2014年3月23日

海外医薬ニュース2014年3月23日号




【ニュース・ヘッドライン】




  • ASCOが抗癌剤試験のハードル引き上げを提言
  • INT-747の明と暗
  • 日本人ベンチャーの第三相が成功
  • ノボ、PEG化第VIII因子の最初の第三相が成功
  • インヴェガの三ヶ月製剤の第三相が成功
  • GSKの癌治療用ワクチンは肺癌もフェール
  • トラクリアのアウトカム試験がフェール
  • Xtandiをプリキモに適応拡大申請
  • CHMPが5種類の新薬の承認を支持
  • セルジーンの乾癬性関節炎治療薬が米国で承認
  • 米国でもリーシュマニア治療薬が承認
  • ゾレアが米国でも特発性慢性蕁麻疹に承認


【今週の話題】


ASCOが抗癌剤試験のハードル引き上げを提言

(2014年3月17日発表)

米国臨床腫瘍学会(ASCO)が新薬の臨床試験のハードルを引き上げるよう提言した。遂にやったか、という印象だ。背景を私なりにまとめると、このようになる。

90年代の抗癌剤の試験は寿命を倍にすることを目指し、そこまで届かずにフェールするものが多かった。目標が高すぎて1.5倍に延びても統計的に有意にならなかったのである。2000年代に入り、大規模な試験を行って小さくても統計学的には有意な効果を確認する手法が普及、分子標的薬の進歩と相まって多くの新薬が続々と承認される黄金時代に入った。

しかし、選択肢が増えるにつれて、どのレジメンが最も優れているのか分からなくなってきた。薬物療法は単剤、二剤併用、三剤併用と強度を増してきたが、限界効用逓減法則に従い、一剤を追加することによる上乗せは次第に縮小。PFS(無増悪生存期間)が延びても寿命はあまり延びないケースも見られるようになった。現実路線が行き過ぎて、価格に釣り合わない小さな効果しか生まない薬が大量に発売される事態になったのである。

その一方で、発売から何年も経ってから、適切な患者に使えば大きな効果を生めることが判明するケースが現れた。例えばEGFR阻害剤。当初は効果も副作用も穏やかな薬と見られていたが、チロシンキナーゼ阻害剤はEGFR活性化変異のある腫瘍、モノクローナル抗体はrasに変異のない腫瘍だけに有効であることが判明。他の作用機序でも応答予測の研究が進み、ヘッジホッグパスウェイ阻害剤やALK阻害剤のように、初めから特定のタイプだけに発売される薬も登場した。

薬はどんな癌にも使えるのが理想で、特定の腫瘍に絞り込むことは該当しない患者を切り捨てることを意味する。だから、全ての肺癌、全ての乳癌を対象にして開発を進めるのは止むを得ない面もあるが、治験がフェールしたり小さな効果しか生めないのでは意味がない。全ての癌に大きな効果を持つ夢の新薬以外は第三の道を探索すべきなのではないか。

このような背景から、ASCOは、新薬のハードルを上げて臨床的に重要な治療効果を生むことを要求するとともに、その手段として、応答予測因子の研究の重要性も指摘した。4種類の癌について、具体的なハードルも提示した。

まず、膵癌を対象にFOLFIRINOXと呼ばれる多剤併用療法にもう一剤追加する場合は、メジアン生存期間をFOLFIRINOXの10~11ヶ月から更に4~5ヶ月延ばすこと、ハザードレシオ(HR)で言えば0.67~0.69、を求めた。また、膵癌にgemcitabine(nab-paclitaxel併用も含む)に追加する場合はメジアン生存期間を8~9ヶ月から更に3~4ヶ月延長、HR0.6~0.75を求めた。

肺癌は扁平上皮腫とそれ以外に分け、前者は標準療法のメジアン生存期間10ヶ月を2.5~3ヶ月延長、HR0.77~0.8、後者は13ヶ月を3.25~4ヶ月延長、HR0.76~0.8を目標とした。乳癌は転移性トリプルネガティブ型で転移後の治療を初めて受ける患者を対象に、標準療法のメジアン生存期間18ヶ月を4.5~6ヶ月延長、HR0.75~0.8。結腸癌で全ての前治療に進行した患者は4~6ヶ月を3~5ヶ月延長、HR0.67とした。

