代表的なメカニズムの一つに係る酵素。もう一つに関わる遺伝子がBRCA1/2で、機能喪失変異を持つ家系は乳癌や卵巣癌のリスクが高い。このような癌にPARP阻害剤を投与すると、癌細胞の増殖時に生じる複製ミスが修正されず、アポトーシスを誘導できる可能性がある。メカニズムを考えれば、今まで乳癌試験が成功しなかったことの方が不思議だ。

今回の治験デザインは、P(患者)はBRCA1/2生殖細胞系変異陽性でher2陰性の転移性乳癌で、切除後アジュバント療法または転移後治療としてアントラサイクリン系とタクサン系(ホルモン受容体陽性癌はホルモン療法も)による前治療例を持つ、一次治療から三次治療までの患者、約300人。

I(介入方法)は300mg錠を一日二回、経口投与。C(対照群)はcapecitabine、vinorelbine、eribulin(エーザイのハラヴェン)の中から担当医が選んだ薬を用いた。O(主目的)はPFSで、経口剤と点滴用薬が混在するオープンレーベル試験であるため、独立評価委員会が盲検で評価した。

結果は、ハザードレシオが0.58(95%信頼区間0.43~0.80)、メジアンは7.0ヶ月で化学療法群の4.2ヶ月を上回った。全生存期間の解析は元々から検出力不足で、ハザードレシオ0.90(95%信頼区間0.63~1.29)と有意差はなかったが点推定値はいるべき側にいる。G3以上の有害事象は36.6%で化学療法群の50.5%を下回った。貧血などは増加した。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース
リンク: Robsonらの治験論文(NEJM)

ASCO:オプジーボとヤーボイは悪性胸膜中皮腫に有効
(2017年6月5日発表)

BMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)を悪性胸膜中皮腫に用いた第二相試験の結果がASCOで発表された。有効な薬が少ないので、今後の試験データが注目される。

このIFCT-1501試験はフランスの共同治験グループが実施したもので、二次までの治療歴を持つ患者125人をOpdivo単剤投与群(3mg/kgを二週間毎)とYervoy(1mg/kgを6週間毎)併用群に無作為化割付して、夫々の群の12週疾病管理を独立委員会が盲検評価した、非対照試験。

最初に評価された108人における12週疾病管理率は単剤投与群が42.6%、併用群が51.9%だった。もっと一般的指標であるORR(客観的反応率)は各16.7%と25.9%だった。Scherpereelらの抄録によると過去に実施された二次治療試験の疾病管理率は30%未満とのことなので、今回はなかなか良い結果だ。

G3/4有害事象発生率は単剤投与群が9.5%、併用群は16.4%。併用群では治療関連死が3例報告された(代謝性脳症、劇性肝炎、急性腎障害が各1例)。

リンク: BMSのプレスリリース

ASCO:ヤーボイの用量は多すぎる?
(2017年6月4日発表)

BMSは、NCI(米国立癌研究所)主導の黒色腫切除後アジュバント試験における、Yervoy(ipilimumab)の二用量群の中間解析結果がASCOで発表されたことを公表した。計画外の解析と言明しているので不本意なのかもしれないが、高価で深刻な副作用ももたらす割には至適用量が明確でない薬なので、研究者側が重要な情報と判断したのだろう。

Let it beはポール、Let it goはエルサ、Let this goはドナルドと、発言者は異なるが教訓は同じ。人の口に戸は立てられず、むしろ、堂々と真実に喋らせるのが一番だ。

時事放談はともかく、このE1609試験は、ステージIII/IVの黒色腫の切除術を受けた高再発リスクの患者のアジュバント療法としてのYervoyの効果を高量インターフェロン・アルファ-2bと比較したもの。主評価項目は全生存期間と無再発生存期間で、治験登録によると、2018年に主評価項目解析のためのデータ収集が完了する予定。

ASCOで公表されたのは3年無再発生存率で、Yervoyの標準的な用量である10mg/kgを投与した群の406人は54%、3mg/kg群の367人は56%だった。G3/4の有害事象発生率は各群66%と53%。治療関連有害事象の疑い例における死亡は各8人と2人だった。

Yervoyは活性化T細胞を鎮静化させるCTLA-4をブロックする免疫療法的抗体医薬で、11年に切除不能転移性黒色腫用薬として欧米で承認された。アジュバントはステージIIIだけを対象に10mg/kgと偽薬を比較した試験が成功、15年に米国で承認された。この試験の3年無再発生存率は10mg/kg群が46.5%、偽薬群は34.8%なので、E1609試験より数字が悪く、高リスクの患者をスクリーニングしたことになる。

異なった試験なので直接比較はできないが、E1609試験はYervoyの至適用量を再考する契機になりうるのではないか。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年6月4日

2017年6月4日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO:LoxoのTRK阻害剤は反応率76% 
  • ASCO:リリーのCDK4/6阻害剤は先行品と大差なさそう 
  • ASCO:ザイティガはホルモンナイーブにも有効 
  • テバの抗CGRP抗体も第三相が成功 
  • ムコ多糖症VII型の治療薬が欧米で承認申請 
  • GSKとViiV、二剤だけの抗HIV療法を欧米で承認申請 
  • スーテント、アジュバントに適応拡大申請 
  • ノボの第IX因子、米国はルーチン予防を承認せず 
  • EUで脊髄性筋萎縮症用薬が承認 
  • CLN2治療薬もEUで承認 
  • ファイザーのB群髄膜炎菌ワクチンがEUで承認 
  • EU、オプジーボを膀胱癌に承認 



【新薬開発】


ASCO:LoxoのTRK阻害剤は反応率76%
(2017年6月3日発表)

米国コネチカット州の医薬品開発企業、Loxo Oncology(Nasdaq:LOXO)は、ASCO(米国臨床腫瘍学会)で、LOXO-101(larotrectinib)の第一相、第二相試験合計50人の成績を発表した。TRK融合蛋白型の腫瘍に対する効能を調べた試験で、ORR(客観的反応率)は76%、このうち完全反応率12%、部分反応率64%と、中々良いものだった。

今回の試験はTRK融合蛋白陽性なら癌の発生部位は不問で、17種類の癌が組み入れられたが、比較的多かったのは唾液腺腫、幼児線維肉腫、甲状腺、結腸、肺、黒色腫、紡錘細胞肉腫、胆管癌、筋周皮腫。

NTRKはtropomyosin receptor kinase(TRK)をコードする遺伝子だが、癌のごく一部(0.5~1%)では他の遺伝子との融合により受容体結合ドメインが欠落、レガンドの刺激がなくても活性化してしまう。このような癌を標的とすべくArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)がLoxo社の支援を受けて創製したのが高度選択的TRK阻害剤LOXO-101とバックアップだ。一日二回、経口投与する。

TRKはニューロンの制御に関与しているため、神経認知学的副作用が独自の副作用。全125症例の有害事象分析では、G3の眩暈が2%で発生。有害事象による減量が13%で発生し、その殆どは神経認知性有害事象だった。

Loxoは第三者によるORRの査読を行ったうえで来年初めまでに承認申請する考え。NTRK融合蛋白の判定を行うコンパニオン・ダイアグノスティックもVentana社と開発中。

リンク: Loxo社のプレスリリース

ASCO:リリーのCDK4/6阻害剤は先行品と大差なさそう
(2017年6月3日発表)

イーライリリーのCDK4/6阻害剤、LY2835219(abemaciclib)の第三相試験結果もASCOで初発表された。PFS(無進行生存期間)のハザードレシオは0.553で、先行するCDK4/6阻害剤であるファイザーのIbrance(palbociclib)やノバルティスのKisqali(ribociclib)のデータと大差なかった。直接比較試験ではないので誤差範囲を多めに想定すべきであり、結論としては、三剤の薬効は大差ないと考えるべきだろう。

この試験は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後乳癌で切除術後の補助療法や転移癌の一次治療でホルモン療法を既に受けた女性を組入れて、fulvestrantと併用する効果を偽薬と比較した。メジアンPFSは16.4ヶ月(偽薬群は9.3ヶ月)、ORRは48.1%(同21.3%)だった。主なG3以上の有害事象の発生率は下痢が13%(同0%)、好中球減少症が23%(同1%)で発生した。

LY2835219は今回のデータと第二相のデータに基づいて今年4~6月期に承認申請。一次治療試験も成功しており、7-9月期に承認申請予定。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

ASCO:ザイティガはホルモン・ナイーブにも有効
(2017年6月3日発表)

ASCOではジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大試験の結果も発表された。転移性前立腺癌用薬で、2011年の初承認時の適応はホルモン療法に反応しなくなり癌の症状が悪化して化学療法を受けたが再発/無効だった患者、翌年の適応拡大はその一歩前の段階であるホルモン療法抵抗性無/軽度症候性患者だったが、今回は更に手前の試験が成功、日本も含めて、適応拡大申請した。対象患者数が再び大きく増加することになる。

このLATITUDE試験は、転移性前立腺癌で初めてホルモン療法を受ける(ナイーブ)患者のうち、Gleason scoreや骨転移、内臓転移の状況などから高リスクと判定された患者を組入れて、ADT(アンドロゲン除去療法薬)群とZytigaとprednisoneを併用する三剤併用群の全生存期間を比較した。結果は、ハザードレシオが0.62、p値は0.0001未満、メジアン値は標準療法群が34.7ヶ月、三剤併用群は未到達と大変良い結果になった。主なG3以上の有害事象は高血圧や低カリウム血症。

前立腺癌は進行の遅いものが少なくないため副作用のきつい化学療法は癌が進行して骨転移痛などの症状が強くなるまで待つことが多い。今回のデータは便益と危険のバランスが取れているように見えるので、再考の契機になるのではないか。適応拡大なので今週のトピックスの3番目に置いたが、臨床的な重要性は一番かもしれない。

