2014年12月7日

海外医薬ニュース2014年12月7日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • バクスター、PEG化第VIII因子を承認申請
  • バイエルも第VIII因子新製剤を欧州で申請
  • アストラゼネカ、イレッサを米国で承認申請
  • FDA諮問委員会がアクタビスの抗菌剤を支持
  • ダクルインザは米国では審査完了
  • アムジェンの二重特異性抗体が米国で承認
  • ジャカビが真性赤血球増加症に承認
  • ベーリンガー、nintedanibが癌でも承認
  • イクスタンジ、EUでもプリキモ承認


【承認申請】


バクスター、PEG化第VIII因子を承認申請

(2014年12月1日発表)

バクスター・インターナショナル(NYSE:BAX)はBAX 855を米国でA型血友病治療薬として承認申請したと発表した。Advateの血液凝固第VIII因子をネクター(Nasdaq:NKTR)のポリエチレングリコール付与技術でPEG化し半減期を1.4~1.5倍に長期化したもので、12歳以上の第VIII因子補充療法経験者を組入れたルーチン予防試験では、週二回の投与で出血リスクを95%削減した。インヒビターの発生は見られなかった。

リンク:バクスターのプレスリリース

バイエルも第VIII因子新製剤を欧州で申請

(2014年12月4日発表)

Advateと並ぶ第VIII因子のベストセラー、Kogenateを販売するバイエルも複数の持効性製剤を開発しているが、まず、BAY 81-8973をEUでA型血友病の青少年・成人向けに承認申請した。Kogenateの後継品で、培養精製過程でヒトや動物由来の蛋白を用いていない。ルーチン予防試験では週3回の投与で出血リスクを96%削減、週2回投与群も93%削減、インヒビターの発生は見られなかった。

A型やB型の血友病で頻繁に出血する重度患者は、第VIII因子や第IX因子をルーチンに投与して予防するのが一般的になった。AdvateやKogenateのような既存の製剤は2~3日に一回、静注する必要があるが、バイオジェン・アイデックのEloctate(和名イロクテイト)を筆頭に、3~5日に一回で済む新薬が続々と申請・承認されている。

BAX 855やBAY 81-8973は既存勢力の反撃と言える。既存の製剤をベースにしているため、スイッチしやすいだろう。

中外製薬/ロシュも第IX因子と第X因子を架橋して後者を活性化するユニークな作用機序の二重特異性抗体、ACE910/RG6013を開発中。週一回皮注なので簡便だ。尤も、Eloctateも出血管理が良好な患者は週一回に減らせる可能性があるので、重要なのは、何割の患者が週一回で大丈夫なのかという直接比較試験のデータだろう。

リンク:バイエルのプレスリリース

アストラゼネカ、イレッサを米国で承認申請

(2014年12月2日発表)

EGFRチロシンキナーゼ阻害剤Iressa(gefitinib、和名イレッサ)は02年に日本で、03年には米国でも承認された。分子標的薬の第一号であり大きな注目を集めたが、その後の歩みは順調ではなかった。日本では間質性肺疾患が多発しメディアの攻撃を受けた。海外では薬効確認試験がフェールし、米国では05年に服用中の患者を除いて投与禁止となった。末期肺癌用薬なので事実上の承認取消である。その後、非小細胞性肺癌のうちEGFRが活性化変異しているタイプには有効であることが確立、09年にEUで初めて承認された。

アストラゼネカは、Iressaを米国でEGFR活性化変異型非小細胞性肺癌の一次治療薬として新薬承認申請し、受理されたと発表した。最初の承認申請から13年、長い回り道となったが、新薬開発に携わる全ての人々にとって重要な教訓だろう。その薬に最も応答するのはどのような患者なのか?腫瘍学では第二相試験に基づいて承認申請することが珍しくなくなったが、だからといって、大規模な試験を行ってファーマコジノミクスの臨床研究を疎かにしてはいけない。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がアクタビスの抗菌剤を支持

(2014年12月5日発表)

アクタビス(NYSE:ACT)は、FDA抗感染症薬諮問委員会がCAZ-104/CAZ-AVIを二つの適応症で承認することを支持したと発表した。院内感染肺炎も申請していた模様だが、支持されなかった。

CAZ-104/CAZ-AVIは米国では85年に承認された第三世代セフェム系抗生剤、ceftazidimeと、新開発のベータラクタマーゼ阻害剤avibactamの合剤で、前臨床でceftazidime耐性菌にも活性を示した。既に承認されている薬を使っているため、今回の承認申請はFDA法505(b)(2)に基づいて、ceftazidimeに関する過去のデータと合剤の第二相試験のデータを薬効・安全性のエビデンスとした。

第二相試験の対象はグラム陰性菌による複雑腹腔内感染症と複雑尿道感染症だが、ceftazidimeは下部気道感染症などにも承認されているため、アクタビスは院内細菌感染性肺炎の承認も求めたようだ。前者の二適応症については第三相試験が完了したところ。後者は第三相試験中。

これらの背景を考えると、今回の諮問委員会は、新薬開発・承認をスピードアップするためにどこまで譲歩できるかを問うたものと言えるだろう。

結果は、最初の二つの適応症については治療の選択肢が限られているあるいは代替手段がない場合に限定して、腹腔内感染症は12人の委員中11人が、尿道感染症は9人が、承認を支持した。一方、肺炎は、薬効確認試験が完了していないため、全員が反対した。腹腔内感染症試験で腎機能低下患者の死亡率が対照薬を投与した群より高かったことも影を落としたようだ。

avibactamはフォレスト社がアベンティスのスピンアウトであるNovexel社から北米の権利を取得したもの。フォレストは後にアクタビスと合併、Novexelはアストラゼネカに買収され、今日では北米ではアクタビスが、欧州などではアストラゼネカが開発している。この合剤はFDAから適合感染症製品指定を受けているため、様々な優遇策と、承認の暁には、優先審査バウチャーが供与されることになる。