私たちの社会は一方向に動き出すと止まらなくなる傾向があり、だからこそ、適切なタイミングで介入し、行き過ぎを是正する必要がある。ASCOの提言には反発も多いだろうが、新薬開発が遅れるという反論は無視してよい。患者が望むのは効果の高い薬であり、新薬なら何でも良い訳ではないのだ。

リンク:ASCOの提言(Journal of Clinical Oncology、オープンアクセス、pdfファイル)

【新薬開発】


INT-747の明と暗

(2014年3月16日発表)

インターセプト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ICPT)は、先週末、INT-747(obeticholic acid、大日本住友製薬の開発コードDSP-1747)に関して二つの発表を行った。一つは胆汁性肝硬変(PBC)の第三相試験の成功。もう一つは、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の第二相試験で独立データ監視委員会が心毒性の懸念を連絡してきたことで、SECに提出した年次報告書(フォーム10-K)の中で明らかにされた。

心毒性は以前から疑いがあり、今後の解析や治験で十分な検討が必要だ。PBCは肝硬変と呼ばれているが今日の患者の多くは肝硬変ではない。NASHも薬が登場すれば症状の軽い患者も治療を受ける可能性がある。もし心毒性があるなら、病気の進行した患者だけに用いられることになるだろうから、市場性が低下する。

INT-747は胆汁酸誘導物でFXRアゴニストとされる。PPAR作動剤の標的であるPPARはFXRと複合体を形成して転写因子として機能するので、この二つの薬剤は似たところがある。

胆汁性肝硬変は自己免疫疾患と考えられ、胆管の炎症により胆汁が詰まり、肝臓に障害を与えると共にビリルビンが他の組織に悪影響を及ぼす。標準療法はursodiolで5割程度の患者が応答する。フィブレートが有効という報告もあるが、フィブレートはPPARアルファ作動剤である。NASHに関してはrosiglitazoneやpioglitazoneがバイオマーカー試験で良績を上げたが、この二剤はPPARガンマ作動剤だ。

このように、FXRアゴニストは画期的だが若干異なった薬が効果の兆しを示したことを考えればINT-747がこれらの疾患に有効でも不思議はない。問題は、単に臨床検査値を改善するだけでなく、病気の進行や症状を改善することができるかどうかだ。当然、命に係る副作用も問題になる。この意味では、NASHよりもPBCの用途の方が有望だろう。

PBC試験の主評価項目は奏効率だが、奏効の定義は、6ヶ月時点または12ヶ月時点でアルカリフォスフォターゼ(ALP)値が通常の上限(ULN)の1.67倍未満、且つ、ベースライン比15%以上低下、且つ、総ビリルビン値が正常であること。インターセプトがスポンサーとなって行った別の研究で、1年間の治療後にこの基準を満たせなかった患者は肝移植・死亡リスクが2.8倍高かった由である。私は詳細を把握しているわけではないが、裏付けがあるならば、臨床的に意味がある奏効判定基準と考えて良いだろう。

217人の患者を偽薬群、5mg錠を6ヶ月服用した後に10mgまで滴定する群、最初から10mg群を服用する三群に無作為化割付して12ヶ月治療したところ、12ヶ月時点の奏効率が各群10%、46%、47%となり両用量ともに偽薬比有意に高かった(p<0.0001)。ALP値低下率は各群5%、33%、39%でこれもp<0.0001。主な有害事象は掻痒で、各群0%、1%、10%の患者がこの有害事象により治験を離脱した。

掻痒はPBCの代表的な症状でもあるので増加は好ましくないが、滴定で抑制できそうだ。効果も大差なさそうなので、至適用法のように見える。気になるのは深刻な有害事象が増加したこと。具体的な内容は明らかではなく、また、治療医は薬物関連と判定してはいないようなので、判然としない。延長試験では必要に応じて25mgまで増量するプロトコルを採用しているので、安全性の解明が進むだろう。

