2013年4月28日

海外医薬ニュース2013年4月28日号




【ニュース・ヘッドライン】




  • MSDの抗PD-1ヒト化抗体がブレークスルー・セラピー指定
  • ILC:抗HCV薬の治験データが続々と発表
  • サノフィの多発性硬化症用薬は発症を遅らせる効果もある
  • GSKがumeclidiniumのモノセラピーをEUで承認申請
  • simeprevirがEUでも承認申請
  • MPS IVA治療薬がEUでも承認申請
  • セルジーンがapremilastを米国で承認申請
  • CHMPが5種類の新薬に肯定的評価、JAK阻害剤に否定的評価
  • バイオジェン・アイデックの経口多発性硬化症薬とPML


【今週の話題】


MSDの抗PD-1ヒト化抗体がブレークスルー・セラピー指定

(2013年4月24日発表)

MSDは、MK-3475(lambrolizumab)がFDAから末期黒色腫でブレークスルー・セラピー指定されたと発表した。癌細胞はB7-H1(PD-L1)を発現してTセルの抑制的刺激受容体PD-1を刺激し、活性化したTセルを抑制する。MK-3475は抗PD-1ヒト化抗体で、Tセルを活性化したままにすることによって免疫を強化する。

昨年11月の学会で132人を組入れたフェーズIb試験の中間解析が発表されているが、解析対象85例の51%が客観的抗腫瘍反応を示し、このうち9%(8例)は完全反応だった。末期黒色腫というとBMSの免疫強化療法、Yervoy(ipilimumab)が標準療法だが、MK-3475は前治療でYervoyを用いた患者27人中11人(41%)が反応した。

興味深いのは、抗PD-1抗体で開発が最も進んでいるのはBMSが小野薬品からライセンスしたフルヒト抗体、BMS-936558であることだ。非小細胞性肺癌や腎細胞腫、末期黒色腫で5本の第三相試験が進行中で、順調なら2014年後半から開票になるだろう。固定領域はどちらもIgG4を用いており、前例を見る限りではヒト化抗体もフルヒト抗体も臨床的には大差ないので、同じような薬と考えられる。

同じような薬で片方は第三相の裏付けがありもう片方は第二相のデータしかないとしたら、前者の方が有利だろう。ブレークスルー・セラピー指定を獲得することでMSDの開発プログラムがどれ位スピードアップするか、そして市販後のシェア争いがどうなるか、注目される。

リンク:MSDのプレスリリース

【新薬開発】


ILC:抗HCV薬の治験データが続々と発表

(2013年4月23日発表)

国民医療を向上するために政府に何ができるか?一例が抗HCV薬の開発だろう。米国は逸早くウイルス性肝炎のリスクを発見し、血液製剤の規制を強化すると共に、将来、多くの感染者が肝炎を発症する事態に備えて新薬開発を支援した。1988年にカイロン(後にノバルティスが買収)がC型肝炎ウイルスのゲノムを同定してから20年、ウイルスゲノムに含まれる増殖に必要な酵素を標的とするDAA(直接作用的抗ウイルス剤)が続々と第三相入りした。

4月24~28日にアムステルダムで開催されたILC(国際肝臓学会)でも数多くのDAAの第二相、第三相試験の結果が発表された。NS3/4プロテアーゼ阻害剤は既に二製品が発売されたが、利便性や忍容性、そして恐らくは効果の面でも優れる新薬が続々と第三相試験を完了、承認申請された。NS5Bポリメラーゼ阻害剤でも複数の新薬が効果、忍容性の両面で有望な結果を出している。

画期的新薬ではNS5A複製複合体阻害剤が有望な成績を上げており、開発の進んでいるBMSのコンパウンドは様々な会社が併用第二相試験を行っている。

作用機序の異なる複数のDAAが登場したことによって、標準療法であったインターフェロンやribavirinを用いない多剤併用レジメンの開発も可能になり、期待に応えて、優れた治験成績を上げている。何れも経口剤なので利便性が高い。

