2014年12月21日

海外医薬ニュース2014年12月21日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • GSK、帯状疱疹ワクチンの第三相が成功
  • ロシュ、二剤の第三相がフェール
  • ルンドベック、脳梗塞用薬の開発を中止
  • バイエル、A型血友病薬を米国でも承認申請
  • ジェネンテック、MEK阻害剤を承認申請
  • CHMPが幹細胞療法や体重管理薬などを支持
  • FDAがアッヴィの4剤併用抗HCV薬を承認
  • アストラゼネカ、PARP阻害剤が欧米で承認
  • MSDが買収する企業の抗生剤が米国で承認
  • アルコンの外耳炎用薬が米国で承認


【新薬開発】


GSK、帯状疱疹ワクチンの第三相が成功

(2014年12月18日発表)

グラクソ・スミスクラインは、帯状疱疹ワクチンHZ/suの第三相試験が良好な結果になったことを発表した。50歳以上の患者を組入れた試験で、帯状疱疹リスクを97.2%削減した。まだ進行中である模様であり、ヘルペス感染後疼痛を防ぐ効果があったのかは明らかではない。70歳以上を組入れた試験や免疫低下患者を組入れた試験も進行中。

帯状疱疹は潜伏している水痘ウイルスの再活動化が原因。加齢に伴い免疫力が低下すると発生しやすくなる。MSDの弱毒化生ワクチン、Zostavaxが06年に米国で発売されたが、生産が難しい模様で、数年前に供給不足になったことがある。

HZ/suはウイルスのgE抗原にAS01-Bアジュバントを添加したもの。AS01はAgenus(Nasdaq:AGEN)の植物由来の免疫刺激成分やMPL、リポゾームを含んでいる。

リンク:GSKのプレスリリース

ロシュ、二剤の第三相がフェール

(2014年12月19日発表)

ロシュは、抗癌剤とアルツハイマー病薬の第三相がフェールしたことを明らかにした。

まず、Kadcyla(ado-trastuzumab emtansine、和名カドサイラ)のher2陽性転移性乳癌一次治療試験がフェール。KadcylaはHerceptin(trastuzumab)の抗her2モノクローナル抗体に細胞毒を結合した抗体薬物複合体(ADC)で、二次治療試験でXeloda(capecitabine)とTykerb(lapatinib)の併用より優れた延命効果を示し、13年に日米欧で承認された。

今回の一次治療試験では、Kadcyla単剤群や抗2C4モノクローナル抗体Perjeta(pertuzumab、和名パージェタ)併用群のPFS(無進行生存期間)をHerceptinとタクサン系を併用する標準療法群と比較したが、どちらも有意な差は無かった。非劣性解析は成功したのでKadcylaの有用性が示されたことになるが、値段の違いを考えれば敢えて使う理由が無い。

不思議なのはPerjeta併用群だ。Perjetaは今回と同じ用途に承認されている。臨床試験ではHerceptinとTaxotere(docetaxel)の標準療法と比べてPerjetaも用いる三剤併用法は死亡リスクが34%小さかった。Kadcylaの効果がHerceptin・タクサン系併用と同じならば、Kadcyla・Perjeta併用レジメンの方が優れている筈だが、A+B+C>A+B、D=A+B、∴C+D>A+Bとはならなかった。

今回はTaxotere以外のタクサンも使用できたが、それが原因とも思えない。薬の相性の問題かもしれないし、治験のプロトコルや投薬実態に違いがあるのかもしれない。

リンク:ロシュのプレスリリース

もう一つは、抗アミロイド・ベータHuCAL完全ヒト化抗体、R1450(gantenerumab)の前駆アルツハイマー病試験。中間無益性解析で独立データ監視委員会が無益性を認定、中止が決まった。今年開始された、中度アルツハイマー病の大規模な第三相試験は続行される。

アミロイド仮説は若年性アルツハイマー病で見られる遺伝子変異が起源のようだが、どういう訳か、第三相試験は加齢性患者が対象になっている。多くの小分子薬や抗体医薬の第三相がフェールしたのだから、原点に回帰して、若年性患者の試験を行うべきだろう。それで駄目だったら研究資源を他のメカニズムに振り向けることができる。

リンク:ロシュのプレスリリース

ルンドベック、脳梗塞用薬の開発を中止

(2014年12月17日発表)

