2014年4月12日

海外医薬ニュース2014年4月13日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • AACR:palbociclibが第二相試験で好成績
  • AACR:イーライ・リリーもCDK4/6阻害剤の第三相を開始
  • AACR:抗PD-1抗体の応答性もPD-L1に関連?
  • ACR:イクスタンジはアンドロゲン受容体変異に弱い?
  • エイビリファイ メンテナの競合品が承認申請へ
  • BMSがHCV複製複合体阻害剤を承認申請


【新薬開発】


AACR:palbociclibが第二相試験で好成績

(2014年4月6日発表)

AACR(米国癌研究協会)でファイザーのPD-0332991(palbociclib)の第二相転移性乳癌試験の結果が発表された。PFS(無増悪生存期間)は対照群と比べて有意に伸びたが中間解析値ほどではなく、全生存期間の解析はフェールした。ベストケースでは第三相試験の結果を待たずに承認申請するシナリオも考えられたが、難しいだろう。それでも、第三相試験の成功を期待できる内容だ。

palbociclibはCDK-4/6阻害剤で、細胞周期がG1期からS期に進行するのを妨げ、細胞分裂を止める。この試験では、エストロゲン受容体陽性かつher2陰性の乳癌で転移後初治療を受ける閉経後女性165人を、ノバルティスのアロマターゼ阻害剤Femara(letrozple)だけを投与する群とpalbociclibを併用する群に無作為化割付し、PFSを比較した。palbociclibは125mgを一日一回、21日連続投与し7日間休むスケジュールで経口投与。

結果は、単剤投与群のPFSがメジアン10.2ヶ月、併用群は20.2ヶ月、ハザードレシオは0.488でp=0.0004となった。中間解析のメジアン7.5ヶ月対26.1ヶ月、ハザードレシオ0.37より若干後退したことになる。

この試験は第一部と第二部に分かれており、第二部は前臨床の所見に基づきCCND1増幅またはp16欠損の見られる症例だけを組入れたが、治療成績は向上しなかった。第一部の66人のPFSハザードレシオは0.299、p=0.0001。第二部の99人では0.508、p=0.0046で、数値上は第一部の方が高い治療効果を生んでいる。

全例を対象とした全生存期間解析は単剤投与群33.3ヶ月、併用群37.5ヶ月、ハザードレシオ0.813、p=0.2105となった。数値は合格点ぎりぎりか若干下回っており、統計学的な信頼性も低いことになる。尤も、メジアン値を見ても分かるように被験者の生存期間は末期癌ほど短くなく、十分な検出力を持たせるには観察期間を長くする必要がある。同様なデザインの第三相試験では450人を組入れる計画であり、今回の165人、イベント数61では足りないのだろう。

注意すべきは、抗癌剤では第二相で良さそうな結果が出たのに第三相がフェールした例や、PFSで統計的にも臨床的にも意味のある差があったのに延命効果が確認できなかった例があることだ。

前者は第二相は症例数が少なく患者背景に偏りが生じるリスクがあり、また、今回の試験もそうだが、二重盲検とか、担当医の進行評価の査読のような厳格なプロトコルが導入されないことが多いため、良薬の登場を期待する医師のバイアスが治験成績に影響するリスクがある。後者は、進行後の生存期間が長い腫瘍では、一次治療の副作用が原因で二次治療の選択肢が狭まることも考えられる。副作用の点では併用ではなく夫々を一次治療と二次治療で使い分けた方が良いだろうから、結果(全生存期間)が大差ないなら併用しない方が患者のためもしれない。

この試験の主な有害事象は好中球減少症、白血球減少症、疲労、貧血。細胞分裂を妨げるので血球細胞の増殖も抑制されるのだろう。休薬期を設けているのも忍容性に対する配慮ではないだろうか。幸い、この試験では熱性好中球減少症は発生せず、対処可能だったようだ。

palbociclibは同様なデザインの第三相試験の他に、ホルモン療法不応患者を対象としたFaslodex(fulvestrant、和名フェソロデックス、アストラゼネカ)併用試験と、ネオアジュバント(術前化学療法)と摘出術を受けた再発リスクの高い患者を対象としたアジュバント試験も進行中。乳癌の6割程度がエストロゲン受容体陽性、her2陰性なので、市場性は大きい。