NASHはNIH(米国立医療研究所)主導の第二相試験が中間解析で成功と判定されたが、7人、10件の心血管深刻有害事象が発生したことが明らかになった。治験は進行中なので、独立データ監視委員会は偽薬群と25mg群の群別内訳を会社側に報告していないが、INT-747群の薬物関連疑い例2例については概要を伝えたようだ。

インターセプトはどちらも薬物関連とは考え難いと結論しているが、LDL-C値が上昇する副作用を持っていることや、同じようにLDL-C値が上昇するrosiglitazoneに心毒性の疑いが掛かっていることを考えれば、慎重な分析が必要だろう。

INT-747はQT試験や薬物相互作用試験などの基本的な試験が未実施で、また、治験で用いられた製剤と市販用の製剤の同等性試験もこれからである模様だ。これらが完了し延長試験の長期安全性データが蓄積された段階で承認申請に向かう予定。

リンク:インターセプトのプレスリリース

リンク:インターセプトの10-K

日本人ベンチャーの第三相が成功

(2014年3月19日発表)

カリフォルニアのエマウス・ライフ・サイエンシーズ社は、Levoglutamide(L-グルタミン)の鎌状赤血球病第三相試験の成功を発表した。2014年央に米国で承認申請する予定。同社のCEOは新原豊医学博士。日本人が米国で設立したバイオベンチャーの開発品が承認されれば、Amitiza(lubiprostone、和名アミティーザ)を開発したSucampo Pharmaceuticals以来の快挙だ。

この試験は、鎌状細胞貧血症や鎌状ベータ-0地中海性貧血症の患者230人を組入れて米国の31の医療施設で実施された無作為化割付二重盲検偽薬対照試験。経口用粉末製剤を一日二回、48週間投与し、クリーゼ(危機<発作>)頻度を観察したところ、偽薬比25%小さかった(p=0.008)。二次的評価項目の入院頻度も33%低下した(p=0.018)。

鎌状赤血球病は遺伝性の血液疾患で、赤血球の形が鎌(三日月)状で酸化して小血管に詰まり、痛みや臓器障害をもたらす。米国の罹患数は10万人、EUは8万人とのことだ。アミノ酸の一つであるグルタミンになぜ効果があるのか不思議だが、赤血球の酸化を防ぐことなどが指摘されている。

治験が一本で足りるのかどうかも良く分からない。短腸症候群に承認されている模様だし、アミノ酸なので副作用リスクは問題ないのだろう。

リンク:エマウスのプレスリリース

ノボ、PEG化第VIII因子の最初の第三相が成功

(2014年3月19日発表)

ノボ ノルディスクは、NN7088(turoctocog alfa pegol)のA型血友病第三相試験の成功を発表した。NovoEightの活性成分をPEG化したもので、投与頻度が4日に一回と少なく、出血予防用途に適している。

この第三相試験では、第VIII因子による治療を受けたことのある患者を、4日に一回予防的投与する群(n=175)と出血時に治療する群(n=11)に割付けたところ、予防群の出血頻度が年率1.3回と良好に管理できた。一方、都度治療群は30.9回だった。予防群の一人に第VIII因子インヒビターが見られたが、この程度の頻度なら既存の製剤と大差ないようだ。第三相は他に3本が進行中で、結果を待って来年、承認申請に向かうのではないか。長期作用性第VIII因子の開発販売競争が一層激化しそうだ。

リンク:ノボのプレスリリース

インヴェガの三ヶ月製剤の第三相が成功

(2014年3月20日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはInvega Sustenna(paliperidone palmitate)の新製剤の第三相統合失調症再発予防試験が成功したことを発表した。エラン社のナノクリスタル技術を用いた筋注用の長期作用性製剤で、09年に米国で承認された製剤は月一回投与だが、新製剤は3ヶ月間持続する。臨床試験では1ヶ月製剤で症状を安定化した上で新製剤と偽薬群に割付けて再発頻度を比較した。事前に予定されていた中間解析で主目的を達成、完了することとなった。

