2014年9月21日

海外医薬ニュース2014年9月21日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA諮問委員会がリクシアナを討議へ
  • シャイア、Vyvanceをむちゃ食い障害に適応拡大申請
  • アストラゼネカ、末梢作用性オピオイド受容体アンタゴニストが米国で承認
  • イーライリリーの長期作用性GLP-1作用剤が米国で承認
  • ZydeligがEUでも承認
  • ノボの二型糖尿病用合剤がEUで承認


【今週の話題】


FDA諮問委員会がリクシアナを討議へ

(2014年9月17日発表)

FDAは、10月30日に心血管腎臓薬諮問委員会を招集して第一三共のXa阻害剤、Savaysa(edoxaban、和名リクシアナ)を討議することをFederal Register(米国の官報)で公表した。今年1月に非弁膜性心房細動の卒中予防、深静脈血栓・肺塞栓の治療、症候性静脈血栓塞栓の再発予防の三用途で承認申請されたもの。第三相試験の結果は既に学会・論文発表されているが、特に問題があるようには見えない。おそらく、二種類の用量の使い分けについて意見を求める意図ではないか。

第一三共の一般名の付け方は面白く、xabanはXa阻害剤の共通語幹だが、接頭辞のedoは江戸、つまり日本発のXa阻害剤という意味だろう。エフィエントの一般名であるプラスグレルは、プラビックス(一般名クロピドグレル)より優れた薬に育って欲しいという思いが日本人には伝わってくる。

三適応症のうち商業的に一番重要なのは心房細動だ。第三相のENGAGE-AF TIMI-48試験は米国の血栓学における共同治験グループであるTIMIが主導した2万人規模の試験で、30mgまたは60mgを一日一回投与する群とワーファリンを使う群の卒中・全身性塞栓イベントを比較した。

他のXa阻害剤や経口直接的トロンビン阻害剤の試験は夫々にデザイン上の短所を持っていたが、この試験は二重盲検で、二種類の用量をテストして至適用量をキチンと確かめると共に、体重60kg以下の患者や腎機能低下などの患者には投与量を半減する手法を採用した、過去の試験の集大成ともいうべき模範的なデザインだ。

結果は、脳卒中・全身性塞栓の年率発生率は30mg、60mg、ワーファリンが夫々1.61%、1.18%、1.50%で、両用量ともにワーファリン比非劣性だった。

主評価項目の解析が成功したためシーケンシャルに優越性解析に進み、有意差は無かったが、高用量はワーファリンより優れるトレンド、低用量は劣るトレンドが見られた。非劣性解析と優越性解析は母集団を変えるのが一般的でこの試験も違うが、非劣性解析の母集団(修正intent-to-treatベース)を対象にした優越性解析では高用量はp=0.02と良い数値が出た。

抗凝固薬は出血リスクが高まるが、edoxabanは低用量の重大出血発生率(年率)が1.61%、高用量が2.75%と、ワーファリン群の3.43%より有意に低かった。

素直に受け止めると30mg、60mgどちらも良好で承認に値するが、FDAは、抗血栓薬、抗血小板薬共に、至適な一つの用量しか承認しない傾向がある。前例はベーリンガーの経口直接的トロンビン阻害剤、Pradaxa(dabigatran、和名プラザキサ)で、欧州や日本では110mgと150mg(一日二回投与)の両方が心房細動向けに承認されているが、FDAは110mgしか承認しなかった。

理由は、150mgは事後的解析で効果がワーファリンより有意に高く、複合主評価項目の中で最も重要な疾患である脳卒中も数値上、少なかったのに対して、110mgはワーファリンと非劣性だけだったこと。出血リスクは110mgのほうが良好に見えるのだが、脳卒中予防効果の高さの方を重視した。承認後にオピニオンリーダー達が脳卒中や出血リスクに応じて使い分けることができないことを嘆く結果になった。

今回のデータはPradaxaより難しく、効果の点では60mgが至適に見えるが、出血リスクでは30mgだろう。両方を承認する方法もあるだろうが、今度は医師が悩むことになり、問題解決にはならない。

もう一つの難点は、服用中の用量調整だ。この試験では例えば投与期間中に体重が60kgを下回ったら用量を半減する手法が採用されたが、現実の医療でも同じことが可能かどうか。体重は計測するだろうが、腎機能や、同時使用薬のチェックはキチンと行われるか?そもそも、60kgという閾値は適切なのか?

