2014年12月28日

海外医薬ニュース2014年12月28日号



☆☆☆ 来週はお休みします。皆様、良いお年を! ☆☆☆

【ニュース・ヘッドライン】

  • バイオクリストの抗エボラウイルス薬の霊長類試験
  • LAL欠乏症治療薬の承認申請が受理
  • 第二のDMD治療薬のローリング承認申請
  • バクスター、VW病治療薬を承認申請
  • オプジーボが米国でも承認
  • ノボの体重管理薬が米国で承認
  • ラピアクタが米国でも承認


【今週の話題】


バイオクリストの抗エボラウイルス薬の霊長類試験

(2014年12月23日発表)

バイオクリスト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:BCRX)は、エボラウイルス疾患の治療薬候補として期待されているBCX4430の非ヒト霊長類試験の結果を公表した。最初の試験としては良好だ。

この試験は、ウイルスに感染させてから30~120分後に偽薬、16mg/kg、25mg/kgの何れかを一日二回、14日間筋注し、41日間生存率を比較したもの。偽薬群の生存はゼロだったが、16mg/kg群は6頭中4頭、25mg/kg群は6頭全てが生存し、抗ウイルス作用が確認された。

現実の医療では感染したばかりの患者を治療する機会は少ない。感染者の体液に暴露した人をケアすることはあるが、これは治療ではなく暴露後予防と呼ばれる。従って、次のステップとしては、感染の数日後に投与を開始する試験を行うことが望ましい(そんな時間は無いという反論が出るかもしれないが)。因みに、ZMappの試験では感染後5日経って発症した後に投与しても十分な効果があった。

今回の発表で朗報は、Marburgウイルスの試験(15mg/kg)と大差ない16mg/kgでも効果が見られたこと。in vitroの力価は半分で、必要量の安全性マージンは10~50倍と言われていたが、もし16mg/kgで足りるなら副作用が大きく増加する心配は小さいだろう。尤も、15mg/kgがヒトに安全というエビデンスは無いので、今後に持ち越された探求課題であることに変わりはないのだが。

エボラでキチンとした薬効確認臨床試験を行うのは難しく、それだけに、非ヒト霊長類の試験は重要な代替的エビデンスだ。安全性についてはワクチンを含めて臨床試験が進行中なので、ある程度のアイディアを掴めるだろう。重病人よりも健常者の方が副作用を発見しやすいので、治療薬候補に関しては暴露後予防の臨床試験も実施した方が良いだろう。

リンク:バイオクリストのプレスリリース

【承認申請】


LAL欠乏症治療薬の承認申請が受理

(2014年12月23日発表)

Synageva BioPharma(Nasdaq:GEVA、米国マサチューセッツ州)は、リソソーム酸リパーゼ(LAL)欠乏症治療薬SBC-102(sebelipase alfa)の承認申請がEUに受理されたと発表した。加速審査を受ける。米国でも今月、ローリング承認申請が完了しており、来年夏にも承認されることになるだろう。

LAL欠乏症は常染色体性劣性リソソーム貯蔵疾患で、脂肪が肝臓や血管壁などに蓄積、吸収不良や成長不全、肝臓障害、アテローム硬化などを発症する。新生児の100万人に二人が発症、6ヶ月以内に死亡することが多い。

SBC-102は遺伝子組換え型LALで、日米欧で希少疾患用薬指定を受けている。小児と成人患者66人を組入れて1mg/kgを二週間に一回点滴投与した試験では、20週後に肝機能検査値が正常化した患者が偽薬群比有意に多かった。肝脂肪やLDL-Cも有意に減少した。また、急速進行型幼児を組み入れた試験では、9人中6人が12ヶ月時点で生存していた。

リンク:Synagevaのプレスリリース(PR Newswire)

第二のDMD治療薬のローリング承認申請

(2014年12月23日発表)

PTCセラピューティクス(Nasdaq:PTCT)は、Translarna(ataluren、開発コードPTC124)のローリング承認申請を米国で開始したと発表した。進行中の第三相試験の結果を来年第4四半期に提出して完了する考え。ライバルのProsenta(バイオマリンが買収する予定)も10月にdrisapersenのローリング承認申請を開始しており、開発競争が最終段階に入ることになる。

両剤はナンセンス変異型DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の治療薬として開発されている。DMDは男子の劣性遺伝性疾患で筋細胞膜の維持に必要なジストロフィンを十分に作れない。ナンセンス変異型は遺伝子の一部に翻訳中止箇所を示す塩基配列(ストップコドン)を持っているため、不完全なジストロフィンが作られる。

両剤はmRNAが翻訳される過程を攪乱しストップコドンが見過ごされるように仕向ける。その結果、不完全だがある程度機能するジストロフィンが産生されるようになる。DMDのうちナンセンス変異型は欧州では13%、米国は20%、イスラエルは50%を占め、欧米合計で4000人が治療対象と推定されている。

両剤ともジストロフィンを増やす効果が確認されているが、検査方法の妥当性に議論の余地があるようだ。臨床的な効用も不明確で、dripersenの第三相も、Translarnaの後期第二相も、6分歩行試験の成績を偽薬比有意に改善することができなかった。前者はGSK、後者はジェンザイムが開発提携していたが、何れも解消した。