ルンドベックはドイツのPAION社からdesmoteplaseをライセンス、急性虚血性脳卒中の治療薬として第三相試験を二本実施したが、どちらもフェールし、この用途での開発を中止することを発表した。

ナミチスイコウモリが吸血時に分泌して血液が固まるのを防ぐプラスミノーゲン・アクティベータを元に創製した遺伝子組換え薬で、開発歴は長く、2000年にシエーリングがPAIONにライセンス、04年にフォレストが北米の権利を取得したがP2b試験がフェールしたため返還、05年にルンドベックがライセンスしたもの。

tPAより脳細胞毒性が小さい可能性があることと、新しい画像分析手法を用いれば治療対象を発症後9時間経った患者まで広げられそうなことが注目点だったが、駄目だった。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

【承認申請】


バイエル、A型血友病薬を米国でも承認申請

(2014年12月17日発表)

バイエルは、BAY 81-8973をA型血友病薬として米国で承認申請したと発表した。遺伝子組換え型の第VIII因子で、培養過程などでヒトや動物由来の蛋白を用いていないため、感染症のリスクが小さいことが期待される。Kogenateの後継薬という位置付けだ。欧州でも今月、承認申請済み。

リンク:バイエルのプレスリリース

ジェネンテック、MEK阻害剤を承認申請

(2014年12月14日発表)

ジェネンテックはエグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)からライセンスしたGDC-0973/XL518(cobimetinib)をBRAF-V600変異型悪性黒色腫用薬として米国で承認申請したと発表した。EUでも承認審査中。同社のZelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ)と併用する。

ZelborafはBRAF阻害剤、cobimetinibはMEK阻害剤で、成長因子受容体の細胞内シグナル伝達に関わる同じパスウェイを阻害する。同様な併用療法としては、GSKのbraf阻害剤Tafinlar(dabrafenib)とMEK阻害剤Mekinist(trametinib)の併用が米国で承認されている。

癌細胞の細胞内シグナル伝達因子は変異しやすいが、二つの標的を同時に狙えば片方が変異して効かなくなるリスクを削減できるかもしれない。MEK阻害剤はそれ自体にも穏やかな効果がある。また、braf阻害剤の副作用である皮膚扁平上皮細胞腫(多くは良性)のリスクも抑制できる可能性がある。

ジェネンテック/ロシュの一次治療併用試験では、PFSがメジアン11.3ヶ月とZelborof単剤群の6.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.6だった。グレード3以上の有害事象の発生率は65%対59%と高まり、肝臓酵素やCPKの上昇が併用群の方が多かった。

リンク:ジェネンテックのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが幹細胞療法や体重管理薬などを支持

(2014年12月19日発表)

EUの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは12月の会議で幹細胞療法やオレキシジェンの体重管理薬などに肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

Chiesi FarmaceuticiのHoloclarは、中重度の角膜輪部幹細胞欠乏症(LSCD)の治療法。患者自身から採取した角膜上皮細胞(幹細胞を含む)を培養したもの。幹細胞療法がEUで承認されれば初。

LSCDは火傷や化学物質による外傷によって幹細胞が損傷、痛みや症状が続き、視力が悪化する。EUの有病率は10万人に3.3人で希少疾患用薬指定を受けている。Holoclarは幹細胞による再生を促す。角膜移植と異なり拒絶反応や手術を回避できる。前向き試験のエビデンスが無いことから、条件付き承認となる予定。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:同(最初の幹細胞製品の承認推奨)

オレキシジェン(Nasdaq:OREX)のMysimba(naltrexoneとbupropionの合剤、米国名Contrave)は体重管理薬。活性成分はどちらも別の適応で承認されている。食欲を抑制し、エネルギー消費を促し、飽食感を増強する。肥満症(BMI30kg/m2以上)や、疾病リスク因子を持つ太り過ぎ(27~30kg/m2)の患者が、低カロリーダイエット及び運動療法と併せて服用する。16週間服用して体重が5%以上減少しなかったら打ち切る。

9月に承認された米国の用法は、12週間服用して5%以上減らなかったら止める。若干異なるのは、おそらく両地域の体重管理ガイドライン自体が異なっているのだろう。薬物療法は副作用もあるので週何キロという減量目標を達成できなかったら他の方法にスイッチすることが推奨されている。