FDAは薬物動態など判断に必要なデータを多数、持っているだろう。その分析結果も注目だ。

リンク:諮問委員会開催通知(Federal Register、9/17)

【承認申請】


シャイア、Vyvanceをむちゃ食い障害に適応拡大申請

(2014年9月15日発表)

英国のシャイアは、米国でVyvance(lisdexamfetamine)をBED(むちゃ食い障害)に適応拡大申請し、FDAが受理、優先審査指定したことを発表した。順調なら来年2月に審査結果が出ることになる。

Vyvanceはアンフェタミンのプロドラッグで07年にADHD治療薬として承認された。適応拡大は鬱病の第三相が行われたがフェール、BEDは成功した。

BEDは通常の人より沢山食べる現象が週一回以上の頻度で3ヶ月以上続き、神経性の過食症や無食欲症とは異なり食べ過ぎた反動が出ない状態と規定されている。ADHDにも言えることだが、昔は病気とは考えられていなかったものが診断基準が作られ治療法が開発されていく。

シャイアは米国のアッヴィと合併で合意している。

リンク:シャイアのプレスリリース

【承認】


アストラゼネカ、末梢作用性オピオイド受容体アンタゴニストが米国で承認

(2014年9月16日発表)

アストラゼネカは、Movantik(naloxegol oxalate)が癌性以外の慢性オピオイド誘導性便秘の治療薬として米国で承認されたと発表した。錠剤で、一日一回服用する。第三相試験の一本では12.5mg群と25mg群の腸運動改善奏効率が各41%と44%で偽薬群の29%を有意に上回った。

この種の薬は腸閉塞のリスクが見られるため胃腸閉塞のある患者、リスクの高い患者は禁忌。3A4を強力に阻害する薬の同時使用も禁忌。胃腸穿孔やオピオイド離脱症状が警告されている。3A4相互作用があるためグレープフルーツやグレープフルーツジュースの摂取は避けるべき。(日本にはグループフルーツは大丈夫という意見もあるが、このレーベルを見ても、09年にブログで書いたように、気を付けなければならない)。

Movantikはネクター社が小分子ポリマーコンジュゲート技術を用いて創製した末梢作用性ミュー・オピオイド受容体アンタゴニスト。同じ作用機序を持つ薬の試験で心血管リスクが増加したためFDAが一年間の安全性試験を求めたが、特に問題は無かった。それでも、FDAは市販後に心血管アウトカム試験を行うよう要求した。

活性成分の構造がnoroxymorphoneと類似しているためDEA(米国麻薬取締局)がスケジュールIIに指定した。五つの規制分類の中で二番目に厳しい、コカインや上記のVyvanceなどと同じ処方流通規制を受けることになる。しかし、承認されたレーベルには薬物依存のリスクも乱用のリスクも無いと記されている。アストラゼネカはDEAに指定解除を請願、受理されたので、改定される可能性がありそうだ。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

リンク:FDAのリリース

リンク:Medicine-Blog『グレープフルーツの薬物相互作用』

イーライリリーの長期作用性GLP-1作用剤が米国で承認

(2014年9月18日発表)

FDAは、Trulicity(dulaglutide)を二型糖尿病薬として承認したと発表した。イーライリリーのGLP-1作用剤で、週一回皮注で足りることが特徴。アストラゼネカのBudureon(exenatide)も週一回だが、分子が大きいせいか針が太く注射箇所の痛みを訴える患者がやや多い。

DPP-4に分解され難く改変したヒトGLP-1と免疫グロブリンG4の固定領域重鎖をペプチドリンカーで繋げて半減期を延ばしたもの。GLP-1作用剤はVictoza(liraglutide)が成功しているが、一日一回なので、強力なライバルが現れたことになる。

他のGLP-1作用剤と同様に、ラットの試験で甲状腺Cセル腫瘍が用量・投与期間依存的に増加したこと、甲状腺髄様腫歴・家族歴や多発性内分泌腫瘍症2型(MEN 2)を持つ患者は禁忌であることが枠付警告された。膵炎の病歴を持つ患者は他の薬を検討すべきとされた。GLP-1作用剤なので悪心嘔吐、下痢などの副作用を持つ。日本でも承認審査中。

リンク:FDAのリリース

リンク:イーライリリーのプレスリリース

ZydeligがEUでも承認

(2014年9月19日発表)

ギリアッド(Nasdaq:GILD)は、Zydelig(idelalisib)がEUでCLL(慢性リンパ性白血病)とFL(濾胞性リンパ腫)に承認されたと発表した。7月の米国承認に次ぐもの。Bセルの増殖や活性化に係るPI3Kデルタ酵素を選択的に阻害する経口剤で、CLLは二次治療としてRituxan(rituximab)による治療が適切な患者(化学療法不耐など)に併用する。化学療法応答性が低い17番染色体短腕欠損やTP53変異の場合は一次治療も可。FLは三次治療薬として単剤投与する。

リンク:ギリアッドのプレスリリース

ノボの二型糖尿病用合剤がEUで承認

(2014年9月18日発表)

ノボ ノルディスクは、XultophyがEUで承認されたと発表した。持効性インスリンであるTresiba(insulin degludec、和名トレシーバ)とGLP-1作用剤Victoza(liraglutide、和名ビクトーザ)の活性成分を配合した固定用量合剤。インスリンは体重が増加し、GLP-1作用剤は減少するので、合剤は体重に中立的。来年上期に発売する予定。

リンク:ノボのプレスリリース

今週は以上です。

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