2017年6月18日

2017年6月18日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ADA:カナグルの心血管アウトカム試験の意義 
  • ADA:トレシーバの心血管リスクはランタス比非劣性 
  • キイトルーダの三剤併用試験で死亡リスク懸念 


【新薬開発】


ADA:カナグルの心血管アウトカム試験の意義
(2017年6月12日発表)

ADA米国糖尿病学会やNew England Journal of Medicine誌でInvokana(canagliflozin、和名カナグル)の心血管アウトカム試験の結果が発表された。心筋梗塞などのリスクを削減する効能が示された一方で、下肢切断や骨粗鬆症のリスクが表面化。この二つのリスクは他のSGLT2阻害剤では観察されておらず、この薬独自の問題なのか、臨床試験実施方法の細部が違うのか、今後の探索課題になるだろう。この臨床試験を行った医療関係者や製薬会社は称賛されるべきである。

思えば、米国でFDAや高名な医学者が血糖治療薬の心血管アウトカム試験を要求した時、日本では、糖尿病患者の死因として最も多いのは癌であって心血管疾患ではないという屁理屈を盾に、必要なしと結論した。こういうのを曲学阿世と呼ぶのだろうか。

血糖治療薬は生存にとって重要なエネルギー代謝システムに影響するせいか様々な副作用を持つ。糖尿病の患者は何十年もの間、薬を飲み続けなければならないのだから、3ヶ月や半年の試験だけでは全ての功罪を洗い出すことはできない。患者数が多いので、1万人年に一人の副作用でも世界では年数千人、数万人が被害を受けることになるから軽視できない。長期、大規模な心血管アウトカム試験を行えば、様々な副作用に関して統計学的にある程度価値のある情報を収集することができる。

今回の試験は、医学研究において謙虚な姿勢がいかに重要か、真実に対する謙虚さを失った権威が如何に有害であるかを示した。

発表されたデータはCANVAS試験とCANVAS-R試験の統合分析結果で、通常と異なるので最初に経緯を説明しよう。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、当初、CANVAS試験の中間解析で心血管リスクが大きく増えないことを確認した上で販売承認を取得し、最終解析でFDAの要求基準(リスクが1.3倍以上高まらない)を満たす考えであった。しかし、中間解析の結果がアンブラインドされたために、試験医や患者に先入観を与えて盲検が機能しなくなる可能性が生じた。そこで、新たにCANVAS-R試験をロンチした。

その後、ベーリンガー・インゲルハイム/イーライリリーのJardiance(empagliflozin)の心血管アウトカム試験が成功、主目的である非劣性解析だけでなく、リスク削減効果を検討した優越性解析も成功し、他の血糖治療薬との違いを明らかにした。刺激されて、Invokanaも二本の試験のプール分析で優越性解析を行うことを決めたのである。

対象は二型糖尿病で心血管疾患リスクが高い患者。CANVAS試験は約4300人をメジアン5.7年間追跡。CANVAS-Rは約5800人を2.1年間追跡した。どちらも日本の医療施設は参加していない。CANVAS試験は偽薬、100mg、300mgの三群、CANVAS-Rは100mgで開始し必要なら300mgに増量すると偽薬の二群。統合分析では用量不問で試験薬群とした。

他の血糖治療薬や心血管疾患用薬の使用は夫々の地域の治療ガイドラインに則って行われた。従って、本来なら血糖値の群間差は小さいはずだが、他の試験と同様にCANVAS試験でも偽薬群のA1cは8%超のまま推移し、試験薬群と0.58%の差が生じた。時間の経過とともに試験薬群の値が上昇し群間差が縮小したことも合わせて考えると、国際的な心血管アウトカム試験に参加するような医療施設でも血糖値を良好に管理することはしない/できないことが見て取れる。

主評価項目の心血管疾患死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中(MACE)はハザードレシオが0.86(95%信頼区間0.75~0.97)となり、95%上限が1.3を下回ったため、非劣性解析が成功。プロトコルに則ってシーケンシャルに実施された全死亡の優越性解析がフェールしたため、その後に予定された解析は有意性を失った。

MACEの優越性解析は、p値が0.02となったため、成功認定された。但し、この解析が上記のシーケンスの中に納まっているのか、それとも多重性のリスクが内包されているのかは明らかではない。カプランマイヤー・カーブを見ると、1年半経った辺りから二本の曲線が乖離している。

MACEの1000人年当り発生率は偽薬群31.5、Invokana群26.9なので、number needed to treatは結構大きい。一方、深刻な有害事象の1000人年当り発生率は各120.0対104.3なので、Number needed to harmのほうが大きい。問題の下肢切断は1000人年当り6.3対3.4でハザードレシオ1.97(95%信頼区間1.41~2.75)。

骨損壊は同じく15.4対11.9、ハザードレシオ1.26(1.04~1.52)。CANVAS-R試験では増加しなかったが、追跡期間がかなり異なることが原因かもしれない。

JardianceのEMPA-REG OUTCOME試験はハザードレシオが0.86(95%信頼区間0.74~0.99)、優越性解析のp値は0.04なので全体的に大差ない。偽薬群の主評価項目発生率は100人年当り4.39とやや高いので、EMPA-REG OUTCOME試験のほうが高リスクの患者を組入れたことになる。

心不全入院の減少はどちらも同じ。EMPA-REG OUTCOME試験では骨折が増えなかった。下肢切断は、この試験でもJardianceの全臨床試験のプール解析でも増えなかったことが今年のADAで発表された。尤も、メジアン追跡期間が3.1年とCANVAS試験より短いので、長期的な転帰は不透明なところがある。

下肢切断リスクに関する欧米の当局の判断は分かれており、EUはSGLT2阻害剤のクラス・イフェクトと判断したがFDAはInvokanaについてだけ警告した。難しいところだが、現時点では、Invokanaを使わなければならない理由はないように感じられる。

リンク: ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース(pdfファイル)
リンク: Nealらの治験論文(NEJM)
リンク: ベーリンガーらのADA発表に関するプレスリリース(6/13付)

ADA:トレシーバの心血管リスクはランタス比非劣性
(2017年6月12日発表)

ADAではノボ ノルディスクの持効性インスリン、Tresiba(insulin degludec、和名トレシーバ)の心血管アウトカム試験であるDEVOTE試験の結果も発表された。二型糖尿病で心血管リスクの高い約7600人をTresiba群とサノフィの持効性インスリンのベストセラー、Lantus(insulin glargine、和名ランタス)群に無作為化割付して心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中の複合評価項目の発生リスクを比較したもの。

結果は、ハザードレシオが0.91(95%信頼区間0.78~1.06)となり、95%上限が1.3を下回ったため、非劣性であることが確認された。イベント発生率は各群8.5%と9.3%、死亡率は5.3%と5.8%だった。Tresibaの長所はインスリンの血中濃度が安定的に推移するため低血糖リスクが小さいこと。本試験でも、重度低血糖のオッズレシオは0.79(95%信頼区間0.60~0.89)と、有意に小さかった。ノボは今回のデータをEUで承認申請した。他の地域でも申請予定。

リンク: ノボのプレスリリース

【医薬品の安全性】


キイトルーダの三剤併用試験で死亡リスク懸念
(2017年6月12日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の臨床試験のうち二本の新規組入れを中断すると発表した。死亡者数に群間の偏りが見られたため、データ監視委員会が勧告しMSDが受け入れた。既組入れ患者に対する投与は続行する。勿論、被験者に今回の情報を伝えて同意書を撤回するかどうか確認することが最優先だろう。

何れも多発骨髄腫の第三相三剤併用試験で、KEYNOTE-183試験は再発性難治性で三次治療を受ける患者にpomalidomide(セルジーンのPomalyst/Imnovid)と低量dexamethasoneを併用する標準療法と三剤併用、KEYNOTE-185試験は初めて治療を受ける自家造血幹細胞移植不適患者にlenalidomide(セルジーンのRevlimid)と低量dexamethasoneのRd療法と三剤併用を、夫々、比較するもの。

抗PD-1/PD-L1抗体も深刻な有害事象が発生することがあり、多剤併用の組み合わせによっては副作用が許容範囲を超えることもあるだろう。メーカー各社は併用法の開発をアグレッシブに進めているが、危険な兆候が生じた時は、今回のMSDのように、一旦立ち止まって足元を確かめることが肝要だ。

BMS/小野のOpdivo(nivolumab)もRd療法と併用でくすぶり型多発骨髄腫に第二相試験を実施している。この状況も気になるところだ。

リンク: MSDのプレスリリース







今週は以上です。

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2017年6月11日

2017年6月11日号


【訂正】


6月4日号のZytigaの臨床試験に関する記述に間違いがありました。対照群の治療法をADTとprednisoneを併用する標準療法と書きましたが、ADTだけでした。以下、訂正再掲致します。

【ニュース・ヘッドライン】

  • (訂正再掲)ASCO:ザイティガはホルモン・ナイーブにも有効 
  • ICML:CTL019もリンパ腫に有効 
  • ASCO:パージェタのアジュバントはケースバイケースに 
  • ASCO:アレセンサは海外でもザーコリに勝つ 
  • ASCO:肝臓癌試験が久々に成功 
  • ASCO:PARP阻害剤の乳癌試験が成功 
  • ASCO:オプジーボとヤーボイは悪性胸膜中皮腫に有効 
  • ASCO:ヤーボイの用量は多すぎる? 


