2013年12月23日

海外医薬ニュース2013年12月23日号




【ニュース・ヘッドライン】




  • BMSが代謝性疾患事業を売却
  • アクテリオンは旭化成に4億ドルを払うべし
  • C型慢性肝炎の治療はこの二剤で決まり
  • キュービスト、腹腔内感染試験も成功
  • オンノコバ、rigosertibの膵癌試験がフェール
  • KalydecoのR117H変異膿胞性線維症試験結果
  • ラピアクタが米国でも承認申請
  • ビクトーザが体重管理薬として承認申請
  • ランタスのバイオシミラーが米国でも承認申請
  • CHMPがエグゼリキシスの甲状腺癌用薬などの承認を支持
  • GSK、テラバンスのCOPD合剤が米国で承認
  • アクテリオンの肺動脈高血圧症治療薬が欧州で承認


【今週の話題】


BMSが代謝性疾患事業を売却

(2013年12月19日発表)

BMSは、代謝性疾患に係る提携資産をアストラゼネカに売却することで合意した。代価は一時金27億ドルと承認・販売目標達成報奨金14億ドル及び2025年までの売上ロイヤルティ。アストラゼネカが一部の資産を売却する場合は更に2.25億ドルを支払う。BMSで当該事業に係る4100人はアストラゼネカに転籍、研究開発や製造に係る従業員はBMSに残る。英国上場基準に則して算出された譲渡資産の公正価値は83億ドル、2012年の税前利益は4億ドルの赤字。

両社は07年に提携、BMSが創製したDPP-4阻害剤Onglyza(saxagliptin、和名オングリザ)やSGLT2阻害剤Forxiga(dapagliflozin)、BMSが買収したアミリンのアミリン誘導体Symlin(pramlintide acetate)、GLP-1作用剤Byetta(exenatide、和名バイエッタ)とその長期作用性製剤Bydureon、遺伝子組換え型レプチンmetreleptinなどを開発販売している。BMSと言えばドイツのメルクから導入したmetforminが大成功し糖尿病治療薬で大きなプレゼンスを持っていたが、少なくとも一旦は、姿を消すことになる。

重点領域を明確にして開発予算を集中的に投下する戦略がポピュラーになったが、各社の重点領域は殆ど同じなので、結果的に、開発競争は緩和しない。一流の研究体制を持つ企業同士なので競争は熾烈になるばかりである。その中でユニークなのがBMSの戦略で、Xa阻害剤でもファイザーと開発販売提携する一方、腫瘍学や自己免疫疾患では単独で独創的な新薬を次々と商品化している。

今回の戦線縮小も、開発や販売促進に費用が掛かりその割には他社製品と差別化しにくい分野ではなく、画期的新薬が続々と登場し高い価格が許容される高採算領域に特化することにより資本効率と利益成長力を強化する狙いだろう。他社の開発品を模倣し同じような製品を販売力に任せて拡販するme-too drug戦略と一線を画している。ビッグ・ファーマを目指す会社以外にとっては注視すべき戦略だ。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

アクテリオンは旭化成に4億ドルを払うべし

(2013年12月19日発表)

旭化成がスイスのアクテリオン社を提訴した損害賠償訴訟の控訴審は、原審を支持し、アクテリオンと経営陣に4.07億ドルを支払うよう命じた。アクテリオンは上告する考え。

旭化成は06年に脳血流改善剤エリル(fasudil)をCoTherix社にライセンスした。狭心症や肺動脈高血圧症の治療薬として開発されるはずだったが、アクテリオンがCoTherixを4.2億ドルで買収しライセンス返還したため、頓挫した。アクテリオンは安全性懸念を理由に挙げたが、旭化成は、アクテリオンの主力製品であるTracller(bosentan、和名トラクリア)の競合品の発売を阻止することが目的と見做し、契約違反で商事調停を求めると共に、アクテリオン及び3名のオフィサーに対して損害賠償を求めた。

ICCによる仲裁裁定はCoTherixの契約違反を認定し、0.91億ドルの賠償を課した。損害賠償請求裁判は第一審がアクテリオンに補償的賠償金、3人に懲罰的賠償金を課し、アクテリオンは2011年の決算で特別損失を計上した。今回、控訴審が原審を支持したことによって、ほぼ決着したと言ってよいだろう。企業を買収した後に開発プロジェクトの見直しを行うのはごく一般的であり、なぜこのような結果になったのか分からないが、おそらく、内部文書や内部告発が決め手になったのだろう。

リンク:アクテリオンのプレスリリース

【新薬開発】


C型慢性肝炎の治療はこの二剤で決まり

(2013年12月18日発表)

