2017年8月13日

2017年8月13日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗CTGF抗体が特発性肺線維症に効果 
  • ゼルボラフをエルドハイム・チェスター病に適応拡大申請 
  • スチバーガ、EUでも肝細胞腫に適応拡大 


【新薬開発】


抗CTGF抗体が特発性肺線維症に効果
(2017年8月7日発表)

米国サンフランシスコのFibroGen(Nasdaq:FGEN)は、FG-019(pamrevlumab)の第二相特発性肺線維症(IPF)試験が成功したと発表した。第三相試験に向けて当局と相談する考え。提携交渉もアジェンダに上がっている様子だ。

FG-019は、組織のリモデリングや線維化に関与するCTGF(connective tissue growth factor)を標的とする抗体。今回の二重盲検偽薬対照試験は103人を組入れて48週間治療したところ、偽薬群のFVC %予測値が7.17%低下したのに対して試験薬群は4.33%の低下に留まり、治療効果は4.33%だった。FVCは各群129mLと308mL低下したので、治療効果は180mL程度ということになる。

IPF治療薬として承認されているロシュのEsbriet(pirfenidone、日本では塩野義のピレスパ)の試験ではFVC治療効果が150~235mL、ベーリンガー・インゲルハイムのOfev(nintedanib)は94~131mLだったので、見劣りしない。この試験は安全性サブスタディとしてEsbrietやOfevを服用している患者を57人組み入れており、もしアドオンでも単剤投与と同程度の進行抑制作用上乗せ効果があるようならば、効用が高まる。

リンク: FibroGenのプレスリリース


【承認申請】


ゼルボラフをエルドハイム・チェスター病に適応拡大申請
(2017年8月7日発表)

ロシュ・グループのジェネンテックは、Zelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ錠)をBRAF V600E変異陽性のエルドハイム・チェスター病に用いる適応拡大申請を米国で行い、受理されたと発表した。優先審査で審査期限は12月7日。

エルドハイム・チェスター病は白血球の一種である組織球が異常増殖する希少疾患で、1930年以来、世界で500例が文献報告されている。5割程度の患者がBRAF V600E変異を持っている由だ。

ZelborafはBRAF阻害剤。2011年にBRAF V600E変異陽性悪性黒色腫用薬として米国で承認された。今回の適応拡大申請は、BRAF V600変異を持つ様々な癌に対する効果を検討したVE-BASKET試験に基づくとのこと。検索してもヒットしないが、おそらく、New England Journal of Medicine誌に治験論文が掲載された、NCT01524978試験のことだろう。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース
リンク: Hymanらの治験論文(New England Journal of Medicine、2015年)

【承認】


スチバーガ、EUでも肝細胞腫に適応拡大
(2017年8月7日発表)

バイエルは、Stivarga(regorafenib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。切除不能で同社のNexavar(sorafenib)に反応しなくなった患者の二次治療に用いるもので、米国では今年4月に、日本でも6月に、承認されている。

NexavarはVEGF受容体阻害剤でBRAFやCRAFも阻害する。Stivargaはsorafenibの一部を置換したもの。VEGFR阻害剤は数多いが肝細胞腫に効果を示したものは少ない。

リンク: バイエルのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年8月6日

2017年8月6日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イーライリリー、片頭痛治療薬の二本目の第三相も成功 
  • アレセンサ、米国でも一次治療を申請 
  • Kite、欧州でCAR-Tを承認申請 
  • FDA諮問委員会、ゼルヤンツの乾癬性関節炎適応拡大を支持 
  • FDA諮問委員会、JNJの抗IL-6抗体は支持せず 
  • Dynavax、B型肝炎ワクチンの承認が遅延へ 
  • IDH2変異型AML用薬が米国で承認 
  • 二次性AML用新製剤が米国で承認 
  • Kalydeco、対象患者がまた拡大 
  • C型肝炎治療の決定版が米国で承認 
  • イムブルビ、今度はGvHDに承認 
  • オプジーボもdMMR/MSI-Hに適応拡大


【新薬開発】


イーライリリー、片頭痛治療薬の二本目の第三相も成功
(2017年8月4日発表)

イーライリリーはlasmiditanの二本目の第三相片頭痛治療試験も成功したと発表した。今回は50g群を設定し、100mg、200mgと合わせて3用量をテストしたところ、2時間後に片頭痛が解消していた患者の比率が各28.6%、31.4%、38.8%と偽薬群の21.3%を有意に上回った。夫々の患者が最も煩わしいと特定した症状の解消率も40.8%、44.2%、48.7%と偽薬群の33.5%を有意に上回った。治療関連有害事象は眩暈、知覚異常、傾眠、疲労、悪心、無気力など。

lasmiditanは今年3月に9.6億ドルで買収したCoLucid PharmaceuticalsがCOL-144として開発したものだが、オリジンはイーライリリー。三叉神経系に発現する5-HT1F受容体を選択的に作動するファースト・イン・クラス。経口剤。トリプタン(5HT1D受容体作動剤)と異なり血管収縮作用を持たないので心血管安全性が高い可能性がある。第三相試験二本では心血管疾患高リスクを除外条件にしていないが、リスクは高まらなかったようだ。

イーライリリーは長期安全性確認試験を経て18年下期に承認申請する考え。第三相試験の治験登録には米国の施設しか記載されていない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


【承認申請】


アレセンサ、米国でも一次治療を申請
(2017年8月3日発表)

ロシュはAlecensa(alectinib、和名アレセンサ)をALK変異陽性の局所進行性・転移性非小細胞性肺癌の一次治療に用いる適応拡大申請を米国でも行い、受理されたと発表した。審査期限は11月30日。

日本で実施されたJ-ALEX試験とグローバルのALEX試験に基づくもので、PFS(無進行生存期間)がALK阻害剤のファースト・イン・クラスであるXalkoriより有意に長かった。脳転移に対する効果も優れていた。

オリジンは中外製薬で14年に日本で初承認。一次治療は欧州で3月に承認申請が受理された。

リンク: ロシュのプレスリリース

Kite、欧州でCAR-Tを承認申請
(2017年7月31日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は欧州薬品庁(EMA)にKTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の販売承認申請を行った。欧州でCAR-T(キメラ抗体受容体-T細胞療法)が承認申請されるのは初。適応は、再発性難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、転換濾胞性リンパ腫(TFL)、原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)の自家造血幹細胞移植不適例。

リンク: Kiteのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、ゼルヤンツの乾癬性関節炎適応拡大を支持
(2017年8月3日発表)

FDAの関節炎諮問委員会はファイザーのXeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)を乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大を検討し、賛成10人、反対一人で多数が支持した。

Xeljanzはインターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJanus Kinaseを阻害する経口剤で、リウマチ性関節炎の治療薬として12年に米国で、13年に日本で、17年にはEUでも承認された。元々は臓器移植後の拒絶反応防止薬として開発されたくらい強力な免疫抑制作用を持つが、細菌・ウイルス感染や腫瘍などのリスクも見られる。EUで承認が遅れたり、米国で乾癬の適応拡大が認められなかったのは、便益と危険のバランスがボトルネックと推測される。

乾癬性関節炎は乾癬の合併症。考え方としては、ここまで重い症状が出てきたら最早使用を躊躇すべきではないということなのだろう。用量はリウマチ性関節炎と同じ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

FDA諮問委員会、JNJの抗IL-6抗体は支持せず
(2017年8月2日発表)

FDA関節炎諮問委員会は、ジョンソン・エンド・ジョンソンが軽中度リウマチ性関節炎の治療薬として承認申請した抗IL-6完全ヒト化抗体、CNTO 136(sirukumab)を検討し、反対12人、賛成一人で圧倒的に反対となった。臨床試験で死亡リスクが見られたため。

百人年当り死亡率は50mgを4週毎に投与した群が0.5、100mg2週毎群が0.8と偽薬群の0.2を倍以上、上回った。原因としては心血管イベントや感染症、腫瘍など。ノイズの可能性もありそうだが、原因は感染症や癌は免疫抑制剤にありがちなものであり、心血管イベントはIL-6受容体は心臓にも分布しているので関係ないとも言い切れない。

薬との関連性を考える上で安心材料になるのは、抗IL-6受容体のロシュのActemra(tocilizumab)やリジェネロン/サノフィのKevzara(sarilumab)ではこのようなリスクが見られないこと。標的がレガンドか受容体かという違いがあるが、IL-6受容体はIL-6と結合して血中に分布しているものもあるので、大差ないかもしれない。

しかし、この二剤は承認の当否を考える上では悪材料に転じる。類似した作用機序の薬が既に二剤も存在するのだから急ぐ必要はない。追加試験を行うなり何なりして無垢が立証されるまで承認を待つのは健全な考え方だ。

日本では昨年10月に承認申請された。

CNTO 136は開発販売パートナーのグラクソ・スミスクラインが今年7月に研究開発の選択と集中を決定、権利を返還した。死亡リスクに偏りがあったことと関係があるのかは不明。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

Dynavax、B型肝炎ワクチンの承認が遅延へ
(2017年8月3日発表)

Dynavax Technologies(Nasdaq:DVAX)は2012年にHEPLISAV-Bを米国で承認申請、今年7月に諮問委員会の支持を獲得し承認まであと一歩となったが、審査期限の8月10日までには承認されない見込みであることが公表された。