(訂正再掲)ASCO:ザイティガはホルモン・ナイーブにも有効
(2017年6月3日発表)

ASCOではジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大試験成績も発表された。転移性前立腺癌用薬で、2011年の初承認時の適応はホルモン療法に反応しなくなり癌の症状が悪化して化学療法を受けたが再発/無効だった患者、翌年の適応拡大はその一歩前の段階であるホルモン療法抵抗性無/軽度症候性患者だったが、今回は更に手前の試験が成功、日本も含めて、適応拡大申請した。対象患者数が再び大きく増加することになる。

このLATITUDE試験は、転移性前立腺癌で初めてホルモン療法を受ける(ナイーブ)患者のうち、Gleason scoreや骨転移、内臓転移の状況などから高リスクと判定された患者を組入れて、ADT(アンドロゲン除去療法薬)群とZytigaとprednisoneを併用する三剤併用群の全生存期間を比較した。結果は、ハザードレシオが0.62、p値は0.0001未満、メジアン値は標準療法群が34.7ヶ月、三剤併用群は未到達と大変良い結果になった。主なG3以上の有害事象は高血圧や低カリウム血症。

前立腺癌は進行の遅いものが少なくないため副作用のきつい化学療法は癌が進行して骨転移痛などの症状が強くなるまで待つことが多い。今回のデータは便益と危険のバランスが取れているように見えるので、再考の契機になるのではないか。適応拡大なので今週(6月4日号)のトピックスの3番目に置いたが、臨床的な重要性は一番かもしれない。

リンク: ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

【新薬開発】


ICML:CTL019もリンパ腫に有効
(2017年6月7日発表)

ノバルティスは、CTL019(tisagenlecleucel)の第二相リンパ腫試験の中間解析結果をICML(国際悪性リンパ腫会議)で発表した。単純比較はできないが、Kite Pharma(Nasdaq:KITE)の競合品と見比べても良い成績だ。急性リンパ性白血病用薬として米国で承認申請済みだが、年内に適応拡大申請する予定。

CTL019はペンシルバニア大学からライセンスしたキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法。B細胞特異的に発現する表面分子であるCD19に結合する抗体の細胞外単鎖可変領域を、TCRの共刺激伝達領域であるCD137(4-1BB)およびCD3ゼータ鎖とスペーサーで繋げた組換え遺伝子を、患者から採取したT細胞にレンチウイルスをベクターとして導入したもの。患者に戻すと抗原提示なしでB細胞を攻撃する。

ペンシルバニア大学/ノバルティス、Kite、そしてJuno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)/セルジーンの三グループがCAR-Tの早期発売に向けて激しい先陣争いを繰り広げている。CTL019は今年3月に3~25歳の再発性難治性B細胞急性リンパ性白血病用途で米国で承認申請、7月12日の諮問委員会を経て10月までに審査結果が判明する予定。

Kiteも3月に自家造血幹細胞移植不適の再発性難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、転換濾胞性リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫)用途で米国承認申請、審査期限は11月29日となっている。

一方、JunoはJCAR015の臨床試験で脳浮腫が複数発生、開発中止となり一歩後退した。三社の開発品は構成やプリトリートメントに用いる化学療法の内容が若干異なるので単純ではないが、脳浮腫が、サイトカイン放出症候群と同様に、CRA-Tのクラスイフェクトである可能性も考えられるので、重要なチェックポイントになる。

さて、今回の第二相試験は、再発性難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、二次以上の治療歴を持つ、18歳以上の自家造血幹細胞移植不適の患者を組入れた単群試験。中間解析の対象となった51人の3ヶ月ORR(客観的反応率)は45%で、完全反応37%、部分反応8%だった。ベストORRは59%だった。

KiteのKTE-C19(axicabtagene ciloleucel)は3ヶ月ORRが39%、うち完全反応33%だった。別々に実施された小規模な試験なので数値の比較は困難だが、数値上はCTL019のほうが良い。

忍容性は、G3/4の有害事象はサイトカイン放出症候群、神経学的有害事象、骨髄抑制など。サイトカイン放出症候群の致死例はなし。脳浮腫は発生せず。ex vivo細胞療法は得率が重要だが、CTL019の生産成功率は試験の最後の30例では97%まで上昇した由。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ASCO:パージェタのアジュバントはケースバイケースに
(2017年6月5日発表)

ロシュは、Perjeta(pertuzumab、和名パージェタ)のAPHINITY試験の結果をASCO米国臨床腫瘍学会議で発表した。成功したこと自体は3月に公表済みなので治療効果の多寡が注目されたが、悪くはないものの格別に良くもなかった。適応拡大申請すれば承認されるのだろうが、使用の当否は夫々の医師が患者毎に判断することになるのではないか。

PerjetaはHerceptinのターゲットであるher2の異なったエピトープに結合する抗2C4ヒト化抗体で、her2がher1やher3とヘテロダイマーを形成するのをブロックする。Herceptinの効果を増強・補完するイメージだ。12年に米国で、翌年には日本でも、her2陽性転移性乳癌の一次治療にdocetaxel及びHerceptinと併用する用途で承認され、13年には早期乳癌切除術前のネオアジュバント用途米国で承認された。

今回のAPHINITY試験は、her2陽性の早期乳癌の切除を受け、再発防止目的で化学療法とHerceptin(trastuzumab)によるアジュバント治療を行う患者約4800人を組入れて、Perjetaを併用する効果を偽薬と比較した。用量用法は、初回は840mg、その後は3週間毎に420mgを点滴静注。投与期間はHerceptinと同じ1年コース。

結果は、主評価項目であるiDFS(浸潤性乳癌無再発生存率)のハザードレシオが0.81(95%信頼区間0.66~1.00)、p=0.045、3年iDFS率は94.1%(偽薬群は93.2%)となった。成功は成功だが、95%上限やp値はボーダーラインぎりぎりであり、もしこれがPerjetaの唯一の薬効確認試験だったら薬効のエビデンスが不十分と言わざるを得ないところだろう。

サブグループ分析を見ると、リンパ節転移のある3005例ではハザードレシオ0.77(95%信頼区間0.62~0.96)、3年iDFS率92.0%(偽薬群90.2%)、未転移の1799例では各1.13(0.68~1.86)、97.5%(98.4%)となっている。前者の方が再発リスクが高いので治療効果が高くても不思議はないが、交絡p値は0.17なので、保守的に考えて、リンパ節転移に有効というよりは未転移には使わない方がよいという重み付けをすべきなのだろう。

G3以上の有害事象発生率は64%と偽薬群の57%を上回るのでnumber needed to treatだけでなくharmも考慮する必要がある。発生率は低いが、アンスラサイクリンやHerceptinと同様に、心臓イベントが増加している。また、次元の異なる話だが、Perjetaの1年コースは日本の薬価ベースで約450万円かかるので、体だけでなく財布も痛む。Herceptinだけでも高いのに患者は泣きっ面に蜂だ。

延命効果の解析は未成熟で、ハザードレシオ0.89(95%信頼区間0.66~1.21)となっている。次の解析は2.5年毎のことなので、当面はエビデンスレス。

今後、もっと長期間追跡すればデータが改善すると期待する声もあるようだが、New England Journal of Medicineの電子版に刊行された治験論文の論評者は、Herceptinのアジュバント試験の経験から、期待薄と予想している。her2標的薬以外でも、過去の乳癌アジュバント試験では、3年生存率は改善したのに5年生存率は改善しなかったとか、5年間服用するのは有効だがそれ以上続けても無効、とか、一筋縄で行かなかったケースが散見される。

Herceptinはher2陽性乳癌用薬だが、初承認時と比べるとher2の定義が狭くなっている。今回のAPHINITY試験も検査結果3+だけが対象だ。高い薬をできるだけたくさんの患者に使ってもらうことが製薬会社の利益だが、患者の利益は自分に有効で副作用や費用が許容範囲内であることだ。高額薬剤費の太宗を担う社会保障制度とその原資を担う国民・企業の利益も費用次第だ。製薬会社は患者や社会を敵に回すべきではない。誰に有効で誰に不適なのか、承認を取るだけで満足せずに最後まで探求すべきである。

リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: Minckwitzらの治験論文(NEJM)

ASCO:アレセンサは海外でもザーコリに勝つ
(2017年6月5日発表)

ロシュは、Alecensa(alectinib、和名アレセンサ)の直接比較試験の結果をASCOで発表した。4月に成功発表済みなので治療効果のマグニチュードが注目点。日本で実施された試験ほどではなかったが良い数字だった。

Alecensaは中外製薬発のALK阻害剤で、14年に日本でALK融合遺伝子陽性(該当率1~5%)の切除不能進行再発非小細胞性肺癌用薬として承認。海外でもXalkori(crizotonib、和名ザーコリ)不耐不応患者の二次治療薬として米国で15年に、EUでも17年に、承認された。

一次治療薬としての便益や危険をXalkoriと直接比較した試験は、まず日本で実施、中間解析で成功。PFS(独立効果判定委員会が評価)のハザードレシオは0.34(99.6826%信頼区間0.17~0.70)、メジアンは未達でXalkori群は10.2ヶ月だった。G3/4の有害事象発生率は27%対51%で少なかった。

ASCOで発表された海外試験の結果は、PFS(同)のハザードレシオが0.50(95%信頼区間0.36~0.70)、メジアンは25.7ヶ月でXalkoriの10.4ヶ月を上回った。日本試験の点推定値は海外試験の信頼区間からはみ出ているが、信頼区間自体は重なっている。中間解析で成功認定される試験はデータが真の値と比べて良すぎることがあり、日本試験はこのパターンなのかもしれない。

