2015年4月26日

海外医薬ニュース2015年4月26日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • AACR:オプジーボ、併用で効果も副作用も増強
  • AACR:Keytrudaのデータも続々と発表
  • MSD、Keytrudaを非小細胞性肺癌に適応拡大申請
  • アッヴィ、4型C型肝炎治療薬を米国で承認申請
  • CHMP、オプジーボなどの承認を支持
  • サイラムザが結腸直腸癌に適応拡大
  • CHMPもsofosbuvirとamiodaroneの相互作用を警告


【新薬開発】


AACR:オプジーボ、併用で効果も副作用も増強

(2015年4月20日発表)

BMSの末期黒色腫用薬、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)のYervoy(ipilimumab)併用一次治療第二相試験の結果がAACR(米国癌研究学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表された。標準療法であるYervoyに追加すると反応率やPFS(無進行生存期間)が有意に向上するという大変良い内容だが、過去の併用試験と同様に、重篤な副作用も増加した。別途第三相試験が進行中。

このCheckMate-069試験は、初めて治療を受ける切除不能のステージ3と4の黒色腫患者142人をYervoy・偽薬併用群と両剤併用群に無作為化割付して反応率を比較した二重盲検試験。Yervoyは承認用法である3mg/kgを三週間に一回、合計4回点滴静注。OpdivoはYervoy併用期間中は1mg/kgを三週間に一回、その後は二次治療で承認されている用法である3mg/kgを二週間に一回、点滴静注。

末期黒色腫の半分を占めるbraf変異型はbraf阻害剤が有効なので、野生型と分けて考える必要がある。最初に野生型に対する効果を見ると、反応率は偽薬群が11%、併用群は61%と大きく向上した。過去の試験ではYervoyが10%台、Opdivoは30~40%なので、相乗効果がありそうだ。特に注目されるのは、完全反応がゼロ対22%と大きく改善したこと。PFSのハザードレシオも0.4と顕著に向上した。

次に、braf変異型では反応率52%、完全反応22%となり、どちらのタイプにも有効であることが判明した。また、Opdivoのような抗PD-1抗体はPD-L1陽性腫瘍に特に有効な可能性があるが、この試験では陽性陰性どちらにも効果が見られた。

一方で、グレード3/4の薬物関連有害事象の発生率は24%対54%、それによる治験離脱は17%対47%と大きく上昇した。また、併用群では3人が薬物関連死した。うち2例は肺炎、1例は心室不整脈で、肺炎はこの二剤を使う時に特に注意すべき副作用の一つである。尤も、有害事象例の80%はステロイドの使用などによって改善/解消し、投与中止例でも薬効が見られたようである。

この試験の商業的なインプリケーションは、両剤を同じスケジュールで投与する有効性が示されたこと。Opdivoの承認用法・他の試験の用法は二週間に一回投与なので、もし今回の用法で十分な効果が見られなかった場合、元々三週間に一回投与する薬として開発されたMSDのKeytruda(pembrolizumab)に見劣りしてしまう。第三相試験の成功に期待が高まった。

効果の点では素晴らしいのだが、忍容性を改善できないものだろうか。元々、YervoyもOpdivoも至適用量が明確ではなく、OpdivoをメインにしてYervoyの用量を調整するとか、工夫の余地があるのではないか。Yervoyのコストは4回投与で12万ドル、Opdivoは最初の4回分が8000ドル程度、その後は月1.2万ドルなので、減量できれば財布の負担も軽くなる。

尚、OpdivoはEUでCHMPの肯定的意見を獲得した(後述)。

リンク:BMSのプレスリリース

リンク:NEJMの治験論文(オープンアクセス)

AACR:Keytrudaのデータも続々と発表

(2015年4月19日発表)

最近の癌学会は抗PD-1抗体の一色に染まった感があるが、AACRではMSDのKeytruda(pembrolizumab)の様々な治験データも発表された。末期黒色腫の第三相Yervoy対照試験、非小細胞性肺癌の後期第一相試験、胸膜中皮腫の後期第一相試験などである。