このB型肝炎ワクチンは臨床試験で心血管疾患に群間の偏りが見られた。諮問委員会はHEPLISAV群が多いというより対照群が偶々少なかったと判定、安全性を支持したが、市販後薬物監視試験をキチンと行うよう求めた。計画案を作成しFDAの内諾を得て提出し審査を受けるには時間がかかるので、承認遅延は止むを得ない。諮問委員会が審査期限の前月に開催されると発表された段階で予想されたシナリオの一つである。

今週中に提出したとすると審査期限は3ヶ月延期で11月10日となる。発売は元々18年の予定であったため、Dynavaxはスケジュールに変更はない、と記している。

リンク: Dynavaxのプレスリリース


【承認】


IDH2変異型AML用薬が米国で承認
(2017年8月1日発表)

FDAはセルジーン(Nasdaq:CELG)のIDHIFAR(enasidenib)を承認した。同時に承認されたアボットのRealTime IDH2アッセイでIDH2変異陽性と判定された再発性難治性AML(急性骨髄性白血病)の成人に用いる。

血液癌は症状や進行などに応じて大まかに分類されるが、同じAMLでも細胞遺伝学的態様は様々だ。細かく分類すると症例数が少なくなり共通項を見つけるのが難しくなり、また分類が増えても研究者数や予算は追い付けないが、それでも、一歩一歩、前進はしている。

今回のIDH2陽性型はAMLの8~19%が該当する。臨床試験では100mgを一日一回、経口投与したところ、完全寛解率が19%となり、メジアン8.2ヶ月持続した。輸血依存患者の34%が不要になった。

IDHIFARはセルジーンが2010~2014年にAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)と行った癌・代謝領域の戦略的協業の成果で、セルジーンが全世界の開発商業化権を持ち、Agiosは達成報奨金や売上ロイヤルティを得る。

リンク: FDAのリリース
リンク: 両社のプレスリリース

二次性AML用新製剤が米国で承認
(2017年8月3日発表)

新薬ではないが、Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq: JAZZ)のVyxeosもAMLの一部の患者向けにFDAに承認された。cytarabineとdaunorubicinのリポソーム合剤で、新患t-AML(治療関連AML)やAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)に用いる。Jazzによると米国のAML患者の最大40%が該当するとのことだ。

60~75歳の高齢者を対象とした第三相試験では、cytarabineとdaunorubicinの代表的な併用法である7-3療法と比べて全生存のハザードレシオが0.69、ログランクp値は0.005、メジアン生存期間は9.6ヶ月対5.9ヶ月で上回った。造血幹細胞移植を施行できた患者の比率も34%対25%と良い結果が出ている。致死的な有害事象の発生率は両群6%だった。尚、FDAは適応を高齢者に限定していない。

t-AMLは血液癌の放射線療法や化学療法の合併症で、治療後平均5年以内に8~10%の患者で発生する由だ。AML-MRCは骨髄異形成症候群と診断されるほどではなかったが類似した状況の患者のAMLというイメージのようだ。どちらも予後が悪いとされる。

第三相でこの二タイプに絞り込んだのは第二相試験のサブグループ分析に基づく。一般に抗癌剤のサブグループ分析は当てにならないことを考えれば、他のタイプの癌に効果があっても不思議はない。今後の検討対象になるかもしれない。

Vyxeosは昨年7月に15憶ドルで買収したCelator Pharmaceuticalsの開発品。

リンク: FDAのリリース
リンク: ジャズのプレスリリース

Kalydeco、対象患者がまた拡大
(2017年8月1日発表)

ヴァーテックス・ファーマスーティカル(Nasdaq:VRTX)は、嚢胞性線維症用薬Kalydeco(ivacaftor)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。CFTRの遺伝子変異が原因であることが多いが、様々な変異型があるため、ヴァーテックスは一つ一つ効果を検証している。今回は、機能がある程度残存している、スプライシング欠陥をもたらす5種類の変異型を保有する2歳以上の患者が追加された。米国で600人超が該当する由。これで、合計58種類の変異型に用いることが可能になった。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

C型肝炎治療の決定版が米国で承認
(2017年8月3日発表)

FDAはアッヴィ(NYSE:ABBV)のMavyretを承認した。EUでは7月にMaviret名で承認された慢性C型肝炎治療薬で、NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤のglecaprevirとNS5A複製複合体阻害剤のpibrentasvirの合剤。一日一回、三錠を服用する。

遺伝子型1型から6型まで幅広いウイルスに有効で、肝硬変を合併していない初めて治療を受ける患者なら8週間の治療で9割以上が完治(SVR12)する。同じ作用機序の薬は多いので二次治療の有効性も重要なチェックポイントだが、Mavyretは遺伝子型1型でNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とNS5A複製複合体のうちどちらがフェールした患者にも有効だ。

重度肝疾患は禁忌、中度も非推奨だが、軽度なら使用可能で腎疾患は透析期でも可。肝臓酵素やトランスポーター相互作用があり、atazanavir(Mavyretの濃度上昇)やrifampin(低下)が併用禁忌。

適応の広さや治療期間の短さを考えると、慢性C型肝炎治療薬の決定版と言えるだろう。価格もギリアドやアッヴィ自身の既存薬の半値、MSDが昨年発売したZepatier(grazoprevir、elbasvir)の7掛けで販売される模様だ。

慢性C型肝炎は完治が可能になったため一次治療薬の市場は縮小していくだろう。米国の民間医療保険は入札で一番安い薬を優先的に使うシステムになっており、承認されたばかりの新薬は不利だ。このため、薬として優れているだけでは足りず、価格訴求力を持たせてできるだけ早く、普及させなければならない。

リンク: FDAのリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース

イムブルビ、今度はGvHDに承認
(2017年8月2日発表)

FDAはアッヴィの子会社であるPharmacyclicsのImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビ)を慢性GvHD(移植片対宿主病)の二次治療薬として承認した。一次治療はステロイドが用いられるが、フェールした後の二次治療に有効な薬が承認されたのは初。

ImbruvicaはB細胞のアポトーシス、細胞接着、組織移行・帰還に関わるBrutonチロシン・キナーゼを阻害する経口剤。13年に慢性リンパ性白血病用薬として初承認された。

今回の適応拡大は第二相試験に基づくもの。ORR(客観的反応率)は67%、完全反応は21%だった。24%の患者は有害事象が原因で治験離脱した。

一次治療の第三相試験も進行中。

リンク: FDAのリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース

オプジーボもdMMR/MSI-Hに適応拡大
(2017年8月1日発表)

BMSは、FDAがOpdivo(nivolumab)をdMMR/MSI-Hの転移性結腸直腸癌のサルベージ療法として使う適応拡大を承認したと発表した。MSDのKeytruda(pemblorizumab)の5月の適応拡大のほうが対象が多いが、新しい切り口なので、二社が競争しながら宣伝するのが普及には一番だろう。

dMMR(mismatch repair deficient)はDNA複製ミスを修復するメカニズムに欠陥がある。MSI-H(microsatellite instability-high)は同じ塩基配列が繰り返されていて複製ミスが生じやすい箇所の繰返し回数が腫瘍細胞と正常細胞で異なる。後者は前者を発見するための手法という意味合いがあり、同じような現象を異なった切り口で定義している。元々はリンチ症候群患者の大腸癌の研究から発見された。化学療法抵抗性結腸直腸癌の5%程度が該当する。

dMMR/MSI-Hは内膜腫や胃癌、そして頻度は低いが乳癌や前立腺癌、膀胱癌、甲状腺癌でも見られ、Keytrudaは発生部位の制約はないが、Opdivoは結腸直腸癌だけ。他の薬をすべて経験した難治性患者限定である点は同じ。

CheckMate-142試験ではORR(客観的奏効率)が53人中15人、28%だった。

リンク: BMSのプレスリリース







今週は以上です。

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2017年7月30日

2017年7月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 塩野義、インフルエンザ治療薬の第三相が成功 
  • アストラゼネカ、チェックポイント阻害剤の併用試験がフェール 
  • MSD、キイトルーダの頭頚部癌試験がフェール 
  • BMS、オプジーボの4週毎投与を承認申請 
  • HEPLISAV-B、今度こそ承認か 
  • EUがアッヴィとギリアドのC型肝炎治療薬を承認 


【新薬開発】


塩野義、インフルエンザ治療薬の第三相が成功
(2017年7月24日発表)

塩野義製薬は、S-033188の第三相インフルエンザ治療試験が成功したと発表した。日本やアジア、北米の施設でインフルエンザに感染した普段は健常な患者を組入れた試験で、症状が軽快するまでの期間を偽薬と比較したところ、有意に短かった。20~64歳の患者にはTamiflu(oseltamivir)群も設定され、副次的評価項目としてS-033188の優越性解析が行われたが、フェールした。ウイルス量などの指標では有意に優れていたが症状とはパラレルにリンクしないのだろう。

薬物関連副作用の発生率は偽薬群並み。副作用発生率はTamiflu群より低かった。

S-033188はCap依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤。インフルエンザの遺伝子の中で比較的変異が少なく創薬のターゲットとして適しているポリメラーゼを阻害することによって、ウイルス遺伝子の複製に必要なプライマーが宿主細胞のRNA前駆体のcap構造から切り出されるの妨げる。Tamifluのようなノイラミニダーゼ阻害剤とは作用部位が異なり、in vitroではノイラミニダーゼ阻害剤抵抗性ウイルスにも有効だった。経口剤で一回投与するだけで足りるので服薬コンプライアンスの心配がない。

