2013年12月1日

海外医薬ニュース2013年12月1日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • キュビスト、アステラスが創製した抗生剤の第三相が成功
  • オレキシジェン、体重管理薬の心血管アウトカム試験中間データをFDAに提出へ
  • Noxafilの新製剤が米国で承認
  • FDAがAvandiaの処方制限を緩和


【新薬開発】


キュビスト、アステラスが創製した抗生剤の第三相が成功

(2013年11月25日発表)

キュビスト(Nasdaq:CBST)は、静注用複合セファロスポリンの第三相複雑性尿道感染症(cUTI)治療試験が成功したと発表した。良く分からないのは、数値が二本の試験の統合解析であることだ。通常は二本の試験で薬効を確認する必要があるが、プレスリリースには個々の試験の首尾に関する記述はない。事前に医薬品審査機関の同意を得たのだろうか?

今回公表されたデータ自体は良好だ。この試験は治療効果を静注用levofloxacin(和名クラビット)と比較した非劣性試験。主評価項目は細菌学的除菌かつ臨床的治癒の奏効率。FDAの基準に即したものだ。副次的評価項目は細菌学的除菌奏効率。EMA(欧州薬品庁)の基準に則した。臨床的治癒の判定は、治療終了の5~9日後に行われた。再燃することがあるので、念を押したのである。

結果は、95%信頼区間が2.3~14.6%となり、下限が非劣性マージンの-10%を上回ったため、非劣性と認定された。0%を上回っているので奏効率が高いと考えてもよいだろう(統計学的には正しくない考え方かもしれないが)。治療時発現有害事象は34.7%で、levofloxacin群の34.4%とそれほど変わらなかった。抗生物質は稀に深刻な有害事象が発生するので、安全性については詳細なデータが明らかになるまで何とも言えないだろう。

CXA-201(ceftolozane、tazobactam合剤)はアステラス製薬からライセンスした多剤耐性緑膿菌にも優れた力価を持つセファロスポリンと、ベータ・ラクタマーゼ阻害剤を配合したもの。複雑性腹腔内感染症でも第三相試験が二本、進行中で今月中に開票の見込み。院内感染細菌感染症の第三相試験も予定されている。

この三適応症でFDAからQualified Infectious Disease Products指定を受けており、承認時に付与される新薬排他権期間が通常より5年分、上乗せされる。発売後はアステラスに売上高の一定割合(10%未満)のロイヤリティを払うことになる。

リンク:キュービストのプレスリリース

【承認審査・委員会】


オレキシジェン、体重管理薬の心血管アウトカム試験中間データをFDAに提出へ

(2013年11月25日発表)

オレキシジェン(Nasdaq:OREX)は、体重管理薬Contraveの心血管アウトカム試験の中間解析が良好な結果になったと発表した。このデータをFDAに提出し、順調なら来年6月に承認を取得する考え。販売は武田薬品が行い、オレキシジェンは共同販促する権利を留保している。

Contraveは鬱病や薬物依存の治療薬として承認されているbupropionと、アルコールやオピオイド依存の治療薬naltrexoneの夫々の徐放性製剤を合剤にしたもの。どちらもエネルギー消費を促したり空腹感を抑制したりする作用を持ち、また、naltrexoneは代償機構を抑制するのでシナジーがある。徐放性製剤を用いているのは作動のタイミングが重要であるためとのことだが、どちらの活性成分もジェネリック化しているので、特許対策という面もありそうだ。

2010年3月に米国で承認申請され、内分泌学代謝学薬諮問委員会では13対7で承認を支持する委員が反対を上回ったが、FDAは心血管疾患リスクが高まらないことを確認するよう求めた。このため、2012年6月にLIGHT試験を開始。第一のハードルは中間解析でハザードレシオの95%信頼区間上限が2を下回ること。今回、数値は公表されなかったが、この条件を満たしたとのことなので、承認に向けて一歩前進したことになる。