AlecensaやノバルティスのZykadia(ceritinib、和名ジカディア)はXalkoriより脳血管移行性に優れる。この試験でも、中枢神経系腫瘍進行のハザードレシオが0.16と、大変良い結果が出た。

G3-5の有害事象の発生率は41%対50%で、日本試験ほどではないが、少なかった。致死的な有害事象の発生率は3%(5人)対5%(7人)で大差なかった。

リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: Petersらの治験論文(NEJM)

ASCO:肝臓癌試験が久々に成功
(2017年6月5日発表)

VEGFを標的とする薬は多数ある。抗体医薬ならロシュのAvastin(bevacizumab)、Lucentis(ranibizumab)、リジェネロンのEylea(aflibercept)など。VEGF受容体チロシンキナーゼを標的とする小分子薬はファイザーのSutent(sunitinib)、バイエルのNexavar(soratinib)等々、特に数が多く、逆に言えば、差別化が難しいので、後発組は工夫が必要だ。

比較的無風だった肝細胞腫用途でも、Nexavarの対抗馬が現れた。エーザイのLenvima(lenvatinib)だ。Nexavar対照非劣性試験の成功がASCOで発表された。

この304試験は、切除不能肝細胞腫で全身的治療を初めて受けるChild-Pugh分類Aの患者954人を、Lenvima群(12mgを一日一回経口投与、但し体重60kg未満は8mgに減量、どちらも既承認用途より少量)とNexavar群(400mg一日二回)に無作為化割付して、全生存期間を比較した。結果は、ハザードレシオ0.92(95%信頼区間0.79~1.06)、メジアン値は13.6ヶ月と12.3ヶ月となり、95%上限が非劣性マージンの1.08を下回ったため非劣性と認定された。

治療時発現有害事象の発生率は両群大差なかった模様。

リンク: エーザイのプレスリリース(和文)
リンク: ASCOの抄録

ASCO:PARP阻害剤の乳癌試験が成功
(2017年6月4日発表)

PARP阻害剤の第三相BRCA1/2生殖細胞系変異型乳癌試験が成功したと聞いても、10年前なら、さもありなんと首肯するだけで驚きはしなかっただろう。しかし、過去10年間に実施された数々の試験がフェールし、卵巣癌に転戦してやっと花咲いた後だけに、アストラゼネカのLynparza(olaparib)の第三相乳癌試験成功は新鮮な驚きだ。

Lynparzaは14年に欧米でBRCA1/2変異型卵巣癌に承認されたPARP阻害剤。PARPは遺伝子の複製ミスを修復する二つの代表的なメカニズムの一つに係る酵素。もう一つに関わる遺伝子がBRCA1/2で、機能喪失変異を持つ家系は乳癌や卵巣癌のリスクが高い。このような癌にPARP阻害剤を投与すると、癌細胞の増殖時に生じる複製ミスが修正されず、アポトーシスを誘導できる可能性がある。メカニズムを考えれば、今まで乳癌試験が成功しなかったことの方が不思議だ。

今回の治験デザインは、P(患者)はBRCA1/2生殖細胞系変異陽性でher2陰性の転移性乳癌で、切除後アジュバント療法または転移後治療としてアントラサイクリン系とタクサン系(ホルモン受容体陽性癌はホルモン療法も)による前治療例を持つ、一次治療から三次治療までの患者、約300人。

I(介入方法)は300mg錠を一日二回、経口投与。C(対照群)はcapecitabine、vinorelbine、eribulin(エーザイのハラヴェン)の中から担当医が選んだ薬を用いた。O(主目的)はPFSで、経口剤と点滴用薬が混在するオープンレーベル試験であるため、独立評価委員会が盲検で評価した。

結果は、ハザードレシオが0.58(95%信頼区間0.43~0.80)、メジアンは7.0ヶ月で化学療法群の4.2ヶ月を上回った。全生存期間の解析は元々から検出力不足で、ハザードレシオ0.90(95%信頼区間0.63~1.29)と有意差はなかったが点推定値はいるべき側にいる。G3以上の有害事象は36.6%で化学療法群の50.5%を下回った。貧血などは増加した。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース
リンク: Robsonらの治験論文(NEJM)

ASCO:オプジーボとヤーボイは悪性胸膜中皮腫に有効
(2017年6月5日発表)

BMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)を悪性胸膜中皮腫に用いた第二相試験の結果がASCOで発表された。有効な薬が少ないので、今後の試験データが注目される。

このIFCT-1501試験はフランスの共同治験グループが実施したもので、二次までの治療歴を持つ患者125人をOpdivo単剤投与群(3mg/kgを二週間毎)とYervoy(1mg/kgを6週間毎)併用群に無作為化割付して、夫々の群の12週疾病管理を独立委員会が盲検評価した、非対照試験。

最初に評価された108人における12週疾病管理率は単剤投与群が42.6%、併用群が51.9%だった。もっと一般的指標であるORR(客観的反応率)は各16.7%と25.9%だった。Scherpereelらの抄録によると過去に実施された二次治療試験の疾病管理率は30%未満とのことなので、今回はなかなか良い結果だ。

G3/4有害事象発生率は単剤投与群が9.5%、併用群は16.4%。併用群では治療関連死が3例報告された(代謝性脳症、劇性肝炎、急性腎障害が各1例)。

リンク: BMSのプレスリリース

ASCO:ヤーボイの用量は多すぎる?
(2017年6月4日発表)

BMSは、NCI(米国立癌研究所)主導の黒色腫切除後アジュバント試験における、Yervoy(ipilimumab)の二用量群の中間解析結果がASCOで発表されたことを公表した。計画外の解析と言明しているので不本意なのかもしれないが、高価で深刻な副作用ももたらす割には至適用量が明確でない薬なので、研究者側が重要な情報と判断したのだろう。

Let it beはポール、Let it goはエルサ、Let this goはドナルドと、発言者は異なるが教訓は同じ。人の口に戸は立てられず、むしろ、堂々と真実に喋らせるのが一番だ。

時事放談はともかく、このE1609試験は、ステージIII/IVの黒色腫の切除術を受けた高再発リスクの患者のアジュバント療法としてのYervoyの効果を高量インターフェロン・アルファ-2bと比較したもの。主評価項目は全生存期間と無再発生存期間で、治験登録によると、2018年に主評価項目解析のためのデータ収集が完了する予定。

ASCOで公表されたのは3年無再発生存率で、Yervoyの標準的な用量である10mg/kgを投与した群の406人は54%、3mg/kg群の367人は56%だった。G3/4の有害事象発生率は各群66%と53%。治療関連有害事象の疑い例における死亡は各8人と2人だった。

Yervoyは活性化T細胞を鎮静化させるCTLA-4をブロックする免疫療法的抗体医薬で、11年に切除不能転移性黒色腫用薬として欧米で承認された。アジュバントはステージIIIだけを対象に10mg/kgと偽薬を比較した試験が成功、15年に米国で承認された。この試験の3年無再発生存率は10mg/kg群が46.5%、偽薬群は34.8%なので、E1609試験より数字が悪く、高リスクの患者をスクリーニングしたことになる。

異なった試験なので直接比較はできないが、E1609試験はYervoyの至適用量を再考する契機になりうるのではないか。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年6月4日

2017年6月4日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO:LoxoのTRK阻害剤は反応率76% 
  • ASCO:リリーのCDK4/6阻害剤は先行品と大差なさそう 
  • ASCO:ザイティガはホルモンナイーブにも有効 
  • テバの抗CGRP抗体も第三相が成功 
  • ムコ多糖症VII型の治療薬が欧米で承認申請 
  • GSKとViiV、二剤だけの抗HIV療法を欧米で承認申請 
  • スーテント、アジュバントに適応拡大申請 
  • ノボの第IX因子、米国はルーチン予防を承認せず 
  • EUで脊髄性筋萎縮症用薬が承認 
  • CLN2治療薬もEUで承認 
  • ファイザーのB群髄膜炎菌ワクチンがEUで承認 
  • EU、オプジーボを膀胱癌に承認 



【新薬開発】


ASCO:LoxoのTRK阻害剤は反応率76%
(2017年6月3日発表)

米国コネチカット州の医薬品開発企業、Loxo Oncology(Nasdaq:LOXO)は、ASCO(米国臨床腫瘍学会)で、LOXO-101(larotrectinib)の第一相、第二相試験合計50人の成績を発表した。TRK融合蛋白型の腫瘍に対する効能を調べた試験で、ORR(客観的反応率)は76%、このうち完全反応率12%、部分反応率64%と、中々良いものだった。

今回の試験はTRK融合蛋白陽性なら癌の発生部位は不問で、17種類の癌が組み入れられたが、比較的多かったのは唾液腺腫、幼児線維肉腫、甲状腺、結腸、肺、黒色腫、紡錘細胞肉腫、胆管癌、筋周皮腫。

NTRKはtropomyosin receptor kinase(TRK)をコードする遺伝子だが、癌のごく一部(0.5~1%)では他の遺伝子との融合により受容体結合ドメインが欠落、レガンドの刺激がなくても活性化してしまう。このような癌を標的とすべくArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)がLoxo社の支援を受けて創製したのが高度選択的TRK阻害剤LOXO-101とバックアップだ。一日二回、経口投与する。

TRKはニューロンの制御に関与しているため、神経認知学的副作用が独自の副作用。全125症例の有害事象分析では、G3の眩暈が2%で発生。有害事象による減量が13%で発生し、その殆どは神経認知性有害事象だった。

Loxoは第三者によるORRの査読を行ったうえで来年初めまでに承認申請する考え。NTRK融合蛋白の判定を行うコンパニオン・ダイアグノスティックもVentana社と開発中。

