2016年8月14日

2016年8月14日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA:BIA 10-2474の毒性はクラスイフェクトではない
  • アラガン、Vraylarの鬱病試験は一勝一敗
  • アストラゼネカ、MEK阻害剤の肺癌試験がフェール
  • イーライリリー、CDK阻害剤の中間解析は何もなし



【今週の話題】


FDA:BIA 10-2474の毒性はクラスイフェクトではない
(2016年8月12日発表)

FDAは、BIA 10-2474の臨床試験で発覚した毒性はこのコンパウンド固有のものであり、他のFAAH(脂肪酸アミド加水分解酵素)阻害剤にもあてはまるものではないとの見解を発表した。

BIA 10-2474はポルトガルのBial社の開発品。今年1月にCROであるバイオトライアル社がフランスのレンヌ大学で第一相反復投与試験を開始したところ、最初の被験者6人のうち一人が脳死、4人が入院した(2016年1月24日号参照)。

FAAH阻害剤は神経学的障害の治療薬として探索されており、ジョンソン・エンド・ジョンソンもJNJ-42165279の第二相鬱病・不安症試験を行っていたが、この事件の余波で中断を余儀なくされた。

FDAはEUやフランスの規制当局から情報を取得して今回の結論に至ったとのことなので、EMAやフランスのANSMも同じ意見なのだろう。他のFAAH阻害剤は治験停止命令解除になりそうだ。

リンク: FDAのリリース

【新薬開発】


アラガン、Vraylarの鬱病試験は一勝一敗
(2016年8月5日発表)

アラガン(NYSE:AGN)とハンガリーのGedeon Richterは、Vraylar(cariprazine)の二本目の難治性鬱病アジャンクト試験がフェールしたことを明らかにした。もう一本実施して成功なら適応拡大申請する考え。

VraylarはドパミンのD3受容体とD2受容体を選択的に部分作動するドパミン・システム・スタビライザー。04年にフォレスト(後にアラガンと合併)がGedeon Richterから北米の権利をライセンス、15年に統合失調症と双極障害I型の急性躁症状の治療薬として米国で承認された。

鬱病での開発は、複数の抗鬱剤を試しても改善しない難治性患者に追加投与した。一本目は一日2~4mgの範囲で決まった量を投与する固定用量方式で、成功。二本目は1.5~4.5mgの範囲で滴定する変動用量方式で、フェールした。鬱病の試験は偽薬効果が比較的大きく、承認されている薬でもフェールは珍しくない。Vraylarも三本目が成功すれば適応拡大承認の道が開けるだろう。

尚、日本では田辺三菱製薬がMP-214という開発コードでP2b/3統合失調症試験中。

リンク: アラガンのプレスリリース

アストラゼネカ、MEK阻害剤の肺癌試験がフェール
(2016年8月9日発表)

アストラゼネカは、AZD6244(selumetinib)の第三相試験がフェールしたと発表した。03年にArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)のMEK阻害剤、ARRY-142886をライセンスしたもので、変異krasを持つ非小細胞性肺癌の二次治療薬としてdocetaxelと併用したが、主評価項目のPFS(無進行生存期間)も、全生存期間の解析も、フェールした。

第二相ではPFSのハザードレシオが0.58、p<0.014と良さそうな結果が出たのだが、検出力の低い試験で偶々良い数値が出ても信頼性は低い。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

イーライリリー、CDK阻害剤の中間解析は何もなし
(2016年8月10日発表)

イーライリリーは、LY2835219(abemaciclib)の第三相乳癌試験についてアップデートした。中間解析が行われたが何もトリガーされず、17年に予定通り最終解析に向かう見込み。それとは別に、第二相試験に基づいて承認申請すべくFDAと相談中。

abemaciclibは細胞周期進行に関与するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4とCDK6を阻害する経口剤。ファイザーが15年に米国で発売したIbrance(palbociclib)、そしてノバルティスが開発中のLEE011(ribociclib)に次ぐ、サード・イン・クラスだ。何れも適応はエストロゲン受容体陽性でher2陰性の末期転移性乳癌で、アロマターゼ阻害剤または選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)と併用してシナジーを生む。

Ibranceは一次治療、letrozole(ノバルティスのフェマーラ)併用の第二相偽薬対照試験のデータに基づいて加速承認、同様な内容の第三相試験も成功した。LEE011も一次治療letrozole併用の第三相試験が中間解析で成功、年内に承認申請される見込み。

abemaciclibの第三相試験は複数、進行しているが、今回アップデートされたのはfulvestrant(アストラゼネカのフェソロデックス)併用二次治療試験。また、承認申請に用いられる第二相試験はホルモン療法だけでなく化学療法も経験した患者を対象に反応率を調べたもの(ORR19.7%、反応持続期間のメジアン値は8.6ヶ月だった)。開発が遅れている分、直接バッティングしない用途を最初のターゲットに据えている。

この第三相試験では、中間解析で成功認定するハードルが高く設定されている由であり、順当な結果なのだろう。わざわざ発表したのは、ノバルティスの第三相が中間解析で成功したためabemaciclibの中間解析に期待する声が高まっていたからかもしれない。

さて、abemaciclibの開発が成功すれば、やがては先行二剤と正面からぶつかることになる。特徴は二つあり、分かり易いのは他の二剤が一日一回経口投与であるのに対して、一日二回服用であること。臨床成績に反映されれば面白くなるのが、連続投与であること。CDK4選択性が高いためか、好中球減少症の用量制限毒性が見られないため、他の二剤のような3週間オン、1週間オフという間歇投与スケジュールは採用されていない。上手く行けば、休薬不要な分だけ効果が高まるかもしれない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース




今週は以上です。

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