2014年9月14日

海外医薬ニュース2014年9月14日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • リリー、抗癌剤の適応拡大試験成功
  • TesaroがOPKOの制吐剤を米国で承認申請
  • FDA諮問委員会がノボの体重管理薬を支持
  • FDA、第三の体重管理薬を承認
  • バクスターの原発性免疫不全症治療薬が米国で承認
  • イクスタンジの早期使用が承認
  • ランタスのバイオシミラーがEUでも承認


【新薬開発】


リリー、抗癌剤の適応拡大試験成功

(2014年9月12日発表)

イーライリリーの抗VEGFR-2完全ヒト化抗体Cyramza(ramucirumab)は今年4月に胃癌の二次治療薬として米国で承認されたが、同時進行していた様々な第三相のうち、非小細胞性肺癌の二次治療試験に続いて結腸直腸癌の二次治療試験も成功したことが発表された。

5-FUとoxaliplatin、Avastin(bevacizumab)ベースの治療に再発・不応の患者を組入れて5-FUとirinotecanベースのFOLFILIレジメンと併用したところ、FOLFILIだけの群と比べて生存期間が有意に延長した。米国では1万人程度が対象になる模様だ。

Cyramzaの治療効果は決して大きくなく、胃癌も肺癌も全生存期間がメジアンで1.4ヶ月延びただけだった。今回の試験は1000人以上を組入れたので小さな差でも統計的に有意になる可能性があり、実際の数値が公表されるまでは何とも評価しようがないだろう。3月23日号で書いたように、ASCOは抗癌剤試験のハードルを引き上げることを提言している。近年の抗癌剤は高価で、命に係る副作用もあるので、承認されたとしても使われるとは限らない。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

【承認申請】


TesaroがOPKOの制吐剤を米国で承認申請

(2014年9月8日発表)

Tesaro(Nasdaq:TSRO)はNK-1受容体拮抗剤rolapitantを化学療法誘導性嘔吐の予防・治療薬として米国で承認申請した。同種の薬ではMSDのEmend(apripitant)が03年に承認されている。半減期が長く薬物相互作用が小さいことが長所だが、Emendの特許切れが近付いていることを考えれば、商業的には楽観できないだろう。

rolapitantはOPKO Health(AMEX:OPX)が09年にシェリング・プラウから資産を取得、翌年にTesaroに独占開発販売権を供与したもの。TesaroはMGIで制吐剤Aloxiを開発・商業化したメンバーがエーザイによる買収後に独立して設立した会社。

リンク:Tesaroのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がノボの体重管理薬を支持

(2014年9月11日発表)

FDAの心臓腎臓薬諮問委員会は、ノボが体重管理薬として承認申請したSaxenda(liraglutide)を検討し、14対1の多数で承認を支持した。活性成分は二型糖尿病薬Victoza(和名ビクトーザ)と同じだが用量が3mg(一日一回皮注)とVictozaの1.2/1.8mgより多い。長期作用性GLP-1作用剤で、食欲を抑制し、食物が胃から腸に移行するのを遅らせる。悪心嘔吐の副作用を持つ。

第三相試験では5割前後の患者が体重を5%以上減らすことに成功した。偽薬群は1~2割に留まった。マーケティング面で重要な二型糖尿病肥満患者の試験でも体重と血糖値を引き下げた。深刻な有害事象の発生率は6.3%と偽薬の4.6%を若干上回っただけで、内容は胆嚢障害(1.2%、偽薬は0.3%)、関節障害(0.4%対0.1%)、乳癌(0.2%対0.1%未満)など。GLP-1作用剤は膵炎のリスクがあり、Saxendaの試験では急性膵炎の発生率が0.21%対0.05%だった。

リンク:ノボ ノルディスクのプレスリリース

【承認】


FDA、第三の体重管理薬を承認

(2014年9月10日発表)

FDAは、オレキシジェン(Nasdaq:OREX)が武田薬品にライセンスした体重管理用薬、Contrave(徐放性bupropionと徐放性naltrexoneを配合)を承認した。2012年に承認されたアリーナ/エーザイのBelviq(lorcaserin)やヴィーヴァスのQsymia(phentermineと徐放性topiramateの合剤)に次ぐ第三の新薬だ。先行二品は夫々の理由で売れ行きがゆっくりだが、Contraveはどうか。