弱点は、Tamifluは特許切れ時期を迎えているので、S-033188は価格競争力が弱くなりそうなこと。効果が高ければ良かったのだが、同程度ということになると、迷いが生じる。

第三相はもう一本、インフルエンザ合併症のリスクが高い患者(糖尿病患者など)を対象とした海外試験が進行している。罹病期間だけでなく、合併症のリスク抑制効果が確認されるようなら満点だろう。Tamifluはインフルエンザ罹病期間を短縮するが合併症のリスクを削減する効果は曖昧だからだ。尤も、罹病期間がTamifluと大差ないなら合併症リスクも同程度と予想するのが順当か。

日本は年度内に承認申請の予定。ロシュが権利を取得した海外市場では、18年に高リスク患者試験の結果が出てから承認申請されるのではないか。

リンク: 塩野義のプレスリリース

アストラゼネカ、チェックポイント阻害剤の併用試験がフェール
(2017年7月27日発表)

アストラゼネカは第三相MYSTIC試験のPFS(無進行生存期間)解析がフェールしたと発表した。抗PD-L1抗体のImfinzi(durvalumab)と、ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体、tremelimumabの併用療法を検討したもので、BMSが先行する抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と抗CTLA4抗体Yervoy(ipilimumab)の併用療法のme-tooレジメンと呼ぶことができるだろう。

対象は非小細胞性肺癌の一次治療。主評価項目は途中で変更されており、当初はPFSだけだったが16年に全生存期間が共同主評価項目となった。更に、今年初めにBMSが非小細胞性肺癌におけるOpdivo・Yervoy併用の用法追加申請を先送りすると発表した後に、PD-L1高発現(VENTANA社のSP263アッセイで発現率25%以上)だけの解析を行うことやImfinzi単剤投与群の組入れ数を増やすことが発表された。

残念なことにClinicalTrials.govの記述はアップデートが不十分で、PD-L1高発現/ITT、単剤/併用、PFS/OSの数多くのマトリクスがどのような順序で並ぶのか、そして多重性をどう回避するのか、明らかではない。

今回のプレスリリースによると、PD-L1高発現グループの併用群と標準療法群のPFSの比較がフェールした。Imfinzi単剤投与群のPFSのポストホック解析も閾値に達しなかった。

全生存の解析は18年に実施される予定。PD-1/PD-L1抗体はIL-2などと異なり延命効果だけでなく腫瘍縮小効果も化学療法なみに高いので、逆に言えば、PFSがフェールしたのにOSが成功するとは考えにくい。それでも、活性薬対照試験はハードルが高く成功とフェールが紙一重になりがちであること、本試験の点推定値やp値が未公表であること、多重性回避策として成否判定基準が高く設定されていた可能性があることなどを考えれば、結果を予測するにはまだ材料不足だろう。

今回の発表はOpdivo・Yervoy併用の成否を占う上でも重要だが、これら二種類の併用法は必ずしも同一視できないだろう。第一に、抗PD-1/PD-1と抗CTLA4の併用は有害事象リスクが高いため夫々の用量の選択が非常に重要だ。第二に、Yervoyは単剤で承認されているので情報や症例が豊富だが、tremelimumabは第三相が無益性で中止となりファイザーが開発を断念した過去を持つ。Imfinziとの併用試験がパーシャル・クリニカル・ホールドになったこともあり、私たちが知らないことがたくさんあったとしても驚きではない。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

MSD、キイトルーダの頭頚部癌試験がフェール
(2017年7月24日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の頭頚部癌試験がフェールしたと発表した。米国で加速承認が取り消されるリスクが生じたが、まだ大丈夫のようだ。

このKEYNOTE-040試験は難治性転移性の頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)に対する延命効果をMTXやdocetaxelなどの標準的療法を施行する群と比較したもの。ハザードレシオは0.82(95%信頼区間0.67~1.01)、ログランクp値(片側)は0.03だった。安全性面はこれまでの試験と整合的だった。

日本と異なり、米国やEUで加速承認/条件付き承認された薬は、別途臨床試験を行って薬効や安全性を確認する必要がある。米国の場合、このフェーズIVコミットメントを袖にする製薬会社が少なくなかったため、制度設計・運用が厳格化され、アバスチンの乳癌のように実際に取り消されるケースも散発している。フェーズIVコミットメントの概要はFDAのウェブサイトでデータベース化され、ベンチャー企業が開示しなくても投資家自身が知ることができるようになっている。

Keytrudaは16年に今回の第三相試験と同じ内容で加速承認されたが、この時のフェーズIVコミットメントは通常とは異なり、特定の試験ではなく、延命効果が確認された臨床試験のデータを一本以上、18年3月までに出すというものだ。040試験がフェールしても、一次治療における効果を検討した048試験が18年3月までに成功すれば、約束を果たして本承認を取得できることになる。

再発治療がフェールした以上、一次治療に期待するのは難しいが、もし両方駄目でも、期限を延長して別の試験が成功するまで待ってもらうオプションもあるのではないか。

それにしても、抗PD-1/PD-L1と将棋の藤井四段は、無敵のような快進撃だが決して不敗ではない。臨床試験の場合、勝敗は統計学的な推定に依存するので、何回も繰り返せば偶然成功することもあるだろうし、逆に偶然フェールすることもあるだろう。

BMSのOpdivoは類似したデザインの第三相、CheckMate-141試験が中間解析で成功した。全生存のハザードレシオは0.70なのでKeytrudaより良いが、97.73%信頼区間(中間解析なので広い)は0.51~0.96となっており、かなりオーバーラップしている。中間解析で成功した試験は本解析で成功した試験より良い点推定値が出やすいという研究もあり、結局、この二本の試験の結果は矛盾してはいないのである。

優越性解析の相手が標準療法であった場合、フェールしても点推定値が標準療法薬並みならば、改めて非劣性試験を行って承認を得ることも可能だろう。その点でも、ギブアップするにはまだ早い。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認申請】


BMS、オプジーボの4週毎投与を承認申請
(2017年7月24日発表)

BMSはOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の用法追加申請を米国で行ない受理された。480mgを30分以上かけて点滴、4週間毎に繰り返すというもの。用途は承認されている全ての適応。現在は、用量は適応に応じて240mg、1mg/kg、3mg/kgの三種類、点滴スピードは60分以上、頻度は殆どの用途で2週間に一回。審査期限は来年3月5日。

抗癌剤は寿命を延ばすが治癒する薬/病気は少ないので、患者は残された貴重な時間を有効に使いたいだろう。通院治療の手間暇(費用)は他の条件が同じなら軽いほうが良い。ライバルであるMSDのKeytrudaは投与頻度が3週間毎。現在はハンデだが、4週間毎が承認されれば逆転することになる。

但し、併用療法における不都合は続く。BMSのYervoyを始め、3週間毎の薬が多いので、他の条件が同じなら、同じ日に両方、投与を受ける方が都合がよい。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認審査・委員会】


HEPLISAV-B、今度こそ承認か
(2017年7月28日発表)

Dynavax Technologies(Nasdaq:DVAX)のB型肝炎ワクチン、HEPLISAV-Bが今度こそ米国で承認されることになりそうだ。

2012年に承認申請したが諮問委員会もFDAも支持せず、治験実施施設の査察で治験実施基準違反が発覚してEU申請も撤回することになった。追加試験を成功させたが16年に二回目の審査完了通知を受領。現在は三巡目で、FDAは慎重な姿勢を崩していない様子だが、諮問委員会は安全性について支持12人、反対1人、棄権3人と多数が支持した。効果については5年前の諮問委員会で支持を受けている。

HEPLISAV-BはB型肝炎ウイルスの表面抗原にアジュバントとしてTLR9アゴニストを添加したもの。既存製品であるGSKのEngerix-Bは6ヶ月間に3回接種だがHEPLISAV-Bは1ヶ月置いて2回で足りる。幼小児用で今からシェアを取るのは難しいこともあり、青年成人、特に流行地域への旅行者や医療従事者、軍人などの需要に期待しているようだ。

承認が遅れたのは安全性懸念が理由。ウェゲナー肉芽腫のリスクでクリニカル・ホールドになったり、心血管疾患の発症が対照群より多かったりした。後者は発生率自体は決して高くなく、対照群が偶々少なかったという可能性もありそうだ。

何れにせよ市販後監視は必要だが、8年後に心血管リスクに関する後顧的解析結果を報告という会社計画は支持されず、前向き研究でもっと早く安全性を確認すべきと主張する委員が多かった。修正して再提出するのに日数がかかるので、承認は審査期限である8月10日には間に合わないのではないか。

リンク: Dynavaxのプレスリリース

【承認】


EUがアッヴィとギリアドのC型肝炎治療薬を承認
(2017年7月28日発表)

6月のCHMPで肯定的意見を受けた二種類の慢性C型肝炎治療薬が承認された。

アッヴィのMaviret(glecaprevir、pibrentasvir)はEnanta Pharmaceuticals(Nasdq:ENTA)との研究開発提携の成果であるNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とNS5A複製複合体阻害剤の合剤。1型から6型まで有効な汎遺伝子型直接作用性抗ウイルス剤で、初治療/再発治療を問わず、代償性肝硬変や重度慢性腎疾患にも有効。ribavirinを併用する必要がなく、治療期間は3型感染の治療経験者は16週間だが、新患で肝硬変合併前なら8週間で足りる。一日一回、三錠服用する。

