2014年1月12日

海外医薬ニュース2014年1月12日号




【ニュース・ヘッドライン】




  • Btk阻害剤Imbruvicaが抗CD20抗体に勝つ
  • FXRアゴニストのNASH治療試験が成功
  • BMSがNS5A阻害剤をEUでも承認申請
  • 第一三共がリクシアナを欧米で承認申請
  • FDAがアストラゼネカのSGLT2阻害剤を遂に承認
  • FDAが悪性黒色腫の新薬併用を承認
  • EUがアブラキサンを膵癌に承認


【新薬開発】


Btk阻害剤Imbruvicaが抗CD20抗体に勝つ

(2014年1月7日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)は、Btk阻害剤のImbruvica(ibrutinib)がCLL(慢性リンパ性白血病)/SLL(小リンパ球性リンパ腫)の第三相二次治療試験でジェンマブ/GSKのArzerra(ofatumumab、和名アーゼラ)より高い効果を示したと発表した。独立データ監視委員会が中間解析でPFS(無増悪生存期間)が有意に長いと認定、Arzerra群の患者がImbruvica群にスイッチすることを認めるよう勧告したもの。データは未公表。

Imbruvicaは2013年6月に再発性難治性のマントルセルリンパ腫、CLL、SLLの三適応症で米国で承認申請され、優先審査指定を経て、4ヶ月後の11月に先ずマントルセルリンパ腫で承認された。2月にはCLL、SLLでも承認されるだろう。今回の試験でPFSだけでなく全生存期間でも有意に優れていたことは承認後の普及に追い風になる。

CLLは米国で年1.6万人が診断される。マントルセルリンパ腫は5000人なので市場が4倍に増加することになる。JNJはファーマサイクリクス(Nasdaq:PCYC)から開発販売権を取得するに当たって頭金1.5億ドル、開発承認達成報奨金8.2億ドル、利益折半という気前のよい条件を受け入れたが、今のところそれに相応しい結果が出ている。

ArzerraはロシュのRituxan(rituximab、和名リツキサン)と同じ抗CD20抗体なので、おそらく、ImbruvicaはRituxanと比べても優れているのだろう。但し、ロシュの第二世代品で昨年11月にCLLの一次治療薬として承認されたGazyva(obinutuzumab)とどちらが効果が高いのかは未だ分からない。

リンク:JNJのプレスリリース

FXRアゴニストのNASH治療試験が成功

(2014年1月9日発表)

インターセプト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ICPT)は、米国立医療研究所(NIH)が実施したINT-747(obeticholic acid)の第二相非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)試験が成功したと発表した。胆汁性肝硬変でも第三相試験中で、年内に結果が出る見込み。

脂肪性肝炎は飲酒が原因と考えられていたが飲酒しない人でも発症することがあり、NASHと呼ばれる。米国では成人の12%が罹患すると推測されているが、診断を確定するためには生検が必要なので実態は良く分からない。

INT-747は胆汁酸の誘導物で、胆汁酸の核内受容体・転写調節物質であるfarnesoid X受容体を作動する。今回の第二相は主評価項目が肝臓酵素の変化ではなく生検による組織学的な評価であることが特徴。具体的には、線維症が悪化せず、且つ、NASH疾病活動スコア(最高値は8)が2ポイント以上改善した患者を奏効と判定した。283名を偽薬群と25mgを一日一回経口投与する群に割付けて72週間治療した。

中間解析はプロトコルに基づくもので、0.00305のアルファが割り当てられていたが結果はp=0.0024となり、偽薬に対する有意性が認められた。尚、一つの試験で主評価項目に関する複数回の解析を行う場合は多重性の補正を行う必要があり、今回のように中間解析を行う場合は通常の0.05より著しく厳しくして、最終解析のアルファも厳しくするのが正しい方法。但し、第二相でこのような厳格な解析方法を採用するのは珍しく、もしかしたら、承認申請を企図した試験なのかもしれない。

奏効率は未公表。また、NASH疾病活動スコアの2ポイント以上の改善が臨床的にどの程度の意味があるのか、私には知識が無い。改善するに越したことはないが、患者の生活品質や余命、肝硬変合併リスクを改善することが期待できるのでなければ効果があるとは言えないだろう。

INT-747は大日本住友製薬が日本と中国の権利を取得、日本でNASHの第二相試験中で15年中に結果が出る見込み。

リンク:インターセプトのプレスリリース

【承認申請】


BMSがNS5A阻害剤をEUでも承認申請

(2014年1月8日発表)

BMSは、EUがBMS-790052(daclatasvir)の承認申請を受理したと発表した。NS5A複製複合体阻害剤で、代償性C型慢性肝炎の治療に用いる。日米欧に多いI型ウイルスだけでなく、II、III、IV型ウイルス感染者にも有効で、インターフェロンを使わない全経口剤併用レジメンも申請された。日本でも昨年11月にIb型向けに承認申請されている。

