2016年6月5日

2016年6月5日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO:オプジーボとヤーボイの併用は肺癌に有効 
  • ASCO:Keytrudaも併用データ発表 
  • ヴァーテックス、Orkambiを小児向けに適応拡大申請 
  • テバのハンチントン舞踏病用薬は審査完了 
  • バイオマリン、DMD用薬の開発を中止 
  • Fabry病の経口薬がEUで承認 
  • イムブルビカ、EUでCLL一次治療に承認


【新薬開発】


ASCO:オプジーボとヤーボイの併用は肺癌に有効
(2016年6月4日発表)

BMSは、非小細胞性肺癌で初めて薬物療法を受ける患者に抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)と抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)を併用した後期第一相試験の結果をASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表した。

OpdivoもYervoyも、活性化した免疫細胞を抑制する副刺激をブロックすることによって腫瘍に対する免疫の弱体化を防ぐ。標的が異なるのでシナジーが生まれる可能性があり、また、化学療法は免疫を弱体化させるものが多いので、併用するなら免疫強化療法同士のほうが良いような感じがする。

今回のデータを見ると、PD-L1発現度が低いとモノも併用も効果はそれほどでもないが、発現度が高まるにつれてOpdivoモノセラピーだけでなくYervoy併用による上乗せも大きくなっている。シナジーの表れなのかもしれない。症例数が少なく、モノセラピー群は無作為化割り付けではないので、今後の検証が必要だろう。

この二剤を単純に併用すると毒性が高まり多くの患者が脱落してしまう。試行錯誤を経て、この試験ではOpdivoを3mg/kg、2週間に一回投与し、Yervoyは1mg/kgを6週間に一回投与する群と同量を12週間に一回投与する群をテストした。結果は、cORR(確認客観的反応率)が各39%と47%となった。Opdivo単剤投与群は23%だった。グレード3以上の治療関連有害事象発生率は各33%と37%で、単剤群は19%だった。

併用は12週毎のほうが数値が良いが、BMSは6週毎を至適と結論。第三相試験では、Opdivoモノ、Opdivo2週間毎とYervoy6週毎、Opdivoと白金ベースダブレットの三剤併用の三レジメンを標準療法である白金ベースダブレットと比較する予定。

さて、PD-L1発現度合とcORRの相関性を見ると、1%未満の症例(各群7~14人)では6週毎群は0%、12週毎群は30%、モノセラピーは14%。1~50%(21~32人)では夫々57%、57%、28%。50%以上(6~12人)は86%、100%、50%となっている。

どちらも高価な薬なので、世間の常識で考えれば安価な薬より効果が高くて当たり前だ。至適用法や最適な患者特性を十分に検討することが望まれる。Yervoyを6週毎より12週毎のほうが安上がりなので、本当に6週毎が至適なのか、未練が残る。

リンク: BMSのプレスリリース

ASCO:Keytrudaも併用データ発表
(2016年6月4日発表)

MSDの抗PD-1抗体であるKeytruda(pembrolizumab)も非小細胞性肺癌一次治療の後期第一相併用試験のデータがASCOで発表された。ORRは57%。数値が最も高かったのはcarboplatinとpemetrexedのレジメンに併用したコフォートで24人中17人、71%が反応した。代表的な一次治療レジメンであるcarboplatinとpaclitaxelに併用した群では52%、更にbevacizumabも併用した群では48%だった。

この試験でもPD-L1発現状況との相関性が探索された。発現度50%以上のほうがORRが高かったが差は大きくない。PD-L1発現度が応答性予測因子として有効か否かは、これまでにも数多く検討されてきたが、未だに判然としない。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認申請】


ヴァーテックス、Orkambiを小児向けに適応拡大申請
(2016年5月31日発表)

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)はOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)の対象年齢拡大申請がFDAに受理されたと発表した。昨年7月にF508変異ホモ接合型嚢胞性線維症で12歳以上の患者向けに承認されたが、6~11歳に拡大するもの。lumacaftorはCFTRコレクターと呼ばれており、嚢胞性線維症に関連するCFTRが細胞の表面に移行して機能するようエスコートする。ivacaftorはCFTRポテンシエイターと呼ばれており、機能を改善する由。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


テバのハンチントン舞踏病用薬は審査完了
(2016年5月31日発表)

テバ・ファーマシューティカルズ(NYSE:TEVA)は SD-809(deutetrabenazine)をハンチントン舞踏病用薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領したと発表した。代謝物について血中濃度を検討するよう求められた由。

SD-809はテバが昨年、35億ドルで買収したAuspex Pharmaceuticalsの開発品で、米国で08年に承認されたXenazine(tetrabenazine)の水素基の一部を重水素に置換することによって、作用の長期化や忍容性の向上、遺伝子多型による個人差や薬物相互作用の緩和を図ったもの。今回問題になった代謝物はtetrabenazineでも生成される由であり、おそらく、FDAは、前回解明しきれなかった謎に今度こそ答えを出すつもりなのだろう。

リンク: テバのプレスリリース

バイオマリン、DMD用薬の開発を中止
(2016年5月31日発表)

バイオマリン(Nasdaq:BMRN)は、Kyndrisa(drisapersen)と第一世代のフォローオンの開発中止を発表した。欧米で承認申請したが、米国は1月に審査完了通知を受領。EUもCHMPの5月の会議で否定的評価の見込みになった模様であり、承認申請撤回となった。

KyndrisaはDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)用薬で、ジストロフィン遺伝子のエクソン51が関係するタイプの患者向けに開発された。臨床試験ではジストロフィンが若干増えたがそれほどでもなく、運動機能の改善も限定的だった。忍容性面では命に係る血小板減少症や腎障害、点滴箇所反応などが見られた。

予想されたことだが、いざ発表されると、ため息が出る。類薬であるSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のAVI-4658(eteplirsen)の承認審査も遅れている。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

【承認】


Fabry病の経口薬がEUで承認
(2016年5月31日発表)

Amicus Therapeutics(Nasdaq:FOLD)は、Galafold(migalastat)がEUでFabry病用薬として承認され、ドイツで発売したと発表した。Fabry病はalpha-galactosidase Aの遺伝子(GLA)の変異により脂肪の一部が分解されずに組織に蓄積する。症状は区々だがやがて臓器障害を合併する。欧州では 2001年にジェンザイムのFabrazyme(agalsidase beta)が承認され、治療ができるようになった。

Galafoldは折り畳み異常が原因で作用すべき場所に移行できない蛋白をエスコートする、ファーマシューティカル・シャペロンという不思議な作用を持つ小分子薬で、一日二回の経口投与であることが長所。GLAの800種類の変異のうち269種類を持つ、35~50%の患者に有効。該当するかどうかは下記のサイトでチェックする。米国は臨床試験で臨床的効用を確認するようFDAに求められており、承認申請予定時期が延び延びになっている。

リンク: Amicusのプレスリリース
リンク: Galafold有効性情報サイト

イムブルビカ、EUでCLL一次治療に承認
(2016年5月31日発表)

アッヴィは、Imbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)を慢性リンパ性白血病(CLL)の一次治療に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。米国でも3月に承認されている。Btkという酵素を阻害する小分子薬で、EUでは14年にCLLとマントル細胞リンパ腫の再発治療に、15年には非ホジキン型リンパ腫の一種であるワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症向けに、承認されている。欧州ではジョンソン・エンド・ジョンソンが販売。

リンク: アッヴィのプレスリリース




今週は以上です。

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