リンク: ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

テバの抗CGRP抗体も第三相が成功
(2017年5月31日発表)

テバ・ファーマスーティカルズ(NYSE:TEVA)はTEV-48125(fremanezumab)の第三相慢性片頭痛予防試験が成功したと発表した。発生日数の減少は偽薬群が2.5日、試験薬を四半期毎に皮注した群は4.3日、月一回皮注群は4.6日となり、どちらの投与頻度も偽薬比有意な差があった。反復性片頭痛の第三相も結果がまもなく判明する見込み。年内承認申請を予定。

元々は2001年にジェネンテックからスピンアウトしたRinat社がRN-307として開発したもの。06年にRinatを買収したファイザーが12年にアウトライセンスした先の会社を14年にテバが2億ドルと後発債務6.25億ドル相当で買収、という経緯だ。

リンク: テバのプレスリリース

【承認申請】


ムコ多糖症VII型の治療薬が欧米で承認申請
(2017年5月23日発表)

Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)は、UX003をムコ多糖症VII型の治療薬として欧米で承認申請し受理されたと発表した。ベータ・グルクロニダーゼの欠乏を補充する、遺伝子組換え型酵素補充療法。5~35歳の12人を組入れた試験では、4mg/kgを二週間に一回、投与したところ、尿中のグリコサミノグリカン・デルマタン硫酸が64%減少した。

EUはこの評価方法を代理マーカーとして受け入れたが、FDAは認めず、各患者のデータを総合的に評価する考え。米国の審査期限は11月16日。

リンク: Ultragenyxのプレスリリース

GSKとViiV、二剤だけの抗HIV療法を欧米で承認申請
(2017年6月1日発表)

グラクソ・スミスクラインとViiVヘルスケアは、dolutegravirとrilpivirineの合剤をHIV/AIDSの維持療法として欧米で承認申請した。

HIV/AIDSの治療は二種類の核酸系逆転写阻害剤とそれ以外の作用機序を持つ薬を併用するHAART(highly aggressive antiretroviral therapy)が一般的だが、今回の合剤は、ウイルス抑制に成功した患者の維持療法としてインテグラーゼ阻害剤とジョンソン・エンド・ジョンソンの非核酸系逆転写阻害剤の二剤だけを用いるもので、画期的。

米国はバウチャーを使用、優先審査を受ける。1.3億ドルの費用はGSKの2017年第2四半期決算で計上する由。この金額が総額なのか、GSKの分担額なのかは不明だが、SareptaがGileadに売却した時の価格は1.5憶ドルと報じられているので、総額またはそれに近いのだろう。

優先審査バウチャーは感染症や小児希少疾患などの新薬を開発した会社に褒美として供与する米国特有の制度で、別の薬を承認申請する時に優先審査を受けることができる。転売も可能で、当初は3~6憶ドルの値段が付いたが、供与例が増えて需給が緩んだのだろう。

リンク: GSKとViiVヘルスケアのプレスリリース

スーテント、アジュバントに適応拡大申請
(2017年5月31日発表)

ファイザーは、Sutent(sunitinib、和名スーテント)を難治性腎細胞腫の摘出術後附随療法(アジュバント)に用いることを欧米で承認申請し受理されたと発表した。米国の審査期限は来年1月。現在は末期腎細胞腫などに承認されている。

アジュバント試験は二本実施され、北米で実施された一本目はSutentも同じVEGFR阻害剤であるバイエルのNexavar(soratinib)もフェールしたが、欧米アジアで実施されたS-TRAC試験が成功。第三者査読のDFS(無病生存期間)のハザードレシオは0.761、メジアン値は6.8年、偽薬群は5.6年だった。高リスクサブグループではメジアン6.2年、偽薬群は4.0年と差が広がった。

リンク: ファイザーのプレスリリース

【承認】


ノボの第IX因子、米国はルーチン予防を承認せず
(2017年5月31日発表)

ノボ ノルディスクはFDAがRebinyn(nonacog beta pegol)をB型血友病治療薬として承認したと発表した。18年第1四半期に発売予定。遺伝子組換え型第IX因子で、IX因子活性化ペプチドにポリエチレングリコールを結合する手法で半減期を5倍に伸ばしたもの。頻繁に出血する患者は予防目的で血液凝固因子をルーチン投与することがあるが、Rebinynは週一回投与で足りるので利便性が高い。

欧州では3月にCHMPがRefixia名で肯定的意見を出しているが、まだ承認はされていないようだ。用途は12歳以上のB型血友病患者の出血治療、手術時の出血管理、そして頻繁に出血する高リスク患者に予防目的でルーチン投与の三種類。一方、米国はB型血友病の成人、青少年の出血治療と手術中出血管理だけで、レーベルにはルーチン予防は未承認であることが明記されている。米国はオフレーベル使用が比較的容易だが、レーベルで明示的に否定されてしまったのは、商業的に重要な用途だけに、痛い。

リンク: ノボのプレスリリース

EUで脊髄性筋萎縮症用薬が承認
(2017年6月1日発表)

先週は3月と4月のCHMPで肯定的意見を受けた新薬や適応拡大が続々と承認された。

バイオジェンがIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスして開発したアンチセンス薬、Spinraza(nusinersen)は脊髄性筋萎縮症の治療薬としてEUで承認。

希少疾患で、日米欧の患者数は3~3.5万人と推定されている。殆どの患者がSurvival Motor Neuron(SMN)の遺伝子であるSMN1に変異を持ち、十分に機能するSMNを産生できない。幼小児発症型と成人発症型があるが、EUは幼小児発症型に多い第5染色体に変異を持つタイプを適応とした。

これまでのアンチセンス薬は特定の蛋白の発現を阻害するメカニズムだったが、Spinrazaは、短いSurvival Motor Neuron(SMN)しか作れないSMN2遺伝子のスプライシングを変えることによって、SMN1遺伝子の代わりに正常なSMNを作らせる、正の作用を利用していることがユニークだ。I型(幼児発症型)試験では、反応率が51%と文献データの0%を大きく上回った。人工呼吸器が恒久的に必要になったり死亡したりするリスクも半減した。II型試験では筋肉機能評価スコアが用量依存的に改善した。

髄腔内投与で最初は2ヶ月間に4回投与、その後は4ヶ月に一回投与する。米国では昨年12月に承認された。日本も臨床試験に参加しており、昨年12月に承認申請された。

リンク: バイオジェンのプレスリリース

CLN2治療薬もEUで承認
(2017年6月1日発表)

バイオマリン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:BMRN)のBrineura(cerliponase alfa)もEUで承認された。同社が得意とする超希少疾患用の酵素補充療法で、適応症はCLN2(神経セロイドリポフスチン症2型)。TPP1/CLN2遺伝子の変異が原因でトリペプチジルペプチダーゼを作ることができず、この酵素で分解されるべき蛋白が蓄積してしまう。2~4歳で発症、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡することが多い、深刻な疾患だ。罹患率は20万人に一人とされる。

Brineuraは遺伝子組換え型のヒトTPP1で、二週間に一回、脳室内に点滴投与する。臨床試験では運動機能や言語機能の悪化が文献データ比8割少なかった。米国では4月に承認され、年49万ドル程度の価格(正味薬価ベース)で発売された。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

ファイザーのB群髄膜炎菌ワクチンがEUで承認
(2017年5月30日発表)

ワクチンでは、ファイザーのB群髄膜炎菌ワクチン、TrumenbaがEUで承認された。B群は様々な株があるが、TrumenbaはサブファミリーAとBのfHbp(H因子結合蛋白)を抗原としており、1800種類以上に対応している。

米国では14年に承認されたが、流行が限定的であるせいか、ACIPワクチン委員会は接種の当否をケースバイケースで判定するよう推奨するに留めた。欧州はACWY群のワクチンが普及しこれらの感染例が減少するとともにB群の比率が上昇しており、もっと普及する可能性がありそうだ。13年に欧州で承認されたGSKのBexseroがライバルになる。

リンク: ファイザーのプレスリリース

EU、オプジーボを膀胱癌に承認
(2017年6月2日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を切除不能な局所進行性・転移性尿路上皮細胞腫に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。白金薬による治療がフェールした患者が適応になる。第二相試験では持続的反応率が20%、メジアン反応持続期間は6ヶ月超。被験者の46%を占めるPD-L1陽性型では持続的反応率25%、それ以外では16%だった。

Yervoy併用試験が活発に実施され学会発表も盛んであるためか、4月にCHMPが肯定的意見を出した時のEMAのプレスリリースには、黒色腫以外はモノセラピーしか承認されていないことが明記されていた。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年5月28日

2017年5月28日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アムジェン、骨粗鬆症新薬に副作用懸念 
  • セルジーン、多発硬化症新薬の二本目の第三相も成功 
  • キイトルーダ、胃癌に適応拡大申請 
  • オプジーボ、肝癌で承認申請 
  • サン、抗IL-23抗体を米国で承認申請 
  • FDA諮問委員会、プーマの汎erbB阻害剤を支持 
  • FDA諮問委員会が19年ぶりの鎌状赤血球症治療薬候補を支持 
  • リジェネロンの抗IL-6受容体抗体が承認 
  • キイトルーダ、MSI-H/dMMR癌に承認 
  • アクテムラ、米国で巨細胞性動脈炎に承認 
  • ノバルティス、ジカディアの一次治療が承認 


【新薬開発】


アムジェン、骨粗鬆症新薬に副作用懸念
(2017年5月21日発表)

