2014年7月20日

海外医薬ニュース2014年7月20日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • アムジェン、二次性副甲状腺機能亢進症の第三相試験が成功
  • ロシュとGSK、MEK阻害剤の黒色腫併用試験が夫々、成功
  • ベネフィクスの予防試験、週一回投与で成功
  • 大塚、非定型向精神薬を米国で承認申請
  • ロシュ、アバスチンを子宮頸癌に適応拡大申請
  • 抗真菌剤が欧州で承認申請
  • ウサギが作る薬が米国で承認


【新薬開発】


アムジェン、二次性副甲状腺機能亢進症の第三相試験が成功

(2014年7月17日発表)

アムジェンは、AMG 416の一本目の第三相試験が成功したと発表した。透析期慢性腎疾患に合併する二次性副甲状腺機能亢進症を治療する試験で、副甲状腺ホルモンレベルが30%超低下した患者の比率が75.3%と偽薬銀の9.6%を有意に上回り、二次的評価項目であるリンやカルシウムの血中濃度も偽薬比有意に低下した。年内にもう一本の偽薬対照試験の結果が、来年には類薬である同社のSensipar(cinacalcet)対照試験の結果が判明する見込みで、来年には承認申請されるのではないだろうか。

二次性副甲状腺機能亢進症は腎機能低下に対する代償反応で、血中カルシウムの低下を探知すると副甲状腺ホルモンの分泌が増加、カルシウムやリンを正常レベルに維持するが、腎機能低下が著しく進むとこれらが過剰になる。有効なのがSensiparのようなカルシウム感受受容体作動薬で、AMG 416もこのタイプ。2012年にKAIファーマシューティカルズを3億ドルで買収して入手したペプチド薬で、透析時に2.5~15mgを週3回静注する(Sensiparは経口剤)。今回の試験では両群ともカルシウムなどの標準療法を併用した。

治療時発現有害事象は症候性低カルシウム血症や嘔吐、下痢、筋痙攣などが増加したが、深刻な有害事象の発生率は24.6%で偽薬群の27.4%と大差なかった。

日本では小野薬品が導入、ONO-5163という開発コードで第1/2相試験中。Sensiparは協和発酵キリンがレグパラ錠として08年に発売。

リンク:アムジェンのプレスリリース

ロシュとGSK、MEK阻害剤の黒色腫併用試験が夫々、成功

(2014年7月14日、17日発表)

ロシュは7月14日にGDC-0973(cobimetinib)の第三相黒色腫試験が成功したと発表した。承認申請する計画。データは学会で発表される予定。

この試験はBRAF-V600変異陽性の切除不能な局所進行性/転移性黒色腫の一次治療試験で、同社のBRAF阻害剤、Zelboraf(vemurafenib)と併用する効果を検討した。60mgを一日一回、経口投与。過去の試験で粘膜炎の投与制限毒性が見られたため、21日連続投与して7日間休薬するスケジュールが採用された。主評価項目はPFS(無増悪生存期間)。

GDC-0973はExelixis(Nasdaq:EXEL)のMEK阻害剤、XL518をライセンスしたもの。MEK阻害剤はBRAF阻害剤併用で真価を発揮するので、BRAF阻害剤の第一号を開発したロシュはExelixisにとって良いライセンス先だ。ロシュにとってもグラクソ・スミスクラインに対抗するため必要なパイプラインだ。

リンク:ロシュのプレスリリース

この3日後、BRAF阻害剤の第二号であるTafinlar(dabrafenib)とMEK阻害剤の第一号であるMekinist(trametinib)を開発したGSKも、BRAF-V600変異陽性の切除不能/転移性皮膚黒色腫の一次治療併用試験が中間解析で成功したと発表した。対照薬はZelborafでロシュの試験と同じ、主評価項目は全生存期間なのでエビデンスとしての価値は高い。尚、この二剤の併用は米国では承認されている。

1月にTafinlar対照試験の成功も発表されており、ロシュの試験と合わせると、二剤併用は三戦全勝となった。今後はV600変異陽性にはBRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用、それ以外にはYervoy(ipilimumab)が第一選択になりそうだ。

Mekinistは日本たばこからライセンスしたもの。GSKは腫瘍学用薬をノバルティスに売却することで合意しているが、今回の併用試験成功で譲渡額が145億ドルから160億ドルに引き上げられることになるだろう。

リンク:GSKのプレスリリース

ベネフィクスの予防試験、週一回投与で成功

(2014年7月16日発表)

ファイザーは、BeneFIX(nonacog alpha、和名ベネフィクス)の第三相B型血友病予防的投与試験が成功したと発表した。BeneFIXはこの用途では未承認で、遺伝子組換え型第IX因子の新薬に対抗するためには重要なデータと思われるが、適応拡大申請するかどうかはプレスリリースには明記されていない。

血友病の補充療法は高価だが、出血リスクの高い患者を中心に、定期的に投与して出血事故を予防する手法が開発され広く用いられている。既存薬は週2~3回投与する必要があるため、半減期を長期化した製品が複数、開発中で、B型血友病ではバイオジェン・アイデックのAlprolix(eftrenonacog alpha、和名オルプロリクス)が7~10日に一回投与する第IX因子として日米で承認された。

BeneFIXの試験はクロスオーバー試験で、最初の期間は出血時に投与して治療、次の期間は100国際単位/kgを週一回投与して予防したところ、第二期間の年率出血率はメジアンで94%減少した。既存の製品でも週一回投与が可能であることを示唆している。