リンク: アッヴィのプレスリリース

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のVoseviはSovaldi(和名ソバルディ)の活性成分であるNS5Bポリメラーゼ阻害剤、sofosbuvirと、汎遺伝子型NS5A複製複合体阻害剤のvelpatasvir、そして新開発の汎遺伝子型NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、voxilaprevirを配合。こちらも遺伝子型1~6型の初回・再発治療に一日一回経口投与。

米国では8週間コースは承認されなかったが、EUは、直接作用性抗ウイルス剤による治療を初めて受ける肝硬変のない患者向けなどに承認された。Maviretに対抗するために重要。

リンク: ギリアドのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年7月23日

2017年7月23日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ヴァーテックス、第4の嚢胞性線維症用薬を第二相へ 
  • AAIC:富山のアルツハイマー試験はフェール 
  • Paratek社、抗生剤新薬の三本目の第三相が成功 
  • CHMPがBavencioなどに肯定的意見 
  • 抗スクロスチンは承認されず 
  • 汎erbB阻害剤が承認 
  • ギリアドのHCV薬がまた承認 
  • 高カリウム血症治療薬がEUで承認 
  • ルミセフ、欧州でも承認 
  • EU、ガドリニウム造影剤の一部の承認を停止へ 


【新薬開発】


ヴァーテックス、第4の嚢胞性線維症用薬を第二相へ
(2017年7月18日発表)

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)は98年に嚢胞性線維症の財団、CFFTと共同で治療法の研究を開始。14年後の2012年に新薬第一号のCFTRポテンシエイター、Kalydeco(ivacaftor)を欧米で発売、
翌年にはCFTRコレクター(矯正剤)のlumacaftorと組み合わせた合剤、Orkambiを発売と、着々と成果を上げている。嚢胞性線維症の多くはCFTR蛋白の遺伝子変異が関与しているが、薬物応答性は変異型によって異なり、ある種の患者にはKalydecoが有効だが、一番多いタイプである両方の遺伝子がF508欠損型の患者には合剤と、使い分けが必要だ。

片親からF508欠損、もう片親から別の機能低下変異を遺伝する患者も多いが、このF508del/min型はOrkambiにも十分応答しない。新開発のVX-661(tezacaftor)とivacaftorを組み合わせた合剤も効果不足で、結局、Orkambiと同じF508欠損ホモ接合型に年内に承認申請される予定。

ヴァーテックスの良いところはパイプラインを豊富に持つ、逆に言えば、類似したコンパウンドを雁行的に開発して臨床成績に基づいてスクリーニングすることだ。第4の嚢胞性線維症用薬、第3のCFTRコレクターを見つけるべく、第二相、第一相試験を行っている。このうち、VX-659などについて、アップデートがあった。

ivacaftor及びtezacaftorと三剤併用でF508del/min型の患者の%FEV1量を改善する効果を調べたところ、VX-152とVX-440の第二相試験では各9.7pp(パーセンテージポイント)と12.0ppの改善が見られた。VX-659の第一相でも9.6pp改善した。Kalydecoが承認された時の治療効果と概ね同程度であり、評価できる。

VX-440は少数だが肝機能検査値異常が見られ、また、前臨床で妊婦に適さないことが判明した模様だ。ヴァーテックスはVX-659を早急に第二相にステージアップして、来年上期までに第三相候補を選抜する考え。

残された宿題を一つずつやっていくことで、変異型と治療薬のマトリクス表が段々と埋まってきた。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

AAIC:富山のアルツハイマー試験はフェール
(2017年7月19日発表)

AAIC(アルツハイマー協会国際会議)で富山化学のT-817MAの後期第二相アルツハイマー病試験の結果が発表された。結果はPOC試験と同様で、認知機能の評価スコアであるADAS-cogでも、全般症状評価であるADCS-CGICでも、偽薬比有意な効果は見られなかった。病歴が短い患者の事後的サブグループ分析で高用量群(448mg/日)のADAS-cogが偽薬比3ポイント改善した由だが、POC試験では進行した中等症状の患者の成績が良かったことと食い違っており、慎重に受け止めたほうが良いだろう。

親会社である富士フィルムのプレスリリースによると、承認審査機関と相談の上で第三相試験を開始する考え。そのせいか、日本の報道はポジティブなものが多いが、海外は本稿と同様に試験がフェールしたことを淡々と報じるものが多い。

富士フィルムといえば経営上層部を巻き込む不適切会計事件が浮上、メディアが内部統制の妥当性を議論している。大企業のお手本と見なされてきた東芝の経営体制も評価が地に落ちた。私見では、目標達成を至上命題とする企業は、物事が思い通りに進まなくても自分が見たいものしか見ない癖がある。戦場からの撤退は、兵士や兵器の犠牲に目を瞑れば転戦と呼ぶことが可能である。自分に都合の悪い具申をする監査法人は更迭できる。批判するフェイクメディアは後ろから飛び掛かって殴ればよい。

臨床試験も、主評価項目がフェールしたことや多重性のトラップに目を瞑ればサブグループに対して統計的に有意な効果が見られたと強弁することができる。『海外医薬ニュース』もメールボックスから完全削除すれば、世は全てこともなし。

リンク: 富士フィルムのプレスリリース(和文)

Paratek社、抗生剤新薬の三本目の第三相が成功
(2017年7月17日発表)

Paratek Pharmaceuticals(Nasdaq:PRTK)は、PTK 0796(omadacycline)の第三相急性細菌性皮膚皮膚構造感染症試験が成功したと発表した。静注用と経口剤を用いた一本目の試験に続いて、経口剤だけを用いた今回の試験も、linezolid群と比べて奏効率がFDA基準でもEMA基準でも非劣性だった。数値上は上回っており、効果の面では好印象だ。もう一本、地域感染細菌性肺炎の第三相moxifloxacin対照試験も非劣性解析が成功しており、18年第1四半期に承認申請の予定。

やや気になるのが忍容性。一本目では深刻な治療時発現有害事象の発生率が3.4%と対照群の2.5%を上回った。肺炎試験では同程度だったが、死亡率が2.1%対1.0%で上回った。今回の試験では、悪心嘔吐が対照群より多く、肝機能検査値異常も見られた。

米国でファーストトラック指定と認定感染性疾患用製品(QIDP)指定を受けている。99年から11年にかけて、グラクソやバイエル、メルクそしてノバルティスにライセンスアウトしたが、全て終了となった。

リンク: Paratekのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPがBavencioなどに肯定的意見
(2017年7月21日発表)

EUの医薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、7月の会合でメルクのBavencio(avelumab)などの新薬に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域などで承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

BavencioはPD-L1を標的とする完全ヒト化抗体。先行類薬が複数存在するせいか、転移性メルケル細胞腫という希少疾患がリードインディケーションだ。欧州に関してはロシュの抗PD-L1抗体であるTecentriq(atezolizumab)と同じタイミングで肯定的意見を獲得したので、狙いが成功したと言えるだろう。

メルケル細胞腫は稀だが進行の早い皮膚癌で5年生存率は20%以下といわれる。EUでも米国でも年2500人程度が診断と推定されている。臨床試験では総合反応率が33%だった。米国では今年3月に承認。ファイザーと開発販売提携している。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: メルクのプレスリリース

Tecentriqは局所進行性/転移性の膀胱癌の二次治療(cisplatin不適は一次治療も可)と非小細胞性肺癌の化学療法後再発治療(ALKまたはEGFRに活性化変異のある患者はALK阻害剤またはEGFR阻害剤歴も必要)に用いる。米国では16年5月から17年4月にかけて三段階で取得した適応を一気にキャッチアップする格好だ。

米国ではPD-L1事前検査は不要とされた。CHMPの見方は不明だが、適応のところに記載されていないので、こちらも不要なのだろう。

リンク: ロシュのプレスリリース

ノバルティスのRydapt(midostaurin)はFLT3阻害剤。適応は、FLT3変異陽性急性骨髄性白血病、侵襲性または血液学的新生物を伴う全身性肥満細胞症、肥満細胞白血病。cytarabine及びdaunorubicinと併用した急性骨髄性白血病試験ではメジアン生存期間が74.7ヶ月と偽薬群の25.6ヶ月を大きく上回った。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィのDupixent(dupilumab)はIL-4受容体のアルファ・サブユニットを標的とするヒト化抗体で軽中度アトピー性皮膚炎の治療に用いる。久方の画期的新薬で効果が高いが、値段も高く、3月に承認された米国での出足はゆっくりのようだ。

開発パイプラインの評価は難しいので新興医薬品開発会社を見る時は臨床開発品の数や潰しの効く技術を持っているかどうかに注目することにしている。ヴァーテックスは期待と失望を繰り返したが遂に嚢胞性線維症領域で開花した。リジェネロンは抗体医薬版『ゾロ新』を狙えば幾らでも新薬が出せるはずと注目しているのだが、Dupixentは宝くじが当たったような気分だ。

リンク: 両社のプレスリリース

フランスのAdvanced Accelerator Applications社のLutathera(lutetium 177 dotatate)はソマトスタチン類縁体に放射性核種を付けたもの。切除不能/転移性/進行性のG1/G2ソマトスタチン受容体陽性胃腸膵神経内分泌腫瘍に用いる。米国は昨年12月に審査完了通知を受領した。日本は富士フィルムが導入。