アムジェンは昨年7月に米国でEvenity(romosozumab)を骨粗鬆症治療薬として承認申請したが、最近開票したARCH試験で心血管疾患リスク懸念が浮上した。過去の試験では見られなかった由なので只のノイズの可能性もあるが、精査が必要だ。米国の審査期限は7月19日だが、アムジェンによると、年内の承認は期待できなくなった。日本ではアステラス製薬との合弁会社が昨年12月に承認申請しており、今後、機構と相談する。欧州は引き続き承認申請の準備を進める考え。

romosozumabは2002年にセルテック(後にUCBが子会社化)のCDP7851をライセンス、AMG785として開発したもの。抗体医薬で、Wntや骨形態形成蛋白のシグナル伝達パスウェイを阻害して造骨細胞の抑制をもたらすスクロスチンを阻害する。ビスフォスフォンなどの既存の骨粗鬆症治療薬は主として破骨細胞を抑制するタイプが多い。造骨細胞活性化薬は骨密度増強作用が高いが、腫瘍リスクを高めてしまう懸念があるため、1~2年間治療してその後はビスフォスフォン酸など破骨細胞抑制型にスイッチするのが一般的な用法だ。

Evenityの承認申請用第三相閉経後骨粗鬆症治療試験(FRAME試験)も、1年目はromosozumabまたは偽薬を投与し2年目は両群ともdenosumabにスイッチした。造骨細胞増強型である遺伝子組換え型副甲状腺ホルモン、Forteo(teriparatide)と比較した試験や、骨粗鬆症の男性を組入れた試験も実施されたが、どちらも治療期間は1年だった。

今回のARCH試験は、骨折リスクが高い閉経後骨粗鬆症を対象に、romosozumabを1年間、月一回皮注して2年目はalendronateの週一回投与製剤にスイッチする治療法と、2年間alendronate週一回投与を続ける群の骨損壊リスクを比較したもの。薬効の面では優れており、romosozumab群は2年間の新脊椎損壊が50%少なく、臨床的に重要な骨折に限定しても27%少なかった。QOLに大きな影響を与える、大腿骨骨折は有意な差はなかった。

心血管疾患の偏りは、1年間の心血管深刻有害事象発生率が2.5%でalendronate群の1.9%を上回った。臨床的に重要な骨折の発生率は未公表だが、FRAME試験では年1~2%だったので、number needed to treatもnumber needed to harmも大差なかっただろう。従って、看過できるリスクではない。

FRAME試験では群間の偏りはなかったとのことだ。ARCH試験の組入れは4093人、FRAME試験は7180人なので、FRAME試験のほうが信用できそうだが、イベントリスクの比較における検出力は組入れ数ではなくイベント発生数と相関するので、詳細が発表されるまでは何とも言えない。

リンク: アムジェンとUCBのプレスリリース

セルジーン、多発硬化症新薬の二本目の第三相も成功
(2017年5月22日発表)

セルジーンは、RPC1063(ozanimod)の二本目の第三相再発性多発硬化症試験が成功したことを発表した。Gilenya(fingolimod)と同様なスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節剤だがS1P1受容体とS1P5受容体に選択的に作用するので、新毒性や肝毒性が小さいようなら優良な代替薬になりうるだろう。15年にReceptosを72億ドルで買収して入手したパイプライン。

第三相は二本とも0.5mgまたは1mgを一日一回、経口投与する群の再発率をAvonexを週一回筋注する群と2年間に亘って比較した。結果は、両試験、両用量ともAvonex群より有意に小さかった。但し、障害進行抑制効果を検討するために行ったプール分析は、Avonex群も進行が小さかったせいか、フェールした。EDSSスコアで評価したものと推測されるが、あまり鋭敏なスコアではないので、これも、実際のデータやp値が公表されるまで何とも言えないだろう。

リンク: セルジーンのプレスリリース

【承認申請】


キイトルーダ、胃癌に適応拡大申請
(2017年5月23日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の適応拡大申請を米国で行い受理されたことを発表した。難治性・末期の胃・胃食道接合部腺癌の三次治療に用いるもので、優先審査を受ける。審査期限は9月22日。

第二相試験のコフォート1のデータに基づく申請で、259人(うち、57%がPD-L1陽性)のORR(客観的反応率)は11.2%、メジアン反応持続期間は8.1ヶ月。G3からG5までの治療関連有害事象発生率は16.6%で、うち2人は急性腎障害と腹水により死亡した。

リンク: MSDのプレスリリース

オプジーボ、肝癌で承認申請
(2017年5月24日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)の適応拡大申請を米国で行い受理されたと発表した。末期肝細胞腫でNexavar(sorafenib)治療歴を持つ患者に用いるもので、優先審査を受ける。審査期限は9月24日。

第二相試験のsorafenib歴コフォートの解析では、第三者査読によるORR(客観的反応率)が15%だった。尚、この試験のsorafenib未経験者コフォートのORRは20%となっている。

リンク: BMSのプレスリリース

サン、抗IL-23抗体を米国で承認申請
(2017年5月24日発表)

インドのサン・ファーマシューティカルズは、MSDがtildrakizumabを中重度乾癬治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。サンは14年に世界での権利を取得しており、承認後はサンが開発販売する。欧州は昨年7月にサンから欧州における乾癬領域での開発商業化権を取得したAlmirallが承認申請、3月に受理されている。

MSDがMK-3222名で開発した抗IL-23p19抗体。第三相試験ではPASI75奏効率が60%台で、Enbrel(etanercept)を上回った。

ジョンソン・エンド・ジョンソンも抗IL-23p19抗体のCNTO 1959(guselkumab)を昨年11月に欧米で、今年4月には日本でも、承認申請しており、開発スピードでも、販売力でも、こちらの方が優勢のように見える。薬効の比較は直接比較試験が行われたわけでもないので難しいが、guselkumabも第三相試験で実薬であるHumira(adalimumab)を上回る効果を示した。

抗IL-23p19抗体はジョンソン・エンド・ジョンソンのStelara(ustekinumab)と異なりIL-12は阻害しないため、腫瘍リスクなど安全性面で優れる可能性があるが、稀な事象なので、臨床開発プログラム全体のデータを見ないと判定できない。FDAの分析結果が注目される。

リンク: サンのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、プーマの汎erbB阻害剤を支持
(2017年5月24日発表)

FDAの腫瘍学薬諮問委員会は、プーマ・バイオテクノロジー(NYSE:PBYI)が承認申請したPB272(neratinib)を検討し、16人の委員のうち12人が便益がリスクを上回ると判定した。適応が制限される可能性が残っているものの、承認の可能性が高まった。

ワイスがHKI-272名で開発した不可逆的汎erbBチロシンキナーゼ阻害剤で、ワイスを買収したファイザーが第三相まで持っていったがドロップ、11年にプーマに世界開発販売権を供与したもの。プーマの創立者は、クーガー・バイオテクノロジー社を設立して前立腺癌用薬Zytiga(abiraterone acetate)の開発を成功させ、会社ごとジョンソン・エンド・ジョンソンに売却した実績を持つ、元々はWells Fargoのアナリストだった人物だ。プーマ(ピューマ)はクーガーの別名らしい。

I-SPY 2試験で第三相試験の予想成功確率78%という大変良いデータが出て注目されたが、開発後期試験は一進一退で難航した。承認申請の根拠となったのは日本の施設も参加して行われた早期乳癌延長アジュバント試験、ExteNET試験だが、この試験もプロトコルが変遷した。

her2陽性の早期乳癌で摘出術後にHerceptin(trastuzumab)を含むアジュバント療法を受けた患者を対象に、更にneratinibまたは偽薬を投与したが、当初はステージ1~3でHerceptinを終えてから2年以内という条件だったが、ステージ2~3、1年以内に変更。追跡期間は5年から2年になりその後また5年に戻った。主評価項目もtime-to-eventではなく2年間のイベント発生率の分析に変わった。

結果は、2年経過時点の浸潤性乳癌無再発率(DFS)が94.2%と偽薬群の91.9%を上回り、ハザードレシオ0.66、p=0.008となった。事前に計画されたサブグループ分析では、ホルモン受容体陽性癌ではハザードレシオ0.49だったが、陰性では0.93で大差なかった。また、Herceptin終了後1年以内の患者ではハザードレシオ0.63だったが1年以上は0.92だった。承認に否定的な委員は一部の患者にしか効果が見られないことを重視した。肯定的な委員の中にも適応を狭めるべしという意見があった。

her2だけでなくEGFRも阻害すると下痢の副作用が顕著になる。neratinibは3分の2の患者が下痢で用量を減らしたり一時中断したりした。ロペラミドやブデソニドを用いて緩和することができる模様だ。

リンク: プーマ社のプレスリリース
リンク: Lancet誌の治験論文抄録(ExteNET Study Group)

FDA諮問委員会が19年ぶりの鎌状赤血球症治療薬候補を支持
(2017年5月24日発表)

FDA腫瘍学諮問委員会は、Emmaus Life Sciencesが鎌状赤血球症治療薬として承認申請したEndari(L-glutamine)を検討し、13人の委員のうち10人が便益がリスクを上回ると判定した。審査期限は7月7日。承認されれば、この病気では98年のヒドロキシウレア以来、19年ぶりの新薬になる。

医薬品として用いられている経口アミノ酸。酸化に弱い鎌状赤血球が抗酸化物質を作るのに必要なL-グルタミンを補充するアイディアに基づいて開発、第三相試験では、鎌状赤血球クリーゼ(急性増悪による痛みで治療を受ける)が48週間に平均3.2回と、偽薬群の3.9回より有意に少なかった。数字を見る限りではすごく効く訳ではなさそうだ。