バクスターのRixumisは、昨年、週二回投与で予防する用法が米国で承認され、エビデンスの面では新薬にキャッチアップした。既存薬が新薬にキャッチアップするというのは奇妙な表現だが、競争激化がエビデンスの充実という医療・患者に好ましい結果をもたらすのは良くある現象だ。

リンク:ファイザーのプレスリリース

【承認申請】


大塚、非定型向精神薬を米国で承認申請

(2014年7月14日発表)

大塚製薬と開発販売パートナーであるルンドベックは、OPC-34712(brexpiprazole)を統合失調症及び鬱病の治療薬として米国で承認申請したと発表した。後者は抗鬱剤の補完療法として追加投与する。

Abilify(aripiprazole、和名エイビリファイ)の類縁体で、D2受容体と5-HT1A受容体を部分作動、5-HT2A受容体を部分阻害する点では同じだが活性や結合力のプロファイルが異なる。この種のレセプター・プロファイルがどのような病気にどのような効果と副作用をもたらすかは活発な研究が行われているが、新薬そして研究助成金の出し手が減っているので、医学者の関心を集めそうだ。

という書き方をすると皮肉と受け止められかねないが、社会にとって一番望ましいのは優れた製薬会社と優れた医学者が協力することである。但し、野心を持つのは良いが患者と利益相反を持ってはならない。本題とは関係ないが、臨床研究の不祥事が相次いでいるのは憤りを感じる。病気の治療法の研究で不正を行うことは、現在そして将来の莫大な数の患者に被害を与える、個人が一生かけても償うことのできない犯罪である。

リンク:大塚のプレスリリース(和文)

ロシュ、アバスチンを子宮頸癌に適応拡大申請

(2014年7月15日発表)

ロシュは、Avastin(bevacizumab、和名アバスチン)を難治性転移性子宮頸癌向けに米国で適応拡大申請しFDAに受理されたと発表した。優先審査指定され、審査期限は10月24日。標準的な化学療法に追加する。残念ながら効果は限定的だが、一歩前進だ。

この申請はGOG-024試験に基づくもの。二種類の化学療法の比較、及び、Avastinを追加する三剤併用療法の効能を検討した2x2オープンレーベル試験で、Avastin併用群のメジアン生存期間は17.0ヶ月と化学療法だけの群の13.3ヶ月を3ヶ月強上回り、ハザードレシオ0.71、p=0.004と有意なリスク削減効果を示した。有害事象は例の如くで、グレード3以上の胃腸泌尿生殖器瘻の発生率が6%対0%、同じく血栓塞栓疾患が8%対1%と増加した。

子宮頸癌は早期段階で対処すれば5年生存率9割だが、転移癌の場合は1~2割に留まる模様。米国では年4000人が死亡する。GOG-024試験は転移性患者の組入れが少なく効果が鮮明ではなかった模様であり、このタイプにも承認されるかどうかは不透明だろう。

リンク:ロシュのプレスリリース

抗真菌剤が欧州で承認申請

(2014年7月17日発表)

スイスのBasilea(SWX:BSLN)は、BAL8557/ASP9766(isavuconazole)を欧州で侵襲性アスパルギルス症と侵襲性接合菌症に承認申請したと発表した。米国でも今月、権利を持つアステラス製薬が承認申請した。臨床試験では同じアゾール系のvoriconazoleと効果が非劣性だった。アゾール系の良いところは経口剤の開発が容易であることで、isavuconazoleも静注用と二種類が用意されている。

リンク:Basileaのプレスリリース

【承認】


ウサギが作る薬が米国で承認

(2014年7月17日発表)

FDAは、Ruconest(conestat alfa)を遺伝性血管浮腫の急性発作治療薬として承認した。遺伝子組換え型のヒトC1エステラーゼ・インヒビターで、通常の遺伝子組換え薬は大腸菌やチャイニーズ・ハムスター細胞などに遺伝子を組入れて量産するが、ウサギの乳腺に分泌させてミルクから回収するのが特徴。トランスジェニック羊では06年に欧州でAtryn(抗トロンビン)が承認されたが、トランスジェニック兎由来の医薬品はRuconestが初めてではないか。

オランダのPharming(Euronext:PHARM)が開発した薬で、米国のSalix(Nasdaq:SLXP)が北米の権利を持つSantarusを2010年に買収して取得した。Swedish Orphan Biovitrum(STO:BVT)が権利を持つ欧州では2010年に承認。

遺伝性血管浮腫は皮膚や小腸、口、喉などに痛みを伴う浮腫が発生、喉の場合は命に係ることもある。補体系免疫反応に係るC1インヒビターの遺伝子異常が原因だが、アレルギー性ショックと誤診されることが少なくないようだ。米国の患者数は6000~1万人。

治療法はヒト由来のC1エステラーゼ阻害剤や、英国のシャイア(アッヴィが買収する予定)のFirazyr(icatibant、ブラディキニンB2受容体拮抗剤)やDyax(Nasdaq:DYAX)のKalbitor(ecallantide、遺伝子組換え型ヒト・カリクレイン・インヒビター)が発作時治療や予防向けに承認されている。

尚、Salixはスイス上場のイタリア企業、Cosmo Pharmaceuticals(SIX:COPN)のアイルランド子会社と合併する予定。法人税率の低い国に税法上の本社を持つ企業と合併することが流行しており、アッヴィのシャイア買収も節税が目的の一つと考えられている。日本政府が法人税率引き下げに動いているのもこのような動きを未然に防ぐ目的かもしれない。

リンク:FDAのリリース

リンク:Salixのプレスリリース

今週は以上です。

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