リンク: EMAのプレスリリース

参天製薬のVerkazia(ciclosporin)はカルシニューリン阻害剤を点眼液にしたのもので、4歳以上の青少年の重度春季カタル(アレルギー性結膜炎)に用いる。希少疾患で、放置すると角膜の潰瘍や視力喪失につながることがある。

リンク: EMAのプレスリリース

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)のXermelo(telotristat ethyl)はLトリプトファン水酸化酵素1/2阻害剤で、カルチノイド症候群の下痢症状の治療に用いる。ソマトスタチンによる治療は継続する必要がある。米国は2月に承認。北米や日本以外の権利はイプセンが14年に取得した。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: イプセンのプレスリリース

ジョンソン・エンド・ジョンソンのSymtuzaはdarunavir(プロテアーゼ阻害剤)、cobicistat(3A4阻害剤)、emtricitabine、そしてtenofovir alafenamide(ともに核酸系逆転写阻害剤)の合剤で、HIV/AIDSの治療に用いる。cobicistatはギリアド・サイエンシズの製品で、代謝酵素相互作用を逆用して投与頻度を減らすritonavirブーストと呼ばれる手法のritonavir代用品として使うことができる。

リンク: JNJのプレスリリース(Business Wire)

適応拡大は、MSDのKeytruda(pembrolizumab)を末期/転移性尿路上皮癌に用いることが支持された。5月に承認された米国と同様に、cisplatin歴を持つ患者の再発治療薬だが、不適なら一次治療に用いることも可能。

リンク: MSDのプレスリリース

ロシュのGazyva(obinutuzumab)を濾胞性リンパ腫の導入療法・維持療法に用いることも支持された。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.71とMabThera(rituximabの欧州での製品名)より有意に優れていた。

Gazyvaはrituximabと同じ抗CD20抗体だがマウス由来のアミノ酸が少なく、翻訳後装飾でフコースが付与されていないので抗体依存的細胞毒性が高い。現在の適応症は、慢性リンパ性白血病でfludarabineが適さない患者の一次治療と、濾胞性リンパ腫の再発治療(bendamustine併用)。

リンク: ロシュのプレスリリース

ロシュはRoActemra(tocilizumab、和名アクテムラ)も巨細胞性動脈炎の治療に用いることが支持された。米国では5月に承認。日本では昨年12月に上位カテゴリーである大型血管炎の効能効果追加申請が行われた。

抗IL-6受容体ヒト化抗体で、最近の話題は、CAR-Tと呼ばれる画期的な自家T細胞療法の副作用でサイトカイン放出症候群が発生した時の治療のデファクトスタンダードになっている。

最後に、ノバルティスのSignifor(pasireotide)をクッシング病の治療に用いることも支持された。手術を既に受けた患者や不適な患者に用いる。

否定的意見を受けたのはVanda Pharmaceuticals(Nasdaq:VNDA)が承認申請した非定型向精神薬、Fanaptum(iloperidone)。米国ではFanapt名で09年に承認されたが、EUは二度目の挑戦も挫折した。CHMPは、前回と同様に、効果が穏やかで作用が発揮されるまで2~3週間かかるので急性期治療には適さずQT延長リスクや薬物相互作用リスクがあることを指摘した。Vandaは不服申し立てを行う考え。

リンク: Vandaのプレスリリース

抗スクロスチンは承認されず
(2017年7月16日発表)

アムジェンとUCBはEvenity(romosozumab)を閉経後骨粗鬆症治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。アムジェンが年内の承認は見込んでいない旨を5月に公表済みなのでサプライズ感はない。

遅延の原因は、承認申請後に開票した別の試験二本で心血管疾患リスクが高めだったこと。ARCH試験では心血管深刻有害事象の発生率が2.5%とalendronate群の1.9%より高かった。更に、男の骨粗鬆症の治療試験でも4.9%と偽薬群の2.5%より高かった。両社はFDAにこの二本のデータを追加提出する予定。

被験者が一番多い最初の試験で偏りが見られなかったことはポジティブな材料だが、上記の心血管深刻有害事象は第三者による査読を受けたものである由だ。初めからAdverse events of special interestとして厳格にモニターされていたのならば、もっと前の段階で懸念の種があったのだろう。だとしたら、安易にノイズ扱いすることはできないだろう。

欧州では予定通り、承認申請の準備を進める予定。日本はアステラスとの合弁が昨年12月に承認申請した。

リンク: アムジェンのプレスリリース


【承認】


汎erbB阻害剤が承認
(2017年7月17日発表)

FDAはPuma Biotechnology(Nasdaq:PBYI)のNerlynx(neratinib)を承認した。早期her2陽性乳癌で切除術後にHerceptin(trastuzumab)を含むアジュバント療法を受けた患者に、更にNerlynxを経口投与して再発リスクを抑制する。臨床試験では2年後の無再発生存率が94.2%と偽薬群の91.9%を有意に上回った。この試験は日本の施設も参加した。

5月の諮問委員会では一部の患者に効果が見られなかったことや下痢による用量削減・中断が頻発することから適応を限定すべきではないかという意見もあったが、結局、FDAは制限しなかった。

neratinibはワイスが開発していた汎erbB阻害剤で、EGFR、her2、her4を不可逆的に阻害する。Pumaは、Cougar Biotechnogyで前立腺癌用薬Zytiga(abiraterone acetate)の開発に成功したAuerbach氏が会社をジョンソン・エンド・ジョンソンに9.7億ドルで売却した後に設立したもので、ワイスを買収したファイザーから11年に権利を取得、開発を進めたもの。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Pumaのプレスリリース

ギリアドのHCV薬がまた承認
(2017年7月18日発表)

FDAはギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のVoseviを慢性C型肝炎治療薬として承認した。新開発のNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤であるvoxilaprevirと既承認のEpclusaの配合成分であるNS5Bポリメラーゼ阻害剤sofosbuvir及び汎遺伝子型NS5A複製複合体阻害剤velpatasvirを配合しており、遺伝子型1型から6型までに有効。

一次治療や中度以上の肝硬変を合併する患者は適応外。報道によると、価格はEpclusaと同じに設定される予定。薬では珍しい、BUY TWO, GET ONE FREEだ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ギリアドのプレスリリース

高カリウム血症治療薬がEUで承認
(2017年7月21日発表)

スイスのVifor PharmaグループのRelypsa社は、Veltassa(patiromer)がEUで高カリウム血症治療薬として承認されたと発表した。年末から来年初めにかけて上市する計画。

臨床試験でほとんどの被験者がレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の阻害剤を服用していたため、このタイプの患者に限定された。15年に承認された米国では限定されなかった。

カチオン交換ポリマーで、水に溶かして食中に飲むとカリウムに結合、そのまま排泄される。遅延作用性なので命に係る急性期治療には適さない。多くの薬に結合するので服用タイミングをずらす必要がある。

リンク: Relypsaのプレスリリース(GlobeNewswire)

ルミセフ、欧州でも承認
(2017年7月20日発表)

アストラゼネカは、Kyntheum(brodalumab、米国名Siliq、和名ルミセフ)がEUで中重度プラク乾癬の治療薬として承認されたと発表した。アムジェンからライセンスした抗IL-17受容体A完全ヒト化抗体で、欧州ではLEO Pharmaが、2月に承認された米国はValeantが販売する。アムジェンもアストラゼネカも直接販売しないのは、一つには複数の他社が類似したメカニズムを持つ抗IL-17抗体を開発販売しているから。もう一つは、臨床試験の症例2000例のうち数人が自殺思慮・行動を示したためである。

日本は昨年、協和発酵が発売した。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

【医薬品の安全性】


EU、ガドリニウム造影剤の一部の承認を停止へ
(2017年7月21日発表)

EMAはガドリニウム造影剤の再検討を完了し、一部の製品の使用を制限し他の製品の承認を停止すべきというCHMPの勧告を確認した。

MRI検査でも用いられる造影剤だが、脳内に蓄積する可能性があることが判明。有害との確証はないが、EMAは、潜在的なリスクを回避するためにリニア型ガドリニウム造影剤の静注を制限すべきと結論した。具体的には、gadodiamide(和名オムニスキャン)、gadopentetic acid(和名マグネビスト)、gadoversetamide(Optimark)の承認を停止する。

gadoxetic acidとgadobenic acidを肝臓スキャンに用いることや、gadopentetic acidの関節内投与(用量が少ない)は可能とされた。

リンク: EMAのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年7月16日

2017年7月16日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アミカス、トランプ旋風に乗って新薬承認申請へ 
  • イーライリリーもCDK4/6阻害剤を承認申請 
  • ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎に適応拡大申請 
  • ODAC、ノバルティスのCAR-Tの承認を支持 
  • ODAC、マイロターグの承認を支持 
  • JNJの乾癬治療薬が承認 
  • Blincyto、Ph+にも承認 


【新薬開発】


アミカス、トランプ旋風に乗って新薬承認申請へ
(2017年7月11日発表)

アミカス・セラピュティクス(Nasdaq:FOLD)はAmigal(migalastat hydrochloride)をファブリー病治療薬としてFDAに承認申請すると発表した。FDAとの一連の話し合いを経て、申請することが認められた。