リンク: Emmaus社のプレスリリース


【承認】


リジェネロンの抗IL-6受容体抗体が承認
(2017年5月22日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、FDAがKevzara(sarilumab)を承認したと発表した。中重度活性期リウマチ性関節炎の治療薬として、単剤または併用で、200mgを二週間に一回皮注する。中外製薬/ロシュのActemra(tocilizumab)と同じIL-6受容体に結合する抗体医薬で、副作用の出方もよく似ている。米国でのWAC(問屋取得価格)は年39000ドルで既存のバイオ薬より3割安く設定した由。

リンク: 両社のプレスリリース

キイトルーダ、MSI-H/dMMR癌に承認
(2017年5月23日発表)

FDAは、MSDのKeytruda(pembrolizumab)をMSI-H/dMMR腫瘍のサルベージ療法として承認した。乳癌とか結腸直腸癌とか原発部位ではなく、遺伝子署名に基づいて適応を決めたのは今回が初めて。これまでにもHerceptinがher2陽性の乳癌と胃癌に承認されるなど、類似例はあったが、今回のように多種の癌に跨る適応が増えると、治療法を検討する前に様々な遺伝子プロファイリングを行わなければならなくなるだろう。

dMMRは遺伝子が複製される過程で必然的に発生する翻訳ミスが、修復メカニズムの機能不全により修復されず、癌細胞と他の細胞の遺伝子がマッチしない。マイクロサテライトと呼ばれる特定の塩基配列が何度も繰り返され複製ミスが起こりやすい箇所を比較するのが典型的な検査方法で、繰り返し回数が違うとMSI-Hと判定される。リンチ症候群患者の結腸直腸癌の研究から発展した手法で、切除不能転移性結腸直腸癌では5%程度が該当し、そのほかに内膜腫や胃癌、頻度は低いが乳癌や前立腺癌、膀胱癌、甲状腺癌などでも見られる由だ。

加速承認で、ORRは39.6%、78%は反応が6ヶ月以上持続した。小児にも承認したが薬効や安全性のエビデンスはない由。成人には200mgを3週間毎に30分点滴静注。小児の用量は2mg/kg。最長2年間まで投与できる。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース(5/26付け)

アクテムラ、米国で巨細胞性動脈炎に承認
(2017年5月23日発表)

ロシュは、FDAがActemra(tocilizumab)を巨細胞性動脈炎の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。標準治療薬であるステロイドの用量を減らしながら寛解を目指すことが可能になる。日本では欧米に多い巨細胞性動脈炎だけでなくアジアや中近東で多い高安動脈炎も含めて、大型血管炎の治療薬として中外製薬が昨年12月に効能効果追加申請している。

リンク: ロシュのプレスリリース

ノバルティス、ジカディアの一次治療が承認
(2017年5月26日発表)

ノバルティスは、FDAがZykadia(ceritinib、和名ジカディア)をALK陽性転移性非小細胞性肺癌の一次治療に用いることを承認したと発表した。エビデンスとなったASCEND-4試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が16.6ヶ月と、pemetrexed・白金薬併用群(pemetrexed維持療法も可)の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、統計的に有意だった。脳転移にも効果が見られた。

尚、pemetrexedは扁平上皮性非小細胞性肺癌に対する効果が弱く、非扁平上皮性非小細胞性肺癌に用いられる。ASCEND-4試験もこのタイプ限定だが、Zykadiaの承認は限定されていない。もしpemetrexedの効果が偽薬並みであったとしてもそれを有意に上回るなら良し、という考え方なのだろう。

リンク: ノバルティスのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年5月21日

2017年5月21日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
  • アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請 
  • バイエル、PI3K阻害剤を承認申請 
  • Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請 
  • CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持 
  • キートルーダ、膀胱癌に承認 
  • FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大 
  • FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告 


【新薬開発】


シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
(2017年5月18日発表)

シャイアーはlanadelumabの第三相HAE(遺伝性血管浮腫)発作予防試験が成功したと発表した。18年始めまでに承認申請する考え。

HAEは有病率が3万人に一人の希少疾患。補体系に係るC1エステラーゼの遺伝子欠損・変異により、皮膚や小腸、口、喉に痛みを伴う浮腫ができ、喉で起きた場合は命に関わることもある。

lanadelumabは血漿カリクレイン(pKal)を標的とする完全ヒト化抗体で、16年に59億ドルで買収したDyax社がDX-2930として開発したもの。特徴は投与方法が簡便であること。同社の血漿由来ヒトC1エステラーゼ・インヒビター、Cinryzeは週二回点滴静注だが、二週間あるいは四週間に一回の皮注で足りる。

第三相試験では、300mgを二週間毎に投与した群では発作が偽薬比87%少なかった。150mg四週間毎、300mg四週間毎の各群も偽薬比有意に減少した。主な有害事象は注射箇所痛。

リンク: シャイアーのプレスリリース

【承認申請】


アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請
(2017年5月18日発表)

アムジェンは、AMG 334(erenumab)を片頭痛発作予防薬として米国で承認申請した。CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とする完全ヒト化抗体で、慢性片頭痛や反復性片頭痛(月に4~14日発症)の患者に、月一回、皮注する。三本の薬効確認試験では、月間発症日数の減少が偽薬群より1~2日多かった。

イーライリリーも抗CGRPヒト化抗体、LY2951742(galcanezumab)の第三相試験が成功、下期に米国などで承認申請する予定。投与頻度や試験成績は両剤とも大差ない。

アムジェンはアルツハイマー病や片頭痛領域でノバルティスと共同開発提携を結んでおり、AMG 334の販売は米国は共同、海外(日本は除く)はノバルティスが販売する。

リンク: アムジェンのプレスリリース

バイエル、PI3K阻害剤を承認申請
(2017年5月17日発表)

バイエルは、BAY 80-6946(copanlisib)を米国で濾胞性リンパ腫の三次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。希少疾患用薬指定とファーストトラック指定を持っており、優先審査を受ける。

再発性難治性低悪性度非ホジキン型リンパ腫の第二相試験に基づく加速承認申請で、濾胞性104例におけるORR(客観的反応率)は59%(うち14%は完全反応)、メジアン反応持続期間は52週間以上だった。G3以上の有害事象は高血糖が40%の患者で、高血圧症が23%で、発生した。

作用機序は、B細胞の活性化や生存、トラフィッキングに係るphosphoinositide-3 kinase(PI3K)の阻害。ファースト・イン・クラスであるギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のZydelig(idelalisib)は14年に米国で難治性濾胞性リンパ腫と再発性慢性リンパ性白血病用薬として承認された。copanlisibはPI3Kデルタだけでなくアルファも阻害する汎クラスI PI3K阻害剤であることが特徴。重篤感染症のリスクや肝毒性が小さいようなら長所になりうるのではないか。

PI3K阻害剤の開発は活発で、インフィニティ・ファーマスーティカルズやノバルティスも第三相試験中。

リンク: バイエルのプレスリリース

Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請
(2017年5月15日発表)

Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)は、Rhopressa(netarsudil)を緑内障治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年2月28日。眼球における液排出経路である小柱網を標的とする画期的新薬で、一日一回の点眼で足りる。臨床試験では、眼圧が26 mmHg未満のサブグループにおける効果がtimololの一日二回点眼と非劣性だった。

16年9月に承認申請したが、製造会社が承認前検査(新薬承認に際してFDAが行う工場査察)を受ける準備ができていないという理由で翌月に撤回した経緯がある。

リンク: Aerie社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持
(2017年5月19日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、自家軟骨細胞療法などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域などで承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

まず、ドイツのco.don AG(FSE:CNWK)が承認申請したSpheroxは、ドイツで97年以来、販売されている自家軟骨細胞療法。患者の軟骨細胞の球状凝集体をex vivoで培養し関節鏡的に移植、欠損部位の再生を促す。症候性で10平方センチメートル以下の大腿顆・膝蓋骨軟骨欠損の治療に用いる。二本の臨床試験でKOOS(疼痛や生活機能、QOLに関する患者アンケート)が有意に改善した。副作用は創傷治癒の遅れや関節拘束など。

先端医療としてCommittee for Advanced Therapiesが審査、CHMPに肯定的意見を出すよう勧告したもの。

リンク: EMAのプレスリリース

リンク: co.don社のプレスリリース(5/18付)

イタリアのDompe farmaceutici S.p.A.が承認申請したOxervate(cenegermin)は遺伝子組換え型ヒト神経成長因子の点眼液。神経栄養性角膜炎の治療に用いる。この疾患は三叉神経に損傷があり角膜の感覚が低下・欠如しており、角膜細胞のヒーリングに必要な物質が分泌されにくくなっている。重度神経栄養性角膜炎は希少疾患だが失明のリスクがある。

リンク: EMAのプレスリリース

ハンガリーのゲデオン・リヒターのReagila(cariprazine)はD3/D2受容体パーシャル・アゴニスト。統合失調症の治療に用いる。米国ではアラガン(NYSE:AGN)がインライセンスし、15年にVraylarという製品名で承認を取得した。日本周辺は田辺三菱製薬が導入。

デンマークのレオ ファーマが承認申請したKyntheum(brodalumab、米国名Siliq、和名ルミセフ)は抗IL-17受容体A完全ヒト化抗体。中重度乾癬を治療する。アムジェンが創製しアストラゼネカと共同開発したが、臨床試験で自殺思慮・試行が見られたためアムジェンは離脱、アストラゼネカも権利を他社に譲渡した。欧州の権利を取得したのが今回のレオ ファーマだ。

米国ではValeant(NYSE:VRX)が今年2月に販売承認を取得したが、懸念された通り、自殺思慮・試行リスクが枠付き警告された。日本は協和発酵キリンが16年に発売。

リンク: レオ ファーマのプレスリリース(pdfファイル)