リンク: Loxo社のプレスリリース

ASCO:リリーのCDK4/6阻害剤は先行品と大差なさそう
(2017年6月3日発表)

イーライリリーのCDK4/6阻害剤、LY2835219(abemaciclib)の第三相試験結果もASCOで初発表された。PFS(無進行生存期間)のハザードレシオは0.553で、先行するCDK4/6阻害剤であるファイザーのIbrance(palbociclib)やノバルティスのKisqali(ribociclib)のデータと大差なかった。直接比較試験ではないので誤差範囲を多めに想定すべきであり、結論としては、三剤の薬効は大差ないと考えるべきだろう。

この試験は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後乳癌で切除術後の補助療法や転移癌の一次治療でホルモン療法を既に受けた女性を組入れて、fulvestrantと併用する効果を偽薬と比較した。メジアンPFSは16.4ヶ月(偽薬群は9.3ヶ月)、ORRは48.1%(同21.3%)だった。主なG3以上の有害事象の発生率は下痢が13%(同0%)、好中球減少症が23%(同1%)で発生した。

LY2835219は今回のデータと第二相のデータに基づいて今年4~6月期に承認申請。一次治療試験も成功しており、7-9月期に承認申請予定。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

ASCO:ザイティガはホルモン・ナイーブにも有効
(2017年6月3日発表)

ASCOではジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大試験の結果も発表された。転移性前立腺癌用薬で、2011年の初承認時の適応はホルモン療法に反応しなくなり癌の症状が悪化して化学療法を受けたが再発/無効だった患者、翌年の適応拡大はその一歩前の段階であるホルモン療法抵抗性無/軽度症候性患者だったが、今回は更に手前の試験が成功、日本も含めて、適応拡大申請した。対象患者数が再び大きく増加することになる。

このLATITUDE試験は、転移性前立腺癌で初めてホルモン療法を受ける(ナイーブ)患者のうち、Gleason scoreや骨転移、内臓転移の状況などから高リスクと判定された患者を組入れて、ADT(アンドロゲン除去療法薬)群とZytigaとprednisoneを併用する三剤併用群の全生存期間を比較した。結果は、ハザードレシオが0.62、p値は0.0001未満、メジアン値は標準療法群が34.7ヶ月、三剤併用群は未到達と大変良い結果になった。主なG3以上の有害事象は高血圧や低カリウム血症。

前立腺癌は進行の遅いものが少なくないため副作用のきつい化学療法は癌が進行して骨転移痛などの症状が強くなるまで待つことが多い。今回のデータは便益と危険のバランスが取れているように見えるので、再考の契機になるのではないか。適応拡大なので今週のトピックスの3番目に置いたが、臨床的な重要性は一番かもしれない。

リンク: ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

テバの抗CGRP抗体も第三相が成功
(2017年5月31日発表)

テバ・ファーマスーティカルズ(NYSE:TEVA)はTEV-48125(fremanezumab)の第三相慢性片頭痛予防試験が成功したと発表した。発生日数の減少は偽薬群が2.5日、試験薬を四半期毎に皮注した群は4.3日、月一回皮注群は4.6日となり、どちらの投与頻度も偽薬比有意な差があった。反復性片頭痛の第三相も結果がまもなく判明する見込み。年内承認申請を予定。

元々は2001年にジェネンテックからスピンアウトしたRinat社がRN-307として開発したもの。06年にRinatを買収したファイザーが12年にアウトライセンスした先の会社を14年にテバが2億ドルと後発債務6.25億ドル相当で買収、という経緯だ。

リンク: テバのプレスリリース

【承認申請】


ムコ多糖症VII型の治療薬が欧米で承認申請
(2017年5月23日発表)

Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)は、UX003をムコ多糖症VII型の治療薬として欧米で承認申請し受理されたと発表した。ベータ・グルクロニダーゼの欠乏を補充する、遺伝子組換え型酵素補充療法。5~35歳の12人を組入れた試験では、4mg/kgを二週間に一回、投与したところ、尿中のグリコサミノグリカン・デルマタン硫酸が64%減少した。

EUはこの評価方法を代理マーカーとして受け入れたが、FDAは認めず、各患者のデータを総合的に評価する考え。米国の審査期限は11月16日。

リンク: Ultragenyxのプレスリリース

GSKとViiV、二剤だけの抗HIV療法を欧米で承認申請
(2017年6月1日発表)

グラクソ・スミスクラインとViiVヘルスケアは、dolutegravirとrilpivirineの合剤をHIV/AIDSの維持療法として欧米で承認申請した。

HIV/AIDSの治療は二種類の核酸系逆転写阻害剤とそれ以外の作用機序を持つ薬を併用するHAART(highly aggressive antiretroviral therapy)が一般的だが、今回の合剤は、ウイルス抑制に成功した患者の維持療法としてインテグラーゼ阻害剤とジョンソン・エンド・ジョンソンの非核酸系逆転写阻害剤の二剤だけを用いるもので、画期的。

米国はバウチャーを使用、優先審査を受ける。1.3億ドルの費用はGSKの2017年第2四半期決算で計上する由。この金額が総額なのか、GSKの分担額なのかは不明だが、SareptaがGileadに売却した時の価格は1.5憶ドルと報じられているので、総額またはそれに近いのだろう。

優先審査バウチャーは感染症や小児希少疾患などの新薬を開発した会社に褒美として供与する米国特有の制度で、別の薬を承認申請する時に優先審査を受けることができる。転売も可能で、当初は3~6憶ドルの値段が付いたが、供与例が増えて需給が緩んだのだろう。

リンク: GSKとViiVヘルスケアのプレスリリース

スーテント、アジュバントに適応拡大申請
(2017年5月31日発表)

ファイザーは、Sutent(sunitinib、和名スーテント)を難治性腎細胞腫の摘出術後附随療法(アジュバント)に用いることを欧米で承認申請し受理されたと発表した。米国の審査期限は来年1月。現在は末期腎細胞腫などに承認されている。

アジュバント試験は二本実施され、北米で実施された一本目はSutentも同じVEGFR阻害剤であるバイエルのNexavar(soratinib)もフェールしたが、欧米アジアで実施されたS-TRAC試験が成功。第三者査読のDFS(無病生存期間)のハザードレシオは0.761、メジアン値は6.8年、偽薬群は5.6年だった。高リスクサブグループではメジアン6.2年、偽薬群は4.0年と差が広がった。

リンク: ファイザーのプレスリリース

【承認】


ノボの第IX因子、米国はルーチン予防を承認せず
(2017年5月31日発表)

ノボ ノルディスクはFDAがRebinyn(nonacog beta pegol)をB型血友病治療薬として承認したと発表した。18年第1四半期に発売予定。遺伝子組換え型第IX因子で、IX因子活性化ペプチドにポリエチレングリコールを結合する手法で半減期を5倍に伸ばしたもの。頻繁に出血する患者は予防目的で血液凝固因子をルーチン投与することがあるが、Rebinynは週一回投与で足りるので利便性が高い。

欧州では3月にCHMPがRefixia名で肯定的意見を出しているが、まだ承認はされていないようだ。用途は12歳以上のB型血友病患者の出血治療、手術時の出血管理、そして頻繁に出血する高リスク患者に予防目的でルーチン投与の三種類。一方、米国はB型血友病の成人、青少年の出血治療と手術中出血管理だけで、レーベルにはルーチン予防は未承認であることが明記されている。米国はオフレーベル使用が比較的容易だが、レーベルで明示的に否定されてしまったのは、商業的に重要な用途だけに、痛い。

リンク: ノボのプレスリリース

EUで脊髄性筋萎縮症用薬が承認
(2017年6月1日発表)

先週は3月と4月のCHMPで肯定的意見を受けた新薬や適応拡大が続々と承認された。

バイオジェンがIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスして開発したアンチセンス薬、Spinraza(nusinersen)は脊髄性筋萎縮症の治療薬としてEUで承認。

希少疾患で、日米欧の患者数は3~3.5万人と推定されている。殆どの患者がSurvival Motor Neuron(SMN)の遺伝子であるSMN1に変異を持ち、十分に機能するSMNを産生できない。幼小児発症型と成人発症型があるが、EUは幼小児発症型に多い第5染色体に変異を持つタイプを適応とした。

これまでのアンチセンス薬は特定の蛋白の発現を阻害するメカニズムだったが、Spinrazaは、短いSurvival Motor Neuron(SMN)しか作れないSMN2遺伝子のスプライシングを変えることによって、SMN1遺伝子の代わりに正常なSMNを作らせる、正の作用を利用していることがユニークだ。I型(幼児発症型)試験では、反応率が51%と文献データの0%を大きく上回った。人工呼吸器が恒久的に必要になったり死亡したりするリスクも半減した。II型試験では筋肉機能評価スコアが用量依存的に改善した。

髄腔内投与で最初は2ヶ月間に4回投与、その後は4ヶ月に一回投与する。米国では昨年12月に承認された。日本も臨床試験に参加しており、昨年12月に承認申請された。

リンク: バイオジェンのプレスリリース

CLN2治療薬もEUで承認
(2017年6月1日発表)

バイオマリン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:BMRN)のBrineura(cerliponase alfa)もEUで承認された。同社が得意とする超希少疾患用の酵素補充療法で、適応症はCLN2(神経セロイドリポフスチン症2型)。TPP1/CLN2遺伝子の変異が原因でトリペプチジルペプチダーゼを作ることができず、この酵素で分解されるべき蛋白が蓄積してしまう。2~4歳で発症、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡することが多い、深刻な疾患だ。罹患率は20万人に一人とされる。

