2014年6月29日

海外医薬ニュース2014年6月29日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ヴァーテックス、膿胞性線維症で第二の新薬
  • BMS、nivolumabの第三相黒色腫試験が成功
  • アーゼラの市販後薬効確認試験がフェール
  • ルンドベック、急性脳梗塞の第三相がフェール
  • CHMPがBMSの抗HCV薬などの承認に肯定的意見
  • FDA諮問委員会はアストラゼネカのPARP阻害剤を支持せず
  • 吸入インスリンが米国で承認
  • FDAはオルメテックの心血管リスクに結論を出せず


【新薬開発】


ヴァーテックス、膿胞性線維症で第二の新薬

(2014年6月24日発表)

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)は、F508欠損ホモ接合型の膿胞性線維症患者を組入れた第三相試験二本が成功したと発表した。呼吸能力の悪化を遅らせ、肺増悪リスクを削減することに成功した。年内に欧米で承認申請に向かう予定。

膿胞性線維症はCFTRという輸送蛋白の遺伝子変異が関与している。ヴァーテックスは膿胞性線維症財団(CFFT)と協力してCFTRの能力を強化したり正常化したりする小分子薬の研究を進め、2012年にKalydeco(ivacaftor)の承認を取得した。G551D変異と呼ばれるタイプ等に有効で、世界の患者7万人のうち1割弱が適応になる。F508欠損ホモ接合型は4割程度を占めるので、対象患者が拡大する。

この第三相試験は12歳以上の患者を約500人ずつ組入れて、KalydecoとVX-809(lumacaftor)の併用療法を偽薬だけの群と比較した。KalydecoはCFTRポテンシエイターと呼ばれており、細胞のCFTRチャネルの開口時間を長期化する。VX-809はCFTRコレクターと呼ばれ、CFTRの細胞表面移行を促す。Kalydecoは承認されている150mg一日二回より多い250mgを一日二回経口投与。VX-809は600mg一日一回経口投与と400mg一日二回をテストした。

結果は、24週間治療後のパーセント一秒量(ppFEV1;ベースライン値は61%)が600mg群は偽薬比で一本は4.0パーセンテージポイント、もう一本は2.6パーセンテージポイント改善。400mg一日二回群は2.6パーセンテージポイントと3.0パーセンテージポイント改善した。相対変化率は、各、6.7%、4.4%、4.3%、5.3%となった。事前に設定されたプール分析で600mgは肺増悪リスクを30%、400mg一日二回群は39%削減した。何れも統計的に有意。

安全性面では、有害事象による治験離脱が600mg群は3.8%、400mg一日二回群が4.6%、偽薬群は1.6%だった。深刻有害事象の発生率は各23%、17%、29%で試験薬の方が小さかった(病状悪化によるものが少なかったのだろう)。やや気になるのは、呼吸困難と呼吸異常が増加したこと。薬効面でも副作用面でも至適用量が明確ではないが、600mg一日一回を採用することになるのではないか。

今回は12歳未満は対象外だが、6~11歳を組入れた安全性確認試験も行われている。FDAはこの年齢層に対する薬効確認試験は要求していないようなので、6歳以上を対象に承認される可能性がある。

リンク:ヴァーテックスのプレスリリース

BMS、nivolumabの第三相黒色腫試験が成功

(2014年6月24日発表)

BMSは、小野薬品と共同開発している抗PD-1抗体BMS-936558(nivolumab)の第三相試験の一つが中間解析で成功したと発表した。承認申請に向かうのではないか。扁平上皮非小細胞性肺癌でも第二相試験に基づいて年内にローリング承認申請を完了する見込み。MSDがローリング承認申請したMK-3475(pembrolizumab)と合わせて、Avastin(bevacizumab)以来の超大型新薬候補の承認・発売がラストスパートに入ってきた。