スイスのVifor Pharma Group(SIX:VIFN)のVeltassa(patiromer)は高カリウム血症の治療薬。経口液用粉末で、食中に服用すると、結腸でカリウムに結合、そのまま排泄される。主な有害事象は便秘、下痢、低マグネシウム血症など。様々な薬と結合するため、数時間、離して服用する必要がある。米国では15年に承認。

リンク: Viforのプレスリリース

一方、否定的意見となったのは、まず、Xbiotech(Nasdaq:XBIT)のXilonix。抗IL-1アルファ・ヒトモノクローナル抗体で、結腸直腸癌患者のリーンマスやQOLを改善する薬として承認申請され、加速審査を受けたが、支持されなかった。リーンマスで見てもQOLでも改善効果が明確ではなく、重大な感染症リスクがあり、臨床試験用と市販用の製品の同等性にも懸念があるため。

Xbiotechは4月に否定的意見が出るであろうことを公表済み。米国では承認申請が認められず第三相試験を実施中なので、その結果を待って今後を決めることになりそうだ。

ABサイエンスのMasipro(masitinib)は今度は全身性肥満細胞症の治療薬として承認申請されたが今後も否定的意見となった。治験施設査察時に深刻なGCP(治験実施基準)違反が判明しデータの信頼性が損なわれたこと、安全性データが限定的であること、好中球減少症のような副作用が懸念されること、の三点がボトルネックとなった。

主要な適応拡大は、ノバルティスのZykadia(ceritinib、ジカディア)をALK再編成陽性末期非小細胞性肺癌の一次治療薬として単剤投与することが支持された。Alimta(pemetrexed)及び白金薬の併用療法に追加する三剤併用を検討した第三相非扁平上皮性非小細胞性肺癌試験で、PFS(無進行生存期間)のメジアン値が16.6ヶ月と二剤併用群の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、有意に優れていた。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

【承認】


キートルーダ、膀胱癌に承認
(2017年5月18日発表)

MSDのKeytruda(pembrolizumab)を末期・転移性尿路上皮細胞腫に用いる適応拡大がFDAに承認された。二次治療用途だが、cisplatin不適患者なら一次治療可。200mgを3週間毎に点滴静注する。

二次治療試験は中間解析で成功認定。メジアン生存期間が10.3ヶ月と医師が選んだ薬を投与した群の7.4ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.73、ログランクp=0.0022となった。共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間)は1.1ヶ月の差に留まりフェールした。

一次治療のエビデンスは第二相試験。16年のESMO発表によると、客観的反応率は24%だった。

抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体は多くが膀胱癌の承認を取得・申請中だが、ロシュのTecentriq(atezolizumab)の市販後薬効確認試験がフェールしたため、反応率を評価するだけで足りるのか、一抹の不安が生じている。KeytrudaもPFS解析がフェールと紙一重だが、暗中模索している人には延命効果のエビデンスが燦然と輝いてみえる。

リンク: MSDのプレスリリース

FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大
(2017年5月17日発表)

FDAは、バーテックス・ファーマシューティカルズのKalydeco(ivacaftor)の適応拡大を承認した。CFTR遺伝子に特定の変異を持つ嚢胞性線維症の治療薬で、12年の初承認以降も対象となる変異型を増やしてきた。最初はG551D変異型だけだったが、14年2月にはG1244Dなど8種類の変異型が、同年12月にはR117H変異型が、今回、23種類の変異型が追加され、合計33種類となった。

カバレッジは広がったが米国の対象患者数は初回承認時の1000人が2000~3000人になった程度だ。バーテックスは15年にOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)が承認されたが、適応になるF508ホモ欠損型は8000人以上である。経済性だけを考えたら、Kalydecoの適応を100人、200人単位で積み上げるよりも他の新薬に開発資源を投入したほうが効率が良い。

だからこそ、直ぐには適応にならない少数の患者を見捨てずに開発を一歩ずつ進めてきたバーティックスの姿勢は称賛に値する。

FDAも、患者数が少ないため十分な規模の臨床試験を実施できない条件下で、in vitroのデータを元に臨床的効用を判定する手法を採用したことをアピールするプレスリリースを出している。新規23変異型のうち臨床試験データがあるのは8変異19例だけで、承認が1年遅れたのはこれが理由と推測されるが、既存の10変異型におけるin vitroと臨床データの相関を元に、上手くブリッジングできるモデルを構築できたのだろう。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告
(2017年5月16日発表)

FDAは、Invokana(和名カナグル)を始めとするcanagliflozin配合剤について、下肢切断リスクを添付文書で枠付き警告することを発表した。昨年、心血管アウトカム試験の中間安全性評価でリスクが表面化。EUのほうが情報提供も警告強化も一歩先行しているが、FDAは、少なくとも現時点では、対象をcanagliflozinだけに留めSGLT2阻害剤全体に広げていないことが印象的だ。大西洋の東西で見解が分かれることは珍しくないが、日本の当局や学会はどう考えているのだろうか?

米国は血糖治療薬の承認に際して心血管リスクが高まらないことを要求している。血糖治療の目的は大血管性合併症や腎障害や感染症、下肢切断などの小血管性合併症のリスクを削減することなので、もし副作用で増えてしまうとしたら話が違う。

規制の発端はPPARガンマ作動剤だ。第一号のトログリタゾンは肝毒性で販売中止になったが、第二号のロジグリタゾンは心不全や心筋梗塞、第三号のピオグリタゾンも心不全のリスクが発覚、警告が強化されるとともに、新薬の心血管リスク評価が厳しくなった。尚、グリタゾンは様々な病気の治療薬としての可能性を秘めていて開発品が数多くあったが、癌原性試験を経て開発中止になったものが少なくなく、今日ではすっかり人気のない開発分野になってしまった。

さて、血糖治療薬は長期間服用する薬なので通常の臨床試験より長い期間、効果の持続性や副作用を監視する必要がある。糖尿病の患者は多いので発生率が1000人年に1例でも多くの患者が被害を受けることになるため、大規模な試験で稀だが深刻な副作用を確認する必要がある。血糖治療薬は降圧剤と比べて忍容性に難のあるものが多いが、幸い、選択肢は多いので、より安全なものを使えばよい。

このような制度・環境の下、ジョンソン・エンド・ジョンソンと田辺三菱製薬はcanagliflozinの心血管アウトカム試験CANVASと腎障害予防効果を検討するCANVAS-R試験を実施している。下肢切断リスクはこの二本の安全性監視データから表面化したもので、巨額の予算を投じてでも長期大規模試験を行う価値がまたまた確認された格好だ。

進行中の試験なのでデータは集計時点により変動するが、今回のFDAの発表によると、CANVAS試験では偽薬、100mg、300mgの各群の下肢切断発生率(1000人年当り)は2.8回、6.2回、5.5回で、ハザードレシオは両用量とも2倍以上、95%信頼区間の下限1.2以上。CANVAS-R(100mgで開始、300mgまで増量可)でも偽薬群4.2回に対して7.9回、ハザードレシオ1.8以上、95%下限1.1以上となった。二つの大規模長期試験でリスクが再現されたのだから、疑う余地は小さそうだ。

FDAは、canagliflozinによる治療を行う前に下肢切断のリスク因子を評価するよう求めている。下肢切断歴、末梢血管疾患、神経症、糖尿病性足潰瘍などだ。治療中は感染症、疼痛、下肢潰瘍などの兆候や症状に注意し、発生したら投与を止める。患者にもcanagliflozinが切断リスク上昇と関連していることと、注意すべき兆候症状を伝える。

枠付き警告は重大な副作用を表しており、TV広告などを行う時でもキチンと伝えなければならない。医師は、患者にキチンと伝えないと後で医療過誤訴訟に巻き込まれる可能性がある。何かと制約があり、販促面で不利だ。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

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2017年5月14日

2017年5月14日


【ニュース・ヘッドライン】

  • アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功 
  • ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール 
  • Array社、悪性黒色腫の第三相が成功 
  • イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功 
  • KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例 
  • アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視 
  • キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認 


【新薬開発】


アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功
(2017年5月12日発表)

アストラゼネカはImfinzi(durvalumab)の第三相肺癌維持療法試験が成功したと発表した。ステージIIIの切除不能非小細胞性肺癌で、白金薬と放射線療法を受けて進行が止まった患者を組入れて欧米や日本の施設で行われた試験で、共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)が中間解析で偽薬比有意に上回った。当局と承認申請に向けて相談する考え。尚、この試験ではPD-L1発現状況は不問。

Imfinziは今月、米国で尿路上皮細胞腫二次治療薬として承認された抗PD-L1完全ヒト化抗体。非小細胞性肺癌ではMSDの抗PD-1抗体、Keytrudaが三剤併用で一次治療に承認されたところだが、忍容性に関しては投与タイミングをずらしたほうが良好だろうから、Imfinziが承認されれば選択肢の一つとして価値がありそうだ。

Imfinziは通常の一次治療でも単剤やtremelimumab(ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体)併用で第三相試験を行っており、年内にPFS解析結果が判明する見込み。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール
(2017年5月10日発表)

ロシュのTecentriqはImfinziと同じ抗PD-L1モノクローナル抗体で尿路上皮細胞腫用薬として一年早く承認された。両剤とも第二相試験の反応率データに基づく加速承認なので、改めて第三相試験を実施して延命又はそれに準じる効果を確認する義務があるが、Tecentriqはフェールしたことが発表された。Avastin(bevacizuab)の転移性乳癌のように承認取消のリスクがあるが、Avastinと同様にセカンドチャンス、サードチャンスが与えられるのではないか。データが公表された段階で改めて考えたい。

