2013年4月14日

海外医薬ニュース 2013年4月14日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • 中国がラピアクタを承認?
  • ファイザーのCDK4/6阻害剤などがブレークスルー・セラピー指定
  • ルンドベック/武田の抗鬱剤はagomelatineよりは効果が高い
  • 米国で30年ぶりの悪阻治療薬が承認


【今週の話題】


中国がラピアクタを承認?

(2013年4月5日発表)

H7N9型インフルエンザ感染が散発している中国で、注射用抗インフルエンザ薬peramivir(和名ラピアクタ)が承認されたと報じられている。加速審査が決定されただけという報道もあるので、中国版FDAのホームページで発表分を探したが、中国語なので良く分からない。Google Translateで日本語や英語に訳してみたが、何が何だか分からない。中国語が分かる人はリンクを開いてみてください。

米国で開発しているバイオクリスト社(Nasdaq:BCRX)にとっても寝耳に水であるようだ。ザ・ストリート・ドットコムによれば、バイオクリストは中国で特許を取得しておらず、開発も導出も行っていない(日本では塩野義、韓国はグリーンクロスが販売)。米国では第三相試験の中間解析で無益性(治験を続行しても成功する可能性は殆どない)が認定されるなどして、開発が遅れている。このため、米国から輸出することもできないようだ。

中国は新型インフルエンザウイルス発生の地と見做されていて、世界から熱い視線が寄せられている。今回は、政府が生きた食用鳥類の販売を禁止したり、感染情報を国内外に報告したり、迅速な対応を取っている。そのおかげで、2009年にメキシコで新型インフルエンザの流行が始まった時より早い段階でウイルス・ゲノムが解明されるなど、対策が順調に進んでいる。

それでも、今回の承認?のように、意味不明で事実かどうかも確認できないことが起こる。中国が必要としているなら日本や韓国から輸出することもできるだろうから、中国は事実関係を明確にした方が良い。

リンク:ザ・ストリート・ドットコムのプレスリリース

リンク:中国国家食品薬品監督管理局のプレスリリース(中国語)

ファイザーのCDK4/6阻害剤などがブレークスルー・セラピー指定

(2013年4月10日発表)

ファイザーは、FDAがPD-0332991(palbociclib)を乳癌向けにブレークスルー・セラピー指定したと発表した。CDK4やCDK6を阻害して細胞周期進行を阻害する斬新な経口剤で、ブレークスルーの名に相応しい新薬だ。

2012年12月9日号で書いたように、第二相試験で高い効果を示した。閉経後局所進行性・転移性乳癌でエストロゲン受容体陽性、her2陰性の患者165人を、アロマターゼ阻害剤letrozole(Femara、和名フェマーラ)とPD-0332991(PD-991)を併用する群と、Feramaだけを投与する群に無作為化割付したところ、主評価項目のPFS(無増悪進行期間)がメジアンで各26.1ヶ月と7.5ヶ月となり、ハザードレシオ0.37、pは0.001未満と有望な結果になった。

反応率は各45%と31%で有意に上回ったが、PFSほど大きな差はなかった。主なG3/4(重度/深刻)治療関連有害事象は好中球減少症などの骨髄抑制と疲労。

第二相なのでデータの誤差は大きいと考えるべきだが、症例数の点では決して小さな試験ではない。今年2月に450人を組入れる第二/三相試験が開始された。

リンク:ファイザーのプレスリリース(4月10日)

一方、ジョンソン・エンド・ジョンソンがPharmacyclics(Nasdaq:PCYC)からライセンスして共同開発しているBtk阻害剤、PCI-32765(ibrutinib)は、新たな用途でブレークスルー・セラピー指定された。第17染色体短鎖欠損型の慢性リンパ性白血病と小リンパ球性リンパ腫の二種類で、既に指定を受けているマントルセル・リンパ腫とワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症と合わせて、四種類に増えた。

リンク:ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース(4月8日)

【新薬開発】


ルンドベック/武田の抗鬱剤はagomelatineよりは効果が高い

(2013年4月8日発表)

ルンドベックは、武田薬品と共同開発している抗鬱剤、Brintellix(vortioxetine、開発コードLu AA21004)が直接比較試験でセルビエのValdoxan(agomelatine)に勝ったことを発表した。鬱病の第一選択、第二選択であるSSRIやSNRIに十分に反応しない患者を対象とした試験であり、このような患者には選択肢の一つになることを確認した。

Brintellixは昨年9月に欧州で、12月には米国でも承認申請されたが、欧州は実薬対照試験の成績に基づいて薬価を決める国が多いので今回の成功は価値がある。尤も、Valdoxanは効果がそれほど高くなく、第三相試験6本のうち成功したのは3本だけだった。米国では未承認。このため、価値がどの程度かは曖昧だ。

Brintellixは5-HT3阻害、5-HT1A作動、セロトニンやノルエピネフィリン、ドーパミン、アセチルコリンの再取込阻害など様々な作用を持つ画期的新薬で、2007年に第三相入りしたが、米国試験が二本ともフェールしたため再試験が必要になった。当初の試験ではイーライリリーのCymbalta(duloxetine、和名サインバルタ)を投与する群も設定されたので、SNRIとの優劣もある程度分かるだろう(参考群として設定されたので厳密にいえば比較することはできないが)。

一方、Valdoxanは概日リズムを調停するメラトニンの受容体を作動する、武田の睡眠薬Rozerem(ramelteon、和名ロゼレム)に似た薬だ。5-HT2C受容体拮抗作用も持つようだが、親和性があまり高くないとされる。

SSRIは全てがジェネリック化し、Cymbaltaも年内に米国でジェネリックが発売される見込み。今回Valdoxanと比較したのは、安価なSSRI/SNRIと比較してもし効果が同程度だったら困るからだろう。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

【承認】


米国で30年ぶりの悪阻治療薬が承認

(2013年4月8日発表)

FDAはDiclegis(doxylamine succinateとpyridoxine hydrochlorideの合剤)を妊婦の悪心嘔吐の治療薬として承認した。悪阻(つわり)薬の承認は30年以上もの間、一つもなかったとのことだ。カナダのDuchesnay社が承認申請したもの。

活性成分のうちdoxylamineは抗ヒスタミンでOTC薬としても販売されている。pyridoxineはビタミンB6でサプリメントとして販売されている。Diclegis自体も画期的新薬ではなく、米国では1956年にメレル・ダウ社が同じ活性成分の合剤をBendectin名で発売したが、催奇性の疑いから数多くの損害賠償訴訟が起こされ、1983年に販売中止となった。

催奇性リスクはサリドマイド世代である筆者にとって他人事ではないが、FDAは当時から否定しており、DiclegisもカテゴリーA(臨床試験で催奇性は示されていない)に分類された。

ACOG(米国産婦人科学会)は、今回の承認の前から、Diclegisを薬物療法の第一選択としている。カナダでは30年以上の市販歴があるとのことなので、おそらく、並行輸入して使っていたのだろう。正式に承認されたことは普及にポジティブだが、ビジネスとしては大きな意義はなさそうだ。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:Duchesnayのプレスリリース(pdfファイル)

今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


0 件のコメント:

コメントを投稿