尚、日本では一足先に治癒を目的とした切除が不能な悪性黒色腫用薬オプジーボとして第二部会を通過、世界初承認に向けてカウントダウン体制だ。

今回のCheckMate-066試験は、切除不能な第III/IV期黒色腫で初めて治療を受ける、BRAF阻害剤が適応にならない患者を組入れた試験で、nivolumab(3mg/kg)を二週間に一回点滴静注する群とdacarbazine3週間毎群の全生存期間を比較したもの。独立データ監視委員会が中間解析でnivolumab群の優越性を認定した。盲検を解除してdacarbazine群の患者がnivolumabにクロスオーバーできるようにする予定。

dacarbazineは臨床的な転帰を改善する効果が十分に立証されていない模様であり、この試験は、それでも第一選択薬として広く用いられている欧州やカナダなどの施設で実施された。米国の施設は参加していない。BMSのYervoy(ipilimumab)との兼合いだろう。2011年に欧米で承認されたが、欧州がエビデンスに基づいて当初は二次治療に限定したのに対して、米国は限定しなかった。このため、米国の施設は一次治療試験ならYervoyと比較すべきと考えたのかもしれない。

このため、欧州やカナダでは承認申請できるだろうが、米国は不透明な点もある。しかし、私は承認申請が認められるのではないかと思う。もしdacarbazineの延命効果が偽薬並みであったとしてもそれより有意に優れていたのだから、少なくとも何らかの効果はある。Yervoyとの比較は第一相、第二相のデータからある程度の見当をつけることができるので、加速承認され、米国施設を組入れた第三相が成功した段階で本承認される道筋だ。

この米国施設を組入れた第三相はCheckMate-037試験で、Yervoyとbraf阻害剤が適応になる患者はbraf阻害剤による治療も受けた患者を対象に、dacarbazine又はcarboplatin・paclitaxel併用と延命効果や客観的反応率を比較する。15年に結果が出る見込み。一次治療はYervoy併用第三相試験の結果が16年に判明する見込みだ。

さて、MK-3475はYervoyによる治療を受けた悪性黒色腫患者の二次治療で承認審査中で、今年10月28日にFDAが結論を出す見込み。一次治療でも第三相Yervoy対照試験の結果が年末頃に判明と、1年弱リードしている。この二剤はどちらもPD-1に結合する可変領域とIgG4固定領域を組み合わせた抗体医薬で、違いはnivolumabはトランスジェニック・マウスにヒト抗体を発現させたもの、MK-3475はマウス抗体のアミノ酸配列の一部を置換してヒト化したものという点。

これまでの抗体医薬を見る限りではトランスジェニック・マウス抗体もヒト化抗体も効果や安全性に大きな違いはない。免疫強化療法なので同列に論じることはできないが、直接比較試験は行われていないのでどちらかに軍配を上げることはできない。そうなると、臨床的に重要な違いは、nivolumabの投与頻度が二週間に一回、MK-3475はYervoyやdacarbazineと同じ三週間に一回ということだ。医療費の点でも、患者の通院の手間という意味でも、MK-3475のほうが良いことになる。

BMSの第三相Yervoy併用一次治療試験はnivolumabを3週間に一回投与する用法も検討している。2週間に一回だと患者は今週はnivolumab、来週はYervoyと毎週のように医療施設・点滴施設に行かなければならないので、将来、Yervoy併用が主流になった時にnivolumabが生き残りために重要な用法だ。

リンク:BMSのプレスリリース

アーゼラの市販後薬効確認試験がフェール

(2014年6月27日発表)

グラクソ・スミスクラインはジェンマブ(OMX:GEN)からライセンスしたArzerra(ofatumumab、和名アーゼラ)の適応拡大試験がフェールしたと発表した。この試験は欧州で条件付き承認された時に課せられた薬効確認試験で、もし成功なら本承認を獲得できるはずだった。活性薬対照試験なので優越性を立証できなくても効果がない訳ではないが、こんなものなのかと失望的な印象を受ける。

Arzerraは抗CD20トランスジェニック・マウス抗体で、ロシュのRituxan(rituximab)に似ている。Bセルの慢性リンパ性白血病でfludarabineやalemtuzumabに不応・不耐・不適の患者向けに09年に米国で、10年に欧州で、13年には日本でも承認された。その後、fludarabine不適患者を対象とした一次治療化学療法併用試験も成功、欧米で適応拡大が認められた。

