2016年1月17日

2016年1月17日号


【訂正とお詫び】


昨年12月20日付のジレニアの記事と1月10日付のTranslarnaの記事に誤りがありました。ジレニアの基底細胞腫報告は2151例ではなく151例です。Translarnaは核酸医薬ではありません。訂正・お詫びいたします。末尾に修正・再掲しましたのでご確認ください。

【ニュース・ヘッドライン】


  • bcl-2阻害剤の承認申請が欧米で受理 
  • レンビマをEUで腎細胞腫に適応拡大申請 
  • CometriqをEUで腎細胞腫に適応拡大申請 
  • 筋ジストロフィーの核酸医薬は承認されず 
  • コセンティクス、米で適応拡大 
  • 訂正:CHMPがジレニアの副作用リスクをアップデート 
  • 訂正:PTC、筋ジストロフィー治療薬の承認申請完了 


【承認申請】


bcl-2阻害剤の承認申請が欧米で受理
(2016年1月12日発表)

アッヴィは、ロシュ/ジェネンテックと共同開発しているABT-199/RG7601/GDC-0199(venetoclax)を欧米で承認申請し、受理されたと発表した。米国は優先審査される。慢性リンパ性白血病の二次治療薬で、予後が悪く既存薬の有効性が低い17番染色体短腕(17p)欠損に用いることもできる。EUではTP53変異にも有効と明記するよう求めている模様だ。

慢性リンパ性白血病の多くで過剰発現し、腫瘍のアポトーシス抵抗性を強化するbcl-2を選択的に阻害する小分子薬。アッヴィがアボットからスピンアウトする前の07年にジェネンテックと結んだbcl-2阻害剤領域での共同開発提携の産物。今回のプレスリリースは三社がそれぞれに出しているが、申請者はアッヴィのようだ。

承認申請の根拠となった第二相単群試験では、再発性難治性の患者107人(ほぼ前例17p欠損型)に一日一回、経口投与したところ、第三者委員会の査読に基づくORR(客観的反応率)が79%と良好な結果が出た。完全反応率(骨髄の血球数の回復が不完全でも可)は7.5%。1年生存率は86%だった。G3以上の有害事象は骨髄抑制や感染症。有害事象による死亡は4例で卒中、敗血症、心肺不全、肝障害。

腫瘍壊死症候群のリスクがあるため、低量で開始して5週間かけて一週間ごとに増量する。

リンク: アッヴィのプレスリリース

レンビマをEUで腎細胞腫に適応拡大申請
(2016年1月12日発表)

エーザイはEUでLenvima(lenvatinib、和名レンビマ)を腎細胞腫の二次治療に用いる適応拡大申請を行った。加速審査を受ける。

放射性ヨウ素に反応しない進行性分化甲状腺癌に承認されているが、患者数が少ないので一つ一つ適応を増やしていく必要がある。腎細胞腫はLenvimaのようなVEGF受容体阻害剤の代表的な用途で、ファイザーのSutent(sunitinb)を一次治療に、別のVEGF受容体阻害剤を二次治療に用いることも珍しくない。承認されれば対象患者が増加するが競合薬も増加することになる。

承認申請の根拠と推定される第二相試験では、24mg群、既承認薬であるeverolimusを投与する群、10mgとeverolimusを併用する群のPFS(無進行生存期間)を比較したところ、メジアン値が各群7.4ヶ月、5.5ヶ月、14.6ヶ月、everolimus群に対するハザードレシオはモノが0.61、併用は0.40となった。

今後の適応拡大は、肝細胞腫一次治療の第三相試験が年内に開票するのではないか。

リンク: エーザイのプレスリリース(和文)

CometriqをEUで腎細胞腫に適応拡大申請
(2016年1月11日発表)

エグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)はEUでCometriq(cabozantinib)を腎細胞腫の二次治療に用いる適応拡大申請を行った。加速審査を受ける。米国でも昨年12月に申請、優先審査を受ける。

切除不能な末期/転移性甲状腺髄様腫に承認されているが、患者数が少ないので一つ一つ、適応を増やしていく必要がある。期待されたのは結腸直腸癌だが第三相がフェールした。腎細胞腫はCometriqのようなVEGF受容体阻害剤の代表的な用途で、ファイザーのSutent(sunitinb)を一次治療に、別のVEGF受容体阻害剤を二次治療に用いることも珍しくない。承認されれば対象患者が増加するが競合薬も増加することになる。

承認申請の根拠となった第三相試験では、PFS(無進行生存期間)がメジアン7.4ヶ月と既承認薬であるeverolimusの3.8ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.58と、Lenvimaのモノセラピー群と同様な結果になった。延命効果は未だデータが成熟していないが良好なトレンドが出ている。

今後の適応拡大は、肝細胞腫二次治療の第三相試験が2017年に開票するのではないか。

リンク: エグゼリキシスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


筋ジストロフィーの核酸医薬は承認されず
(2016年1月14日発表)