統合失調症の治療では、急性期の薬物療法が奏効し安定化したとしても、再発リスクが高い患者は、服用を続けることになる。有効な薬は数多く存在するし今回の試験ではオリジナルの製剤が承認されているので、継続療法が必要な患者に偽薬しか投与しないのは医療倫理に反する虞がある。このため、この種の試験は中間解析を成功させ早めに手仕舞いすることが多い。要するに、繰上完了したのは効果が予想以上に高かったからではなく、シナリオ通りと推定される。

リンク:JNJのプレスリリース

GSKの癌治療用ワクチンは肺癌もフェール

(2014年3月20日発表)

グラクソ・スミスクラインは、MAGE-A3の第三相非小細胞性肺癌アジュバント試験がフェールしたと発表した。悪性黒色腫に次ぐ、二回目のフェールだ。どちらも、特定の遺伝子シグナチュアを持つ患者に限定した解析が主評価項目の一つとして予定されており、ラストチャンスになる。

MAGE-A3はこれらの癌でしばしば過剰発現している表面抗原で、上記二試験はMAGE-A3陽性癌だけを組入れた。免疫刺激力の高いアジュバントと共にワクチンとして投与して、免疫機構に当該癌を攻撃させる。肺癌試験では、1AからIIIB期で完全切除に成功した患者に27ヶ月間に13回、筋注した。しかし、全ユニバースの無病生存期間も、化学療法未施行サブグループ(化学療法は免疫力を低下させるのでこのサブグループの方が応答が良い可能性があった)のそれも、偽薬と大差なかった。

リンク:GSKのプレスリリース

トラクリアのアウトカム試験がフェール

(2014年3月17日発表)

アクテリオン(SIX:ATLN)は、肺動脈高血圧症治療薬Tracleer(bosentan、和名トラクリア)の第4相アウトカム試験がフェールしたと発表した。sildenafilを服用している症候性肺動脈高血圧症患者に追加投与して病状の悪化や死亡リスクを偽薬と比較したが、相対リスク削減率は17%、p=0.25に留まった。探索的解析で16週6分歩行試験が21.8メートル改善し、p=0.01となったが、治療効果はあまり高くない。意外な結果である。

同じエンドテリンA/B受容体拮抗剤である同社の新薬、Opsumit(macitentan)は、同様な試験で相対リスク削減率が低用量で30%、後に承認された高用量は45%だった。Tracleerの数値は見劣りするが、理由は明らかではない。検出力が足りなかったのかもしれないし、既にsildenafilで治療を受けている患者に追加投与しても限界効用は小さいのかもしれない。もしそうならば、PDE-5阻害剤併用は注目されている用法だけに、重要な知見だ。

リンク:アクテリオンのプレスリリース

【承認申請】


Xtandiをプリキモに適応拡大申請

(2014年3月18日発表)

メディベーション(AMEX:MDV、Nasdaq:MDVN)と開発販売パートナーであるアステラス製薬は、Xtandi(enzalutamide)の適応拡大申請を米国で行った。EUでも申請予定。去勢療法に反応しなくなった前立腺癌に用いる経口剤で、現在は化学療法を受けた患者の二次治療薬として承認されているが、化学療法施行前の患者に用いることを申請。

前立腺癌は高齢者が多く、副作用の多い化学療法は症状が悪化するまで施行しないのが一般的だ。化学療法施行前(キモセラピーの前なので略してプリキモ)の患者は無症候性も含まれるので、対象患者が大きく増加する。Xtandiの作用機序は去勢療法薬と似ているので、将来は薬物療法の第一選択の一つになって、遥かに多い患者に用いられる可能性もあるだろう。

リンク:両社のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


CHMPが5種類の新薬の承認を支持

(2014年3月21日発表)

EUの薬品規制機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、3月の会議で5種類の新薬とTamifluのGE薬などについて肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内に承認されることになるだろう。

