2016年3月20日

2016年3月20日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イーライリリー、アルツハイマー病試験でまた主評価項目変更
  • ロシュ、抗PD-L1の承認申請をFDAが受理
  • バイエル、コバールトリイが米国で承認
  • EMAがZydeligに関する注意事項を発表


【新薬開発】


イーライリリー、アルツハイマー病試験でまた主評価項目変更
(2016年3月15日発表)

イーライリリーはアルツハイマー病の抗体医薬で第三相試験を実施しているが、主評価項目を変更することを決めた。解析開始前なので問題はないのだろうが、感じが悪い。

この抗可溶性アミロイドベータヒト化抗体、LY2062430(solanezumab)は既に二本の第三相試験が実施され、一本目はフェールした。事後的分析で軽度患者の認知機能に関しては効果が兆しが見られたため二本目の解析計画を途中で変更し、主評価項目の解析対象から中度患者を除外し軽度に限定、薬効評価は認知機能と生活機能の二種類だったが認知機能だけに限定した。しかし、二本目はこの解析でもフェールした。

今回の三本目は、軽度アルツハイマー病でアミロイドベータの蓄積が認められる患者2100人を組入れて偽薬または400mgを4週間に一回、静注し、18ヶ月間の病状変化をモニターする。当初の計画では主評価項目は二種類あり、認知機能の指標としてADAS-cog14、生活機能指標はADCS-iADLが採用された。前者のアルファは0.001、後者は0.045の計画だった。今回、ADCS-iADLを二次的評価項目に格下げしたのでADAS-cog14のアルファが増加し検出力がかなり高まったはずだ。

この試験の成否は本年末から来年にかけて判明するだろう。アミロイド仮説に基づく薬は直接的、間接的にブロックするワクチン、抗体、小分子薬の何れも第三相がフェールしており、検出力の多寡に関わらず、楽観はできないだろう。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認申請】


ロシュ、抗PD-L1の承認申請をFDAが受理
(2016年3月15日発表)

ロシュは、抗PD-L1ヒト化抗体のRG7446/MPDL3280A(atezolizumab)を米国で承認申請し、受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は9月12日。局所進行性・転移性の尿路上皮癌で白金薬の前治療歴を持つ患者の二次治療に用いる。ロシュのプレスリリースを読む限りではPD-L1陽性癌に限定してはいないようだ。エビデンスとなる第二相試験ではORR(客観的反応率)が15%で、PD-L1陽性癌では18%、強陽性(2以上)は26%、陰性は10%だった。

PD-L1の受容体であるPD-1をブロックする抗体医薬は既に小野薬品/BMSのOpdivo(nivolumab)やMSDのKeytruda(pembrolizumab)が黒色腫や肺癌などに承認されている。ロシュが膀胱癌をリードインディケーションに選んだのは、先行二品が未承認なので、優先審査を受けたり承認後も先に販促したりできるからだろう。スペクトラム自体は大差ないのではないか。

リンク: ロシュのプレスリリース

【承認】


バイエル、コバールトリイが米国で承認
(2016年3月17日発表)

バイエルはFDAがKovaltry(和名コバールトリイ)をA型血友病薬として承認したと発表した。遺伝子組換え型の全長ヒト血液凝固第VIII因子で、製造過程でヒトや動物由来の蛋白を用いていない点がコージネイトなど既存薬との違い。EUでは2月に承認。日本でも2月に第二部会を通過した。出血リスクの高い患者のルーチン予防に用いる時は週2~3回投与する。

リンク: バイエルのプレスリリース

【医薬品の安全性】


EMAがZydeligの副作用対策を発表
(2016年3月18日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)の抗癌剤、Zydelig(idelalisib)は欧米で慢性リンパ性白血病や濾胞性リンパ腫の二次治療に用いられているが、適応や併用法を拡大するための臨床試験で死亡者の増加が見られた。深刻な感染症が増えた模様だ。承認審査機関ではEMAが3月11日に、FDAも14日に、この事実を公表し注意喚起した。FDAによると、ギリアドは進行中の試験6本を全て中止した。

18日には、EMAの市販後監視委員会であるPRACが、暫定的対策を発表した。ニューモシスチス・イロヴェチ肺炎(旧称カリニ肺炎)のリスクがあるため全患者に抗生剤を投与せよ、感染症や白血球数をモニターせよ、全身性感染症の患者には用いない、の三点だ。

ZydeliqはPI3Kデルタという、造血細胞特異的に分布する、B細胞の活性化や増殖、生存に不可欠な酵素を阻害する経口剤。慢性リンパ性白血病のうち17p-del型やTP53変異型は既存の薬に反応しないためZydeliqを一次治療に用いることが認められていたが、今回、EMAは、二次治療に限定した。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: FDAのアラート(3/14付)



今週は以上です。

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