ギリアッド(Nasdaq:GILD)は二種類の抗HCV薬の合剤を用いた遺伝子型I型のC型慢性肝炎の第三相試験三本の結果を発表した。一日一回、一粒を12週間服用するだけで9割以上の患者が奏功、一次治療だけでなく二次治療でも奏効率9割、一次治療なら8週間の治療で終わらせることも可能、という大変良い内容だ。14年第1四半期に承認申請する予定。日本でも第三相試験が行われている。

以前取り上げたアッヴィの4剤併用試験は難治性の肝硬変合併患者は対象外だったが、ギリアッドの試験は2割程度、組入れており、価値が高い。インターフェロンもribavirinも要らない、二剤併用でこれだけの成果が上がるなら、4剤併用の必要はないだろう。I型C型慢性肝炎治療の決定版と言えそうだ。

ギリアッドは今月、米国でNS5Bポリメラーゼ阻害剤Sovaldi(sofosbuvir)の承認を取得した。WAC(問屋取得価格)が4週間分で28000ドルという大変高価な薬である。今回の合剤はNS5A複製複合体阻害剤GS 5885(ledipasvir)を配合したもので、sofosbuvirは400mg、ledipasvirは90mg。初めて治療を受けるナイーブ患者を対象とした一次治療試験二本と、二次治療(プロテアーゼ阻害剤を使う三剤併用療法を受けた患者も対象)一本が行われた。

一次治療におけるSVR12(治療終了後12週間経ってもウイルスが検出されなかった患者の比率)は、ION-1試験が12週間の治療で97.7%、ribavirinを併用した群が97.2%。ION-3試験は12週間で95.4%、8週間投与した群は99.1%、ribavirin併用で8週間投与した群は94.0%。二次治療のION-2試験は12週間で93.6%、ribavirin併用群は96.4%。各群大差なく、ribavirinは不要、一次治療は8週間で足りそうだ。

一部の試験では24週間コースの群も設けられているが、プロトコルを変更し12週間群の解析を先に行った。主な有害事象は疲労や頭痛。ribavirin併用群は悪心や不眠も増加した。貧血症の発生率は0.5%でribavirin併用群の9.2%より小さかった。

リンク:ギリアッドのプレスリリース

キュービスト、腹腔内感染試験も成功

(2013年12月16日発表)

キュービスト(Nasdaq:CBST)は、CXA-201(ceftolozaneとtazobactamの合剤)の第三相複雑腹腔内感染症試験の成功を発表した。metronidazole併用で、効果がmeropenemと非劣性だった。先に成功した複雑尿道感染症と合わせて、14年上期に米国で、欧州でも下期に承認申請する予定。

CXA-201は静注用複合セファロスポリンで、アステラス製薬から世界開発販売権を取得したグラム陰性緑膿菌に対する活性が既存のセフェム経抗生剤より高いceftolozaneとベータラクタマーゼ阻害剤tazobactamを配合。米国では認定感染症製品(QIDP)資格を持ち、承認後は5年間の特許期間補填を受けることができる。

この試験では、両群とも4~14日間治療したところ、細菌学的除菌成功率の差の95%信頼区間が-8.9%~0.5%となり、非劣性マージンの10%を下回った。この評価項目はFDAが求めたものだが、EUが求めた26~30日後の臨床的寛解率でも99%信頼区間が-4.2~4.3%となり、非劣性マージンの12.5%を下回った。主な有害事象は悪心嘔吐、下痢、発熱、不眠など。

リンク:キュービストのプレスリリース

オンノコバ、rigosertibの膵癌試験がフェール

(2013年12月17日発表)

オンコノバ(Nasdaq:ONTX)は、ESTYBON(rigosertib)の第2/3相転移性膵癌一次治療試験が中間解析で無益性認定となったことを発表した。rigosertibはPI-3やPLKを阻害する小分子薬。このadaptive試験ではgemcitabineと併用する効果を検討したが、治験を続行しても成功する可能性が低いため、打ち切られることになる。

難治性のMDS(骨髄異形成症候群)でも第三相試験中で、成否は今月中または14年第1四半期に判明する予定。rigosertibは日本ではシンバイオ製薬が、欧州ではバクスターがライセンスしている。

リンク:オンコノバのプレスリリース

KalydecoのR117H変異膿胞性線維症試験結果

(2013年12月19日発表)

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)は、Kalydeco(ivacaftor)の適応拡大試験の結果を発表した。フェールしたが、18歳以上のサブグループに限れば有意な呼吸能力改善効果が示唆されたため、FDAと相談する考え。