まず、米国のエンドサイト(Nasdaq:ECYT)がMSDと提携して開発したVynfinit(vintafolide)を、ある種の卵巣癌に条件付き承認することが肯定された。アルカロイド系抗癌剤をビタミンB9と結合した薬で、ビタミンB9が腫瘍の葉酸受容体に結合し、細胞内に取り込まれて分離した抗癌剤が腫瘍を攻撃する。適応になるのは白金薬抵抗性卵巣癌のうち、全標的病変で葉酸受容体が発現している場合。白金抵抗性卵巣癌の40%が該当する模様だ。

Doxil(doxorubicin)と併用した後期第二相試験では、PFSがメジアン5.5ヶ月とDoxilだけの群の1.5ヶ月より長く、ハザードレシオ0.38、p=0.018だった。p値はそれほど良くなく、また、Doxilの実績投与量に偏りがあった模様なので、エビデンスとしての磐石性は今一つだ。また、全生存のハザードレシオは1.1で悪く、但し、予後因子の偏りを調整すると0.48と大変良くなる。

これらのデータは無作為化割付が上手く行っていないような印象を与える。Vynfinitが承認されるかどうかは議論の的だったが、私にはサプライズとなった。第三相試験が進行中なので、やがて結論が出るだろう。

葉酸受容体の発現検査はCT/MRIとSPECTを用いる模様。まずビタミンB9を投与して様々な細胞の葉酸受容体に結合させたうえで、Folcepri(etarfolatide)を99mTcで標識して投与して、標的病変に分布するかを調べる。

エンドサイトは、非小細胞性肺癌のdocetaxel併用二次治療後期第二相試験が成功したことも発表した。単剤投与群は中間解析で無益性認定となったが、併用群のPFSはdocetaxel群と比べてHR0.75、p=0.0696だった。この試験はp<0.10なら成功と判定するプロトコルであった由だが、何れにせよ第二相試験なので、あまり細かいことを言ってもしょうがないだろう。この試験も全標的病原で葉酸受容体陽性の癌に対象を絞り込んでいる。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:両社のプレスリリース

リンク:肺癌試験に関するプレスリリース

次に、ジョンソン・エンド・ジョンソンのSylvant(CNTO 328、siltuximab)が多中心性キャッスルマン病の治療薬として支持された。IL-6を標的とするキメラ抗体で、IL-6受容体を標的とするヒト化抗体である中外/ロシュのActemra(tocilizumab)と似ている。キャッスルマン病の治療薬はEUでは初めて。多中心性は特に症状が重い。HIVやHHV-8(ヘルペスウイルスの一種)が陰性の患者が適応になる。陽性の患者に用いると免疫が抑制され増悪する可能性があるからだろう。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:JNJのプレスリリース

第三は武田薬品のEntyvio(vedolizumab)で、中重度活性期クローン病や中重度活性期潰瘍性大腸炎の治療に用いる。免疫細胞が発現するアルファ4ベータ7に結合するヒト化抗体で、血管壁に接着し内部を通り抜けて組織に移行するのを妨げる。

バイオジェン・アイデックのTysabri(natalizumab)に似た薬だが、VCAM-1を阻害しないので進行性多病巣性白質脳症という深刻な有害事象の発生リスクが低いという説がある。尤も、Rituxan(rituximab)など他の免疫抑制剤でも報告されているので、真相はもっと多くの患者がもっと長期間、治療を受けるようになるまで明らかにはならないだろう。

リンク:CHMPのプレスリリース

第四は、EUでは三番目のSGLT2阻害剤になりそうな、ベーリンガー・インゲルハイム/イーライリリーのJardiance(BI 10773、empagliflozin)。二型糖尿病の治療に用いる。FDAは生産管理基準違反を理由に承認を見送った。FDAはこの種の情報をEMAと共有している筈だが、評価が分かれた。