ファブリー病はアルファ・ガラクトシダーゼの遺伝子変異が原因でGL-3などの糖脂質が組織に蓄積、神経症状や機能障害をもたらす。Amigalはファーマスーティカル・シャペロンと呼ばれる新しい機能を持つ薬で、アルファ・ガラクトシダーゼをライソゾームに誘導し本来の役割を果たせるようにする。ジェンザイムのFabrazyme(agalsidase beta)のような酵素補充療法とは異なり、患者の35~50%程度にしか有効ではないが、経口投与できる長所がある。

第三相試験はフェールしたが、反応者を組入れて継続投与群と偽薬スイッチ群を比較した離脱試験などでGL-3を有意に減らし、16年に欧州でGalafold名で承認された。一方、FDAはサロゲート・マーカーに基づく薬効評価を認めず、新たに胃腸症状改善作用を検討するクロスオーバー試験を行うよう求めた。

風向きが変わったのが、まず、Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)が昨年、デュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として米国で承認されたこと。適切な治療法が限られる希少疾患では、臨床的効用とリンクすることが検証されていないサロゲート・マーカーに基づいて新薬を評価することが必ずしも不適切ではないことを示した。鶴の一声を発したのは小分子薬などの審査を担当するCDER部門のヘッドで、反対した担当部署のヘッドはFDAを去った。

大きな追い風と推測されるのが、今年2月にトランプ大統領が連邦議会で行った施政方針演説だ。アミカスのCEOで映画『小さな命が呼ぶとき』のモデルとなったジョン・クラウリーとポンペ病の娘と会談したこと、難病の治療薬の開発にあたってはFDAの承認審査のスピードアップが重要であることを語った。ネットで公開された演説原稿を読んだ時、Amigalが承認されるかも、と思ったものだ。但し、申請が認められたとしても承認されるとは限らない。他社の例では、後になって、申請するのは申請者の権利であることを認めただけだったこともあった。

Amigalは日本でも今年6月に承認申請された。

リンク: アミカスのプレスリリース


【承認申請】


イーライリリーもCDK4/6阻害剤を承認申請
(2017年7月10日発表)

イーライリリーはLY2835219(abemaciclib)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査指定されたので、来年第1四半期中に結果が出ることになる。乳癌の経口剤で、適応・用法は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の転移性乳癌のうち、ホルモン療法と化学療法を既に受けた患者(モノセラピー)と、ホルモン薬による一次治療歴を持つ患者(fulvestrant併用)。一次治療アロマターゼ阻害剤併用試験も成功しているので、早晩、承認申請されるだろう。

abemaciclibは細胞周期進行に関わるCDK4/6を阻害する小分子薬。モノセラピーの第二相試験ではORR(客観的奏効率)19.7%、メジアン反応持続期間は8.6ヶ月だった。二次治療fulvestrant併用試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン16.3ヶ月とfulvestrantと偽薬を投与した群の9.3ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.55だった。

欧州でも第3四半期に承認申請する予定。日本も年内申請予定。

CDK4/6阻害剤はファイザーやノバルティスが既に発売しており、今後は差別化が課題になる。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
(2017年7月13日発表)

ファイザーはXeljanz(tofacitinib citrate)を潰瘍性大腸炎の治療に用いる適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。審査期限は来年3月。インターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJanus Kinase(JAK)を阻害する経口剤で、抗リウマチ薬として日米欧などで承認されている。導入療法試験では8週間の治療後の寛解率が一本は18.5%(偽薬群は8.2%)、もう一本は16.6%(3.6%)だった。

JAK阻害剤は免疫抑制作用が強く、自己免疫性疾患に有効な一方で、感染症や癌のリスクに気を付ける必要がある。承認されるかどうか、承認後に普及するかどうかは、このリスクを受け入れざるを得ないほど深刻な病気であるかどうかに依存するだろう。

リンク: ファイザーのプレスリリース


【承認審査・委員会】


ODAC、ノバルティスのCAR-Tの承認を支持
(2017年7月13日発表)

FDAは腫瘍学薬諮問委員会(ODAC)を招集し、ノバルティスが再発性難治性B細胞性急性リンパ性白血病用薬として承認申請したCTL019(tisagenlecleucel)の主として安全性について意見を聞いたところ、諮問委員の全員が便益がリスクを上回る(承認に値する)と判定した。審査期限は10月。臨床データは問題ないようなので承認されないリスクがあるとしたら生産方法だろう(夫々の患者の免疫細胞を加工する)。承認されれば、CAR(キメラ抗原受容体)-Tと呼ばれる新しい治療法の第一号になる。

CTL019は、B細胞特異的に発現するCD19を標的とする抗体の単鎖可変領域を、TCRの共刺激伝達分子である4-1BB及びCD3ゼータとスペーサーで繋げたものを、患者から採取したT細胞にレンチウイルスを使って導入し、培養活性化したもの。患者に戻すと抗原提示なしでB細胞を攻撃する。臨床試験ではORR(完全寛解率)が82.5%だった。

CAR-Tは免疫力を強化するためサイトカイン放出症候群が発生しやすい。CTL019の場合、グレード3、4のサイトカイン放出症候群が47%の患者で発生した。

諮問委員会ではレンチウイルスが活性化するリスクや遺伝子導入が引き金で将来、癌化するリスクが討議されたが、具体的な懸念材料はなさそうだ。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ODAC、マイロターグの承認を支持
(2017年7月11日発表)

FDAは腫瘍学薬諮問委員会(ODAC)を招集し、ファイザーが急性骨髄性白血病用薬として承認申請したMylotarg(gemtuzumab ozogamicin、和名マイロターグ)について意見を聞いたことろ、7人の諮問委員のうち6人が支持した。審査期限は9月。2000年にサロゲート・マーカー評価に基づき加速承認、しかし市販後薬効確認試験がフェールし致死的な毒性も見られたため2010年に販売中止(日本などは除く)、と大きな波乱があったが、再登板できそうだ。

MylotargはCD33を標的とする抗体をカリケアマイシンとリンカーで繋げた抗体薬物複合体。抗体技術を持つセルテック(後にUCBが子会社化)とワイス(後にファイザーが買収)が共同開発した。今回の適応は、CD33陽性急性骨髄性白血病のうち、化学療法不適な再発患者のモノセラピーと、新患に化学療法併用。後者は上記の市販後薬効確認試験よりも用量を減らして、投与回数を増やすことにより一回の投与量を更に減らす工夫を行ったところ、忍容性が改善、併用しなかった群と比べて死亡者が増加しなかった。

リンク: ファイザーのプレスリリース


【承認】


JNJの乾癬治療薬が承認
(2017年7月13日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、FDAがTremfya(guselkumab)を中重度乾癬の治療薬として承認したと発表した。IL-23のp19サブユニットを標的とする抗体医薬で、同社のStelara(ustekinumab)と違うサブユニットに結合するためIL-12には影響しない。臨床試験では、奏効率がTNF阻害剤のHumira(adalimumab)を上回った。乾癬はIL-17や受容体を標的とする抗体医薬が続々と承認されており、競争は激しそうだ。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

Blincyto、Ph+にも承認
(2017年7月11日発表)

アムジェンは、FDAがBlincyto(blinatumomab)の適応拡大と本承認切替を承認したと発表した。再発性前駆B急性リンパ芽球性白血病用薬として14年に米国で承認された段階ではフィラデルフィア染色体陰性(Ph-、全体の3/4を占める)に限定されていたが、今回、陽性患者に用いることも可能になった。また、Ph-に対する第三相試験で全生存期間が化学療法比で有意に長かったこともレーベル収載されることになった(メジアン7.7ヶ月対4.0ヶ月)。

リンク: アムジェンのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年7月9日

2017年7月9日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • オプジーボの術後アジュバント試験が成功 
  • FDAが鎌状赤血球症治療薬を承認 
  • オレンシア、乾癬性関節炎に承認 
  • キイトルーダの多発骨髄腫三剤併用試験は完全停止に 
  • EUが抗CD25抗体の使用制限 


【新薬開発】


オプジーボの術後アジュバント療法試験が成功
(2017年7月5日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の黒色腫アジュバント療法(切除後の再発予防)試験の成功を発表した。同社のYervoy(ipilimumab)を投与した群と比べて再発リスクが有意に小さかった。データは今後、学会などで発表される見込み。

この、CheckMate-238試験は、ステージIIIb/cまたはステージIVの黒色腫の完全切除を受けた患者のうち、再発リスクの高い906人を、Opdivo群(3mg/kg、二週間毎)とYervoy群(10mg/kg、最初は三週間毎、5回目からは12週間毎、全1年コース)に無作為化割付して、無再発生存率(RFS)を比較したもの。

対照薬であるYervoyはステージIIIのアジュバント療法薬として承認されている。根拠となった第三相試験では、RFSの偽薬比ハザードレシオが0.75と有意に改善し、メジアン値は26ヶ月で偽薬群の17ヶ月を上回った。RFSの構成要素のうち死亡は3倍近く多かったが、再発が24%少なかった。

この試験では今回と同様に10mg/kgを用いたが、最近開票したステージIII/IVを対象に10mg/kgと3mg/kgを比較したアジュバント試験では、RFSはどちらも大差なく、治療関連有害事象による死亡は10mg/kg群のほうが4倍多かった。詳細データは未発表だが重要なデータである。