膿胞性線維症はCFTRという蛋白の機能不全が関与しているが、原因となる遺伝子変異は様々である。Kalydecoは2012年にG551D変異型向けに承認されたが、単剤、またはVX-661併用で他の型に対する効能も研究されている。今回の第三相試験はR117H変異型に対するもので、FDAのブレークスルー・セラピー指定を受けている。6歳以上の患者69人を組入れたが、%予測1秒量の変化に偽薬比有意な差は無かった。

しかし、このうち18歳以上の患者50人に関する事前に予定されていた解析では、変化幅で5ポイント、p=0.01、変化率で9.1%、p=0.008と効果の兆しが示唆された。通常なら、主評価項目がフェールした以上二次的評価項目やサブグループ分析は当てにならないと断じるところだが、難病だけに無視できない。データの細部に問題が無く、17歳以下の患者との違いを合理的に説明できるならば、承認の可能性があるだろう。

膿疱性線維症の患者は世界で7万人、うち米国は3万人で、このうち既に承認されているG551D変異型は4%、適応拡大試験が成功し承認審査中の非G551Dゲーティング変異型は1%、今回の18歳以上のR117H変異型も1%。VX-661併用で第三相試験が進行中のF508欠損ホモ接合型が49%なので、ここまで適応拡大すれば過半の患者に対応できるようになる。

リンク:ヴァーテックスのプレスリリース

【承認申請】


ラピアクタが米国でも承認申請

(2013年12月20日発表)

バイオクリスト(Nasdaq:BCRX)は、米国でBCX-1812(peramivir、和名ラピアクタ)を非複雑性インフルエンザの治療薬として承認申請した。この静注用ノイラミニダーゼ阻害剤は日本で09年に承認されたが米国での開発は難航し、経口剤や筋注用製剤の開発は中止、日本と同じ点滴静注で重篤入院患者の第三相試験が実施されたが中間解析で無益性が認定された。なぜ承認申請できたのか、良く分からない。

リンク:バイオクリストのプレスリリース

ビクトーザが体重管理薬として承認申請

(2013年12月20日発表)

ノボ ノルディスクは、二型糖尿病治療薬Victoza(liraglutide、和名ビクトーザ)の活性成分を体重管理薬として欧米で承認申請した。食欲やインスリン分泌を調整する腸ホルモンGLP-1のアミノ酸配列の一部を置換し脂肪酸を結合したもの。Victozaは最大で一日1.6mgまで投与されるが、体重管理試験では1.8mg又は3mgを投与した。用量間の差は小さいように感じられるので、承認されるのは二型糖尿病でも数多くの治験実績がある1.8mgだけかもしれない。

リンク:ノボのプレスリリース(pdfファイル)

ランタスのバイオシミラーが米国でも承認申請

(2013年12月20日発表)

二型糖尿病領域で提携しているイーライリリーとベーリンガー・インゲルハイムは、前者が開発したLY2963016を米国で承認申請したと発表した。サノフィ・アベンティスのベストセラー持効性インスリン、Lantus(insulin glargine、和名ランタス)と同じ活性成分を持つバイオ後続品だが、形の上ではFDA法505条(b)(2)に基づく承認申請なので、薬局における自動代替(処方箋に特定の製品名が記されていても薬剤師の判断で代替可能)の対象にはならない。

まあ、バイオ後続品として承認されても自動代替のハードルは高いだろうから、結果は大差ないだろう。EUでは今年7月に承認申請が受理された。

リンク:両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPがエグゼリキシスの甲状腺癌用薬などの承認を支持

(2013年12月19日発表)

CHMPは12月の会議でエグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)のCometriq(cabozantinib)などに肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヶ月以内にEUで承認されることになる。尚、CHMPは今回の会議から事前に議題を、事後には議事録も公開することになった。米国と同様に、域内国民に対する情報開示責任、説明責任を果たす狙いだ。日本も部会の議論の活発化と判断の根拠の開示、そして、伏字の制限が望まれる。

リンク:CHMPのプレスリリース

エグゼリキシスのCometriqはVEGF受容体やmet、RET、kit、flt3などを阻害するマルチ・キナーゼ阻害剤で、プログレッシブな切除不能の局所進行性・転移性甲状腺髄様腫(甲状腺癌の1割以下を占める)に承認申請された。第三相試験ではPFS(無増悪生存期間)が11.2ヶ月と偽薬群の4.0ヶ月を大きく上回った。下記のCHMPのリリースによると、RETに変異のない癌に対する効果が弱い可能性があるようだ。主な有害事象は下痢、手足症候群、体重食欲低下、悪心、疲労など。