適応は、前二剤と同様に、BMIが30kg/m2以上の肥満症患者と、27kg/m2以上で糖尿病や高血圧などの疾病因子を一つ以上持つ患者。臨床試験では40~60%の患者が臨床的に意味のある減量(5%以上)を達成した。偽薬群は10~40%だった。12週間服用して5%以上痩せなかったら治療を止める。副作用懸念があるからだ。

bupropionは鬱病や禁煙支援で既に承認されている活性成分で、これらの用途と同様に、青少年で自殺思慮のリスクが高まることや神経精神性有害事象が増えることが枠付警告された。医師は患者同意書を取る必要があるだろう。また、用量依存的な癲癇発作のリスクが見られる。心血管有害事象では、血圧や心拍数が上昇する。

体重管理は医学的には心血管疾患を予防するために行うのだが、Contraveで心血管イベントを抑制できるかどうかは確認されていない。臨床試験の中間解析で心血管リスクが倍増しないことは確認済みだが、解析結果を公表したために治験の厳格性が失われ、最終解析を使って結論を出すことがFDAに認められず、新たな試験を実施することになった。

上記の三剤は全て中枢神経系の薬剤であり、このため、精神性副作用を持つ。Belviqは効果がやや見劣りし、Qsymiaは効果が一番高いが徐放性ではないGE薬を二剤併用する安価な方法が脅威になる。ContraveもGE薬があるのでQsymiaと同じ懸念がある。一方で、三剤の中で唯一、麻薬取締法の規制を受けない。

Contraveが承認されたためオレキシジェンは武田から3000万ドルの達成報奨金を得る。発売時は7000万ドル。ロイヤルティは売上高に応じて20~35%。心血管アウトカム試験の費用は前回と同じ1万人規模なら1.5~2億ドルで二社が負担することになる。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:武田のプレスリリース(和文、pdfファイル)

バクスターの原発性免疫不全症治療薬が米国で承認

(2014年9月12日発表)

バクスター・インターナショナル(NYSE:BAX)とハロザイム(Nasdaq:HALO)は、Hyqviaが米国で原発性免疫不全症の治療薬として承認されたと発表した。既存製品は点滴用なら3~4週間に一回の投与で足りるが、簡便な皮注用は1~2週に一回。Hyqviaは皮注用でありながら4週間に一回で足りるので利便性が高い。

秘訣は、ハロザイムの遺伝子組換え型PH20。皮注すると細胞外基質のグリコサミノグリカン・ヒアルロンが一時的に零落、ヒト血漿由来の免疫グロブリンを皮注する時の生物学的利用率が高まる。

ハロザイムの技術は応用が利き、昨年欧州で承認されたロシュのHerceptin(trastuzumab)の皮注用製剤も採用している。FDAは抗PH20抗体ができて再生産組織や神経組織に損傷を与えるリスクを懸念している模様。ヒトC1エステラーゼ・インヒビターと一緒に用いた試験が自発的に中止されたことがある。ロシュも米国では開発していないのではないか。それだけに、今回の承認はハロザイムにとって一歩前進だ。

リンク:バクスターのプレスリリース

イクスタンジの早期使用が承認

(2014年9月10日発表)

アステラス製薬とメディベーション(Nasdaq:MDVN)は、FDAがXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)の対象人口拡大を承認したと発表した。2012年の最初の承認は、ホルモン療法などの去勢療法に反応しなくなった転移性前立腺癌で化学療法による治療を受けた患者が対象。今回は、化学療法の前に使うことが承認された。

抗癌剤は早い段階の患者の方が効果が高くまた、長く続く。遅い段階の患者は治療の副作用でこれ以上の治療ができないことも多い。このため、早期使用が承認されると対象患者数も平均投与期間も拡大する。

前立腺癌の薬物療法は、ホルモン療法→PSA値再上昇→転移・症状悪化→化学療法というステージを踏むのが一般的だ。転移・症状悪化前に治療を開始する場合もあり、Xtandiや前立腺癌の新薬であるZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大試験が進行中。

両剤ともにホルモン療法の一種であることを考えれば、将来的に、leuprolideのようなLH-RH類縁体に取り替わる可能性もあるだろう。前立腺癌の多くは進行が遅く、ホルモン療法や放射線療法だけでも天寿を全うできる可能性があるため、市場性が大きく拡大する。

リンク:アステラスのプレスリリース(和文)

ランタスのバイオシミラーがEUでも承認

(2014年9月10日発表)

イーライリリーとベーリンガー・インゲルハイムは、Abasria(insulin glargine、米国名Basaglar)がEUで承認されたと発表した。持効性インスリンのベストセラーであるサノフィのLantus(和名ランタス)のバイオシミラーで、米国でも8月に仮承認されている。Lantusのバイオシミラーは初。

リンク:両社のプレスリリース

今週は以上です。

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