体重管理薬は米国では12年にヴィーヴァス(Nasdaq:VVUS)のQsymia(phentermineとtopiramateの合剤)とアリーナ(Nasdaq:ARNA)/エーザイのBelviq(lorcaserin)が承認。オレキシジェン/武田薬品のContraveも今年9月に承認され、ニッチな市場で販売競争が行われている。EUはQsymiaもBelviqも承認しなかったため、オレキシジェンが先陣を切る。販売パートナーは決まっていないが、米国での反響が良ければ武田が権利を取得する可能性もありそうだ。

リンク:EMAのプレスリリース

イタリアのニューロン(SIX:NWRN)が開発し同じくイタリアのZambon社が承認申請したXadago(safinamide)も肯定的意見を獲得した。パーキンソン病の治療薬。05年に承認されたテバ/ルンドベックのAzilect(rasagiline)と同じMAO-B阻害剤で、ドパミンの再取込やグルタミン酸の放出を阻害する。Azilectは早期患者に単剤投与することが認められているが、Xadagoはレボドパを服用している中期・後期患者に追加投与する用法だけだ。

パーキンソン病にはレボドパが有効だが、長期間使ううちに有効時間(オン・タイム)が短くなる。Xadagoを追加投与した試験ではオン・タイムが30~50分長期化した。主な有害事象はジスキネジア、傾眠/不眠、眩暈、頭痛、悪心、起立性低血圧など。

早期患者向けが支持されなかったのは治療効果が穏やかであることや、新薬のニーズがそれほど切実ではないことが理由である模様。

米国でも5月に承認申請されたが、書類の目次の不備や添付文書がガイドラインに従っていないことから、受理されなかった。日本はMeiji Seikaファルマが開発販売権を保有。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:両社のプレスリリース

アクタヴィス(NYSE:ACT)が11月に6.75億ドルで買収したDurata社のXydalba(dalbavancin、米国名Dalvance)も肯定的意見を得た。グラム陽性菌による急性細菌性皮膚皮膚構造感染症に用いる。バンコマイシン系でMRSAにも活性を持ち、一週間置いて二回の点滴で足りることが特徴。今年5月に米国でも承認されている。

米国は04年、欧州は07年に承認申請されたが、試験の内容が良くなかった模様で再試験を実施。バンコマイシン(必要に応じてlinexolidも)と比べて効果が非劣性だった。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:Actavisのプレスリリース

適応拡大では、セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide、和名レブラミド)を多発骨髄腫で造血幹細胞移植が不適な患者の一次治療及び維持療法に用いることが支持された。MM-015試験では、MPという二剤併用レジメンよりもRevlimidも併用しコース完了後もRevlimidだけ続けるMPR-Rレジメンの方が効果が高かった。

リンク:セルジーンのプレスリリース



Revlimidのライバルである武田薬品/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib)は08年に一次治療の承認を受けている(維持療法は無い)が、今回、マントルセルリンパ腫の一次治療適応拡大が支持された。造血幹細胞移植不適患者が適応になる。VcR-CAPという5剤併用レジメンで、臨床試験ではR-CHOP5剤併用レジメンよりPFSがメジアン11ヶ月長く、ハザードレシオ0.63だった。

Swedish Orphan BiovitriumのXiapex(collagenase clostridium histolyticum、米国名Xiaflex)はデュピュイトラン拘縮に承認されているが、ペロニー病に用いる適応拡大が肯定的意見を得た。コラーゲン分解酵素で、ペニスに良性のしこりができることによる痛みや弯曲を治療する。

Auxilium(Nasdaq:AUXL)の開発品。AuxiliumはEndo International(Nasdaq:ENDP)と合併する予定。

【承認】


FDAがアッヴィの4剤併用抗HCV薬を承認

(2014年12月19日発表)

FDAは、Viekiraパックを遺伝子型I型HCVによる慢性C型肝炎の治療薬として承認したと発表した。平行開発された三種類の新薬とritonavirの併用レジメンで、患者によっては12週間の治療で完了する。また、患者によってはribavirinを併用しなくてもよいので、かっての標準療法であるインターフェロンもribavirinも要らない、経口剤だけの治療法になる。

4剤のうち3剤は合剤で、NS5A阻害剤ombitasvir、NS3/4A阻害剤paritaprevir、3A4阻害剤ritonavirを配合。二錠を一日一回服用する。もう一剤は非核酸系NS5Bポリメラーゼ阻害剤dasabuvirで一日二回服用する。

この二錠を12週間服用するが、遺伝子型Ia型や肝硬変、肝移植患者はribavirinも併用。Ia型且つ肝硬変合併は24週間服用する。奏効率は95~100%と高い。