抗体医薬は至適用量の探索が徹底していない嫌いがあるからだ。抗癌剤の用量決定は動物試験で有効だった血中濃度を目標に増量し、最大耐容量を至適用量とするが、抗体医薬は標的分子が動物とヒトで完全に同じではないため前臨床の知見が必ずしもアテにならず、本当はもっと少なくても足りるかもしれないのだ。用量が1/3で済むなら薬代も1/3前後に減るので、患者や医療制度には都合がよい。

このような背景があるので、CheckMate-238試験の結果が出たらYervoy群の数値が過去の試験と整合的であるか確認する必要があるだろう。Yervoyの用量用法が適切でないのなら、Opdivoのほうが良いとは言い切れないからだ。しかし、結論が覆る可能性は低いだろう。今回もまた、抗PD-1抗体が抗CTLA-4抗体より優れていることが示された。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認】


FDAが鎌状赤血球症治療薬を承認
(2017年7月7日発表)

FDAはEmmaus Life Sciences社のEndari(L-glutamine)を鎌状赤血球症治療薬として承認した。5歳以上の患者に経口投与してクリーゼ(重い増悪)のリスクを抑制する。

この病気はヘモグロビンベータ鎖の遺伝子変異が原因。様々な組織で酸素不足によるトラブルが生じやすくなる。米国の患者数は約10万人。アフリカ系アメリカ人に多く、有病率は新生児365人に一人とされる。臨床試験ではクリーゼの治療や入院、急性胸症候群が偽薬群より少なかった。有害事象は便秘、悪心、頭痛、腹痛など。

鎌状赤血球症の薬が承認されたのは、ヒドロキシウレア以来、19年ぶり。活性成分はNutrestore名で医薬品として承認されている(短腸症候群の治療に成長ホルモンと併用する用途)。

EmmausのCEOはUCLA医学部教授のYutaka Niihara医学博士で、鎌状赤血球症の治療や研究で長年の実績を持っている。作用機序は不明だが、酸化に弱い鎌状赤血球が抗酸化物質を作るのに必要なアミノ酸の補充が元々のアイディアであった模様だ。

リンク: FDAのリリース
リンク: Emmausのプレスリリース

オレンシア、乾癬性関節炎にも承認
(2017年7月6日発表)

BMSは、Orencia(abatacept、和名オレンシア)を中重度活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。

点滴用薬(10mg/kg)の試験では24週間の治療でACR20奏効率が47.5%と偽薬群の19.0%を有意に上回った。皮注用薬(125mg)の試験では39.4%対22.3%と、こちらも有意に上回った。

リンク: BMSのプレスリリース


【医薬品の安全性】


キイトルーダの多発骨髄腫三剤併用試験は完全停止に
(2017年7月5日発表)

6月18日号で報じたように、MSDはKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の第三相多発骨髄腫三剤併用試験二本の新規組入れを中断した。今回、FDAがフル・クリニカル・ホールドを命じたことが公表された。治験許可を停止するもので、既に組み入れられた患者に対する投与も中止となった。癌は命に係るので奏功・忍容している患者には続行を認めることも少なくない。それだけ、副作用懸念が大きいということなのだろう。

対象は一本増えて三本。第三相は一本がKEYNOTE-183試験で、再発性難治性で三次治療を受ける患者にpomalidomide(セルジーンのPomalyst/Imnovid)及び低量dexamethasoneと併用。もう一本がKEYNOTE-185試験で、初めて治療を受ける自家造血幹細胞移植不適患者にlenalidomide(セルジーンのRevlimid)と低量dexamethasoneのRdレジメンと併用をテストした。治験登録によれば日本の施設もこの二本に参加している。

もう一本は第一相試験の一部で、Rdレジメンと併用するコフォートが新たにホールドとなった。

BMSもくすぶり型多発骨髄腫の第三相試験でOpdivo(nivolumab)とRdレジメンの併用法を検討している。海外の薬品アナリストのレポートによると、Keytrudaの件を受けてデータ監視委員会がチェックしたが、続行を勧告した由だ。但し、油断はできないだろう。こちらの試験のほうが患者の全般的な状況は良好だろうから、副作用をよく忍容して致死的なところまで行かないだけかもしれない。

リンク: MSDのプレスリリース

EUが抗CD25抗体の使用制限
(2017年7月7日発表)

EMA(欧州薬品庁)は再発型多発硬化症用薬として昨年、承認したZinbryta(daclizumab)の使用を制限する旨、発表した。深刻な肝障害例が複数、報告されたため、再検討が完了するまで暫定的な措置を取るもの。

daclizumabはIL-2受容体の一部であるCD25を標的とするヒト化抗体で、プロテイン・デザイン・ラボ(PDL)が創製、ロシュが腎移植時の拒絶反応予防薬として開発し、97年に米国で承認され、ヒト化抗体の第一号となった。しかし、普及せず、適応拡大も進まなかったため、ロシュは2009年に生産販売中止を決定、権利を返還した。PDLは新たにバイオジェンと提携して多発硬化症用薬として共同開発、難航したが遂に第三相試験を成功させ、昨年、欧米で承認された。

PDLは08年にヒト化抗体技術など知的所有権を管理する会社と新薬開発会社に企業分割され、後者は10年にアッビィに買収された。このため、Zinbrytaはバイオジェンとアッヴィの共同販売となっている。

感染症や皮膚毒性など様々な深刻有害事象が見られるが、肝毒性も既知であり、治療を開始する前と治療中は月一回以上の頻度で肝機能検査を行う必要がある。規制強化の引き金になった症例は、一人が劇性肝炎で死亡、4人が深刻な肝障害を発症した。治療開始後早い時期に発症した事例もあるが、中止後数ヶ月経ってから発症したケースもあるようだ。

このため、EMAは使用を高度活性の再発性疾患で他の治療がフェールした患者や、急速に進展していて他の薬で治療できない患者に限定した。

Zinbrytaは肝障害のある患者には禁忌。多発硬化症以外の自己免疫疾患を持つ患者に用いることは推奨されない。肝障害のリスクのある薬と同時使用する時は注意する。

リンク: EMAのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年7月2日

2017年7月2日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • MSD、CEPT阻害剤の心血管アウトカム試験が成功? 
  • ロシュ、画期的な血友病治療薬の第三相試験が成功 
  • アドセトリス、一次治療試験が成功 
  • バイオマリン、フェニルケトン尿症の新薬を承認申請 
  • ファイザーの抗体薬物複合体が承認 
  • ベクティビックスの適応がRAS野生型に限定 
  • ジカディア、EUでも一次治療承認 
  • 抗IL-6受容体抗体がEUでも承認 



【新薬開発】


MSD、CEPT阻害剤の心血管アウトカム試験が成功?
(2017年6月27日発表)

MSDは、MK-0859(anacetrapib)の第三相心血管アウトカム試験が主目的を達成したと発表した。データは8月29日にESC(欧州心臓学会)で発表される予定。

anacetrapibはコレステロール・エステルをHDL-CからLDL-Cに輸送するCETPを阻害する薬物で、LDL-Cを40%削減し、HDL-Cを130%増やす。他社のCETP阻害剤のアウトカム試験は全てフェールしたことを考えるとサプライズだが、プレスリリースのトーンは抑制的で、承認申請するかどうかこれから検討する様子だ。脂肪蓄積にも言及しており、副作用面で何か懸念材料があるのかもしれない。

このREVEAL試験はオックスフォード大学の臨床試験ユニットが主導して欧州、北米、中国の医療施設で実施した。対象は心筋梗塞、脳梗塞など脳血管アテローム性疾患、末梢動脈疾患、または症候性冠動脈疾患を合併する糖尿病の患者約3万人。介入方法・対照療法はatorvastatinによるランイン治療を受けた、平均LDL-C値61mg/dL、HDL-C値40mg/dLの患者に偽薬または100mgを一日一回投与。主評価項目は冠状疾患死/心筋梗塞/冠血行再建術の複合評価項目。

仮説は偽薬群の発生率が年1.8%、anacetrapibの相対リスク削減率は15%。検出力(p<0.01)は88%。心血管アウトカム試験は費用と時間がかかるせいか、ボリュームを目一杯引き上げて小さな音でも拾えるようにデザインすることが多く、この試験もフェールするリスクを抑制している。

CETP阻害剤で最初に第三相に進んだファイザーのtorcetrapibは、約13000人の冠状心疾患患者を組み入れたILLUMINATE試験が中間解析で打ち切りとなった。心血管イベントのリスクが偽薬群の1.25倍、全死亡リスクが1.58倍と高かったからだ。原因は明らかではないが、疑われているのはアルドステロンやコルチゾルが増加することや、血圧上昇だ。

後者は投与期間依存的で、前期第二相、後期第二相、第三相、1年試験、心血管アウトカム試験とステージアップするにつれて影響が拡大していった。もう一つ気になったのは、HDL-C値が3~6ヶ月でプラトーに達せず、少しずつだが上がり続けること。HDL-Cだけなら問題ないかもしれないが、副作用も期間相関しないか、心配だ。

イーライリリーのLY-2484595(evacetrapib)はACCELERATE試験の中間解析で無益性が認定され、開発中止となった。代理マーカーの変化を見ると、LDL-Cが37%低下、HDL-Cは130%増加しており、anacetrapibと大差ない。両剤とも血圧上昇副作用は小さく、ACCELERATE試験の収縮期血圧の群間差は1 mmHgに過ぎなかったので、副作用で違いが出るようことも考えにくい。

にも関わらず、主評価項目(不安定狭心症による入院なども含む5項目)も、ハードなエンドポイントである心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中の3項目だけの評価でも、群間差はほとんどなかった。