今回の試験はfludarabineに反応しなかった難治性患者の二次治療試験で、主評価項目のPFS(無増悪生存期間)がメジアン5.36ヶ月と医師の選んだ治療法を採用した群の3.61ヶ月を上回ったものの、ハザードレシオは0.78、p=0.267だった。

この用途は最初の用途と若干異なるが、alemtuzumabはサノフィが商業上の理由で販売を中止したため治療経験者は現在は存在せず、結局、違いはfludarabineに不耐不適の患者が含まれているかどうかだけである。

もし欧州でモノセラピーの承認が取り消されても一次治療併用が認められているので生き残ることはできるが、Rituxanと比べて用途が限定的なので、医療施設にしてみれば、敢えてArzerraをストックする理由が見つからないのではないだろうか。

リンク:GSKのプレスリリース

ルンドベック、急性脳梗塞の第三相がフェール

(2014年6月27日発表)

ルンドベックはドイツのPAION社からdesmoteplaseをライセンスし急性虚血性脳卒中の第三相試験二本を実施したが、一本目はフェールしたことが発表された。後期第二相・第三相試験の事後的画像分析に基づいて、発症後3~9時間経ったが血栓や血流の状況から今からでも間に合うと判定された患者を組入れて90日後の予後改善効果を偽薬と比較したが、修正ランキンスケール(mRS)が0~2点だった患者の比率が51.3%と偽薬群の49.8%と大差なかった。二本目の結果はまだ出ていない。

元々の期待値が低く、やっぱりという印象だ。desmoteplaseは吸血コウモリが吸血時に血が詰まるのを防ぐために用いるプラスミノーゲン・アクティベータを遺伝子組換えで量産したもので、tPAと異なりNMDA受容体を刺激しないので脳細胞に与える影響が小さい可能性がある。シエーリングが開発しPAIONにライセンス、POC試験が成功し04年にフォレストが北米の権利を、05年にルンドベックがそれ以外の地域での権利をライセンスしたが、前後して上記の後期第二相・第三相試験がフェール、前途に期待できなくなった。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPがBMSの抗HCV薬などの承認に肯定的意見

(2014年6月27日発表)

EUの薬品審査庁(EMA)の医薬品科学的評価委員会であるCHMPは6月の会議で、BMSのNS5A阻害剤やランタスのバイオシミラーなどの新薬と、ヴァーテックスの膿胞性線維症治療薬などの適応拡大に関して、肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内に承認されることになる。

リンク:CHMPのプレスリリース

BMSのDaklinza(daclatasvir)は、NS5A複製複合体阻害剤の第一号。慢性C型肝炎の治療に他の薬と併用で用いる。プロテアーゼ阻害剤は主としてI型ウイルスの治療に用いるが、Daklinzaは様々な血清型に有効で、場合によってはインターフェロンを用いない経口剤だけの治療も可能。主要国では日本で最初に承認申請され、先日、同社のNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤asunaprevirと二剤併用でI型を治療する用途用法で、第二部会を通過した。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:BMSのプレスリリース

イーライリリーとベーリンガー・インゲルハイムは糖尿病領域で広範な開発販売提携を行っているが、その一つであるAbasria(insulin glargine、開発コードLY2963016)が、サノフィのベストセラー持効性インスリンであるLantusのバイオシミラーとして、承認支持された。欧州は費用対効果に辛いせいか、Lantusの同地域での売上高は11億ドルとあまり大きくない。米国では承認申請後にサノフィが特許侵害で提訴したので、30ヶ月経つまで、あるいは判決が出るまで、FDAは承認することができない。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

新製剤ではGSKのHIV/AIDS治療用トリプルコンビ薬、Triumeqの承認が支持された。12歳以上、体重40kg以上の患者が適応になる。JTからライセンスしたインテグラーゼ阻害剤、dolutegravirと核酸系逆転写阻害剤のabacavirとlamivudineを配合、一日一回、一錠服用するだけで足りるようにした。ヒト白血球型抗原(HLA)にB*570アレルを持つ患者はabacavirの過敏反応リスクが高いため、事前検査が必要。