最初に、BMSのDAA三剤併用第二相試験のデータを紹介しよう。BMS-790052(daclatasvir、NS5A複製複合体阻害剤)、BMS-650032(asunaprevir、NS3プロテアーゼ阻害剤)、BMS-791325(非核酸系NS5Bポリメラーゼ阻害剤)を遺伝子型一型(GT1)ウイルスに感染している初めて治療を受ける(『ナイーブ』)患者に経口投与したもの。

治療期間は12週間と24週間の二群が設けられたが、どちらも、SVR24(持続的ウイルス学的奏効率:治療終了後24週間経ってもウイルスが検出不能な患者の比率)が94%と高い治療効果を示した。BMS-791325を倍量に増やして行った試験では12週間コースのSVR12(24週間ではなく12週間後にウイルス検出不能だった患者の比率;SVR24より数値が数ポイント高く出るようだ)が89%だった。こちらのほうが数値が低いが、サンプル数が少ないので誤差範囲が大きいのだろう。

有害事象は頭痛、衰弱、下痢などが夫々2割前後の患者で見られた。G3以上の肝機能検査値異常は見られず、深刻な有害事象は腎結石と脳血管収縮が一例ずつ発生したが、前者は治験医が薬との関連性なしと判定、後者はウイルス量が増加したためインターフェロンとribavirinを追加した後に発生したので、薬との関連性は曖昧だ。

BMSは今年後半に第三相試験を開始する予定。

リンク:BMSのプレスリリース

さて、『NS5A複製複合体阻害剤の開発で最も進んでいるのはBMS』と書いたが、正確に言うとアルファ・インターフェロンとribavirinを併用する療法で第三相段階と最も進んでいるのがBMSで、2014~15年に承認申請される見込みだ。一方、NS5A複合体阻害剤などDAA三剤とribavirinの併用レジメンで最も先行しているのがAbbVie(旧アボット)だ。昨年、第三相に進んだ。薬が多い分、効果も高そうだ。

このレジメンは、ABT-450(NS3/4A阻害剤)、低量ritonavir(ABT-450の代謝酵素である3A4を阻害して半減期を長期化する)、ABT-267(NS5A複製複合体阻害剤)、ABT-333(非核酸系ポリメラーゼ阻害剤)、ribavirinの5剤を併用する。低量ritonavirには抗ウイルス活性がないので、以下では4剤併用と記す。ABT-450、ritonavir、ABT-267は一日一回服用なのでコンビ薬が用意される模様だ。

ILCではGT1感染者約450人を14群に割付けた後期第二相試験の結果が発表された。第三相で採用された4剤併用群のデータを見ると、ナイーブ患者のSVR24は8週間コースが88%、12週間コースが96%、24週間コースは90%となった。3剤併用群は12週間コースで83~89%だったので、大きくは変わらない。

一方、インターフェロンとribavirinの二剤併用に十分に反応しなかったヌル・レスポンダーを組入れた二次治療群では、3剤(ABT-333以外)併用12週間投与群が89%、4剤12週間群が93%、同24週間群が95%だった。

有害事象は全群合計のデータしか発表されなかった模様。主な有害事象は頭痛や疲労、深刻な有害事象は4例で、うち関節痛は薬物関連疑い例。有害事象による治験離脱は6例で、うち4例は治療関連と判定された(肝炎性胆汁鬱滞、神経過敏、自殺思慮、クレアチニン・クレアランスの低下)。

私の素朴な疑問は、全ての患者に4剤併用する必要があるのだろうか?3剤でも十分な効果があり、データ上は、4剤を必要とする患者は全体の10%程度である。ribavirin以外の抗HCV薬は高価なので副作用リスクだけでなく費用面のバランスも考えなければならない。第一選択はインターフェロンやribavirinに対する適性を検討した上で3剤併用レジメンを選択し、成功しなかったらウイルスを調べて有効な第二選択レジメンを選択する、HIV/AIDS治療と同様なプロトコルの方が良いのではないだろうか?