Brineuraは遺伝子組換え型のヒトTPP1で、二週間に一回、脳室内に点滴投与する。臨床試験では運動機能や言語機能の悪化が文献データ比8割少なかった。米国では4月に承認され、年49万ドル程度の価格(正味薬価ベース)で発売された。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

ファイザーのB群髄膜炎菌ワクチンがEUで承認
(2017年5月30日発表)

ワクチンでは、ファイザーのB群髄膜炎菌ワクチン、TrumenbaがEUで承認された。B群は様々な株があるが、TrumenbaはサブファミリーAとBのfHbp(H因子結合蛋白)を抗原としており、1800種類以上に対応している。

米国では14年に承認されたが、流行が限定的であるせいか、ACIPワクチン委員会は接種の当否をケースバイケースで判定するよう推奨するに留めた。欧州はACWY群のワクチンが普及しこれらの感染例が減少するとともにB群の比率が上昇しており、もっと普及する可能性がありそうだ。13年に欧州で承認されたGSKのBexseroがライバルになる。

リンク: ファイザーのプレスリリース

EU、オプジーボを膀胱癌に承認
(2017年6月2日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を切除不能な局所進行性・転移性尿路上皮細胞腫に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。白金薬による治療がフェールした患者が適応になる。第二相試験では持続的反応率が20%、メジアン反応持続期間は6ヶ月超。被験者の46%を占めるPD-L1陽性型では持続的反応率25%、それ以外では16%だった。

Yervoy併用試験が活発に実施され学会発表も盛んであるためか、4月にCHMPが肯定的意見を出した時のEMAのプレスリリースには、黒色腫以外はモノセラピーしか承認されていないことが明記されていた。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年5月28日

2017年5月28日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アムジェン、骨粗鬆症新薬に副作用懸念 
  • セルジーン、多発硬化症新薬の二本目の第三相も成功 
  • キイトルーダ、胃癌に適応拡大申請 
  • オプジーボ、肝癌で承認申請 
  • サン、抗IL-23抗体を米国で承認申請 
  • FDA諮問委員会、プーマの汎erbB阻害剤を支持 
  • FDA諮問委員会が19年ぶりの鎌状赤血球症治療薬候補を支持 
  • リジェネロンの抗IL-6受容体抗体が承認 
  • キイトルーダ、MSI-H/dMMR癌に承認 
  • アクテムラ、米国で巨細胞性動脈炎に承認 
  • ノバルティス、ジカディアの一次治療が承認 


【新薬開発】


アムジェン、骨粗鬆症新薬に副作用懸念
(2017年5月21日発表)

アムジェンは昨年7月に米国でEvenity(romosozumab)を骨粗鬆症治療薬として承認申請したが、最近開票したARCH試験で心血管疾患リスク懸念が浮上した。過去の試験では見られなかった由なので只のノイズの可能性もあるが、精査が必要だ。米国の審査期限は7月19日だが、アムジェンによると、年内の承認は期待できなくなった。日本ではアステラス製薬との合弁会社が昨年12月に承認申請しており、今後、機構と相談する。欧州は引き続き承認申請の準備を進める考え。

romosozumabは2002年にセルテック(後にUCBが子会社化)のCDP7851をライセンス、AMG785として開発したもの。抗体医薬で、Wntや骨形態形成蛋白のシグナル伝達パスウェイを阻害して造骨細胞の抑制をもたらすスクロスチンを阻害する。ビスフォスフォンなどの既存の骨粗鬆症治療薬は主として破骨細胞を抑制するタイプが多い。造骨細胞活性化薬は骨密度増強作用が高いが、腫瘍リスクを高めてしまう懸念があるため、1~2年間治療してその後はビスフォスフォン酸など破骨細胞抑制型にスイッチするのが一般的な用法だ。

Evenityの承認申請用第三相閉経後骨粗鬆症治療試験(FRAME試験)も、1年目はromosozumabまたは偽薬を投与し2年目は両群ともdenosumabにスイッチした。造骨細胞増強型である遺伝子組換え型副甲状腺ホルモン、Forteo(teriparatide)と比較した試験や、骨粗鬆症の男性を組入れた試験も実施されたが、どちらも治療期間は1年だった。

今回のARCH試験は、骨折リスクが高い閉経後骨粗鬆症を対象に、romosozumabを1年間、月一回皮注して2年目はalendronateの週一回投与製剤にスイッチする治療法と、2年間alendronate週一回投与を続ける群の骨損壊リスクを比較したもの。薬効の面では優れており、romosozumab群は2年間の新脊椎損壊が50%少なく、臨床的に重要な骨折に限定しても27%少なかった。QOLに大きな影響を与える、大腿骨骨折は有意な差はなかった。

心血管疾患の偏りは、1年間の心血管深刻有害事象発生率が2.5%でalendronate群の1.9%を上回った。臨床的に重要な骨折の発生率は未公表だが、FRAME試験では年1~2%だったので、number needed to treatもnumber needed to harmも大差なかっただろう。従って、看過できるリスクではない。

FRAME試験では群間の偏りはなかったとのことだ。ARCH試験の組入れは4093人、FRAME試験は7180人なので、FRAME試験のほうが信用できそうだが、イベントリスクの比較における検出力は組入れ数ではなくイベント発生数と相関するので、詳細が発表されるまでは何とも言えない。

リンク: アムジェンとUCBのプレスリリース

セルジーン、多発硬化症新薬の二本目の第三相も成功
(2017年5月22日発表)

セルジーンは、RPC1063(ozanimod)の二本目の第三相再発性多発硬化症試験が成功したことを発表した。Gilenya(fingolimod)と同様なスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体調節剤だがS1P1受容体とS1P5受容体に選択的に作用するので、新毒性や肝毒性が小さいようなら優良な代替薬になりうるだろう。15年にReceptosを72億ドルで買収して入手したパイプライン。

第三相は二本とも0.5mgまたは1mgを一日一回、経口投与する群の再発率をAvonexを週一回筋注する群と2年間に亘って比較した。結果は、両試験、両用量ともAvonex群より有意に小さかった。但し、障害進行抑制効果を検討するために行ったプール分析は、Avonex群も進行が小さかったせいか、フェールした。EDSSスコアで評価したものと推測されるが、あまり鋭敏なスコアではないので、これも、実際のデータやp値が公表されるまで何とも言えないだろう。

リンク: セルジーンのプレスリリース

【承認申請】


キイトルーダ、胃癌に適応拡大申請
(2017年5月23日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の適応拡大申請を米国で行い受理されたことを発表した。難治性・末期の胃・胃食道接合部腺癌の三次治療に用いるもので、優先審査を受ける。審査期限は9月22日。

第二相試験のコフォート1のデータに基づく申請で、259人(うち、57%がPD-L1陽性)のORR(客観的反応率)は11.2%、メジアン反応持続期間は8.1ヶ月。G3からG5までの治療関連有害事象発生率は16.6%で、うち2人は急性腎障害と腹水により死亡した。

リンク: MSDのプレスリリース

オプジーボ、肝癌で承認申請
(2017年5月24日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)の適応拡大申請を米国で行い受理されたと発表した。末期肝細胞腫でNexavar(sorafenib)治療歴を持つ患者に用いるもので、優先審査を受ける。審査期限は9月24日。

第二相試験のsorafenib歴コフォートの解析では、第三者査読によるORR(客観的反応率)が15%だった。尚、この試験のsorafenib未経験者コフォートのORRは20%となっている。

リンク: BMSのプレスリリース

サン、抗IL-23抗体を米国で承認申請
(2017年5月24日発表)

インドのサン・ファーマシューティカルズは、MSDがtildrakizumabを中重度乾癬治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。サンは14年に世界での権利を取得しており、承認後はサンが開発販売する。欧州は昨年7月にサンから欧州における乾癬領域での開発商業化権を取得したAlmirallが承認申請、3月に受理されている。

MSDがMK-3222名で開発した抗IL-23p19抗体。第三相試験ではPASI75奏効率が60%台で、Enbrel(etanercept)を上回った。

ジョンソン・エンド・ジョンソンも抗IL-23p19抗体のCNTO 1959(guselkumab)を昨年11月に欧米で、今年4月には日本でも、承認申請しており、開発スピードでも、販売力でも、こちらの方が優勢のように見える。薬効の比較は直接比較試験が行われたわけでもないので難しいが、guselkumabも第三相試験で実薬であるHumira(adalimumab)を上回る効果を示した。

抗IL-23p19抗体はジョンソン・エンド・ジョンソンのStelara(ustekinumab)と異なりIL-12は阻害しないため、腫瘍リスクなど安全性面で優れる可能性があるが、稀な事象なので、臨床開発プログラム全体のデータを見ないと判定できない。FDAの分析結果が注目される。

リンク: サンのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、プーマの汎erbB阻害剤を支持
(2017年5月24日発表)

FDAの腫瘍学薬諮問委員会は、プーマ・バイオテクノロジー(NYSE:PBYI)が承認申請したPB272(neratinib)を検討し、16人の委員のうち12人が便益がリスクを上回ると判定した。適応が制限される可能性が残っているものの、承認の可能性が高まった。

ワイスがHKI-272名で開発した不可逆的汎erbBチロシンキナーゼ阻害剤で、ワイスを買収したファイザーが第三相まで持っていったがドロップ、11年にプーマに世界開発販売権を供与したもの。プーマの創立者は、クーガー・バイオテクノロジー社を設立して前立腺癌用薬Zytiga(abiraterone acetate)の開発を成功させ、会社ごとジョンソン・エンド・ジョンソンに売却した実績を持つ、元々はWells Fargoのアナリストだった人物だ。プーマ(ピューマ)はクーガーの別名らしい。