まず、Yervoy対照試験。切除不能/転移性の黒色腫の一次/二次治療試験で、一次治療が65%を占めた。Keytrudaの承認用法は二次治療(braf変異型の場合は三次治療)として2mg/kgを三週間に一回、30分点滴静注だが、この試験では10mg/kgを二週間に一回投与する群と、同じく三週間に一回投与する群を設定し、Yervoy群と比較した。主評価項目はPFSと全生存期間。前者は一回目の中間解析で目的を達成、後者も二回目の中間解析で達成した。

PFSのメジアン値は各群、5.5ヶ月、4.1ヶ月、2.8ヶ月となり、Yervoy比ハザードレシオは二群とも0.58、統計的に有意だった。全生存期間の解析もハザードレシオが各0.63、0.69となり統計的に有意。各群の1年生存率は74.1%、68.4%、58.2%だった。反応率は各33.7%、32.9%、11.9%。投与頻度は二週に一回でも三週に一回でも効果は大差なさそうだ。サブグループ分析では、braf変異型にも有効性が見られたが、PD-L1陰性癌では、症例数が少ないせいか、有意な差は見られなかった。

グレード3以上の治療時発現有害事象の発生率は各13.3%、10.1%、19.9%。Yervoy群は結腸炎や下垂体炎などの発生率が高かった。

BMSは自社製品であるYervoyと比較するよりは併用法を探る方が有利であり、抗PD-1のモノセラピーの開発はMSDに期待せざるを得ない。直接比較試験が成功したのは朗報だが、効果はOpdivoの併用データの方が良さそうに見える。現状では、併用をチャレンジして忍容性面で問題があれば抗PD-1のモノセラピーに切り替えるのがベスト、ということになりそうだ。

最近の画期的新薬は異常に高価なので話題が学会発表だろうが何だろうが費用の話をせざるを得ない。Keytrudaは2mg/kgを三週間に一回という用法でOpdivoと同程度の価格が付けられた。10mg/kgだと月8万ドルになってしまうので、もしこれが至適用量ならば、価格体系の見直しは必至だろう。

リンク:MSDのプレスリリース

リンク:NEJMの治験論文(オープンアクセス)

MSDはKeytrudaを非小細胞性肺癌の二次治療薬として米国で適応拡大申請したと発表した。この根拠となったのがAACR/NEJMで発表された500人規模(!)の後期第一相試験だ。用法は10mg/kgを二週間に一回と三週間に一回などをテストしたが、効果は同程度であった模様で、用法毎のデータは公表されていない。

反応率は19.4%だったが、薬効に関する主評価項目であるPD-L1陽性細胞の比率が50%以上の患者では45%、メジアン反応持続期間12.5ヶ月だった。一方、1~49%の患者では16.5%、1%未満では10.7%だった。各サブグループのメジアンPFSは6.3ヶ月(うち一次治療患者は12.5ヶ月、二次治療は6.1ヶ月)、3.3ヶ月、2.3ヶ月、メジアン生存期間は未到達、8.8ヶ月、8.8ヶ月となっている。グレード3以上の有害事象の発生率は9.5%、うち9例(1.8%)が肺炎で、一人は死亡した。

MSDが検査した患者のうち、癌細胞の50%以上でPD-L1が発現していたのは23%だった。肺癌二次治療で反応率が45%というのは高く、このサブグループにとっては特に有効と言えそうだ。1~49%の患者(38%)の反応率も悪くないが、PFSや全生存期間は1%未満とそれほど違わないので、臨床的な意義は良く分からない。1%未満の反応率も悪くはないが、実薬対照試験のデータも見てみたいものだ。

判定はDAKOのIHC法検査を用いており、MSDの適応拡大申請に合わせてPMA(医療機器の承認申請)が行われた。非小細胞性肺癌はEGFRやALKなどの遺伝子変異を調べて最適な治療法を選択する手法が普及しているが、PD-L1検査が加わることになる。