リンク:AbbVieのプレスリリース

NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤では、ベーリンガー・インゲルハイムのBI 201335(faldaprevir)の第三相試験結果が発表された。GT1のナイーブ患者をインターフェロンとribavirinの二剤に加えて偽薬、120mg、または240mgを一日一回服用する三群に無作為化割付し、ウイルス学的反応に応じて治療期間を変える手法で試験したところ、SVR12が各群52%、79%、80%となった。尚、この試験は被験者の2割を日本の施設が組入れた。

第二相試験では非抱合ビリルビンの上昇が見られた。第三相でも発生したが肝臓酵素の上昇は見られなかったので一安心だ。先行品にみられる貧血、ラッシュ、胃腸有害事象はリスクが若干高まる程度だった。

米国で2011年に発売されたバーテックス社のIncivek(telaprevir)やMSDのVictrelis(boceprevir)と比べて服用頻度が少ないだけでなく忍容性も優れるように見える。

リンク:ベーリンガー・インゲルハイムのプレスリリース

ギリアッド(Nasdaq:GILD)の核酸系NS5B阻害剤GS-7977(sofosbuvir)は、New England Journal of Medicine誌に第三相試験の論文が掲載された。GT2とGT3のナイーブ患者にはribavirin併用12週間でSVR12が78%。同、二次治療は12週間コースが50%、16週間コースは73%。どちらもGT3に対する奏効率はGT2より低かった。

GT1、4、5、6を組入れたアルファ・インターフェロンとribavirin併用のナイーブ患者12週間コース試験は90%。

作用機序は異なるが、プロテアーゼ阻害剤の代替的選択肢として有効だ。4月にこれらの用途・用法で米国で承認申請された。ギリアッドは自社のプロテアーゼ阻害剤やNS5A複製複合体阻害剤との併用試験も行っている。

リンク:ギリアッドのプレスリリース

リンク:New England Journal of Medicine(NEJM)の治験論文(Jacobson等、オープンアクセス)

リンク:NEJM治験論文(Lawitz等、オープンアクセス)

サノフィの多発性硬化症用薬は発症を遅らせる効果もある

(2013年4月25日発表)

サノフィのジェンザイム部門は、Aubagio(teriflunomide)の多発性硬化症発症抑制試験が成功したと発表した。

再発寛解型多発性硬化症の診断を確定するには二回目の発作を待たなければならないが、不可逆的な神経障害疾患であることを考えれば、症状やMRI画像を元に早い段階で判定し治療を開始することが望ましい。この効果を実証したのが今回の試験で、経口剤では初のエビデンスとなる。

具体的には、初めての発作を起こして再発寛解型多発性硬化症が疑われる患者を組入れて、偽薬、7mg、14mgを一日一回、平均16ヶ月投与したところ、二回目の発作が起きるなどして診断が確定するリスクが7mg群は偽薬比37%、14mg群は43%、小さかった。

Aubagioは米国で2012年に再発寛解型多発性硬化症の維持療法薬として承認されたが、再発リスク削減効果は他の経口剤と比べてやや見劣りする。おそらく、発症遅延効果も他の薬の方が高いだろう。

リンク:ジェンザイムのプレスリリース

【承認申請】


GSKがumeclidiniumのモノセラピーをEUで承認申請

(2013年4月26日発表)

GSKはテラバンス社と共同開発した長期作用性ムスカリン受容体拮抗剤umeclidiniumと長期作用性ベータ2作用剤vilanterolの合剤を昨年12月に米国で、今年1月にはEUでも、COPD維持療法薬として承認申請したが、今回、前者のモノセラピーもEUで申請した。

ベーリンガー・インゲルハイム/ファイザーのSpiriva(tiotropium)は2012年の売上高が36億ユーロに達するベストセラーに育った。umeclidiniumはSpirivaの競合品。どちらも吸入用薬。

リンク:GSKのプレスリリース

simeprevirがEUでも承認申請

(2013年4月24日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、TMC435(simeprevir)をEUでも承認申請したと発表した。米国で3月に承認申請されたが、EUではGT1だけでなくGT4の慢性C型肝炎も適応とするよう求めた。