I-SPY 2試験で第三相試験の予想成功確率78%という大変良いデータが出て注目されたが、開発後期試験は一進一退で難航した。承認申請の根拠となったのは日本の施設も参加して行われた早期乳癌延長アジュバント試験、ExteNET試験だが、この試験もプロトコルが変遷した。

her2陽性の早期乳癌で摘出術後にHerceptin(trastuzumab)を含むアジュバント療法を受けた患者を対象に、更にneratinibまたは偽薬を投与したが、当初はステージ1~3でHerceptinを終えてから2年以内という条件だったが、ステージ2~3、1年以内に変更。追跡期間は5年から2年になりその後また5年に戻った。主評価項目もtime-to-eventではなく2年間のイベント発生率の分析に変わった。

結果は、2年経過時点の浸潤性乳癌無再発率(DFS)が94.2%と偽薬群の91.9%を上回り、ハザードレシオ0.66、p=0.008となった。事前に計画されたサブグループ分析では、ホルモン受容体陽性癌ではハザードレシオ0.49だったが、陰性では0.93で大差なかった。また、Herceptin終了後1年以内の患者ではハザードレシオ0.63だったが1年以上は0.92だった。承認に否定的な委員は一部の患者にしか効果が見られないことを重視した。肯定的な委員の中にも適応を狭めるべしという意見があった。

her2だけでなくEGFRも阻害すると下痢の副作用が顕著になる。neratinibは3分の2の患者が下痢で用量を減らしたり一時中断したりした。ロペラミドやブデソニドを用いて緩和することができる模様だ。

リンク: プーマ社のプレスリリース
リンク: Lancet誌の治験論文抄録(ExteNET Study Group)

FDA諮問委員会が19年ぶりの鎌状赤血球症治療薬候補を支持
(2017年5月24日発表)

FDA腫瘍学諮問委員会は、Emmaus Life Sciencesが鎌状赤血球症治療薬として承認申請したEndari(L-glutamine)を検討し、13人の委員のうち10人が便益がリスクを上回ると判定した。審査期限は7月7日。承認されれば、この病気では98年のヒドロキシウレア以来、19年ぶりの新薬になる。

医薬品として用いられている経口アミノ酸。酸化に弱い鎌状赤血球が抗酸化物質を作るのに必要なL-グルタミンを補充するアイディアに基づいて開発、第三相試験では、鎌状赤血球クリーゼ(急性増悪による痛みで治療を受ける)が48週間に平均3.2回と、偽薬群の3.9回より有意に少なかった。数字を見る限りではすごく効く訳ではなさそうだ。

リンク: Emmaus社のプレスリリース


【承認】


リジェネロンの抗IL-6受容体抗体が承認
(2017年5月22日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、FDAがKevzara(sarilumab)を承認したと発表した。中重度活性期リウマチ性関節炎の治療薬として、単剤または併用で、200mgを二週間に一回皮注する。中外製薬/ロシュのActemra(tocilizumab)と同じIL-6受容体に結合する抗体医薬で、副作用の出方もよく似ている。米国でのWAC(問屋取得価格)は年39000ドルで既存のバイオ薬より3割安く設定した由。

リンク: 両社のプレスリリース

キイトルーダ、MSI-H/dMMR癌に承認
(2017年5月23日発表)

FDAは、MSDのKeytruda(pembrolizumab)をMSI-H/dMMR腫瘍のサルベージ療法として承認した。乳癌とか結腸直腸癌とか原発部位ではなく、遺伝子署名に基づいて適応を決めたのは今回が初めて。これまでにもHerceptinがher2陽性の乳癌と胃癌に承認されるなど、類似例はあったが、今回のように多種の癌に跨る適応が増えると、治療法を検討する前に様々な遺伝子プロファイリングを行わなければならなくなるだろう。

dMMRは遺伝子が複製される過程で必然的に発生する翻訳ミスが、修復メカニズムの機能不全により修復されず、癌細胞と他の細胞の遺伝子がマッチしない。マイクロサテライトと呼ばれる特定の塩基配列が何度も繰り返され複製ミスが起こりやすい箇所を比較するのが典型的な検査方法で、繰り返し回数が違うとMSI-Hと判定される。リンチ症候群患者の結腸直腸癌の研究から発展した手法で、切除不能転移性結腸直腸癌では5%程度が該当し、そのほかに内膜腫や胃癌、頻度は低いが乳癌や前立腺癌、膀胱癌、甲状腺癌などでも見られる由だ。

加速承認で、ORRは39.6%、78%は反応が6ヶ月以上持続した。小児にも承認したが薬効や安全性のエビデンスはない由。成人には200mgを3週間毎に30分点滴静注。小児の用量は2mg/kg。最長2年間まで投与できる。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース(5/26付け)

アクテムラ、米国で巨細胞性動脈炎に承認
(2017年5月23日発表)

ロシュは、FDAがActemra(tocilizumab)を巨細胞性動脈炎の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。標準治療薬であるステロイドの用量を減らしながら寛解を目指すことが可能になる。日本では欧米に多い巨細胞性動脈炎だけでなくアジアや中近東で多い高安動脈炎も含めて、大型血管炎の治療薬として中外製薬が昨年12月に効能効果追加申請している。

リンク: ロシュのプレスリリース

ノバルティス、ジカディアの一次治療が承認
(2017年5月26日発表)

ノバルティスは、FDAがZykadia(ceritinib、和名ジカディア)をALK陽性転移性非小細胞性肺癌の一次治療に用いることを承認したと発表した。エビデンスとなったASCEND-4試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が16.6ヶ月と、pemetrexed・白金薬併用群(pemetrexed維持療法も可)の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、統計的に有意だった。脳転移にも効果が見られた。

尚、pemetrexedは扁平上皮性非小細胞性肺癌に対する効果が弱く、非扁平上皮性非小細胞性肺癌に用いられる。ASCEND-4試験もこのタイプ限定だが、Zykadiaの承認は限定されていない。もしpemetrexedの効果が偽薬並みであったとしてもそれを有意に上回るなら良し、という考え方なのだろう。

リンク: ノバルティスのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年5月21日

2017年5月21日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
  • アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請 
  • バイエル、PI3K阻害剤を承認申請 
  • Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請 
  • CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持 
  • キートルーダ、膀胱癌に承認 
  • FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大 
  • FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告 


【新薬開発】


シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
(2017年5月18日発表)

シャイアーはlanadelumabの第三相HAE(遺伝性血管浮腫)発作予防試験が成功したと発表した。18年始めまでに承認申請する考え。

HAEは有病率が3万人に一人の希少疾患。補体系に係るC1エステラーゼの遺伝子欠損・変異により、皮膚や小腸、口、喉に痛みを伴う浮腫ができ、喉で起きた場合は命に関わることもある。

lanadelumabは血漿カリクレイン(pKal)を標的とする完全ヒト化抗体で、16年に59億ドルで買収したDyax社がDX-2930として開発したもの。特徴は投与方法が簡便であること。同社の血漿由来ヒトC1エステラーゼ・インヒビター、Cinryzeは週二回点滴静注だが、二週間あるいは四週間に一回の皮注で足りる。

第三相試験では、300mgを二週間毎に投与した群では発作が偽薬比87%少なかった。150mg四週間毎、300mg四週間毎の各群も偽薬比有意に減少した。主な有害事象は注射箇所痛。

リンク: シャイアーのプレスリリース

【承認申請】


アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請
(2017年5月18日発表)

アムジェンは、AMG 334(erenumab)を片頭痛発作予防薬として米国で承認申請した。CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とする完全ヒト化抗体で、慢性片頭痛や反復性片頭痛(月に4~14日発症)の患者に、月一回、皮注する。三本の薬効確認試験では、月間発症日数の減少が偽薬群より1~2日多かった。

イーライリリーも抗CGRPヒト化抗体、LY2951742(galcanezumab)の第三相試験が成功、下期に米国などで承認申請する予定。投与頻度や試験成績は両剤とも大差ない。

アムジェンはアルツハイマー病や片頭痛領域でノバルティスと共同開発提携を結んでおり、AMG 334の販売は米国は共同、海外(日本は除く)はノバルティスが販売する。

リンク: アムジェンのプレスリリース

バイエル、PI3K阻害剤を承認申請
(2017年5月17日発表)

バイエルは、BAY 80-6946(copanlisib)を米国で濾胞性リンパ腫の三次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。希少疾患用薬指定とファーストトラック指定を持っており、優先審査を受ける。

再発性難治性低悪性度非ホジキン型リンパ腫の第二相試験に基づく加速承認申請で、濾胞性104例におけるORR(客観的反応率)は59%(うち14%は完全反応)、メジアン反応持続期間は52週間以上だった。G3以上の有害事象は高血糖が40%の患者で、高血圧症が23%で、発生した。

作用機序は、B細胞の活性化や生存、トラフィッキングに係るphosphoinositide-3 kinase(PI3K)の阻害。ファースト・イン・クラスであるギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のZydelig(idelalisib)は14年に米国で難治性濾胞性リンパ腫と再発性慢性リンパ性白血病用薬として承認された。copanlisibはPI3Kデルタだけでなくアルファも阻害する汎クラスI PI3K阻害剤であることが特徴。重篤感染症のリスクや肝毒性が小さいようなら長所になりうるのではないか。