値段も高い。米国では12週間分が83319ドルで販売される模様で、これは、一日一回一錠服用するだけで足りるギリアド(Nasdaq:GILD)のHarvoni(NS5Bポリメラーゼ阻害剤sofosbuvirとNS5A複製複合体阻害剤ledipasvirの合剤)の63000~94500ドル(患者特性に応じて服用期間と薬剤費が異なる)と良い勝負である。

尤も、新薬が三剤もあり、paritaprevirはEnanta(Nasdaq:ENTA)からのライセンス品であることを考えれば、競争を意識して価格を抑えたと言っても良いだろう。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:アッヴィのプレスリリース

アストラゼネカ、PARP阻害剤が欧米で承認

(2014年12月18日、19日発表)

アストラゼネカは、Lynparza(olaparib)が欧州と米国で相次いで承認されたことを発表した。06年にKuDOSを2億ドルで買収して入手、一度は開発中止の危機に陥ったが蘇った。米国の承認もウルトラCを使ったという印象だ。

Lynparzaはpoly ADP-ribose polymerase(PARP)阻害剤で、BRCA変異患者の卵巣癌に用いる。PARPとBRCAはどちらも遺伝子の修復に関わる蛋白で、BRCAに機能喪失変異を持つ人は乳癌や卵巣癌のリスクが持たない人より高い。癌細胞は活発に分裂するため遺伝子変異が起きやすいが、BRCA変異患者のPARPを阻害すると修復メカニズムが機能しなくなるため、癌細胞を抑制できる可能性がある。

第二相試験に基づく承認なのでエビデンスは明確ではなく、そのためか、欧州と米国では適応が若干異なっている。欧州は白金薬レジメンに反応した患者の維持療法として単剤投与する。BRCA変異は生殖細胞変異でも体細胞変異でも良い。米国も同じ適応で申請されたが、諮問委員会で13人の委員のうち11人が承認に反対した後に、変更された。BRCA生殖細胞変異型卵巣癌の4次治療として単剤投与する。米国は加速承認なので、進行中の第三相試験で効能を確認する必要がある。

FDAはMyriad Genetic LaboratoriesのBRCA血液検査もPMA(販売前申請)を優先審査で承認した。同社のラボで検査する。

欧州承認の根拠となった第二相試験はフェールしたが、BRCA生殖細胞変異患者の事後的分析ではPFSがメジアン11.2ヶ月と偽薬の4.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.18だった。主評価項目がフェールした後の事後的解析なので意義は曖昧だが、p値は0.00001を下回った。全生存の解析はハザードレシオ0.74、有意ではなかった。

米国承認の根拠となった第二相単群試験では客観的反応率が34%、反応持続期間はメジアン7.9ヶ月だった。

主な有害事象は悪心、嘔吐、疲労、貧血など。深刻な有害事象では骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病が見られたようだ。



リンク:アストラゼネカのプレスリリース(欧州承認、18日付)

リンク:FDAのリリース(米国承認、19日付)

リンク:アストラゼネカのプレスリリース(同)

リンク:Myriadのプレスリリース(同)

MSDが買収する企業の抗生剤が米国で承認

(2014年12月19日発表)

FDAは、Cubist(Nasdaq:CBST)のZerbaxaをグラム陰性菌による複雑尿道感染症と複雑腹腔内感染症の治療薬として承認したと発表した。アステラス製薬が創製・アウトライセンスしたセフェム系抗生剤ceftolozaneと、大鵬薬品が創製したベータ・ラクタマーゼ阻害剤tazobactamの静注用合剤で、後者の適応症ではmetronidazoleと併用する。臨床試験では効果が既存の薬と非劣性だった。院内感染細菌性肺炎でも第三相試験中。

CubistはMSDが84億ドルで買収を決めたばかり。合意直後に主力製品であるCubicinの特許裁判でGE薬メーカーに有利な判決が出る不運に見舞われ、20~30億ドル分払い過ぎとも言われているが、Zerbaxaは順調に承認された。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:Cubistのプレスリリース

アルコンの外耳炎用薬が米国で承認

(2014年12月17日発表)

FDAは、Xtoro(finafloxacin)を急性外耳炎治療薬として承認した。キノロン系抗菌剤の懸濁液。主な有害事象は耳の痒みや悪心。ノバルティスの子会社であるアルコンの製品。

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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