リンク:GSKのプレスリリース

ヴァーテックスのKalydeco(ivacaftor)はCFTR遺伝子に特定の変異を持つ膿胞性繊維症に有効で、最初にG551D置換型向けに承認されたが、それ以外に8種類の多型にも有効であることが明らかになり、今回、6歳以上の該当患者に使うことが支持された。欧州の対象患者が250人増加することになる。

リンク:ヴァーテックスのプレスリリース

適応拡大ではロシュのAvastin(bevacizumab)を白金薬抵抗性卵巣癌の二次治療、三次治療として化学療法薬と併用することが支持された。この用途の開発は難航し、AURELIA試験ではPFS(無増悪生存期間)は有意に延長したが全生存期間はメジアン16.6ヶ月と化学療法だけの群の13.3ヶ月を若干上回っただけ、ハザードレシオは0.87でpは0.27だった。このため、米国で承認される可能性は低そうだ。

卵巣癌は白金薬が有効で一次治療に反応したら二次治療も白金薬を用いるが、1/4の患者は白金抵抗性で違う薬による治療を必要とする。

リンク:ロシュのプレスリリース

バイエルは二種類の薬の適応拡大が支持された。一つはVEGF受容体阻害剤で結腸直腸癌のサルベージ療法(他の薬を全て使い終わった後に用いる)として承認されているStivarga(regorafenib、和名スチバーガ)を、消化管間質腫瘍のサルベージ療法として用いること。アムジェンが買収したオニクスと共同開発販売している。VEGF受容体阻害剤は同社のNexavar(sorafenib)を始め競合薬が多いので、競争の少ない用途を探すのが大変だ。

リンク:バイエルのプレスリリース

もう一つはリジェネロン(Nasdaq:REGN)から米国外の権利をライセンスしたVEGF受容体融合蛋白、Eylea(aflibercept、和名アイリーア)を糖尿病性黄斑浮腫による視力障害の治療に用いること。類似した薬であるロシュ/ノバルティスのLucentis(ranibizumab)の適応拡大を、ぴったり後ろで追いかけている。

リンク:バイエルのプレスリリース

BMSがファーザーと共同開発販売しているEluiqis(apixaban、和名エリキュース錠)は深静脈血栓・肺塞栓の予防や心房細動患者の脳卒中予防で承認されているが、深静脈血栓・肺塞栓の治療と再発予防でも承認が支持された。経口抗血栓薬の市場は心原性脳卒中予防が一番大きいが、今回の用途も治療しないリスクが大きく、服用期間が数ヶ月と長いため、二番目に大きい。

リンク:
BMSのプレスリリース


FDA諮問委員会はアストラゼネカのPARP阻害剤を支持せず

(2014年6月25日発表)

FDAの腫瘍学薬諮問委員会は、アストラゼネカが加速承認を求めて申請したPARP阻害剤、AZD2281(olaparib)を検討し、13人の委員中11人がエビデンス不足と判定した。15年末に第三相試験の結果が出るまでお預けになりそうだ。

承認申請された用途は、生殖細胞BRCA変異を持つ再発性白金薬感受性の卵巣癌で、白金薬による治療を受け完全反応・部分反応したが再発のリスクが高い患者に対する維持療法。BRCAは遺伝子の複製ミスなどを修復する蛋白で、ある種の変異を生殖細胞に持つ(後天的な変異ではない)患者は卵巣癌や乳癌のリスクが高い。卵巣癌の患者のうち該当するのは10~15%、米国の場合、年2000人程度と推定されている。

承認申請の根拠となった第二相試験ではPFSを有意に延ばす効果が見られたが、延命効果が見られなかったため、アストラゼネカは一旦、開発を中止した。その後、生殖細胞BRCA高リスク変異を持つ症例の事後的サブグループ解析でPFSがメジアン11.2ヶ月と偽薬群の4.1ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオ0.81、pは0.00001未満、全生存の解析も34.9ヶ月対31.9ヶ月、ハザードレシオは0.74と、統計的に有意ではなかったが良さそうな結果が出た。