それでは、anacetrapibは、あるいはREVEAL試験は、何が違うのか?最初に目につくのは、REVEAL試験の主評価項目に脳卒中が入っていないことだ。尤も、evacetrapibの試験では複合評価項目を構成する個々の項目でも群間差が無かったし、torcetrapibと違って血圧は上昇しないのだから、脳卒中増加を疑う理由はない。

次に考えられるのは、相対リスク削減率が仮説より小さく臨床的な意義が限定的であった可能性。あるいは、何かの副作用の発生率がこれまでの試験より高かった可能性。ボリュームを目一杯上げればノイズも煩くなるのは当たり前だが、副作用はリアルであることを前提に検討せざるを得ない。

MSDの新薬開発は周到・徹底的なので、上記の脂肪蓄積問題について、長期的な影響を検討する前臨床試験を別途、行ったかもしれない。そこで懸念材料が浮上し、確認のために未だ時間が必要という話である可能性もありそうだ。

ESCでの発表内容が注目される。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: LandrayらのREVEAL試験デザインペーパー(American Heart Journal)
リンク: REVEAL試験の治験登録

ロシュ、画期的な血友病治療薬の第三相試験が成功
(2017年6月26日発表)

ロシュは、ACE910/RG6013/RO5534262(emicizumab)の第三相試験成功を発表した。詳細は7月10日にISTH(国際血栓止血学会)で発表される予定。

中外製薬が創製したヒト化二重特異性抗体で、第VIII因子インヒビターを持つA型血友病の出血予防に用いる。活性化第VIII因子の代わりに第IX因子と第X因子に結合・架橋して血液凝固カスケードを進捗させる。週一回皮注なので、頻繁に出血する患者が予防目的でルーチンに投与するのに適している。

第三相試験は青年成人と小児の二本行われた。前者は109人を組入れて、そのうちBPA(バイパス剤)による出血予防歴を持つ患者をemicizumabによる予防を行う群と予防せず出血時にBPAで治療する群に2対1割付して出血状況をメジアン31週間追跡した。結果は予防群が年率2.9回、出血時治療群が23.3回、リスクレシオ0.13、p<0.0001となった。

また、BPAによる出血予防歴を持つ患者24人にemicizumabによる予防を施行した群は、年率3.3回と、BPAによる予防を行っていた頃の15.7回と比べてリスクレシオ0.21、p<0.0003と、こちらも有意に減少した。

既報のように、この試験ではemicizumab群で深刻な血栓塞栓イベントが2例、血栓性微小血管症が3例、発生し、うち1名は死亡した。何れもブレークスルー出血時に活性化プロトロンビン複合体(aPCC)を投与しており、emicizumabの副作用なのか他の薬または併用に伴うリスクなのか、判然としない。薬効解析対象となった77例のうち対照群は18例、23%に過ぎず、発生率の比較は困難である。当局が個々の症例報告を精査するのを待つしかないだろう。

A型血友病の治療・出血予防は遺伝子組換え型第VIII因子が有効だが、一部の患者は生まれつき、または投与を繰り返すうちに、インヒビターができて無効になる。遺伝子組換え型活性化第VII因子などのBPAが適応になるが、血液凝固を促す薬なので必然的に血栓塞栓リスクも高まる。emicizumabも例外ではなかった。となると、問題はリスクと便益のバランスと価格だ。予防的に使う薬なので安全性のハードルは高めになり、新薬はトラックレコードが乏しいので更に高くなる。

年内に欧米日本で承認申請される予定。貴重な選択肢なので承認はされるだろうが、普及には時間がかかるかもしれない。

リンク: ロシュのプレスリリース

アドセトリス、一次治療試験が成功
(2017年6月26日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)と武田薬品は、Adcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)の古典的ホジキン型リンパ腫一次治療試験が成功したと発表した。ABCDレジメン(adriamycin、bleomycin、vinblastine、dacarbazineの四剤併用)と、bleomycinに代えてAdcetrisを併用する方法を比較したところ、修正PFS(無進行生存期間、独立放射線学的査読後)のハザードレシオが0.77、p=0.035と有意に改善した。

2年mPFS率は各群77.2%と82.1%だった。全生存解析は未成熟で有意差はなかったが、改善トレンドが見られた由。

高額な薬剤である割には2年mPFSの差は5%弱と小さい。延命効果が明確になれば説得力が増すが、正式解析は4年後のようだ。

尚、5剤併用ではなく4剤併用に留めたのは、ABCDとAdcetrisを5剤併用した試験で肺有害事象の発生率が40%と大きく上昇したからだろう。bleomycinの肺毒性が増強されたと考えられており、この二剤の併用は禁忌になっている。

リンク: シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

【承認申請】


バイオマリン、フェニルケトン尿症の新薬を承認申請
(2017年6月30日発表)

バイオマリン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:BMRN)は、PEGPAL(pegvaliase)をフェニルケトン症治療薬としてFDAに承認申請した。同社のKuvan(sapropterin dihydrochloride)などの既存療法に十分反応しない患者を想定している模様だ。欧州でも年内に承認申請の予定。

希少疾患用薬のスペシャリストで何度も承認を申請取得した経験を持つ会社だが、プレスリリースで改めてFDAの受理手続きを説明しているのが目を引く。受理されないリスクを想定しているのかもしれない。

PEGPALは遺伝子組換え型フェニルアラニン・アンモニア・リアーゼ。中和抗体ができて増量が必要になったり、反応が悪い患者がいたりするため、第三相試験はランイン期間中に投与してある程度以上の反応を示した患者だけを組入れて、継続治療群と投与を止める群を比較する離脱試験方式で行った。結果は、継続治療群の血中フェニルアラニン値が微増に留まったのに対して、中止群は倍以上に増加し、有意な差があった。

レスポンダー率が低い点ではKuvanも同じで、だからこそ代替的な治療手段が必要とも言える。許容範囲なのか。改善の余地があるのか、FDAの判断が注目される。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

【承認】


ファイザーの抗体薬物複合体が承認
(2017年6月30日発表)

ファイザーは、Besponsa(inotuzumab ozogamicin)がEUで承認されたと発表した。成人の再発性難治性CD22陽性前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病に用いる。ワイス(後にファイザーが買収)がセルテック(後にUCBが買収)と共同開発した抗体薬物複合体で、B細胞性腫瘍の9割で発現しているCD22に結合する抗体を細胞毒のカリケアマイシンと結合したもの。第三相試験では完全反応率が80.7%と、FLAGレジメンや高量cytarabineを用いた対照群の9.4%を大きく上回った。

ワイスとセルテックの抗体薬物複合体と言えばMylotarg(gemtuzumab ozogamicin)が加速承認→市販後薬効確認試験フェール→(欧米で)販売中止→用法用量を変えて再チャレンジ成功→再承認申請、という波乱万丈のプロダクトサイクルを経験している。Besponsaも非ホジキンリンパ腫の第三相が一本は組入れ不調で、一本は無益性で、中止になった過去があるが、見事に復活した。

リンク: ファイザーのプレスリリース

ベクティビックスの適応がRAS野生型に限定
(2017年6月29日発表)

アムジェンは、FDAがVectibix(panitumumab)の適応限定を承認したと発表した。抗EGFR完全ヒト化抗体で末期結腸直腸癌に用いるが、一次治療でFOLFOXレジメンに併用する場合も、代表的な薬が全てフェールした患者のサルベージ療法として単剤投与する場合も、kras及びnrasが変異していない野生型だけに用いる。

米国で最初に承認された時はrasによる限定はなかったが、一年後にEUで承認された時はkrasに変異のない患者に限定された。その後、krasのエクソン2に変異のない患者だけを組入れたFOLFOX併用試験のサブグループ分析で、nras変異型にはほとんど効果がない可能性が浮上した。今回の適応限定はこれらの試験結果に基づくものだが、なぜ今日まで変更されなかったのかが不思議だ。

リンク: アムジェンのプレスリリース

ジカディア、EUでも一次治療承認
(2017年6月29日発表)

ノバルティスは、Zykadia(ceritinib、和名ジカディア)をALK陽性末期非小細胞性肺癌の一次治療に用いる適応拡大がEUに承認されたと発表した。米国は5月に承認済み。

非小細胞性肺癌の3~7%で見られるALK活性化融合蛋白陽性患者が適応になる。非扁平上皮性非小細胞性肺癌の第三相試験ではメジアン無進行生存期間が16.6ヶ月と、白金薬とAlimta(pemetrexed)を併用しAlimta維持療法も施行された対照群の8.1ヶ月より良好だった。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

抗IL-6受容体抗体がEUでも承認
(2017年6月27日発表)

リジェネロン(Nasdaq:RGEN)とサノフィは、Kevzara(sarilumab)がEUで抗リウマチ薬として承認されたことを発表した。米国では5月に承認済み。両社の完全ヒト化抗体に関する開発提携の産物で、IL-6受容体のアルファ・サブユニットに結合する、中外/ロシュのActemra(tocilizumab)に似た薬剤。二週間に一回皮注する。Actemraもリウマチ性関節炎に関しては1~2週間に一回、皮注が承認されている。副作用の出方はよく似ている。となると注目は価格だが、米国ではActemraの7掛けの水準に置かれる模様だ。

リンク: リジェネロンのプレスリリース





今週は以上です。

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