リンク:アクタビスのプレスリリース

ダクルインザは米国では審査完了

(2014年11月26日発表)

BMSはDaklinza(daclatasvir、和名ダクルインザ)を慢性C型肝炎治療薬として承認申請し、日本やEUでは承認されたが、米国ではFDAから審査完了通知を受領した。

DaklinzaはNS5A複製複合体阻害剤で、NS3A/4プロテアーゼ阻害剤asunaprevir(和名スンベプラ)と一緒に平行開発・承認申請されたが、asunaprevirは米国では申請撤回となった。Ia型ウイルスに対する効果がやや弱いことが理由と推測される。FDAがDaklinzaを承認しなかったのは、asunaprevir以外の薬と併用した症例が少ないことが理由のようだ。そういえば、日本で承認された時も、この両剤の併用に限定されていた。

インターフェロンやribavirinを必要としないレジメンが続々と登場していることを考えれば、この二剤併用法の重要性は少なくともIa型に関しては低下した。日本のようにIb型が多い国以外では、他のプロテアーゼ阻害剤と併用試験を行って十分な有効性を示すことが肝要だろう。

リンク:BMSのプレスリリース

【承認】


アムジェンの二重特異性抗体が米国で承認

(2014年12月3日発表)

FDAは、アムジェンのBlincyto(blinatumomab)を前駆B急性リンパ性白血病用薬として承認した。承認申請の3ヶ月後、審査期限の5ヶ月前のスピード承認。再発性・難治性でフィラデルフィア染色体陰性の患者が適応になる。単群試験では32%の患者が完全寛解しメジアン6.7ヶ月持続した。致死的・命に係るサイトカイン放出症候群と脳症のリスクが枠付警告された。

12年にマイクロメット社を買収して入手した二重特異性抗体(BiTE抗体)で、BセルのCD19に結合する抗体可変領域と細胞傷害性Tセル(cTC)のCD3エプシロンに結合する抗体可変領域をプリペプチドで結合したもの。cTCは抗体受容体を持たないのでBiTE抗体で直接敵を教える。標的や、サイトカイン放出症候群のリスクがある点で、最近流行になりつつあるCAR-T(キメラ抗体受容体Tセル療法)と似ている。

Blincytoはアムジェンとアストラゼネカの日本における開発提携の対象。

リンク:FDAのリリース

リンク:アムジェンのプレスリリース

ジャカビが真性赤血球増加症に承認

(2014年12月4日発表)

FDAは、Jakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)を真性赤血球増加症(PV)に用いる適応拡大を承認したと発表した。PVは10万人に1~3人が罹患する希少疾患で、標準療法は瀉血、二次治療はヒドロキシウリア、Jakafiは三次療法で米国の対象患者は推定25000人。臨床試験では赤血球量管理成功・脾臓縮小奏効率が21%と、医師が選んだ治療法または支持療法のみを施行した群の1%を有意に上回った。日本でも適応拡大申請中。

JakafiはJAK1/2阻害剤で骨髄線維腫に承認されている。インサイト(Nasdaq:INCY)が開発、米国以外はノバルティスが開発販売。

リンク:FDAのリリース

リンク:インサイトのプレスリリース

ベーリンガー、nintedanibが癌でも承認

(2014年11月27日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはVEGFR阻害剤nintedaibを特発性肺線維症と癌の二領域で開発している。前者はOfevという名称で10月に米国で承認、11月にはEUのCHMPで承認支持を受けた。後者はEUだけで承認申請された模様だが、Vargatef名で承認されたことが発表された。適応は局所進行性、転移性、または局所再発性の腺腫非小細胞性肺癌の二次治療でdocetaxelを併用する。

第三相試験ではPFS(無増悪生存期間)がメジアン4.0ヶ月とdocetaxelだけの群の2.8ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.77、p=0.0193だった。全生存の解析もメジアン12.6ヶ月対10.3ヶ月、ハザードレシオ0.83、p=0.0359だった。サブグループ分析であるせいか、p値はあまり低くない。Alimtaを併用した第三相試験はフェールした。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

イクスタンジ、EUでもプリキモ承認

(2014年12月2日発表)

アステラス製薬はXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)の適応拡大がEUで承認されたと発表した。アンドロゲン枯渇療法に反応しなくなり化学療法もフェールした前立腺癌患者向けに承認されているが、新たに、化学療法が適応になる前の無症候性・軽度症候性患者に用いることが可能になった。米国でも9月に承認済み。

前立腺癌は進行が遅いことが多く、また、手術や放射線療法、抗アンドロゲン療法も有効だが、PSA値が再上昇し始めると次の治療手段を検討することが必要になり始める。高齢者が多いので副作用が比較的強い化学療法を施行するのは症状がある程度強くなってからになる。今回の承認で、状態がそれほど悪化していない患者に使うことができるようになったため、対象患者や治療期間が大きく増加する。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)が一足先に承認されているが、Xtandiはステロイド(prednisone)を併用しなくても良いので、出番が多そうだ。

リンク:アステラスのプレスリリース(和文)

今週は以上です。

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