今回の試験の用途でブレークスルーセラピー指定を受けており、今後の解析で全生存に有意差が出れば承認申請が認められる可能性があるだろう。Femara併用第三相試験は2015年にデータベースロックの予定なので、遅くともこの時点では承認申請される可能性がありそうだ。

リンク:ファイザーのプレスリリース

リンク:Richard S. FinnらのAACR抄録

AACR:イーライ・リリーもCDK4/6阻害剤の第三相を開始

(2014年4月7日発表)

イーライ・リリーは、LY2835219の第三相試験をclinicaltrials.comに治験登録した。ファイザーのpalbociclibと同じCDK4/6阻害剤で、二番目に第三相を開始したノバルティスを含め開発競争が激化してきた。

ホルモン受容体陽性乳癌を対象に、fulvestrant単独投与群とLY2835219(200mgを一日二回、経口投与、休薬期なし)併用群のPFS(無増悪生存期間)を比較する。データベースロックは2017年の予定となっている。

AACRのアブストラクトに初期試験の成果がでているが、メジアン7治療を受けた患者に対して部分反応率19%、G3/4好中球減少症発生率21%と、palbociclibより良さそうに見える。尤も、患者背景が異なっていても全く不思議ではないので、see what happensだ。

リンク:Amita PatnaikらのAACR抄録

リンク:第三相試験治験登録(ClinicalTrials.gov)

AACR:抗PD-1抗体の応答性もPD-L1に関連?

(2014年4月6日発表)

MSDは、AACRで抗PD-1抗体MK-3475のバイオマーカー分析に関する発表を行った。PD-1のレガンドであるPD-L1が高発現している癌の方が効果が高そうだが、それ以外の患者に効果が無いとも言えず、難しいところだ。同社は既に米国でローリング承認申請を開始しており、応答性予測因子の解明は発売後になりそうだ。

まず、末期黒色腫については、進行中の後期第一相試験の評価可能例125例を、IHC法で腫瘍細胞の1%を閾値として評価したところ、71%がPD-L1陽性となった。総合反応率は全体(n=113)で40%で、PD-L1陽性では49%、陰性では13%となり、夫々の95%信頼区間はオーバーラップしなかった。一方、10%を閾値とした評価では、陽性65例の総合反応率は52%、陰性48例は23%となり、95%信頼区間はオーバーラップしなかった。

MSDは、PD-L1陽性が多いことや陰性でも効果がない訳ではないことから、適応を陽性患者だけに絞り込んでも効用は小さいと判定した。

一方、末期非小細胞性肺癌は同じ後期第一相試験の評価可能例129例を分析。MSDが至適と判定した閾値50%を強陽性と定義すると、25%が該当した。全体(n=129)の総合反応率は19%だったが、強陽性41例では37%、低陽性・陰性88例では11%に留まった。夫々の95%信頼区間はオーバーラップしていない。

反応率一桁では物足りないが、黒色腫でも非小細胞性肺癌でも陰性患者の10%超が反応しているので、一概にダメとは言えない。今後は、複数のバイオマーカーを用いて最適な患者をスクリーニングする手法が検討されることになりそうだ。BMSの抗PD-1抗体や、初期の試験でPD-L1陽性患者の方が応答性が良かったロシュの抗PD-L1抗体の最新のデータも注目されるところだ。

リンク:MSDのプレスリリース

ACR:イクスタンジはアンドロゲン受容体変異に弱い?