尿路上皮細胞腫は二次治療とcisplatin不適患者の一次治療用途で承認されているが、フェールしたIMvigor211試験は白金薬治療歴を持つ患者の二次治療試験。対照群は担当医がvinflunine、paclitaxel、またはdocetaxelの中から選んだ薬を用いた。Tecentriqは尿路上皮細胞腫ではPD-L1不問で承認されているが、この試験の解析はシーケンシャルで、先ずPD-L1強陽性サブグループの全生存期間を解析する。

統計的に有意な差があれば、次に、PD-L1陽性サブグループの解析、これも成功なら陰性も含めたintent-to-treat全体の解析に進む。どの段階でフェールしたのか明記されていないが、常識的に考えれば強陽性サブグループでフェールしたのだろう。第二相の反応率はPD-L1陽性のほうがだいぶ良かったことを考えれば、PD-L1陽性サブグループやintent-to-treatのp値も0.05以上だったのではないか。

ロシュのプレスリリースによると、Tecentriq群の結果は第二相と概ね同様だったが、化学療法群が解析計画の前提より良かった。となると、Tecentriqが無効なのではなく三剤の効果が従来考えられていたより高いと考える余地がある。一方で、この三剤は少なくとも米国では尿路上皮細胞腫に承認されていないのだから、承認審査の上では偽薬と同じに扱われ、Tecentriqの効果は立証されていないと判定されるリスクがある。

この場合でも、直ぐに承認が取り消されるとは限らない。一次治療試験など他の尿路上皮細胞腫試験が成功すれば、二次治療における効用も追認される可能性がある。

抗PD-1/PD-L1抗体は尿路上皮細胞腫で承認されていたり、承認審査中だったりするものが多いが、Tecentriqの薬効確認試験のフェールは他剤にも疑いの眼差しを向けさせる結果になるだろう。

例外はMSDのKeytruda(pembrolizumab)だ。IMvigor211試験と類似したデザインのKEYNOTE-045試験が成功、メジアン生存期間が10.3ヶ月と化学療法群の7.4ヶ月を上回った。共同主評価項目であるPFSはフェールしたのでエビデンスは盤石ではなく、TecentriqのデータがKeytrudaと大差ない可能性も考えられるが、裏付けがあるのは強みだ。非小細胞性肺癌と同様に、尿路上皮細胞腫でもKeytrudaを選択するケースが増えるのではないか。

リンク: ロシュのプレスリリース

Array社、悪性黒色腫の第三相が成功
(2017年5月9日発表)

BRAF-V600変異を持つ切除不能悪性黒色腫にはBRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用が有効で、ロシュがZelboraf(vemurafenib)とCotellic(cobimetinib)、ノバルティスがTafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)を品揃えしている。

ノバルティスは当初、Array BioPharma(Nasdaq:ARRY)のLGX818(encorafenib)とMEK162(binimetinib)をライセンスしたが、GSKと事業交換を行って腫瘍学の製品・開発品を取得する過程で当局の命を受け権利返還した。

ArrayはPierre Fabreに欧州南米アジアなどの権利を供与すると共に第三相試験を続行、主目的を達成した。併用群のメジアンPFSが14.9ヶ月とvemurafenib群の7.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.54、統計的に有意だった。ところが、encorafenib単剤投与群(メジアン9.6ヶ月)との比較ではp=0.051となり、併用の必然性を立証することはできなかった。

今回成功したのはこの第三相の第二部で、binimetinibの用量は45mg一日二回で第一部と同じだが、併用群のencorafenibの用量を第一部の450mg一日一回から300mg一日一回に引き下げてencorafenib単剤投与群と統一した。結果は、PFSが12.9ヶ月対9.2ヶ月、ハザードレシオ0.77、p=0.029と有意な差があった。

有意と言っても0.029では十分に低いという感じはしないが、成功は成功だ。Arrayは7月までに承認申請する考え。

リンク: Arrayのプレスリリース

イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功
(2017年5月12日発表)

イーライリリーは、LY2951742(galcanezumab)の第三相片頭痛予防試験が三本とも成功したことを明らかにした。下期に米国などで承認申請する予定。

CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とするヒト化抗体で、アムジェンも完全ヒト化抗体のAMG 334(erenumab)の第三相を成功させ、年内に承認申請する予定。抗体医薬でも小分子薬と同様に、類薬同士の開発販売競争が珍しくなくなった。

galcanezumabの第三相は、反復性片頭痛(発生頻度が月4~14日)を組入れた試験が二本、慢性(月14日超)が一本。試験用量は120mg(初回だけ240mg)と240mgで、月一回、皮注。反復性試験は片頭痛発生日数がベースラインの9日から偽薬群は2~3日減少、試験薬群はどちらも4~5日減少し有意に上回った。慢性試験はベースラインの19.4日から偽薬群は2.7日減少、試験薬群は低量が4.8日、高量は4.6日減少し、何れも有意に上回った。用量反応相関は見られないので120mgで足りそうだ。

AMG 334の用法は月一回皮注で同じ、効果も第三相反復性片頭痛予防試験で偽薬群が月8.3日から1.8日減少、70mg群と140mg群は各3.2日と3.7日減少でgalcanezumabと大差ない。

CGRPは片頭痛発作時に増加し、鎮静化すると減少と、疾病に直接関係している可能性がある。既存薬のように癲癇など他の疾患の治療薬の転用ではないので心理的なバリアが低い。一方で、受容体は脳血管系や心血管系に広く分布しているので、安全性の確認が重要だ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例
(2017年5月8日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は、SECに提出した四半期決算報告書の中で、KTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の第三相試験で脳浮腫による死亡例が発生したことを開示した。Juno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)も脳浮腫が原因でJCAR015の開発を中止しており、クラス・イフェクトなのか、リスクに多寡はあるのか、が注目される。

KTE-C19は、3月に米国で他家造血幹細胞移植不適再発性難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫用薬として承認申請された、CAR-Tと呼ばれる新しいタイプの細胞療法。CD19抗原特定的なキメラ抗原受容体とCD28共刺激ドメインの遺伝子をレトロウイルスをベクターとして患者から採取したT細胞に導入、患者の体内に戻すと、T細胞が抗原提示を受けなくても腫瘍細胞を攻撃する。

開発後期段階のCAR-TはノバルティスがB細胞性急性リンパ芽球性白血病に承認申請したCTL019も含めて複数あるが、KTE-C19はJCAR015と組成が似ているので、臨床的な異同が注目されている。

CAR-Tの泣き所は免疫が亢進しすぎるサイトカイン放出症候群だ。Kiteはtocilizumab(ロシュの抗IL-6受容体抗体)やlevetiracetam(UCBの抗癲癇薬)を早期に用いることで重症化を回避する手法を検討するため30名を組入れて試験を行ったところ、発症を2例に抑えることに成功したが、2例のうち一人が脳浮腫を発症し死亡した。

脳浮腫による死亡はJCAR015の試験で5名、JCAR014でも1名発生しているので、CAR-T全体のクラス・イフェクトと疑う余地はある。発生頻度は違うかもしれないが、投与症例数が限られているため現状ではよくわからない。KTE-C19の臨床試験では累計で200人に投与、致死的有害事象は2%とのことなので、血液癌の薬としては特に毒性が高いようにも見えない。

リンク: Kiteの17/3四半期Form 10-Q(この話は31頁に記載)

アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視
(2017年5月10日発表)

アストラゼネカは、tralokinumab(Cambridge Antibody Technology社の開発コードはCAT-354)の第三相重度喘息症試験がフェールしたと発表した。事前に設定された、IL-13活動性が亢進していることを示すバイオマーカーでスクリーニングされたサブグループの解析では喘息増悪回数が臨床的に意味のある減少を示したため、進行中のもう一本の第三相では、このサブグループの解析を主評価項目とすることを決めた。17年下期に結果が出る見込み。

Adaptive designの試験は分かりにくいが、この第三相も、一本目がフェールしたらサブポピュレーションの解析を行い、二本目だけを仮説検証的試験とする計画だったのだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

【承認】


キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認
(2017年5月10日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)を末期非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療薬としてAlimta(pemetrexed)及びcarboplatinと三剤併用することがFDAに承認されたと発表した。EGFR阻害剤が適応になるEGFR活性化変異型やALK阻害剤が適応になるALK再編成型以外が対象になる。PD-L1発現は不問。

KEYNOTE-021試験の123例のORR(客観的反応率)に基づく承認で、三剤併用群は55%とAlimta・carboplatinの二剤併用群の29%を上回った。93%の患者は反応が6ヶ月以上持続した。二剤併用群では81%だった。用量・用法は3週間毎に200mgを30分点滴静注で、化学療法と同日だが先に投与する。

リンク: MSDのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年5月7日

2017年5月7日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗 
  • 回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請 
  • ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請 
  • Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回 
  • エダラボン、米国でもALSに承認 
  • 5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認 
  • 造骨型骨粗鬆症治療薬が承認 


【新薬開発】


大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗
(2017年5月2日発表)

大塚製薬とルンドベックは、非定型向精神薬Rexulti(brexpiprazole、和名レキサルティ)の適応拡大試験結果を発表した。アルツハイマー性認知症の典型的な症状の一つである激越を改善する効果を検討したもので、一本は主評価項目(CMAIトータルスコアの変化)で偽薬比有意な差が出たものの副次的項目(CGI-Sの変化)はダメ、もう一本は真逆で主評価項目はフェール、副次的項目は有意だった。

両社は承認審査機関と今後の方針を相談する考え。家族や介護者にとってunmet medical needsであるため、多少効果が弱くても許容されるだろうが、そもそも、広くオフレーベル使用されている非定型向精神薬が正式に承認されていないのは突然死のリスクがあるからであり、Rexultiも治験データが精査されることになるだろう。

