2014年1月5日

海外医薬ニュース2014年1月5日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • 抗sclerostin抗体は高い骨密度改善作用を持つ
  • CF101の第三相試験がフェール
  • サノフィのLemtradaは審査完了


【新薬開発】


抗sclerostin抗体は高い骨密度改善作用を持つ

(2014年1月1日発表)

アムジェンはAMG785(別名CDP7851、romosozumab)の第二相試験論文がNew England Journal of Medicine誌に掲載されたと発表した。高用量を投与した群の骨塩密度はFosamax(alendronate、和名フォサマック)やForteo(teriparatide、和名フォルテオ)をオープンレーベルで投与した群と見比べても大きく改善しており、有望。深刻な有害事象も特に増加しなかった。現在、第三相試験中。大腿骨骨折のような重篤な骨折を予防できるか、長期投与時の安全性はどうか、が注目点になる。

AMG785はsclerostinという造骨細胞を抑制する蛋白を標的とするIg2型ヒト化抗体で、セルテック(後にUCBが買収)との共同研究の成果。作用機序の面ではビスフォスフォン酸のような骨代謝抑制剤よりも遺伝子組換え型上皮小体ホルモンForteoのような造骨促進剤に近い。

今回の第二相試験は419人の骨減少症患者を組入れて、偽薬、70mg、140mg、210mgの何れかを月一回、または偽薬、140mg、210mgを3ヶ月に一回皮注した。参考群としてFosamax(70mg週一回経口投与)やForteo(20mcg一日一回皮注)を投与する群も設定された。

結果は、偽薬群の腰椎の骨塩密度が12ヶ月で平均0.1%低下したのに対して、AMG785を投与した各群は5.4~11.3%改善し、何れも有意な差があった。Fosamax群は4.1%、Forteoは7.1%となり、AMG785を140mg、月一回投与した群(9.1%改善)はFosamax群に対して有意に上回り、210mg月一回の群(11.3%改善)はForteo群に対しても有意に上回った。

面白いのは骨代謝マーカーに与える影響で、造骨活動に関するマーカーは当初は上昇したがその後は元に戻った。一方、破骨活動に関するマーカーは安定的に低下しており、この薬が当初は造骨促進剤として、その後は破骨抑制剤として作用する可能性を示唆した。

AMG785を投与した5群合計の有害事象発生率は他の群と大差なかった。深刻な有害事象も同程度だった。最大用量である210mgを毎月投与した群では4例の深刻有害事象が発生し、その内容は乳癌、非心臓性胸痛、手首骨損壊、良性腎オンコサイトーマだった。

既存の骨粗鬆症治療薬では稀に顎骨壊死や大腿骨非定形骨折が報告されている。骨代謝抑制作用が抜歯後の顎骨のヒーリングを妨げたり、大腿骨の強度を損ねたりするのかもしれない。造骨促進剤なら回避できるかもしれないが、AMG785は骨代謝抑制作用もありそうなので、大規模長期の第三相で十分に確認する必要があるだろう。

骨粗鬆症の治療に関する考え方はこの二十年で大きく変わり、低骨塩密度イコール重大な骨折のリスクとは言えないことが判明した。多少低いだけなら薬物療法はマストではなく、また、正常でも重大な骨粗鬆症性骨折を起こす人がいるため、量だけでなく質も重要であることが分かった。新薬に求められるのは、第一に、予防用途なのだから長期的な安全性が高くなければならない。第二に、骨塩密度を向上するだけでなく臨床的に重要な骨折を防がなければならない。今回の試験で言えば、もし手首骨損壊が薬の副作用だとしたら、却って有害かもしれない。

新薬不用説を唱える人もいる。既に様々な薬が存在するのだから、薬品や医療の研究リソースを他の分野に振り分けた方が良いという意見だ。新薬の試験で偽薬群を設定することに反対する意見も同じである。有効な薬があるのに長期間に亘って偽薬を投与するのは倫理に反するというのだ。今回の試験が骨粗鬆症ではなく骨塩密度が多少低いだけの骨低下症を対象としたのも、偽薬を投じても重大な骨折のリスクが小さいからだろう。

ひとことで言えば、新薬開発にはアゲンストの風が吹いており、実用化のハードルは高い。

リンク:アムジェンのプレスリリース

リンク:治験論文(NEJM誌、オープンアクセス)

リンク:Editorial(NEJM誌、オープンアクセス)

CF101の第三相試験がフェール

(2013年12月30日発表)

イスラエルのOphthaliX社は、CF101の第三相ドライアイ・シンドローム(乾性角結膜炎)試験がフェールしたと発表した。二種類の用量をテストしたが、主評価項目でも副次的評価項目でも効果が見られなかった。同社はアデノシンA3受容体発現状況と応答性に関する事後的分析を行う予定。

CF101はイスラエルのCan-Fite BioPharmaのアデノシンA3受容体作動剤。眼科における用途は子会社のOphthaliXが、関節リウマチや乾癬は親会社が、開発している。日本は06年に生化学工業が眼科以外の開発権を取得、SI-615として関節リウマチ向けに第一相試験中。Can-Fiteの関節リウマチ試験は後期第二相がフェールしたが、アデノシンA3受容体が高発現している患者だけを組入れたPOC試験が成功した。今回の事後的分析は二匹目のドジョウを狙うのだろう。

リンク:OphthaliXのプレスリリース

【承認審査・委員会】


サノフィのLemtradaは審査完了

(2013年12月30日発表)

サノフィのバイオ薬子会社であるジェンザイムはLemtrada(alemtuzumab)を再発寛解型多発性硬化症の維持療法薬として承認申請、EUでは9月に承認を獲得したが、米国は審査完了となった。FDA側は11月の諮問委員会で稀だが深刻な甲状腺関連有害事象や免疫性血小板減少性紫斑症に懸念を表明。効能に関するエビデンスはリスクを正当化できるほど強固ではなく、特に、二重盲検ではなくオープンレーベルで試験が行われたことを重大な欠点と指摘した。今回の審査完了通知も、薬効確認試験の再実施を求めている。

Lemtradaはリンパ球のCD52を標的とするヒト化モノクローナル抗体で、Campathとして慢性リンパ性白血病に承認されている。多発性硬化症では一日一回の点滴静注を5日間連続で施行し、その後は、年に一回、3日間施行する。第三相試験ではベータ・インターフェロン製剤のRebifを活性対照薬としたが、こちらは週三回皮注なので用法が全く異なり、偽薬を用いるのはlemtrada群の患者にとってもRebif群にとっても煩わしい。

オープンレーベルで行ったのは已むを得ない面もあったのだが、二本の試験のうち一本ではRebifを投与する前に治験を離脱した患者が比較的多く、オープンレーベル試験の悪い面が出てしまった。尤も、FDAの懸念は治験デザインよりも安全性のほうが大きいのだろう。中でも、自己免疫性甲状腺関連有害事象が多発したことは予想されたこととはいえ残念だ。

リンク:ジェンザイムのプレスリリース

今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


0 件のコメント:

コメントを投稿