希望が消えかけたが、今年8月にEUがTranslarnaを条件付き承認。FDAも両社が承認申請することを認めた模様だ。承認されても効果が不確かなら患者をぬか喜びさせるだけだが、まずはTranslarnaの第三相試験の結果を待つとしよう。

リンク:PTC社のプレスリリース

バクスター、VW病治療薬を承認申請

(2014年12月22日発表)

バクスター・インターナショナル(NYSE:BAX)は、米国でBAX111をフォン・ヴィレブランド(VW)病の治療薬として承認申請したと発表した。VW病は常染色体性遺伝子疾患で、罹患率は1~2%と高いが多くは症状が軽い。BAX111は初めての高純度遺伝子組換え型VW因子で、臨床試験では22人の患者の出血治療に成功。インヒビターや塞栓性疾患は見られなかったが、重篤な治療関連有害事象が1例あった(心拍数上昇と胸部不快感)。

リンク:バクスターのプレスリリース

【承認】


オプジーボが米国でも承認

(2014年12月22日発表)

FDAは、小野薬品/BMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を切除不能・転移性の黒色腫のサルベージ療法として承認したと発表した。BMSのYervoy(ipilimumab)と、BRAF-V600変異を持つ腫瘍の場合はBRAF阻害剤による治療を既に受けた患者が対象になる。第三相試験の中間客観的反応率(ORR)データに基づく加速承認で、審査期限より3ヶ月早いクリスマスプレゼントとなった。

活性化したTセルが発現する抑制刺激受容体、PD-1に結合するIgG4型完全ヒト化抗体で、癌細胞がPD-L1を結合させてTセルを抑制するのを妨げる。免疫強化療法はこれまでにIL-1やアルファ・インターフェロンが実用化されており、ORRは低いものの、反応した患者は効果が長期間持続する特徴がある。抗PD-1抗体はORRが上記の解析で32%と比較的高く、また、悪性黒色腫や腎細胞腫以外にも様々な癌に効果がありそうなことが長所だ。

一方で、免疫関連の有害事象も見られ、過去の様々な癌の試験では致死的な肺炎が574人中5人で発生した。結腸、肝臓、腎臓などの免疫関連有害事象も見られた。

Opdivoは小野がトランスジェニック・マウス抗体技術を持つメダレックスと共同で創製、BMSがメダレックスを買収したため両社の共同開発プロジェクトとなった。日本韓国台湾以外はBMSが販売する。報道によると、米国では月12500ドルで販売される模様。9月に同じ適応症で承認された抗PD-1完全ヒト化抗体、Keytruda(pembrolizumab)とほぼ同じだ。用法は3mg/kgを二週間に一回投与で、日本の用法である2mg/kg、三週間に一回より多い。

リンク:FDAのリリース

リンク:BMSのプレスリリース

ノボの体重管理薬が米国で承認

(2014年12月23日発表)

FDAは、ノボ ノルディスクのSaxenda(liraglutide)を肥満症、及び、高血圧や二型糖尿病、高脂血症などの疾病因子を持つオーバーウエートの患者の治療薬として承認したと発表した。二型糖尿病薬として承認されているGLP-1作用剤、Victoza(和名ビクトーザ)の高用量版で、1.2mg/1.8mgではなく3mg。

臨床試験では1年間の体重減少が偽薬群比4.5%大きかった。また、5%以上の減量に成功した患者の比率が62%と偽薬群の34%を上回った。16週間治療して4%以上減らなかったら成功する見込みが小さいので打ち切る。低カロリーダイエットと運動療法を併用する。

主な有害事象は悪心嘔吐。深刻な有害事象は膵炎、胆嚢疾患、腎障害、自殺思慮。心拍数が上昇することがあり、持続する場合は中止する。また、他のGLP-1作用剤と同様に、癌原性試験で甲状腺C細胞腫瘍が見られたがヒトに対するリスクは確立していないことが枠付警告された。FDAは、進行中の試験で乳癌や心血管疾患のリスクを評価するよう求めた。

リンク:FDAのリリース

リンク:ノボ ノルディスクのプレスリリース

ラピアクタが米国でも承認

(2014年12月22日発表)

FDAは、バイオクリストのRapivab(peramivir、和名ラピアクタ)を非複雑インフルエンザの治療薬として承認したと発表した。発症48時間以内の患者に600mgを15~30分で点滴投与する。上部気道症状などが原因で経口剤や吸入用薬を使えない患者に用いることが想定されている。

Tamiflu(oseltamivir)と同様なノイラミニダーゼ阻害剤。日本では2010年に承認されたが、米国の開発は難航、臨床試験フェールが続いた。直近では重症入院患者の第三相試験を行ったが中間解析で無益性が認定され、一転して、非複雑インフルエンザの治療薬として承認申請されることとなった。

FDAによると、臨床試験では体温が12時間早く正常化し、症状軽快も21時間早まった。主な有害事象は下痢。稀だが深刻な有害事象としてはスティーブンス・ジョンソン症候群のような深刻な皮膚反応が見られた。他のノイラミニダーゼ阻害剤と同様に幻覚や錯乱、異常行動が見られたが、薬のせいなのか病気のせいなのかは明らかではない。

重篤患者に対する効能が明確ではないので、出番は少ないだろう。需要の中心は国家備蓄用途と推測されているようだ。

リンク:FDAのリリース

リンク:バイオクリストのプレスリリース

今週は以上です。

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