MSDのプレスリリースは承認申請の範囲について言及していないが、DAKOのPMAには言及しているので、おそらく、50%以上のサブグループだけなのだろう。それでもEGFR変異やALK変異より頻度が高いので、一次治療における治療効果が他の治療法より高いことが将来、立証されたならば、最初にPD-L1を検査し、陰性なら他の検査を行うプロトコルになりそうだ。

リンク:MSDのプレスリリース

リンク:NEJMの治験論文(オープンアクセス)

抗PD-1はIL-2やインターフェロン、Yervoyなどの既存の免疫強化療法と比べて効果が高く、また、様々な癌に効果がありそうなことが魅力だ。AACRではPD-L1陽性の末期胸膜中皮腫に反応率が28%、疾病安定化率48%であったことが発表された。数十人の小規模な試験だが、有効な薬が少ないので注目できる。

リンク:MSDのプレスリリース

抗PD-1抗体はBMS/小野薬品連合とMSDが開発競争を繰り広げているが、受容体ではなくレガンドをブロックする抗PD-L1抗体でも、ロシュ、アストラゼネカ、独メルク/ファイザー連合などが鎬を削っている。三番手、四番手の会社は先行会社の開発が進んでいない疾病に重点を置くことになるが、それにしても、第三相試験の対象は膀胱癌やトリプルネガティブ乳癌など多彩だ。臨床初期試験では頭頸部癌や胃癌、腎細胞腫、結腸癌などでも効果のシグナルが出ている。

併用薬の候補も多彩で、開発担当者に掛かる負荷や必要資金は大きいだろう。そのせいか、併用候補のメーカーとの開発提携が活発化している。更に、セルジーンはアストラゼネカのMEDI4736を血液学領域で開発する権利を取得した。同社の医薬品・開発品との併用試験が狙いだ。ファイザーが、決して先行しているとは言えない独メルクと開発提携したように、抗PD-1/PD-L1は製薬会社にとって無視できない分野になった。

【承認申請】


MSD、Keytrudaを非小細胞性肺癌に適応拡大申請

(2015年4月19日発表)

上記のように、MSDは抗PD-1抗体のKeytruda(pembrolizumab)を非小細胞性肺癌の二次治療薬として米国で適応拡大申請した。

リンク:MSDのプレスリリース

アッヴィ、4型C型肝炎治療薬を米国で承認申請

(2015年4月23日発表)

アッヴィは、ombitasvirとparitaprevir、ritonavirの合剤を遺伝子型4型の慢性C型肝炎の治療薬として米国で承認申請し、受理されたと発表した。日米欧は1型が多く、4型は米国の場合、6%を占めるだけ。後期第二相試験ではribavirin併用で12週間治療したところ、全員が持続的ウイルス学的奏効(SVR12)を達成した。

この合剤はEUでも4型向けに承認されている(製品名はViekirax)。日本では1型慢性C型肝炎に承認申請され、迅速審査指定された。また、米国ではこの合剤とdasabuvir錠をセットにしたものがViekiraパックとして1型向けに販売されている。

ombitasvirはNS5A阻害剤、paritaprevirはNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、ritonavirはCYP3A4阻害剤、dasabuvirはNS5Bポリメラーゼ阻害剤。ritonavir以外の三剤はウイルスのゲノムに含まれる複製に必要な酵素を阻害し、ritonavirはparitaprevirの代謝を遅らせて作用を長期化する。

リンク:アッヴィのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、オプジーボなどの承認を支持

(2015年4月24日発表)

欧州医薬庁EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは4月の会議でBMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU加盟国などで承認されることになる。

リンク:CHMPのプレスリリース

Opdivoは、Tセルの抑制刺激受容体であるPD-1に結合して、腫瘍細胞のPD-L1が結合して抑制するのを妨げる。適応は末期黒色腫。一次治療試験では1年生存率が73%とdacarbazineを投与した群の42%を上回った。二次治療試験では反応率が31%と化学療法群の10%を上回った。米国ではMSDのKeytrudaが先に承認されたが、EUはBMSが先になりそうだ。

