2015年2月8日

海外医薬ニュース2015年2月8日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • ファイザーがホスピーラを買収へ
  • ロシュのGazyva、非ホジキンリンパ腫試験も成功
  • JNJ、Yondelisを米国で再承認申請
  • 二次性性腺機能低下症用薬が承認申請
  • ファイザー、ゼルヤンツを乾癬に適応拡大申請
  • ファイザーの抗癌剤が米国で承認


【今週の話題】


ファイザーがホスピーラを買収へ

(2015年2月5日発表)

ファイザーはホスピーラ(NYSE:HSP)を170億ドル(純負債調整後)で買収することで合意した。ホスピーラは04年にアボットからスピンアウトした会社で、年商はファイザーの1割足らずだが、注射用ジェネリック薬で世界最大手、バイオシミラーの実績でも三本の指に入る。今回の買収で、GE薬の中でも価格競争がそれほど激しくない分野を強化することができる。

ホスピーラはバイオシミラー/類似薬では欧州で08年にepoetin zeta、10年にアムジェンのNeupogenのシミラー、13年にはジョンソン・エンド・ジョンソンのRemicadeのシミラーの承認を取得。承認審査制度の整備が遅れていた米国でも先月、アムジェンのEpogenのシミラーを承認申請した。シミラー/類似薬の年商は03年に1億ドルを超え、ノバルティスのサンド部門やテバと共に三強を構成している。

売上規模からみても分かるようにシミラーの普及率は未だ低い。名前が表わしているように、オリジナルの薬と同じという保証が無いからだ。米国では処方箋にオリジナルの製品名が記されていても薬局がGE品を渡すことができる。このため、GE薬メーカーは医療施設に情報伝達・販促活動を行う必要はない。しかし、バイオシミラーは現状では自動代替の対象にはならないので特許性新薬と同様なディテーリング活動が必要だ。新薬開発型製薬会社の事業構造に適した形態と言えるだろう。

今後、注目されるのは、ホスピーラが韓国のCelltrion社からライセンスした抗体医薬シミラーだ。上記のRemicadeシミラー以外に多くの開発品を持っているが、ファイザーもロシュのRituxanやAvastinのシミラーを臨床開発しているので、反トラスト規制機関が権利譲渡を求める可能性がある。ファイザーにとっても、自社開発品があるならライセンス品は要らないだろう。

バイオシミラーはMSD、イーライリリー、バイオジェン・アイデックなども積極的に取り組んでおり、今後、他の大手も参入するだろう。その手段としてCelltrion開発品を狙っている会社は多いだろう。

リンク:ファイザーのプレスリリース

アビガンがエボラ試験で良績

(2015年2月4日発表)

富山化学のAvigan(favipiravir、和名アビガン)がエボラの臨床試験で良好な結果を出しているとNew York TimesやBoston Globeなどが報じている。ギニアで行われている単群試験の中間解析(69例)に基づくもので、高ウイルス量患者では死亡率が30%だったが低ウイルス量症例では15%だった。

ギニアでは2628人の感染が確認され、1608人が死亡した(2月3日時点)。死亡率61%なので、確かにこの試験の死亡率は低い。但し、臨床試験は選ばれた医療施設で選ばれた医師が選りすぐられた患者を対象に行うので、現実の医療よりも良い成績が出るのが一般的である。偽薬対照二重盲検試験を行えばこのバイアスを回避できるのだが、エボラは致死的な疾患なので偽薬群を設けるのは倫理に反する可能性があり、採用されていない。結局、今回の報道内容では効くのかどうか分からない。

現地では、このデータを公表するリスクを懸念する声もあるようだ。上記の理由で薬効が確立したとは言えないのだが、これ以上の治験は止めて全ての患者に提供せよという圧力が高まる可能性があるからだ。

尤も、これは初めから予想されていた事態である。安全性面で問題が無い限り、全員に提供する方向に動かざるを得ないだろう。

リンク:New York Timesの記事

【新薬開発】


ロシュのGazyva、非ホジキンリンパ腫試験も成功

(2015年2月4日発表)

ロシュは、Gazyva(obinutuzumab)の第三相非ホジキンリンパ腫試験が中間解析で成功認定されたと発表した。適応拡大申請に向かう予定。

GazyvaはRituxan(rituximab、和名リツキサン)と同様にBセルの表面分子であるCD20を標的とする抗体で、違いはマウス由来のアミノ酸が少ないヒト化抗体であることと、フコースを除去することによって抗体依存性細胞傷害活性を高めていること。慢性リンパ性白血病の一次治療薬として13年に米国で、14年には欧州でも承認された。chlorambucilと併用した試験では、PFS(無進行生存期間)がRituxanを併用した群より有意に優れていた。

