2014年6月15日

海外医薬ニュース2014年6月15日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • ADA:イーライリリーのGLP-1作用剤
  • イーライリリー、Cyramzaの適応拡大試験がフェール
  • 末梢作用性オピオイド拮抗剤、承認前の心血管安全性試験は不要


【新薬開発】


ADA:イーライリリーのGLP-1作用剤

(2014年6月15日発表)

ADA(米国糖尿病学会)でイーライリリーの新規GLP-1作用剤、LY2189265(dulaglutide)の第三相試験の結果が発表された。ヘッドラインは以前の発表通り。週一回皮注でノボ ノルディスクの同種の薬であるVictoza(liraglutide)と比べて血糖値引下げ作用が非劣性、DPP-4阻害剤などの経口剤より高かった。metforminと比べても有意に高かったが差は小さい。

長期持効性インスリンLantus(insulin glargine)と比べても有意に高かったが、原因は良く分からない。インスリンは下げようと思えばいくらでも下がるのだから、低血糖などの理由で用量を手加減したのか、あるいは、血糖値はlower is betterではないので、それ以上下げる必要がなかったから下げなかったのだろう。

Victoza対照試験(1.5mg週一回皮注をVictozaの1.8mg一日一回皮注と比較)では、体重減少が2.90kgとVictozaの3.61kgより小さかったことも明らかにされた。これも、統計的に有意だが差は小さい。

新薬をアピールするには既存薬と比べた長所を明確にする必要があるが、差は小さいので組入れ患者数を増やして検出力を高める必要がある。dulaglutideの第三相は非劣性試験であり優越性検定は二次的評価項目なので尚更だ。ところが、検出力を高めると二次的評価項目や副作用の発生率でも有意な差が出やすくなる。一番になることはアスリートや科学者には重要だが、一般人には京などという一生触れることのない単位で行われる戦いで誰が一番でも二番でも、優れた人であることに変わりはなく、一喜一憂する必要はない。

dulaglutideはヒトGLP-1を改変してDPP-4に分解され難くした上で免疫グロブリンの固定領域重鎖をペプチド・リンカーで共有結合して半減期を長期化したもの。

リンク:ADA抄録(110LB)

イーライリリー、Cyramzaの適応拡大試験がフェール

(2014年6月11日発表)

イーライリリーは、Cyramza(ramucirumab)の第三相肝細胞腫試験がフェールしたと発表した。Nexavar(sorafenib、和名ネクサバール)による治療歴を持つ患者を組入れた二次治療試験で、メジアン生存期間が偽薬群の8ヶ月から10.67ヶ月に延びるという仮説を立てたが、有意な差はなくトレンドに留まった。

CyramzaはVEGFR-2に結合するファージディスプレイ抗体で、4月に胃癌の二次治療薬として米国で承認された。日本も参加した二次治療paclitaxel併用試験や非小細胞性肺癌の二次治療docetaxel併用試験も成功した。但し、胃癌二次治療はメジアン生存期間が3.8ヶ月から5.2ヶ月に1ヶ月半延びるだけ、他の二用途も全生存のハザードレシオは0.8を超えており、効果はそれほど高くない。

VEGF受容体を標的とする薬は小分子薬が数多く存在し、「低い枝に生っている実は全て取られてしまった」。活性薬対照試験で勝つ自信がなければ、倫理的な問題を生ぜずに偽薬対照試験ができる、先輩が果たせなかった難しい課題に挑戦するしか方法はない。当然のことながら、失敗は増えるし成功しても大きな成果は上げられない。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


末梢作用性オピオイド拮抗剤、承認前の心血管安全性試験は不要

(2014年6月12日発表)

FDA麻酔鎮痛用薬諮問委員会は、アストラゼネカが承認申請したMovantik(naloxegol oxalate)などの末梢作用性ミュー・オピオイド受容体アンタゴニストの心血管安全性について検討し、24人の委員のうち17人が、承認前に心血管アウトカム試験を行って安全性を確認する必要はないと判定した。最終的に決めるのはFDAだが、関連企業にとっては開発費用や期間を節約できるので朗報だ。

ミュー・オピオイド受容体アンタゴニストは、オピオイド鎮痛剤を常用する患者の多くで発生するオピオイド誘導性便秘などの治療に用いる。Entereg(alvimopan)が腸切除術などを受けた患者に限定して、そしてRelistor(methylnaltrexone bromide)が末期がんで緩和ケアを受けている患者などに限定して、08年に承認されたが、治験で心血管疾患が増加する兆候が見られたことから、長期的に服用することは認められていない。

Movantikはネクターから導入したPEG化naloxol。米国のオピオイド処方箋数は2億3500万枚、うち2割は常用目的とのことであり、潜在市場は大きく複数の会社が臨床開発を行っている。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

今週は以上です。

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