NS5AはC型肝炎ウイルスのゲノムに含まれる蛋白で、複合体を形成して、ウイルスが宿主細胞で複製される過程に寄与する。上記のように様々な遺伝子型に有効で、NS3/4プロテアーゼ阻害剤など他のウイルスゲノム蛋白を阻害する薬とシナジーがある。

BMSは第二相でギリアッド(Nasdaq:GILD)と手を結び先方のNS5Bポリメラーゼ阻害剤Sovaldi(sofosbuvir)と併用試験を実施したが、ギリアッドはその後自社のNS5A阻害剤であるGS 5885(ledipasvir)との併用にシフト、Sovaldiとの合剤を今四半期中に承認申請する予定であり、二社の開発競争がホットになっている。

リンク:BMSのプレスリリース

第一三共がリクシアナを欧米で承認申請

(2014年1月8日、9日発表)

第一三共は日本でXa阻害剤リクシアナを2011年に発売、昨年12月に適応拡大申請したが、欧米でもSavaysa(edoxaban)という製品名で承認申請した。適応症は、非弁性心房細動で脳梗塞のリスクが高い患者の脳卒中予防と、症候性静脈血栓塞栓の治療と延長治療(再発予防)。経口抗血栓薬の新薬としては4剤目となる。既存3剤の効果や安全性は大差なく、Savaysaも同様なので、後発の不利を覆すのは容易ではないだろう。

リンク:第一三共のプレスリリース(欧州申請、和文、1月8日付)

リンク:同(米国申請、和文、1月9日付)

【承認】


FDAがアストラゼネカのSGLT2阻害剤を遂に承認

(2014年1月8日発表)

FDAは、BMSがアストラゼネカと提携して開発したSGLT2阻害剤、Farxiga(dapagliflozin、欧州名Forxiga)を二型糖尿病治療薬として承認した。腎臓で濾し取られてグルコースがSGLT2によって血液内に戻るのを阻害、排泄を促す。

承認まで2年掛かったのは臨床試験で膀胱癌が増加したため。武田のActos(pioglitazone)と同様に、膀胱癌の患者は使うべきではない。また、低血圧のリスクが見られ、高齢者や腎機能低下患者、利尿剤服用者は発生率が高まる。フェーズIVコミットメントとしては、心血管アウトカム試験のほかに、齧歯動物で膀胱癌を促進するリスクが見られたため尿の流量や内容物の変化との関連性を研究し、市販後監視試験で肝臓異常の発生や妊婦影響を調査する。

FarxigaはBMSが創製。糖尿病薬は開発・販売費負担が大きいためアストラゼネカと提携した。昨年12月、内分泌代謝領域の事業をアストラゼネカに完全譲渡することで合意している。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:両社のプレスリリース(短い!)

FDAが悪性黒色腫の新薬併用を承認

(2014年1月10日発表)

FDAは、昨年5月に承認したグラクソ・スミスクラインの悪性黒色腫用薬二剤を併用することを承認した。一つはbraf阻害剤Tafinlar(dabrafenib)、もう一つは日本たばこからライセンスしたMEK1/2阻害剤Mekinist(trametinib)。第1/2相試験の反応率データに基づく加速承認で、V600EまたはV600Kという変異を持つ癌が対象(悪性黒色腫の5割程度)。

転移性/切除不能黒色腫を組入れたこの試験では、併用群の反応率が76%、Tafinlarだけの群は54%、メジアン反応持続期間は各10.5ヶ月、5.6ヶ月だった。braf阻害剤はV600E/K変異のない黒色腫に用いると進行を早めてしまう可能性があり、陽性の患者でも皮膚の扁平上皮細胞良性腫瘍のリスクがあるが、後者はMEK1/2阻害剤を併用すると発生率が低下する可能性がある。一方、深刻な熱性反応の発生頻度や重さが大きくなるようだ。

braf阻害剤の開発ではロシュが先行したが、GSKはMEK1/2阻害剤併用を先に実用化することで逆転した。併用療法の開発をスピードアップするために他社と手を組む事例も少なくなく、上記の抗HCV薬と同様に、重要な戦略課題になっている。



リンク:FDAのプレスリリース

リンク:GSKのプレスリリース(1月9日付)

EUがアブラキサンを膵癌に承認

(2014年1月7日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)は、EUがAbraxaneをgemcitabineと併用で転移性膵癌の一次治療に用いることを承認したと発表した。臨床試験ではメジアン生存期間が8.5ヶ月とgemcitabineだけの群の6.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.72、pは0.0001未満だった。Abraxaneはナノパーティクル技術を用いてpaclitaxelをアルブミンの中に入れたもので、BMSが開発したオリジナルの製剤より忍容性に優れる。BMS品も乳癌と肺癌で承認されているが膀胱癌は初めて。

リンク:セルジーンのプレスリリース

今週は以上です。

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