リンク:ベーリンガー・インゲルハイムのプレスリリース

最後に、メディビアがジョンソン・エンド・ジョンソンと提携して開発したHCVプロテアーゼ阻害剤、Sovriad(simeprevir、和名ソブリアード、米名Olysio)。遺伝子型I型の慢性C型肝炎の治療に用いる。一日一回服用であることが長所だが、C型肝炎は様々な画期的新薬が登場しているので目立たなくなってしまった。

リンク:メディビアのプレスリリース

適応拡大では、ノボ ノルディスクの長期作用性インスリン、Tresiba(insulin degludec)と、GLP-1作用剤Victoza(liraglutide)について、前者をGLP-1作用剤と、後者を基礎インスリンと、併用することが支持された。GLP-1作用剤は低血糖症のリスクが小さいが、SU剤やインスリンと併用するとリスクが高まる。そのせいか、Tresibaを用いている患者にGLP-1作用剤を追加する時はTresibaの用量を20%減らすことを推奨した。

リンク:ノボのプレスリリース

このレポートではGE薬は初承認だけを取り上げることにしている。今回はアクタビス(NYSE:ACT)が承認申請したロシュのインフルエンザ治療薬Tamiflu(oseltamivir)のGE品(Ebilfumin)が肯定的評価を受けた。EUで承認を取れば域外の多くの国でも承認を取ることができ、国家備蓄向けに定期的な需要がある薬なので、商業的なインプリケーションは大きい。

リンク:CHMPのプレスリリース

一方、否定的評価が再確認されたのがABサイエンス社が消化管間質腫瘍用薬として承認申請したMasican(masitinib)だ。昨年11月に否定的評価を受けメーカーが再審査請求を行ったが、覆らなかった。

【承認】


セルジーンの乾癬性関節炎治療薬が米国で承認

(2014年3月21日発表)

FDAは、セルジーン(Nasdaq:CELG)のOtezla(apremilast)を乾癬性関節炎の治療薬として承認した。PDE-4阻害剤で、この疾患の経口剤は初めて。乾癬でも承認審査中で結果は9月に判明する見込み。臨床試験では3.3%の患者で5~10%の体重低下が見られたため、注意が必要。僅かだが鬱症状発生例が多かったことも、乾癬や関節炎を治療する専門医には専門外なので、留意すべき。妊娠登録も行われる見込み。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:セルジーンのプレスリリース

米国でもリーシュマニア治療薬が承認

(2014年3月19日発表)

FDAは、Knight Therapeutics(TSX-V: GUD)のImpavido(miltefosine)を、内臓、粘膜、皮膚のリーシュマニアの治療薬として承認した。リーシュマニアは原虫感染による熱帯病で、内臓や粘膜に浸潤すると致死的。皮膚や粘膜のリーシュマニア治療薬は初めて。ドイツでは09年に承認。11年にWHOが必須医薬品リストに収載している。

同社は、熱帯病用薬の開発を奨励する制度に基づき、優先審査バウチャーを受領した。自社が開発した薬を承認申請する時に、優先審査を求めることができる。転売することも可能。同社によると、これまでに3社が取得したが売却例はないとのこと。

Knight社は、Paladin LabsがEndo Health Solutionsと合併した時にスピンアウトした会社で、Impavidoなどの資産を持っている。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:Knight社のプレスリリース

ゾレアが米国でも特発性慢性蕁麻疹に承認

(2014年3月21日発表)

ノバルティスは、Xolair(omalizumab、和名ゾレア)が、EUに続いて米国でも特発性慢性蕁麻疹の治療薬として承認されたと発表した。抗ヒスタミンだけでは十分に管理できない時に用いる。ノバルティスによると患者の5割程度が該当する由だが、高価な皮注用薬なので、特に重い患者に用いられることになりそうだ。この抗IgEヒト化抗体は難治性中重度喘息症の治療薬として承認されている。0.1%程度の患者でアナフィラキシーが発生するので注意する。また、心血管・脳血管疾患のリスクが高まる可能性があり、FDAが検討中。

リンク:
ノバルティスのプレスリリース


今週は以上です。

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