今回の適応拡大試験で意外なのは、二本しかやっていない模様であることだ。一般的に精神症状は客観的評価が難しく、状態が不安定で、偽薬効果が大きく出ることもあるため、偽陰性リスクに備えて臨床試験を三本実施することが珍しくない。また、評価期間は二本とも12週間だが、現実の医療では半永久的に用いるだろうから、長期安全性確認試験をやっても良かったのではないか。統合失調症では長期試験が行われたが、アルツハイマー病は突然死リスクを慎重に吟味する必要がある。

リンク: 大塚ホールディングスのプレスリリース(和文、pdfファイル)

【承認申請】


回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請
(2017年5月1日発表)

英国のAtlantic Healthcare Limitedは、米国でalicaforsenの浣腸用製剤のローリング承認申請を開始した。適応は潰瘍性大腸炎の手術後に好発する回腸嚢炎の治療。

米国のIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)が創製した、ICAM-1の発現を阻害するアンチセンス薬。POC試験では12人の患者に6週間に亘って毎晩浣腸したところ、PDAI(嚢炎疾病活動指数)がベースラインの11.42から6.83に改善した。臨床症状サブスケールも3.75から2.25に改善した。深刻な有害事象は見られなかった。138人を組入れた第三相試験が進行中で年内に成否が判明する見込み。

Ionisは最初のアンチセンス薬であるVitravene(fomivirsen)が98年にCMV治療薬として米国で承認され、前途洋々と見られたが、販売不振で承認返上となってしまった。しかし、13年にコレステロール治療薬Kynamro(mipomersen sodium)、16年には脊髄性筋萎縮症治療薬Spinraza(nusinersen)と、ここ数年は新薬が続々と承認されている。核酸医薬の難点であった薬物動態の改良が成果を出し始めた。

リンク: Atlantic社のプレスリリース

ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請
(2017年5月3日発表)

ファイザーは、抗リウマチ薬として承認されているJAK阻害剤、Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)を中重度活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたことを発表した。12月に審査結果が出る見込み。臨床試験では10mgを一日二回投与する群も設定されたが、5mg一日二回と、11mg一日一回のXeljanz XRだけが申請された。

Xeljanzは元々は臓器移植後の拒絶反応防止薬として開発され、動物試験ではカルシニューリン阻害剤に引けを取らない強力な免疫抑制作用を示した。臨床入り後に自己免疫疾患の治療薬として開発の方向転換が行われたのだが、この用途では、カルシニューリン阻害剤と同様に、強すぎるきらいがある。FDAが乾癬の適応拡大を承認しなかったのは、関節炎ほど深刻な病気ではないため副作用リスクと釣り合いが取れないという判断なのだろう。一方、乾癬性関節炎はQOLに大きく影響するので、承認される可能性がありそうだ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回
(2017年5月1日発表)

Sunesis Pharmaceuticals(Nasdaq:SNSS)は、大日本住友製薬からインライセンスしたキノロン誘導体、vosaroxinを60歳以上の再発性急性骨髄性白血病の治療薬として2015年にEUで承認申請したが、撤回したことを公表した。CHMPが否定的意見を出す見込みであるため。

第三相のcytarabine併用試験はメジアン生存期間が7.5ヶ月と偽薬・cytarabine併用群の6.1ヶ月と大差なくフェールした。最初の30日間の死亡率が7.9%と偽薬群の6.6%を上回り安全性懸念も浮上した。ところが、事前に予定されていた60歳以上の患者451例だけの解析が、メジアン生存期間7.1ヶ月対5.0ヶ月、ハザードレシオ0.755、p=0.006、と良い結果になったため、EUではこのサブグループ限定で承認申請することが認められた。

一方、FDAは再試験を要求した。このような経緯があるため、今回の結果は意外ではない。

リンク: Sunesisのプレスリリース

【承認】


エダラボン、米国でもALSに承認
(2017年5月5日発表)

FDAは、田辺三菱製薬のRadicava(edaravone、和名ラジカット)をALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認した。日本で15年に効能追加されたことを知り、FDAがメーカーにアプローチした由だ。薬効と安全性のエビデンスも日本で行われた試験のようだ。

ALS Associationによると、上市は8月で一年分の価格は14.6万ドルとのこと。日本は数十万円、他にも特許切れした国があるようなので、並行輸入する動きもありそうだ。

日本で16年前に脳梗塞で発症から24時間以内の患者に使うことが承認された時は、臨床試験で24時間超の患者の転帰も有意に改善したことが信じられないというのなら24時間以内のデータも疑うべきではないかと思った。何れにせよ、そのうち治験論文が査読医学誌で刊行されれば真相に一歩近づくはずと思ったが、掲載されたのは私にとって聞いたことのない医学誌だった。抗血栓薬以外の脳梗塞治療試験が続々とフェールする中、唯一の快挙であったことを考えれば、NEJMやLancetでないのが意外だった。

何れにせよ、そのうち米国で臨床試験が行われれば白黒ハッキリするはずと思ったが、実現しなかった。

今回のALSのデータも盤石ではない。臨床試験の裏付けがあるのは状態が比較的良い患者だけだが、PDMAもFDAも適応を限定しなかったので、エビデンスレス・メディスンが行われるリスクがある。だが、ライフサイクルを考えると、改めて薬効確認試験が行われる可能性は低そうだ。

二人のALS患者がオランダで設立したTreeway社がedaravoneの経口投与用製剤、TW001を開発中で、欧米で希少疾患用薬指定を受けている。Radicavaは60分点滴静注で、28日サイクルで最初は14日間連続、その後のサイクルは10日間投与する。経口剤なら連続投与することで薬効をパワーアップできるかもしれない。また、Radicavaの深刻な有害事象として蕁麻疹や膨張、呼吸困難、添加物である亜硫酸水素ナトリウムに対するアレルギー反応が挙げられているが、この幾つかは経口剤なら回避できるかもしれない。

承認を取るだけだったら生物学的同等性試験を行えば十分だろうが、もし可能ならば、例えばALS治療薬として承認されている経口剤、Rilutek(riluzole)を活性対照薬として、改めて薬効を確認してほしいものだ(日本の試験は9割の患者がRilutekを服用していたので実質的にアドオン試験となっている)。

リンク: FDAのリリース
リンク: Radicavaの米国向け情報サイト

5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認
(2017年5月1日発表)

アストラゼネカは、Imfinzi(durvalumab)が尿路上皮細胞腫用薬として米国で承認されたと発表した。白金薬治療歴を持つ患者の二次治療として、10mg/kgを二週間に一回、60分点滴静注する。

PD-L1発現状況に関係なく使用することができるが、薬効のエビデンスとなった第2相試験では、PD-L1高発現サブグループ(被験者のほぼ半分が該当)のORR(客観的反応率)は26%、判定不能例では21%、低・無発現サブグループでは4%となっており、コストや副作用を考えると高発現に限定したほうが良いのではないだろうか。

ImfinziはPD-L1を標的とするIgG1カッパ型完全ヒト化抗体で、抗PD-L1抗体としてはロシュのTecentriq(atezolizumab)、独メルク/ファイザーのBavencio(avelumab)に次ぐ三剤目、PD-L1の受容体であるPD-1を標的とするMSDのKeytruda(pembrolizumab)やBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も含めれば5剤目。

膀胱癌は抗PD-1/PD-L1の得意分野で、5剤のうちTecentriqとOpdivoが既に承認、KeytrudaやBavencioは適応拡大申請中で審査期限は各6月と8月となっており、レッドオーシャン状態だ。

薬効を比較する上で厄介なのは、PD-L1発現検査の方法が異なること。Imfinziの試験はTecentriqと同様に、ロシュの子会社であるVentana Medical Systemsのアッセイを用いているが、高発現の評価方法が異なる模様であり、PD-L1サブグループだけのORRを比較することはできない。かといって、全ユニバースのORRは陰性患者の構成比に左右される可能性があり、使いたくない。何とかならないものか。

分かり易い違いは投与頻度。ImfinziとOpdivo、Bavencioは2週間に一回、ImfinziとTecentriqは3週間に一回。末期癌は元々のQOLが低いが、一次治療の患者が限られた日々を有効に過ごすことを考えると、医療施設に行く回数は少ない方が良い。

用量は尿路上皮細胞腫ではImfinziとBavencio以外は体重を問わず同一。体重に合わせて用量を変えるのは血中濃度を同一にするための工夫だが、太っている人は薬剤費が高くなり、また、使い残しが出やすいので、経済的には固定のほうが良い。抗PD-1/PD-L1抗体は用量反応相関があまり明確ではないので、統一する余地はありそうだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

造骨型骨粗鬆症治療薬が承認
(2017年4月28日発表)

Radius Health(Nasdaq:RDUS)はTymlos(abaloparatide)が閉経後骨粗鬆症治療薬としてFDAに承認されたと発表した。骨損壊リスクが高い患者に用いる。

甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)のアナログで、類似薬であるイーライリリーのForteo(teriparatide)と同様に、破骨細胞抑制というよりは造骨細胞を活性化するアナボリック作用を持つ。欠点もForteoと同様。レーベルには、癌原性試験でオスとメスのラットに臨床用量の4倍以上を投与したら骨肉腫が増加したと枠付き警告されている。マウスについては記されていないのでリスクがなかったと考えれば、二種類以上の動物で雄雌両方で増加という癌原性判定基準には該当しないことになるが、気持ち悪い。

Forteoと同様に、二年以上の連続投与は推奨しないことも枠付き警告された。

リンク: Radius社のプレスリリース






今週は以上です。

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2017年4月30日

2017年4月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功 
  • リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答 
  • アリアド、武田グループ入り後初の承認 
  • FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認 
  • FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認 
  • バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大 
  • EUでVarubyなどが承認 