(2014年4月7日発表)

アンドロゲン受容体を標的とするXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)のような薬は去勢抵抗性前立腺癌でしばしば見られるアンドロゲン受容体多型に対する効果が弱い可能性を示唆する研究がAACRで発表された。遺伝子変異による多型ではなく、スプライシング(DNAを転写したRNAから翻訳に必要なメッセンジャーRNAを切り出すこと)の違いによる多型である。

この種の研究は大規模な前向き試験で確認する必要があるが、プリキモの試験が成功しこれから化学療法にとり変わろうという時期だけに、出足をくじかれかねない。

この研究はenzalutamideによる治療を受けた31例の血中循環腫瘍細胞におけるAR-V7メッセンジャーRNA発現状況と、応答性を検討したもの。38.7%を占めた陽性例のPSA反応率は0%で、陰性患者の52.6%と比べ有意に劣っていた。PFS(無増悪生存期間)もメジアン2.1ヵ月と6.1ヵ月で有意な差があった。

それでは当該患者はどうしたらよいのか?いくつか文献に当たったが、難しいようだ。AR-V7型やそれ以上に多いとされるAR-V567型(ある研究によれば59%が該当する)はレガンド結合部位が欠損しているのでレガンドの合成を阻害するabirateroneも効果が弱いようだ。おそらくホルモン療法は全部駄目だろう。

AR-V567型(5番から7番までのエクソンが欠如)はタクサン系の抗がん剤に反応するようなので、症状が耐え難いようなら選択肢になるが、上記二剤ならもっと軽い段階の患者も適応になるので(enzalutamideは承認審査段階)完全な代替手段にはならない。

取り敢えずはエキスパートオピニオンを待ちたい。私見では、決定的なエヒデンスではなく、もつと多くのデータが欲しい。

リンク:Emmanuel S. AntonarakisらのAACR抄録

エイビリファイ メンテナの競合品が承認申請へ

(2014年4月8日発表)

Alkermes(Nasdaq:ALKS)は、aripiprazoleの月一回投与用製剤の第三相試験成功を発表した。米国で7~9月期に承認申請する予定。発売後は本家大塚製薬の月一回製剤、Abilify Maintenna(paliperidone palmitate)と競争することになる。

同社は医薬品の管理放出技術で知られ、ジョンソン・エンド・ジョンソンのInvega Sustennaも同社が開発したもの。このaripiprazole lauroxilは同社のLinkeRx技術を用いている。二ヶ月に一回の製剤も開発しているようだ。

第三相の特徴は441mgと882mgの二種類をテストしたこと。Abilify Maintennaの承認用量は400mgで開始、300mgに減量可、なので、2倍のレンジの用量が承認されれば滴定の余地が広がる。

尤も、話はそう単純ではない。この薬はジェネリックではないので医師に処方箋を書いてもらわなければならない、つまり、販促で大塚・ルンドベック連合に勝たなければならない。また、向精神薬は承認されている用量域と実際に用いられているそれが必ずしも一致しない。

おそらく、Alkermesの勝負所は二ヶ月持続製剤の投入時だろう。

リンク:Alkermesのプレスリリース

【承認申請】


BMSがHCV複製複合体阻害剤を承認申請

(2014年4月7日発表)

BMSは二種類のC型慢性肝炎治療薬を米国で承認申請したことを発表した。BMS-790052(daclatasvir:NS5A複製複合体阻害剤)とBMS-650032(asunaprevir:NS3プロテアーゼ阻害剤)で、後者はこの二剤併用でIb型感染者だけに用いることを求めたようだ。

BMSは翌日に、この二剤併用をIb患者に投与した第三相試験の結果を発表した。24週間の投与で初めて治療を受ける患者のSVR12(治療終了後12週間経ってもウイルスが検出不能な患者の比率)が90%、PEG化インターフェロンとribavirinによる治療に不応だった患者では82%、不応・不適患者は82%だった。別の試験では、肝硬変を合併する患者でもそれ以外でもSVR12は大差なかった。有害事象による治験離脱は1~3%、深刻な有害事象の発生率は5~7%だった。

リンク:BMSの承認申請プレスリリース

リンク:BMSのP3データプレスリリース(4/10付)

今週は以上です。

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