バイオマリン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:BMRN)はKyndrisa(drisapersen)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬として欧米で承認申請したが、FDAからは審査完了通知を受領したと発表された。

類薬であるSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のAVI-4658(eteplirsen)も1月22日に開催される諮問委員会のブリーフィング用資料が一般公開され、FDAの評価が厳しいことが判明した。

drisapersenは13年に第三相試験がフェール、歩行能力の悪化を緩和する効果が不十分だった。その後、パートナーであったグラクソ・スミスクラインが提携解消したこともあり、私は、eteplirsenと共に、パイプラインとしてはdeadと考えていた。それだけにFDAが承認申請を認めたのが意外だったが、結局、FDAの評価はブレてはいなかったことになる。

この二剤はDMDの多くでみられるジストロフィン遺伝子の変異・欠損を克服することを目的に開発された核酸医薬。遺伝子変異・欠損によって正常なジストロフィンを作れなくなる障害を、51番目のエクソンのRNAに介入してこの部位も欠くmRNAを作らせることによって制する。欠損があることに変わりはないが、ある程度機能するジストロフィンが作られるようになる。

DMDの遺伝子変異には様々なパターンがありこの二剤が有効なのは13%程度の患者だけだが、日本でエクソン53を標的とする類薬(7%程度に有効か)が開発されているように、対象を少しずつ広げることは不可能ではないだろう。

問題は、第一に、臨床的な効用を検討する試験がフェールしたことだ。eteplirsenの臨床試験はdrisapersenよりはるかに小さく、デザインも厳格ではないため、会社側の主張を第三者が否定するのは困難だが、今回、FDAが否定してくれた。第二は、機能性ジストロフィンの増加を示すデータの評価。drisapersenの時と同様に、eteplirsenの試験もデータの信憑性が不十分と判定された。

今月、承認申請されたPTCセラピュティクス(Nasdaq:PTCT)のTranslarna(ataluren)も第三相試験がフェールした。EUで条件付き承認されたが、CHMPは当初、否定的意見を下しており、順風満帆ではなかった。第三相がフェールしたので、承認が取り消される可能性もあるだろう。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

【承認】


コセンティクス、米で適応拡大
(2016年1月15日発表)

ノバルティスは、FDAがCosentyx(secukinumab、和名コセンティクス)の適応拡大を承認したと発表した。14年に日本で、15年には欧米でも、プラク乾癬治療薬として承認された抗IL-17Aモノクローナル抗体だが、新たに、乾癬性関節炎や強直性脊椎炎に用いることが認められた。

留意点は用量・用法が同じではないこと。抗体医薬は用量反応相関の検討が難しく、至適用量が必ずしも明確ではない。Cosentyxの場合、乾癬の治療では300mgが標準用量で、患者によっては150mgでも足りる。週一回、4回の負荷用量を経てその後は4週間に一回投与する。乾癬性関節炎でも乾癬を併発する患者は同じだが、そうでない患者、および強直性脊椎炎の治療に充てる場合は、150mgが標準。負荷用量なしで最初から4週間に一回投与することも可。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

【訂正】


2015年12月20日号と2016年1月10日号の記述を以下の様に修正します。

CHMPがジレニアの副作用リスクをアップデート
(2015年12月18日発表)

CHMPはノバルティス/田辺三菱製薬のGilenya(fingolimod、和名ジレニア又はイムセラ)の副作用についてアップデートした。まず、進行性多病巣性白質脳症(PML)のリスク。同じ多発性硬化症の治療薬であるバイオジェンのTysabri(natalizumab)で有名になった免疫抑制剤の副作用で、Gilenya服用者のPML症例のうちTysabri経験者の疑い例が17例あるが、未経験者の確認例も3例あった。こうなると、Gilenya自体にリスクがあると考えざるを得ないだろう。

もう一つは基底細胞腫で151例が報告されている。Gilenyaのこれまでの服用状況は21.9万人年とのことなので、一年間服用すると1450人に一人が、10年だと145人に一人が発症する計算になる。癌の中では予後が比較的良い、治療できる癌だが、患者は注意が必要だろう。

リンク: CHMPのプレスリリース

PTC、筋ジストロフィー治療薬の承認申請完了
(2016年1月8日発表)

PTCセラピュティクス(Nasdaq:PTCT)は、Translarna(ataluren)の米国におけるローリング承認申請が完了したと発表した。核酸医薬で、特定のタイプのデュシェンヌ型筋ジストロフィーに用いる。欧州では一昨年に条件付き承認されている。

第三相試験の結果提出を以て完了したのだが、この試験自体はフェールしたので承認されるかどうか、不確か。類薬が二品、すでに承認審査中なので、先行事例になりそうだ。バイオマリン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:BMRN)のKyndrisa(drisapersen)はFDA審査官や諮問委員会の支持を得ることはできなかった。Sarepta(Nasdaq:SRPT)のAVI-4658(eteplirsen)は今月22日に諮問委員会の予定。

リンク: PTCのプレスリリース




今週は以上です。

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