【承認申請】


イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功
(2017年4月24日発表)

イーライリリーは、LY2835219(abemaciclib)の第三相乳癌一次治療試験の成功を発表した。ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後転移性乳癌にanastrozoleまたはletrozoleと併用する効果を検討したところ、中間解析で主評価項目のPFS(無進行生存期間)が偽薬群を有意に上回った。データは未発表。

abemaciclibは細胞周期の進行に係るサイクリン依存性キナーゼ4と6を阻害する小分子薬で、150mgを一日二回、経口投与する。先行品としてはファイザーのIbrance(palbociclib)が15年に、ノバルティスのKisqali(ribociclib)が今年3月に、米国で承認されている。イーライリリーは、追いかける側の定石通りに、サルベージと二次治療、そして一次治療の臨床試験を雁行的に進めており、今四半期中にサルベージと併用二次治療で、次四半期に今回の併用一次治療で、承認申請する計画だ。

先行二剤とは服用スケジュールが異なり、一日一回ではなく、休薬期がない。忍容性が優れる可能性もあるが、直接比較試験が行われたわけではないので、良くわからない。好中球減少症が用量制限的毒性にならないため効果が高い可能性があるので、データを見てみたい。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答
(2017年4月28日発表)

リジェネロンと開発販売パートナーであるサノフィは、Kevzara(sarilumab)を抗リウマチ薬として欧米で承認申請し、EUでは今月、CHMPの肯定的意見を得た。米国は、サノフィの充填最終製剤工場でcGMP上の欠陥が発覚し審査完了通知を受領したが、今回、指摘事項に回答、受理された。クラスIリサブミッションとなったので、2ヶ月内に審査結果が出るはず。

KevzaraはIL-6受容体アルファ・サブユニットを標的とする完全ヒト化抗体。日本発の抗体医薬である中外/ロシュのActemra(tocilizumab)の類薬だ。Kevzaraは皮注、Actemraも関節リウマチ用には皮注用製剤あり。投与頻度は二週間に一回、Actemraも同じだが100kg超の患者は毎週。Kevzaraは完全ヒト化抗体、Actemraはヒト化抗体。細かい違いはあるものの概ね同じようなものと考えておけばよいだろう。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認】


アリアド、武田グループ入り後初の承認
(2017年4月28日発表)

武田薬品は、2月に54億ドルで買収した米国の新興製薬会社、アリアド・ファーマスーティカルズが開発したAlunbrig(brigatinib)が米国で承認されたと発表した。ALK変異陽性の非小細胞性肺癌でcrizotinibに不応または不耐の患者に用いる。経口剤で、開始用量は90mgを一日一回、忍容性が良好なら8日目から180mgに増量する。

第二相試験では確認ORR(客観的反応率)が53%、メジアン反応持続期間は13.8ヶ月。脳転移患者では頭蓋内ORRが67%だった。主な有害事象は腎機能検査値異常、高血圧症、肺炎、発疹など。致死的な有害事象の発生率は3.7%で、肺炎や突然死、呼吸困難、肺不全、肺塞栓、細菌性髄膜炎、尿路性肺血症。

リンク: 武田のプレスリリース(アリアドのホームページ)

FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認
(2017年4月28日発表)

FDAは、ノバルティスのRydapt(midostaurin)をFLT3変異型AML(急性骨髄性白血病)の新患および末期全身性肥満細胞症に用いる薬として承認した。ノバルティスを始め多くの製薬会社の研究開発テーマであったFLT3阻害剤が遂に臨床デビューする。

AMLでは、cytarabineなどを用いる導入療法や地固め療法と併用で、第8~22日に50mgを一日二回経口投与する。第三相試験では全生存のハザードレシオが0.77と有意に改善した。末期全身性肥満細胞症では100mgを一日二回服用する。

主な有害事象は骨髄抑制、悪心嘔吐、粘膜炎など。妊婦は禁忌。肺障害が発生したら投与を中止する。

FLT(FMS-like tyrosine kinase)は造血前駆細胞の受容体チロシンキナーゼで、AMLの3割程度では、インターナル・タンデム・デュプリケーションなどの活性化変異が見られる。Invivoscribe TechnologiesがPMA(販売前申請)した検査アッセイも承認された。

全身性肥満細胞症は肥満細胞が増殖し肝臓などの臓器に障害を与えるとともに血球数や体重の低下が起きる。9割の患者では肥満細胞の増殖生存に係るKIT酵素の遺伝子変異が見られる。Rydaptは、他の多くの分子標的薬と同様に、KITも阻害する。

リンク: FDAのリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認
(2017年4月27日発表)

FDAはバイオマリン(Nasdaq:BMRN)が承認申請したBrineura(cerliponase alfa)を神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)治療薬として承認した。適応は幼児期後期に発症した3歳以上の患者だけで、2歳以下や早期発症型に対する効能や安全性は確立していない。

CLN2はTPP1遺伝子の変異によるトリペプチジル・ペプチダーゼ1の機能喪失/欠乏が原因で、ライソゾームで分解されるべき蛋白が蓄積する。典型的な経過は、2~4歳で発症し、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡する。米国では年間に20人の新生児が罹患と推定されている。

Brineuraは遺伝子組換え型ヒト・トリペプチジル・ペプチダーゼ1。第1/2相単群試験で24人に二週間に一回、300mgを4時間半かけて脳室内点滴投与したところ、運動・言語機能の評価スコアが48週間で0.43単位しか悪化しなかった。自然歴は2.1単位悪化と推定されている。FDAはリリースの中で症候性小児の歩行能力喪失を遅らせる薬は初と記しており、対照試験ではないが十分なエビデンスと評価したのだろう。主な治療関連深刻有害事象は過敏反応と点滴反応。

BrineuraはEUでもCHMPが今月、肯定的意見を纏めた。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイオマリンのプレスリリース

バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大
(2017年4月27日発表)

FDAはバイエルのStivarga(regorafinib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に適応拡大した。同社のNexavar(sorafenib、和名ネクサバール)による治療を既に受けた患者が適応になる。肝細胞腫用薬はNexavarが07年に適応拡大承認されて以来、10年ぶり。

StivargaはNexavarと類似した構造のVEGF受容体拮抗剤。Nexavarはオニキス・ファーマスーティカル(後にアムジェンが買収)とのras共同研究の成果で、オニキスにロイヤルティや利益シェアを払う必要がある。Stivargaは、バイエルは当初、独自に創製と主張したが、結局、オニキスへの支払いを免れることはできなかった。それでも、Nexavarより特許失効が遅いので、Stivargaを優先するメリットがある。

第三相試験ではメジアン生存期間が10.6ヶ月と偽薬群の7.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62と有意に改善した。

日本でも昨年10月に申請され、迅速審査指定を得ている。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイエルのプレスリリース

EUでVarubyなどが承認
(2017年4月26日発表)

EUの薬品承認審査機関であるEMAの医薬品専門家委員会、CHMPが2月と3月に肯定的意見を纏めた薬が続々と承認された。

まず、Tesaro(Nasdaq:TSRO)のVaruby(rolapitant)。NK-1受容体拮抗剤で、化学療法薬に誘発されて分泌されるサブスタンスPが脳の嘔吐中枢を刺激するのを防ぐ。中高度催吐性を持つ抗癌剤を施行する時に、即効性制吐剤である5-HT3受容体拮抗剤やdexamethasoneと併用すると、遅発性悪心嘔吐を抑制することができる。

米国では今年1月に審査完了通知を受領した。

NK-1受容体拮抗剤の第一号であるMSDのEmend(aprepitant、和名イメンド)と異なり3A4相互作用が小さい長所を持つが、発売が10年以上遅れたので市場性は限定的だろう。

Opko Health(NYSE:OPK)がシェリング・プラウ(後にMSDと合併)から資産取得し、MGI Pharmaで5-HT3受容体拮抗剤Aloxi(palonosetron)を開発したメンバーがエーザイ買収を機に独立して設立したTesaroに独占開発生産販売権を供与した。

リンク: Tesaroのプレスリリース(4/26付け)

次に、シャイアーのNatpar(甲状腺ホルモン、遺伝子組換え)は15年に52億ドルで買収したNPS Pharmaceuticalsの開発品。NPSは骨粗鬆症治療薬として欧米で承認申請したが、米国では承認されず、欧州では06年にPreotactという製品名で承認されたものの14年に商業上の理由で承認返上。慢性副甲状腺機能低下症に伴う低カルシウム血症の治療薬として出直した。米国では15年に限定的な内容で承認され、今回、EUでも条件付き承認された。

リンク: シャイアーのプレスリリース(4/26付け)

適応拡大では、Darzalex(daratumumab)を多発骨髄腫の二次治療に用いることが承認された。セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide )若しくはジョンソン・エンド・ジョンソン/武田薬品のVelcade(bortezomib)と、dexamethasoneを三剤併用する。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.37~0.38と、二剤併用のみより有意に優れていた。

Darzalexはジョンソン・エンド・ジョンソンがデンマークのジェンマブからライセンスした抗CD38完全ヒト化抗体。EUでは16年にRevlimidのような免疫調節薬及びVelcadeを既に使った患者に単剤投与するサルベージ用途で承認された。

リンク: ジェンマブのプレスリリース(4/28付け)

BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)は頭頸部扁平上皮腫に適応拡大。白金ベースのレジメンによる治療中・治療後に進行した患者に用いる。3mg/kgを2週間に一回投与する。第三相試験では延命効果が医師が選んだ薬(Erbitux(cetuximab)など)を投与した群を有意に上回った。

リンク: BMSのプレスリリース





今週は以上です。

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