小野薬品とメダレックスが共同開発、BMSは後者を買収してこの超大型薬候補を入手した。BMSはTセルの副刺激受容体や抑制刺激受容体の研究に基づいてYervoyや抗リウマチ薬Orencia(abatacept)の開発に成功しており、この分野では抜群の存在感を持っている。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:BMSのプレスリリース

第一三共のXa阻害剤、Lixiana(edoxaban)も肯定的意見を受けた。適応・効能は非弁性心房細動で脳卒中や全身性塞栓イベントのリスクが高い患者のリスク削減と、急性症候性深静脈血栓や肺塞栓の治療と再発予防。日米では販売されているがEUで承認されるのは初になる。先行品が多いので競争は激しいだろう。

リンク:CHMPのプレスリリース

Vanda(Nasdaq:VNDA)のHetlioz(tasimelteon)も非24時間睡眠覚醒障害の治療薬として肯定的意見を受けた。一日は24時間だが人間の体は25時間サイクルである模様。日の光を浴びることにより時間を調整するが、全盲の人は調整ができずにこの疾患になりやすい。Heltliozはメラトニン作用剤で、夜間の睡眠時間を長期化し昼間は減らす。04年にBMSからライセンスしたもの。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:Vandaのプレスリリース

一方、BiovestのLympreva(dasiprotimut-T)は否定的意見となった。患者のリンパ腫細胞から作製した自家細胞療法で、BiovaxID名で知られている。濾胞性非ホジキン型リンパ腫の導入療法後の地固め療法として申請されたが、CHMPは臨床試験のデザインや内容が適切ではなく、(治験が実施されたのは一昔前なので)今日の標準療法である抗CD20抗体を用いておらず、品質や生産体制にも懸念があると判定した。

Biovestも親会社のAccentiaも数年前に会社更生法の適用を申請したが、その後どうしているのだろうか?

リンク:CHMPのプレスリリース

【承認】


サイラムザが結腸直腸癌に適応拡大

(2015年4月24日発表)

イーライリリーは、抗VEGFR-2抗体のCyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)が末期結腸直腸癌の二次治療薬として米国で承認されたと発表した。胃癌二次治療にモノセラピーとpaclitaxel併用、そして非小細胞性肺癌の二次治療にdocetaxel併用が既に承認されており、四番目の適応・用法となった。

Avastinやoxaliplatin、5-FUなどによる一次治療を受けた患者の二次治療として、irinotecanなどのFOLFIRIレジメンと併用する。臨床試験ではメジアン生存期間が13.3ヶ月とFOLFIRIだけの11.7ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.85、p=0.023だった。レーベルでは出血、胃腸穿孔、創傷治癒の阻害などが枠付警告されている。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

【医薬品の安全性】


CHMPもsofosbuvirとamiodaroneの相互作用を警告

(2015年4月24日発表)

EUの薬品監督機関であるEMAの医薬品専門家委員会、CHMPは、ギリアド(Nasdaq:GILD)の慢性C型肝炎治療薬であるSovaldi(sofosbuvir、和名ソバルディ)とledipasvir配合剤Harvoniに関する警告を発した。Harvoni、またはSovaldiとBMSの慢性C型肝炎治療薬Daklinza(daclatasvir、和名ダクルインザ)の両剤を抗不整脈薬amiodarone(和名アンカロン)と同時使用すると、重度の徐脈や心ブロックが発生することがある。

これまでに8例が報告され、一例は死亡、二例はペースメーカーが必要になった。リスクを回避するために、両剤の同時使用はamiodarone以外の抗不整脈薬が不適な患者に限定し、もし使わなければならない場合はモニタリングを強化する。

内容的には3月29日号で書いたFDAの警告と概ね同じ。FDAとEMA、そして日本は医薬品に関する情報交換を密に行っており、今回のように、欧米の監督機関が相次いで警告を発することが珍しくない。

リンク:CHMPのプレスリリース

今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


0 件のコメント:

コメントを投稿