肥満症を治療する最大の目的は心筋梗塞など心血管疾患を防ぐことであり、本来なら、ハザードレシオは1を下回るべきである。従って、リスクが2倍より低いというだけでは足りず、おそらく、糖尿病治療薬と同様に、最終解析でリスクが1.3倍未満であることを確認しなければならないだろう。LIGHT試験は二重盲検が続行しており、おそらく、中間解析の数値は治験が終了するまで公表されないだろう。もし承認されたとしても不透明な状況は続くことになる。

体重管理薬は新興企業三社が開発、提携先を探していたが名乗りを上げたのは日本の二社だけだった。先に発売されたアリーナ/エーザイのBelviq(lorcaserin)もヴィーヴァスのQsymia(phentermineとtopiramateの合剤)も承認審査が長引き、発売後の売上も苦戦している。手を出さなかった欧米勢の方がFDAや米国市場を良く知っていたのである。日本企業が海外市場を理解するための方法は、一つは、海外医薬ニュースを読むことである。

もう一つは、現地の事情をよく知っている人間を現法ではなく本社のトップに迎え入れることだ。この意味で、武田薬品はよい選択をした。グラクソ・スミスクラインは人材が豊富で、世界の大手製薬会社の首脳に抜擢されたOBが数多くいる。販売が先か、それとも開発が先かは製薬会社に留まらず全ての企業が直面する課題だが、結局はどちらも重要なのだから、自分の弱点を強化すれば良い。研究所にグローバルスタンダードを導入し自分たちの価値観を医師や患者と一致させることができれば、本当のグローバル企業になれるだろう。

リンク:オレキシジェンのプレスリリース

【承認】


Noxafilの新製剤が米国で承認

(2013年11月26日発表)

MSDは、FDAがNoxafil(posaconazole)の遅延放出錠を承認したと発表した。造血幹細胞移植を受けた患者など、侵襲性のアスペルギルス感染症やカンジダ感染症のリスクが高い患者の予防に用いる。2006年に承認された経口懸濁液に次ぐ剤型で、静注用製剤も承認審査中。アゾール系の抗菌剤で、接合菌にも活性を持つことが特徴。

リンク:MSDのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDAがAvandiaの処方制限を緩和

(2013年11月25日発表)

FDAはグラクソ・スミスクラインの血糖治療薬、Avandia(rosiglitazone)の処方制限を緩和したと発表した。過去の一連の騒動が原因で売上高は激減しており、今更、回復はしないだろうが、PL訴訟には良い影響を与えるだろう。

Avandiaはグリタゾン系のインスリン抵抗性改善剤で、核転写因子であるPPARガンマを作動する。インスリン治療を受けている心血管疾患リスクの高い患者を組入れた試験で心毒性の懸念が浮上したが、当時は、インスリン抵抗性改善剤が二型糖尿病の根源的な治療法と持て囃されていたため、問題視されなかった。しかし、市販後に実施された長期投与試験で他の血糖治療薬より心筋梗塞が多く発生。症例数が少ないため統計学的な有意性はなかったが、全ての試験のメタアナリシスで有意差が出たことから、大騒ぎになった。

GSKにとって救いになったのが、EUの要請で実施した心血管アウトカム試験、RECORD試験のデータだ。標準療法であるmetforminやSU剤を投与した群と比べて、特に悪くはなかった。EUの要請で行われた試験なのでFDAはデザインに不満があったようだが、後から言っても遅い。その後、FDAは、全ての血糖治療薬に心血管アウトカム試験を求める姿勢に転じた。

結果的に無実の罪となった訳でGSKは気の毒だったが、社会を守るためには已むを得なかった。グリタゾンは第一号が心不全リスクで販売中止、第二号は心筋梗塞疑惑で殆ど使われなくなり、第三号は膀胱癌懸念が表面化した。他にも様々な化合物や、PPARアルファも作動する数多くのグリタザール系が開発されたが、その殆どが齧歯動物の癌原性試験でリスクを示し、また、臨床試験で心筋梗塞懸念や腎毒性が浮上したことから、開発中止となった。多彩な作用を持つ化合物は多彩な副作用も齎すという好例である。

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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