PI3K阻害剤の開発は活発で、インフィニティ・ファーマスーティカルズやノバルティスも第三相試験中。

リンク: バイエルのプレスリリース

Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請
(2017年5月15日発表)

Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)は、Rhopressa(netarsudil)を緑内障治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年2月28日。眼球における液排出経路である小柱網を標的とする画期的新薬で、一日一回の点眼で足りる。臨床試験では、眼圧が26 mmHg未満のサブグループにおける効果がtimololの一日二回点眼と非劣性だった。

16年9月に承認申請したが、製造会社が承認前検査(新薬承認に際してFDAが行う工場査察)を受ける準備ができていないという理由で翌月に撤回した経緯がある。

リンク: Aerie社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持
(2017年5月19日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、自家軟骨細胞療法などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域などで承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

まず、ドイツのco.don AG(FSE:CNWK)が承認申請したSpheroxは、ドイツで97年以来、販売されている自家軟骨細胞療法。患者の軟骨細胞の球状凝集体をex vivoで培養し関節鏡的に移植、欠損部位の再生を促す。症候性で10平方センチメートル以下の大腿顆・膝蓋骨軟骨欠損の治療に用いる。二本の臨床試験でKOOS(疼痛や生活機能、QOLに関する患者アンケート)が有意に改善した。副作用は創傷治癒の遅れや関節拘束など。

先端医療としてCommittee for Advanced Therapiesが審査、CHMPに肯定的意見を出すよう勧告したもの。

リンク: EMAのプレスリリース

リンク: co.don社のプレスリリース(5/18付)

イタリアのDompe farmaceutici S.p.A.が承認申請したOxervate(cenegermin)は遺伝子組換え型ヒト神経成長因子の点眼液。神経栄養性角膜炎の治療に用いる。この疾患は三叉神経に損傷があり角膜の感覚が低下・欠如しており、角膜細胞のヒーリングに必要な物質が分泌されにくくなっている。重度神経栄養性角膜炎は希少疾患だが失明のリスクがある。

リンク: EMAのプレスリリース

ハンガリーのゲデオン・リヒターのReagila(cariprazine)はD3/D2受容体パーシャル・アゴニスト。統合失調症の治療に用いる。米国ではアラガン(NYSE:AGN)がインライセンスし、15年にVraylarという製品名で承認を取得した。日本周辺は田辺三菱製薬が導入。

デンマークのレオ ファーマが承認申請したKyntheum(brodalumab、米国名Siliq、和名ルミセフ)は抗IL-17受容体A完全ヒト化抗体。中重度乾癬を治療する。アムジェンが創製しアストラゼネカと共同開発したが、臨床試験で自殺思慮・試行が見られたためアムジェンは離脱、アストラゼネカも権利を他社に譲渡した。欧州の権利を取得したのが今回のレオ ファーマだ。

米国ではValeant(NYSE:VRX)が今年2月に販売承認を取得したが、懸念された通り、自殺思慮・試行リスクが枠付き警告された。日本は協和発酵キリンが16年に発売。

リンク: レオ ファーマのプレスリリース(pdfファイル)

スイスのVifor Pharma Group(SIX:VIFN)のVeltassa(patiromer)は高カリウム血症の治療薬。経口液用粉末で、食中に服用すると、結腸でカリウムに結合、そのまま排泄される。主な有害事象は便秘、下痢、低マグネシウム血症など。様々な薬と結合するため、数時間、離して服用する必要がある。米国では15年に承認。

リンク: Viforのプレスリリース

一方、否定的意見となったのは、まず、Xbiotech(Nasdaq:XBIT)のXilonix。抗IL-1アルファ・ヒトモノクローナル抗体で、結腸直腸癌患者のリーンマスやQOLを改善する薬として承認申請され、加速審査を受けたが、支持されなかった。リーンマスで見てもQOLでも改善効果が明確ではなく、重大な感染症リスクがあり、臨床試験用と市販用の製品の同等性にも懸念があるため。

Xbiotechは4月に否定的意見が出るであろうことを公表済み。米国では承認申請が認められず第三相試験を実施中なので、その結果を待って今後を決めることになりそうだ。

ABサイエンスのMasipro(masitinib)は今度は全身性肥満細胞症の治療薬として承認申請されたが今後も否定的意見となった。治験施設査察時に深刻なGCP(治験実施基準)違反が判明しデータの信頼性が損なわれたこと、安全性データが限定的であること、好中球減少症のような副作用が懸念されること、の三点がボトルネックとなった。

主要な適応拡大は、ノバルティスのZykadia(ceritinib、ジカディア)をALK再編成陽性末期非小細胞性肺癌の一次治療薬として単剤投与することが支持された。Alimta(pemetrexed)及び白金薬の併用療法に追加する三剤併用を検討した第三相非扁平上皮性非小細胞性肺癌試験で、PFS(無進行生存期間)のメジアン値が16.6ヶ月と二剤併用群の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、有意に優れていた。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

【承認】


キートルーダ、膀胱癌に承認
(2017年5月18日発表)

MSDのKeytruda(pembrolizumab)を末期・転移性尿路上皮細胞腫に用いる適応拡大がFDAに承認された。二次治療用途だが、cisplatin不適患者なら一次治療可。200mgを3週間毎に点滴静注する。

二次治療試験は中間解析で成功認定。メジアン生存期間が10.3ヶ月と医師が選んだ薬を投与した群の7.4ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.73、ログランクp=0.0022となった。共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間)は1.1ヶ月の差に留まりフェールした。

一次治療のエビデンスは第二相試験。16年のESMO発表によると、客観的反応率は24%だった。

抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体は多くが膀胱癌の承認を取得・申請中だが、ロシュのTecentriq(atezolizumab)の市販後薬効確認試験がフェールしたため、反応率を評価するだけで足りるのか、一抹の不安が生じている。KeytrudaもPFS解析がフェールと紙一重だが、暗中模索している人には延命効果のエビデンスが燦然と輝いてみえる。

リンク: MSDのプレスリリース

FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大
(2017年5月17日発表)

FDAは、バーテックス・ファーマシューティカルズのKalydeco(ivacaftor)の適応拡大を承認した。CFTR遺伝子に特定の変異を持つ嚢胞性線維症の治療薬で、12年の初承認以降も対象となる変異型を増やしてきた。最初はG551D変異型だけだったが、14年2月にはG1244Dなど8種類の変異型が、同年12月にはR117H変異型が、今回、23種類の変異型が追加され、合計33種類となった。

カバレッジは広がったが米国の対象患者数は初回承認時の1000人が2000~3000人になった程度だ。バーテックスは15年にOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)が承認されたが、適応になるF508ホモ欠損型は8000人以上である。経済性だけを考えたら、Kalydecoの適応を100人、200人単位で積み上げるよりも他の新薬に開発資源を投入したほうが効率が良い。

だからこそ、直ぐには適応にならない少数の患者を見捨てずに開発を一歩ずつ進めてきたバーティックスの姿勢は称賛に値する。

FDAも、患者数が少ないため十分な規模の臨床試験を実施できない条件下で、in vitroのデータを元に臨床的効用を判定する手法を採用したことをアピールするプレスリリースを出している。新規23変異型のうち臨床試験データがあるのは8変異19例だけで、承認が1年遅れたのはこれが理由と推測されるが、既存の10変異型におけるin vitroと臨床データの相関を元に、上手くブリッジングできるモデルを構築できたのだろう。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告
(2017年5月16日発表)

FDAは、Invokana(和名カナグル)を始めとするcanagliflozin配合剤について、下肢切断リスクを添付文書で枠付き警告することを発表した。昨年、心血管アウトカム試験の中間安全性評価でリスクが表面化。EUのほうが情報提供も警告強化も一歩先行しているが、FDAは、少なくとも現時点では、対象をcanagliflozinだけに留めSGLT2阻害剤全体に広げていないことが印象的だ。大西洋の東西で見解が分かれることは珍しくないが、日本の当局や学会はどう考えているのだろうか?

米国は血糖治療薬の承認に際して心血管リスクが高まらないことを要求している。血糖治療の目的は大血管性合併症や腎障害や感染症、下肢切断などの小血管性合併症のリスクを削減することなので、もし副作用で増えてしまうとしたら話が違う。

規制の発端はPPARガンマ作動剤だ。第一号のトログリタゾンは肝毒性で販売中止になったが、第二号のロジグリタゾンは心不全や心筋梗塞、第三号のピオグリタゾンも心不全のリスクが発覚、警告が強化されるとともに、新薬の心血管リスク評価が厳しくなった。尚、グリタゾンは様々な病気の治療薬としての可能性を秘めていて開発品が数多くあったが、癌原性試験を経て開発中止になったものが少なくなく、今日ではすっかり人気のない開発分野になってしまった。

さて、血糖治療薬は長期間服用する薬なので通常の臨床試験より長い期間、効果の持続性や副作用を監視する必要がある。糖尿病の患者は多いので発生率が1000人年に1例でも多くの患者が被害を受けることになるため、大規模な試験で稀だが深刻な副作用を確認する必要がある。血糖治療薬は降圧剤と比べて忍容性に難のあるものが多いが、幸い、選択肢は多いので、より安全なものを使えばよい。

このような制度・環境の下、ジョンソン・エンド・ジョンソンと田辺三菱製薬はcanagliflozinの心血管アウトカム試験CANVASと腎障害予防効果を検討するCANVAS-R試験を実施している。下肢切断リスクはこの二本の安全性監視データから表面化したもので、巨額の予算を投じてでも長期大規模試験を行う価値がまたまた確認された格好だ。