EUで承認後はスエーディッシュ・オーファン(STO:SOBI)が2015年まで販売支援する。米国では11月に承認。前立腺癌でも第三相試験中。

リンク:EUのプレスリリース

リンク:エグゼリキシスのプレスリリース

ジョンソン・エンド・ジョンソンのSirturo(bedaquiline)は多剤耐性肺結核治療薬として条件付きの承認が肯定された。治験で死亡率が対照群より高かったためか、他に適切な治療法がない場合に限定された。この病気で今年、肯定的意見を受けたのは3剤目。第二相標準療法併用試験では24週陰転率が78%と標準療法群の58%を上回った。米国でも今月、同様な限定付きで承認されたが、死亡リスクが高まる可能性が枠付警告されている。

リンク:CHMPのプレスリリース

ノバルティスのアルコン子会社が高眼圧症と開放隅角緑内障の治療薬として承認申請したプロスタグランディンF2アルファ誘導体、Izba(travoprost)点眼液も肯定的意見を受けた。

リンク:CHMPのプレスリリース(pdfファイル)

Galderma InternationalのMirvaso(brimonidine)も、成人の酒さによる顔面紅斑の治療薬として肯定的意見を得た。8月に米国でも承認されている。

リンク:CHMPのプレスリリース(pdfファイル)

インドのPiramal Imaging社がアルツハイマー病の診断用薬として承認申請したNeuraceq(florbetaben)も肯定的意見を得た。米国で12年、欧州でも13年に承認されたイーライリリーのAmyvid(florbetapir)と同様に、PETでベータ・アミロイドの蓄積状況を調べるのに用いる。ベータ・アミロイド検査の有用性は明らかではないため、商業的なポテンシャルは不透明。Piramalは2012年にバイエルからPET検査用薬事業を買収した。

リンク:CHMPのプレスリリース(pdfファイル)

新製剤では、ロシュのRoActemra(tocilizumab、和名アクテムラ)の皮注用製剤が支持された。日本で今年3月に、米国でも10月に承認されている。既存の製剤は4週間に一回、静注するが、新製剤は週一回、自己注が可能。

リンク:ロシュのプレスリリース

一方、テバ製薬がアクティブ・バイオテック(Nasdaq Nordic:ACTI)からライセンスして再発寛解型多発性硬化症の維持療法薬として開発、承認申請したlaquinimodは、意見がまとまらなかった。1月の会議で再検討されるようだ。アクティブ・バイオテックがこのことを発表したのは、今回から議事録が公開されるので上場企業として適時開示したほうが良いと判断したからだろう。laquinimodの第三相試験は一勝一敗となり、今年3月に三本目の試験が始まった。

リンク:アクティブ・バイオテックのプレスリリース

【承認】


GSK、テラバンスのCOPD合剤が米国で承認

(2013年12月18日発表)

グラクソ・スミスクラインとテラバンス(Nasdaq:THRX)は、米国でAnoro(umeclidiniumとvilanterolの合剤)がCOPDの維持療法として承認されたと発表した。長期作用性ムスカリン拮抗剤と長期作用性ベータ2作用剤の合剤で、一日一回、吸入するだけで足りる。深刻な副作用は、逆説的な気道閉塞、心血管副作用、緑内障、尿滞留など。長期作用性ベータ2作用剤と喘息関連死のリスクに関する枠付警告が付せられた。

グラクソ・スミスクラインは喘息症・COPD維持療法薬Advair(fluticasoneとsalmeterolの合剤)が大成功したが、特許切れ期に入っていて、デンマークでノバルティスのサンド子会社のGE品が承認されたところ。AnoroはAdvairの穴を埋めるべき新薬の一つだが、Advairほどの成功は望めないだろう。

両社は呼吸器系新薬のパイプラインを持ち寄って共同開発している。今回の活性成分は何れもGSKのパイプラインなので、テラバンスは米国承認時に3000万ドル、発売時に3000万ドルを支払い、売上高の10%を得ることができる。

リンク:両社のプレスリリース

アクテリオンの肺動脈高血圧症治療薬が欧州で承認

(2013年12月20日発表)

アクテリオン(SIX:ATLN)は、Opsumit(macitentan)が肺動脈高血圧症の治療薬として欧州で承認されたと発表した。WHO機能分類II型とIII型の成人患者の長期療法として単剤または併用で使用する。Tracleer(bosentan、和名トラクリア)と同じ経口エンドテリンA/B受容体拮抗剤で、違いは、アウトカム試験のエビデンスを持っていること。尤も、効能の中心は6分歩行検査の悪化を遅らせることなので大差ないとも言える。肝機能検査値異常の発生率は高くなさそうだ。来年2月に先ずドイツで発売の予定。米国では10月に承認された。

リンク:アクテリオンのプレスリリース

今週は以上です。

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