2016年9月25日

2016年9月25日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ノバルティス、ジカディアの一次治療試験が成功 
  • ルンドベック/大塚のアルツハイマー病試験がフェール 
  • JNJ、抗IL-6抗体を承認申請 
  • PharmaMar、Aplidinを承認申請 
  • ニューロン、safinamideを再承認申請 
  • オプジーボ、EUで膀胱癌に承認申請 
  • FDA首脳陣が筋ジストロフィー用薬を承認 



【新薬開発】


ノバルティス、ジカディアの一次治療試験が成功
(2016年9月23日発表)

ノバルティスは、Zykadia(ceritinib、和名ジカディア)の第三相ステージIIIB/IV変異ALK陽性非小細胞性肺癌の一次治療試験成功を発表した。Alimta(pemetrexed)とプラチナ薬を併用しAlimtaは維持療法も施行する標準療法群と比べて、第三者査読によるPFS(無進行生存期間)が有意に上回った。データは今後の学会で発表される見込み。

ALK阻害剤では第一号のXalkori(crizotinib、和名ザーコリ)が変異ALK陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌一次治療試験でAlimta・プラチナ薬ダブレットを負かしている。第二号のZykadiaにはXalkoriに挑戦してほしいところであり、勝算はあるのではないかと思われるが、今回の試験はXalkoriの通った道を追随しただけだ。

中外が開発し海外ではロシュが販売するALK阻害剤、Alecensa(alectinib)は、日本の同様な一次治療試験でXalkoriを負かしている。海外の患者にも当てはまるか、不透明なところがあるが、今のところはAlecensaがややリードしていると言えるだろう。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ルンドベック/大塚のアルツハイマー病試験がフェール
(2016年9月22日発表)

ルンドベックは、アルツハイマー病向けに開発を進めているLu AE58054(idalopirdine)の最初の第三相試験がフェールしたと発表した。donepezil服用中の軽中度アルツハイマー病の患者に偽薬、30mg、または60mgを一日一回、24週間に亘って経口投与し、認知機能や生活機能などの変化を比較したが、主評価項目のADAS-cogでも、二次的評価項目のADCS-ADL23などでも、効果が見られなかった。

Lu AE58054は選択的5HT6アンタゴニスト。同じ作用を持つコンパウンドはメディベーション(Nasdaq:MDVN)のDimebon(latrepirdine)は第三相試験がフェール。ワイス(現ファイザー)やグラクソ・スミスクラインの5HT6アンタゴニストも開発中止になった。GSKのintepirdineはAxovant Sciences社が権利を取得して第三相を実施中なので終わったわけではないが、全体としてみれば、あまり有望とは言えない分野である。

idalopirdineは第二相で効果の兆しを示したが、大きな効果ではなかった。しかも、肝機能検査値異常が見られたせいか、第三相では、第二相の30mg一日3回投与と比べて1/3~2/3の量しか使っていない。

第三相は三本あるので来年第1四半期に結果が出る残りの二本が成功なら承認の可能性が生まれるが、期待しにくいだろう。

idalopirdineは06年に買収したSaegis Pharmaceuticalsのコンパウンド。欧米や日本などでは大塚製薬と共同開発している。

リンク: ルンドベックのプレスリリース

【承認申請】


JNJ、抗IL-6抗体を承認申請
(2016年9月23日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、CNTO 136(sirukumab)を軽中度活性期リウマチ性関節炎の治療薬として米国で承認申請したと発表した。MTXやTNF阻害剤に十分に反応しない患者にMTXと併用、または、MTX不耐患者に単独で使用する。第三相では50mgを4週間に一回、または100mgを2週間に一回、皮注した。

米州はグラクソ・スミスクラインが、それ以外はジョンソン・エンド・ジョンソンが販売し、利益は折半する。

リンク: JNJのプレスリリース

PharmaMar、Aplidinを承認申請
(2016年9月22日発表)

スペインのPharmaMar社は、Aplidin(plitidepsin)をEUに承認申請したと発表した。再発性難治性多発骨髄腫に用いる。第三相試験でdexamethasoneと併用したところ、PFS(無進行生存期間)がdexamethasoneだけの群より35%向上した。

海洋生物由来の物質で、eEF1A2に結合してアポトーシスを誘導するとのこと。欧州の主要8ヶ国では中外製薬が共同販促権を持っている。

リンク: PharmaMarのプレスリリース

ニューロン、safinamideを再承認申請
(2016年9月22日発表)

ニューロン・ファーマシューティカルズ(SIX:NWRN)は、米国でXadago(safinamide)を再承認申請したと発表した。この選択的可逆的MAO-B阻害剤は、パーキンソン病薬としてEUで15年に承認されたが、米国は申請不受理や審査期間延長などの紆余曲折を経て、今年3月に審査完了通知を受領した。脳血管関門を通過するためFDAは乱用薬物依存試験の実施を求めたのだが、その後、考えを変えた模様であり、今回の再申請につながった。