今回の試験は、潜行性(indolent)非ホジキンリンパ腫でRituxanに不応・進行した患者を組入れて、Treanda(bendamustine、和名トレアキシン)と併用で6サイクル治療し、更にGazyvaだけを最長2年間投与する手法をTreandaだけの治療と比較した。データは今後、発表される予定。

潜行性は完治し難いが進行が緩徐なので長期間の臨床試験が必要になる。RituxanよりGazyvaの方が効果が高いことを立証するには時間が必要だ。今回は直接比較ではないが、将来は、非ホジキンリンパ腫の一次治療でもGazyvaが優先使用薬になるだろう。

リンク:ロシュのプレスリリース

【承認申請】


JNJ、Yondelisを米国で再承認申請

(2015年2月3日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはYondelis(trabectedin)を再発性末期軟組織肉腫用薬として米国で承認申請し、優先審査指定を受けたことを発表した。

海洋生物由来のアルキル化剤で、スペインのPharmaMarから欧州以外の権利を取得したもの。欧州では07年に軟組織肉腫に、09年には卵巣癌に、承認されている。JNJは08年に米国で卵巣癌に承認申請したが、治験の薬効評価基準が曖昧で査読者の評価が食い違うことや、心肝毒性に対する懸念から、諮問委員会もFDAも立証不十分と判定した。

今回の申請は末期脂肪肉腫と平滑筋肉腫の二次・三次治療薬としての効果をdacarbazineと比較した試験に基づくもの。データは未発表。

リンク:JNJのプレスリリース

二次性性腺機能低下症用薬が承認申請

(2015年2月2日発表)

米国テキサス州の医薬品開発会社であるRepros Therapeutics(Nasdaq:RPRX)は、Androxal(enclomiphene citrate)を二次性性腺機能低下症用薬として米国で承認申請したと発表した。プレスリリースでは、太り過ぎの二次性性腺機能低下症で正常な精巣機能の回復を望む男性、と記されているので、対象患者が限られているのかもしれない。

Androxalは50年前から排卵促進剤として用いられている選択的エストロゲン受容体調節剤、clomiphene citrateのtrans異性体。

リンク:Repros社のプレスリリース

ファイザー、ゼルヤンツを乾癬に適応拡大申請

(2015年2月4日発表)

ファイザーは、Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)を中重度尋常性乾癬の治療薬として米国で適応拡大申請し、受理されたことを発表した。審査期限は10月とのこと。

XeljanzはJanus kinase(JAK)阻害剤。インターロイキンやインターフェロンの受容体の細胞内シグナル伝達に関与する酵素を阻害し、免疫抑制する。臓器移植後の拒絶反応防止効果を検討した霊長類試験でカルシニューリン阻害剤並みの強力な効果を示し注目されたが、免疫抑制に伴う副作用も強く、結局この用途の開発は進まなかった。代わりに低用量で抗リウマチ薬として開発・承認申請され、米国では12年に、日本は13年に承認されたが、欧州は感染症、癌、胃腸穿孔などの懸念から未承認となっている。

尋常性乾癬ではEnbrel(etanercept)対照試験も実施され、10mgを一日二回、経口投与した群は効果が非劣性だったが、5mg群はフェールした。そのせいか、5mgだけでなく10mgも申請されたが、リウマチでは5mgしか承認されなかった。痛みを伴うリウマチでも承認されなかったのだから、安全性のハードルが高い乾癬ではもっと難しいのではないか。5mgだけ承認された場合、Enbrelより効果が弱いので、経口剤でなければ駄目という患者以外にはあまり出番がないだろう。

リンク:ファイザーのプレスリリース

【承認】


ファイザーの抗癌剤が米国で承認

(2015年2月3日発表)

FDAは、Ibrance(palbociclib)を承認したと発表した。審査期限より2ヶ月早いスピード承認。適応は、閉経後女性の末期・転移性、エストロゲン受容体陽性、her2陰性の乳癌の一次治療。アロマターゼ阻害剤Femara(letrozole)と併用する。

第一/二相試験のデータに基づく加速承認。125mgを一日一回、21日連続で経口投与した後7日間休薬するスケジュールで施行したところ、PFSがメジアン20.2ヶ月とFemaraだけの群の10.2ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.488と有意に優れていた。

作用機序は細胞周期進行を調停するCDK4/6を阻害する。エストロゲン受容体の細胞内シグナル伝達にも関わるのでエストロゲン受容体を零落するアロマターゼ阻害剤とin vitroでシナジーがあった。

主な副作用は、好中球などの白血球や赤血球の減少とそれに伴う感染症や貧血、血小板減少や鼻血、疲労、悪心嘔吐、下痢、食欲不振、口内炎、脱毛、末梢神経症など。治療開始時やサイクル毎の全血球計算が推奨されている。

リンク:FDAのリリース

リンク:ファイザーのプレスリリース

今週は以上です。

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