TMC435はNS3/NS4Aプロテアーゼ阻害剤。一日一回経口投与で忍容性も先行二品より良さそうだ。最大の特徴は世界に先駆けて日本で今年2月に承認申請されたこと。

リンク:ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

MPS IVA治療薬がEUでも承認申請

(2013年4月24日発表)

米国の希少疾患用薬開発企業、バイオマリン(Nasdaq:BMRN)はEUでVimizim(elosulface alfa、通称GALNS)を承認申請したと発表した。3月に米国でも申請。

適応症であるMPS IVAは、GALNSの機能欠乏が原因でグリコサミノグルカンが蓄積、骨の異形成、低身長、関節異常などを合併する。やがて車椅子が必要になり、また、頻繁に手術が必要になる。罹患率は20-30万人に一人(世界で2500~3000人、うち日米欧1000~1500人)で、世界で400人が診断済み。

リンク:バイオマリンのプレスリリース

セルジーンがapremilastを米国で承認申請

セルジーン(Nasdaq:CELG)は、CC-10004(apremilast)を予定通り3月に乾癬性関節炎の治療薬として承認申請したことを決算発表時に明らかにした。経口PDE-4阻害剤で、乾癬治療薬としても承認申請される予定。

リンク:セルジーンの決算発表リリース

【承認審査・委員会】


CHMPが5種類の新薬に肯定的評価、JAK阻害剤に否定的評価

(2013年4月26日発表)

EUの薬品承認審査機関であるEMAの医薬品評価委員会、CHMPが、4月の会議で5種類の新薬に肯定的評価を纏めた。一方、ファイザーのJAK阻害剤は否定的評価となり、米国と明暗が分かれた。

リンク:CHMPのプレスリリース

肯定的評価を受けたのは、まず、サノフィのジェンザイム部門のMACI。第三世代の自家軟骨細胞移植療法で、患者の軟骨細胞を培養し、豚コラーゲン膜に移植して、ひざ関節の損傷部位にフィブリンで固定することによって、新軟骨の成長を刺激する。臨床試験では、反応率が87.5%とマイクロフラクチャー群(軟骨に微小な穴を開ける)の68.1%を有意に上回った。3~20平方センチメートルという比較的大きな欠損に用いる。

リンク:CHMPのプレスリリース

次に、ロシュがCuris(Nasdaq:CRIS)からライセンスして開発したヘッジホッグ阻害剤、Erivedge(vismodegib)。局所進行性で切除・放射線療法不適、または、症候性転移性の基底細胞腫に用いる。該当するのは基底細胞腫の1%程度なので、米国の場合で年1万人程度と推測される。第三相試験で薬効と安全性を確認することを条件とする、条件付き承認。

リンク:ロシュのプレスリリース

更に、Avanir(NASDAQ:AVNR)がJenson Pharmaceutical Servicesを通じて承認申請したNuedexta。dextromethorphan hydrobromideとquinidine sulfateの合剤で、抗不整脈薬として用いられている前者の極低量を後者の薬物相互作用を利用してブーストする。

適応症は多発性硬化症や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の1割程度で発生する、不適切感情症状(pseudobulbar affect;突然泣いたり笑ったりする)の治療。臨床試験では偽薬群の不適切感情発現が週平均30回から10回程度に減ったのに対して、Nuedexta群は5回程度に減った。

米国ではZenvia名で2010年に承認された。



リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:
Avanirのプレスリリース

第4はヴィーヴァス(Nasdaq:VVUS)が田辺三菱製薬からライセンスして開発したDPP-5阻害剤、Spedra(avanafil)。ファイザーのViagraと同様な、性的不全治療薬。

リンク:ヴィーヴァスのプレスリリース

最後に、アステラス製薬がメディベーション(Nasdaq:MDVN)からライセンスしたXtandi(enzalutamide)。転移性去勢抵抗性前立腺癌でdocetaxelによる治療を既に受けた患者に用いる。これまでのアンドロゲン受容体拮抗剤と比べて力価が高く、受容体を刺激するリスクが小さいので、将来は、もっと早い段階でホルモン療法薬として用いられる可能性が高い。