同社の新しいCEOがこのデータに注目、欧米で承認申請するとともに、一次治療と二次治療維持療法で第三相入りさせた。作用機序はリーズナブルだ。BRCAが機能しない患者は癌に繋がる遺伝子変異を修復できないが、癌細胞は活発に分裂するため、複製ミスを修復するもう一つのメカニズムに関与するPARPを阻害してやれば、分裂時に発生する複製ミスを全く修復できなくなりアポトーシスする可能性がある。

FDAは事後的サブグループ分析の信頼性に否定的で今回は症例数も少ないため、私は承認されないだろうと思っていた。意外なのは、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病のリスクが表面化したことだ。この第二相では2%の患者で診断・疑い例が発生した。他の試験でも0.8%で発生した由。諮問委員が注目したのはこちらのデータで、維持療法は再発予防なので治療よりも高い安全性が必要と判定した。QOL改善効果があればまだしも、解析はフェールした。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

【承認】


吸入インスリンが米国で承認

(2014年6月27日発表)

FDAは、マンカインド(Nasdaq:MNKD)のAfrezzaを一型、二型糖尿病薬として承認した。吸入用の短期作用性インスリンで、06年に承認され翌年販売中止になったファイザーのExuberaに次ぐ第二号となる。注射用の短期作用性インスリンより血糖管理効果が弱いようだ。Exuberaは肺癌リスクが浮上したことがあり、マンカインドは市販後に疫学試験を行う必要がある。

Exuberaが売れなかったのは、吸入器が大きくメンテナンスも手間だったことと、高価格が原因だ。Afrezzaは掌に収まりメンテも簡便なので、あとは、価格と肺癌懸念の克服がポイントになる。同社は開発販売パートナーを探していたが、Exuberaの販売が低調であったせいか、自力開発に切り替えた。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:マンカインドのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDAはオルメテックの心血管リスクに結論を出せず

(2014年6月24日発表)

FDAは第一三共の降圧剤であるBenicar(olmesartan、和名オルメテック)の心血管安全性を検討していたが、結論がでなかったと発表した。レーベルを変更して関連データを記載するようメーカーを促す。Benicarは2013年に米国で180万人が服用した。

Benicarは糖尿病性微量アルブミン血症予防試験ROADMAPで心血管死が15例と偽薬群の3例より有意に多く、治験論文の抄録には、冠状心疾患の患者で致死的な心血管事故が多かったことは憂慮される、と記されている。日本と香港の患者を組入れたORIENT試験では、心血管疾患を予防する効果が偽薬と同程度だったが、心血管死は10例と3例で偏りがあった。

症例数が少ないため偶然の可能性もあるが気持ち悪い。FDAは疫学研究や第一三共が行った治験のメタアナリシスを検討。ROADMAP試験で用いられた承認最高用量である40mgを服用する糖尿病患者のデータを分析したところ、リスクを明確に示すものは見つからなかった。例えばメディケアの疫学試験では、40mgを6ヶ月以上服用した糖尿病患者の死亡リスクは他のARBを服用した患者の2.0倍、統計的に有意だったが、糖尿病ではない患者では0.46倍でこれも統計的に有意ではなかった。

論文の筆頭著者であるFDAのグラハム博士は、後者の解析は患者背景の偏りが原因かもしれないと判定したが、FDAはリスクがあるなら糖尿病以外の患者でもデータが悪いはずと考えたようだ。

英国の疫学試験では、40mgを服用した患者の他の高用量ARB服用者に対する死亡リスクは多変数調整後で2.03倍だったが95%信頼区間は0.74~5.61。急性心筋梗塞も3.09倍だが0.94~10.13で、信頼区間が著しく広いものの、統計学的には有意ではなかった。第一三共のメタアナリシスや医療保険会社のデータベースを用いた疫学試験でもリスクは見られなかった。但し、40mgや糖尿病患者だけの解析は症例不足で不可能・不確かだった。

FDAが判定を断念したことで、判断は医師や患者に委ねられることになる。第一三共のデータ以外は論文刊行されている。下記のサイトに引用されているので、読者自身が判定してほしい。

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


0 件のコメント:

コメントを投稿