追加的な臨床試験データや分析を提出する必要はないとのことだが、その割にはクラスII提出、審査期間6ヶ月である由なので、単純な話ではなさそうだ。

イタリアのZambonと開発販売提携しており、米国市場はZambonとUS WorldMeds社が販売する。日本はMeiji Seikaファルマがライセンスした。

リンク: Zambonのプレスリリース

オプジーボ、EUで膀胱癌に承認申請
(2016年9月20日発表)

BMSは、EUに抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)の適応拡大申請を行い受理されたと発表した。局所進行性で切除不能または転移性の尿路上皮細胞腫の二次治療薬として、白金薬の次の手段として用いる。第二相試験のORR(客観的反応率)に基づくもので、データは10月7日から11日にコペンハーゲンで開催されるESMO2016会議で発表される予定。

この用途は今年5月に米国で承認されたロシュの抗PD-L1抗体、Tecentriq(atezolizumab)と同じだ。TecentriqはPD-L1陽性腫瘍のほうがORRが高いが、陰性でも使うことが承認されている。BMSの上記の第二相試験も治験登録を読む限りではスクリーニングしていないので、検査不要となるのだろう。

リンク: BMSのプレスリリース

【承認】


FDA首脳陣が筋ジストロフィー用薬を承認
(2016年9月16日発表)

FDAは、Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)を承認した。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)でエクソン51スキッピングに応答する患者に用いる。臨床的な効用は未確立であるため、別途、2年間の臨床試験を行う必要があり、もしフェールしたら承認取消手続きに進むことになる。この臨床試験では承認用量より高量も検討する。

FDAの審査チームは承認に反対、Office of Drug Evaluation IのDirectorであるEllis Unger, MDも反対、4月に開催された末梢中枢神経系薬諮問委員会でも反対が賛成を上回ったので、承認はサプライズだ。CDER(小分子医薬品の審査組織)のヘッドであるJanet Woodcock, MDが鶴の一声で承認を決定。調停委員会は「現場」を支持したものの、今年FDA長官に就任したRobert Callif、MD、MACC、がWoodcockに軍配を上げた、という経緯のようだ。

eteplirsenはエクソン・スキッピングという新しいタイプの核酸医薬。筋ジストロフィーの多くはジストロフィン遺伝子に重複や欠損、置換があるが、ストップコドン形成のような変異ならば、eteplirsenをRNAの標的エクソンに結合させてスプライシングの過程で前後のイントロンとともに切り落とされるように仕向ければ、ある程度機能するジストロフィンが作れるようになるかもしれない。Exondys 51は51番目のエクソンを標的としており、DMD患者の13%程度に有効と推測されている。

審査チームや諮問委員が承認に反対した最大の理由は臨床的な効用が明確ではないことだ。他社と熾烈な開発競争を進めていたせいか、Sareptaはジストロフィン発現量検査アッセイの開発でも、臨床試験でも、稚拙・拙速だった。前者は新開発のアッセイを用いて試験をやり直したが、臨床試験は12人程度の小規模な試験で6分歩行テストが有意に改善しなかったにも関わらず、承認申請に向かった。同社の開発計画が適切でなかったことは現場、CDERヘッド、FDA長官の共通認識だ。

現場がCDERヘッドの指示に異議を唱えた理由は主に二点。第一は、ジストロフィン量と臨床効果の相関の仕方に関する見解の相違。現場は、ベッカー型筋ジストロフィー(短いがある程度機能するジストロフィンが産生され、症状がデュシェンヌ型より軽い)の所見から、ジストロフィン量が正常値の10%以上に改善すれば運動能力に好影響を与えることができるという閾値仮説を立てた。eteplirsenはそこまでの効果がないが、投与量を増やせば達成できると予測し、Sareptaに高量試験を行うよう提案した。

一方、CDERヘッドはeteplirsen程度の効果でも臨床的に意味のある効果をもたらすと予測した。FDA長官は、専門的な知識や判断を必要とする事例であることから、豊富な経験を持つCDERヘッドの判断に委ねる裁定を下した。

第二は、CDERヘッドの判断が科学やFDA法以外のノイズに左右されている可能性。患者団体のアピールや、Sareptaが新興企業で財務基盤が弱いために承認されなかったら開発中止になってしまうリスクなどである。CDERヘッドは審査チームが結論を出す前に承認書類を作成していた模様だ。FDA長官は、CDERヘッドが現場に口を出すのはいつものこと、通常は現場の判断が尊重されるが例外的な事例ではヘッドが覆すことが可能と判定した。

さて、希少疾患用薬は開発に金が掛かろうが必要最小限であろうが関係なく、高価である。Exondys 51は、体重25kgの患者で年間平均薬剤費が30万ドルとのこと。高量試験が成功すればもっと高くなるだろう。更に、Sareptaは今回の承認で希少小児疾患優先審査バウチャーを取得した。数億ドルで転売できるだろう。株価が示す通り、Sareptaの運命が大きく転換した。

リンク: FDAのリリース(9/19付け)
リンク: Sareptaのプレスリリース




今週は以上です。

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