リンク:メディベーションのプレスリリース

ファイザーのJAL阻害剤Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)は日米欧で同時承認申請され、米国で2012年11月に、日本では2013年3月に抗リウマチ薬として承認されたが、CHMPは否定的意見を出した。

薬効のエビデンス面では、構造的損傷の進行抑制作用が曖昧で、特に、二種類の用量のうち低量の5mgを投与した症例や、この薬が用いられるであろう2種類以上のDMARD(疾病修飾的抗リウマチ薬)に十分に反応しなかった症例に対する効果が確立していないと判定した。

副作用の点では、深刻な感染症や、癌、GI穿孔、肝障害などのリスクを懸念した。ファイザーは不服申立てを行う予定。

リンク:ファイザーのプレスリリース(4/25付)

このほかに、適応拡大では、セルジーンのRevlimid(lenalidomide)を5q欠失型の低度・中度1リスクの骨髄異形成症候群で貧血治療のために定期的な輸血が必要な患者に用いることが支持された。既存の適応症は多発骨髄腫。

リンク:セルジーンのプレスリリース

また、ロシュの抗リウマチ薬RoActemra(tocilizumab)を2歳以上の小児の特発性多発性関節炎の治療に用いることが支持された。methotrexateと併用だが、不応・不適患者に単剤投与することもできる。

リンク:ロシュのプレスリリース

【医薬品の安全性】


バイオジェン・アイデックの経口多発性硬化症薬とPML

(2013年4月25日発表)

バイオジェン・アイデックはドイツで20年近い販売歴を持つ経口乾癬治療薬、Fumadermの異なった塩・製剤を再発寛解型多発性硬化症の維持療法薬として開発し、今年3月に米国でTecfidera(dimethyl fumarate)として発売した。経口剤でありながら、ベータ・インターフェロンと比べて再発予防効果が高く、紅潮の発生率が3割と高いものの治験で感染症や癌のリスクが高まらず、安全性も高いと考えられる。

ところが、Fumadermや類似品でPML(進行性多病巣性白質脳症)が4例発生したことが明らかになった。同社がエランからライセンスして共同販売している多発性硬化症用薬Tysabri(natalizumab)で多発して一時は販売中止を余儀なくされた、深刻な疾患だ。

2例は医師がNew England Journal of Medicine誌にケースレポートを投稿したもの。片方はバイオジェン製品、もう片方は調剤薬局の製品(異なった成分を含んでいるようだ)を乾癬の治療に用いたところ、PML症状が発生し、MRIやウイルス検査を経て診断が確定した。Fumadermはリンパ球が大きく減少した場合、投与を中止する必要があるが、二例とも中止しなかった。

PML発症後に投与中止したところ、IRIS(免疫再建炎症症候群)を発症したため、Fumadermによる免疫力低下が関与している可能性が高い。

バイオジェン・アイデックはNEJM誌の要請を受けてこの件について回答し、他にも2例報告されていることを明らかにした。尤も、4例ともPMLのリスク因子を持っていた模様なので、Fumadermが原因かどうかは明らかではない。処方実績は18万人年とのことなので、4例ならリスクはTysabriより低そうだ。また、米国で承認された製剤の臨床試験では一例も発生していないとのこと。

Tecfideraの作用機序は、Nrf2転写パスウェイを活性化し、NFカッパB経由で炎症促進的サイトカインが分泌されるのを抑制することと、抗酸化ストレス作用とされる。多発性硬化症における作用は後者の寄与と考えられているが、3%程度の患者で重度のリンパ球減少症が発生するのは前者の作用だろう。治験で感染症や癌のリスクが見られなかったのはポジティブ・サプライズだったが、確率が低いだけでリスクがない訳ではないのだろう。

リンク:ドイツの症例報告(NEJM、オープンアクセス)

リンク:オランダの症例報告(NEJM、オープンアクセス)

リンク:バイオジェン・アイデックの回答(NEJM、オープンアクセス)

今週は以上です。

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