進行中の試験なのでデータは集計時点により変動するが、今回のFDAの発表によると、CANVAS試験では偽薬、100mg、300mgの各群の下肢切断発生率(1000人年当り)は2.8回、6.2回、5.5回で、ハザードレシオは両用量とも2倍以上、95%信頼区間の下限1.2以上。CANVAS-R(100mgで開始、300mgまで増量可)でも偽薬群4.2回に対して7.9回、ハザードレシオ1.8以上、95%下限1.1以上となった。二つの大規模長期試験でリスクが再現されたのだから、疑う余地は小さそうだ。

FDAは、canagliflozinによる治療を行う前に下肢切断のリスク因子を評価するよう求めている。下肢切断歴、末梢血管疾患、神経症、糖尿病性足潰瘍などだ。治療中は感染症、疼痛、下肢潰瘍などの兆候や症状に注意し、発生したら投与を止める。患者にもcanagliflozinが切断リスク上昇と関連していることと、注意すべき兆候症状を伝える。

枠付き警告は重大な副作用を表しており、TV広告などを行う時でもキチンと伝えなければならない。医師は、患者にキチンと伝えないと後で医療過誤訴訟に巻き込まれる可能性がある。何かと制約があり、販促面で不利だ。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

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2017年5月14日

2017年5月14日


【ニュース・ヘッドライン】

  • アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功 
  • ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール 
  • Array社、悪性黒色腫の第三相が成功 
  • イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功 
  • KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例 
  • アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視 
  • キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認 


【新薬開発】


アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功
(2017年5月12日発表)

アストラゼネカはImfinzi(durvalumab)の第三相肺癌維持療法試験が成功したと発表した。ステージIIIの切除不能非小細胞性肺癌で、白金薬と放射線療法を受けて進行が止まった患者を組入れて欧米や日本の施設で行われた試験で、共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)が中間解析で偽薬比有意に上回った。当局と承認申請に向けて相談する考え。尚、この試験ではPD-L1発現状況は不問。

Imfinziは今月、米国で尿路上皮細胞腫二次治療薬として承認された抗PD-L1完全ヒト化抗体。非小細胞性肺癌ではMSDの抗PD-1抗体、Keytrudaが三剤併用で一次治療に承認されたところだが、忍容性に関しては投与タイミングをずらしたほうが良好だろうから、Imfinziが承認されれば選択肢の一つとして価値がありそうだ。

Imfinziは通常の一次治療でも単剤やtremelimumab(ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体)併用で第三相試験を行っており、年内にPFS解析結果が判明する見込み。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール
(2017年5月10日発表)

ロシュのTecentriqはImfinziと同じ抗PD-L1モノクローナル抗体で尿路上皮細胞腫用薬として一年早く承認された。両剤とも第二相試験の反応率データに基づく加速承認なので、改めて第三相試験を実施して延命又はそれに準じる効果を確認する義務があるが、Tecentriqはフェールしたことが発表された。Avastin(bevacizuab)の転移性乳癌のように承認取消のリスクがあるが、Avastinと同様にセカンドチャンス、サードチャンスが与えられるのではないか。データが公表された段階で改めて考えたい。

尿路上皮細胞腫は二次治療とcisplatin不適患者の一次治療用途で承認されているが、フェールしたIMvigor211試験は白金薬治療歴を持つ患者の二次治療試験。対照群は担当医がvinflunine、paclitaxel、またはdocetaxelの中から選んだ薬を用いた。Tecentriqは尿路上皮細胞腫ではPD-L1不問で承認されているが、この試験の解析はシーケンシャルで、先ずPD-L1強陽性サブグループの全生存期間を解析する。

統計的に有意な差があれば、次に、PD-L1陽性サブグループの解析、これも成功なら陰性も含めたintent-to-treat全体の解析に進む。どの段階でフェールしたのか明記されていないが、常識的に考えれば強陽性サブグループでフェールしたのだろう。第二相の反応率はPD-L1陽性のほうがだいぶ良かったことを考えれば、PD-L1陽性サブグループやintent-to-treatのp値も0.05以上だったのではないか。

ロシュのプレスリリースによると、Tecentriq群の結果は第二相と概ね同様だったが、化学療法群が解析計画の前提より良かった。となると、Tecentriqが無効なのではなく三剤の効果が従来考えられていたより高いと考える余地がある。一方で、この三剤は少なくとも米国では尿路上皮細胞腫に承認されていないのだから、承認審査の上では偽薬と同じに扱われ、Tecentriqの効果は立証されていないと判定されるリスクがある。

この場合でも、直ぐに承認が取り消されるとは限らない。一次治療試験など他の尿路上皮細胞腫試験が成功すれば、二次治療における効用も追認される可能性がある。

抗PD-1/PD-L1抗体は尿路上皮細胞腫で承認されていたり、承認審査中だったりするものが多いが、Tecentriqの薬効確認試験のフェールは他剤にも疑いの眼差しを向けさせる結果になるだろう。

例外はMSDのKeytruda(pembrolizumab)だ。IMvigor211試験と類似したデザインのKEYNOTE-045試験が成功、メジアン生存期間が10.3ヶ月と化学療法群の7.4ヶ月を上回った。共同主評価項目であるPFSはフェールしたのでエビデンスは盤石ではなく、TecentriqのデータがKeytrudaと大差ない可能性も考えられるが、裏付けがあるのは強みだ。非小細胞性肺癌と同様に、尿路上皮細胞腫でもKeytrudaを選択するケースが増えるのではないか。

リンク: ロシュのプレスリリース

Array社、悪性黒色腫の第三相が成功
(2017年5月9日発表)

BRAF-V600変異を持つ切除不能悪性黒色腫にはBRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用が有効で、ロシュがZelboraf(vemurafenib)とCotellic(cobimetinib)、ノバルティスがTafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)を品揃えしている。

ノバルティスは当初、Array BioPharma(Nasdaq:ARRY)のLGX818(encorafenib)とMEK162(binimetinib)をライセンスしたが、GSKと事業交換を行って腫瘍学の製品・開発品を取得する過程で当局の命を受け権利返還した。

ArrayはPierre Fabreに欧州南米アジアなどの権利を供与すると共に第三相試験を続行、主目的を達成した。併用群のメジアンPFSが14.9ヶ月とvemurafenib群の7.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.54、統計的に有意だった。ところが、encorafenib単剤投与群(メジアン9.6ヶ月)との比較ではp=0.051となり、併用の必然性を立証することはできなかった。

今回成功したのはこの第三相の第二部で、binimetinibの用量は45mg一日二回で第一部と同じだが、併用群のencorafenibの用量を第一部の450mg一日一回から300mg一日一回に引き下げてencorafenib単剤投与群と統一した。結果は、PFSが12.9ヶ月対9.2ヶ月、ハザードレシオ0.77、p=0.029と有意な差があった。

有意と言っても0.029では十分に低いという感じはしないが、成功は成功だ。Arrayは7月までに承認申請する考え。

リンク: Arrayのプレスリリース

イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功
(2017年5月12日発表)

イーライリリーは、LY2951742(galcanezumab)の第三相片頭痛予防試験が三本とも成功したことを明らかにした。下期に米国などで承認申請する予定。

CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とするヒト化抗体で、アムジェンも完全ヒト化抗体のAMG 334(erenumab)の第三相を成功させ、年内に承認申請する予定。抗体医薬でも小分子薬と同様に、類薬同士の開発販売競争が珍しくなくなった。

galcanezumabの第三相は、反復性片頭痛(発生頻度が月4~14日)を組入れた試験が二本、慢性(月14日超)が一本。試験用量は120mg(初回だけ240mg)と240mgで、月一回、皮注。反復性試験は片頭痛発生日数がベースラインの9日から偽薬群は2~3日減少、試験薬群はどちらも4~5日減少し有意に上回った。慢性試験はベースラインの19.4日から偽薬群は2.7日減少、試験薬群は低量が4.8日、高量は4.6日減少し、何れも有意に上回った。用量反応相関は見られないので120mgで足りそうだ。

AMG 334の用法は月一回皮注で同じ、効果も第三相反復性片頭痛予防試験で偽薬群が月8.3日から1.8日減少、70mg群と140mg群は各3.2日と3.7日減少でgalcanezumabと大差ない。

CGRPは片頭痛発作時に増加し、鎮静化すると減少と、疾病に直接関係している可能性がある。既存薬のように癲癇など他の疾患の治療薬の転用ではないので心理的なバリアが低い。一方で、受容体は脳血管系や心血管系に広く分布しているので、安全性の確認が重要だ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例
(2017年5月8日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は、SECに提出した四半期決算報告書の中で、KTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の第三相試験で脳浮腫による死亡例が発生したことを開示した。Juno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)も脳浮腫が原因でJCAR015の開発を中止しており、クラス・イフェクトなのか、リスクに多寡はあるのか、が注目される。

KTE-C19は、3月に米国で他家造血幹細胞移植不適再発性難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫用薬として承認申請された、CAR-Tと呼ばれる新しいタイプの細胞療法。CD19抗原特定的なキメラ抗原受容体とCD28共刺激ドメインの遺伝子をレトロウイルスをベクターとして患者から採取したT細胞に導入、患者の体内に戻すと、T細胞が抗原提示を受けなくても腫瘍細胞を攻撃する。

開発後期段階のCAR-TはノバルティスがB細胞性急性リンパ芽球性白血病に承認申請したCTL019も含めて複数あるが、KTE-C19はJCAR015と組成が似ているので、臨床的な異同が注目されている。

CAR-Tの泣き所は免疫が亢進しすぎるサイトカイン放出症候群だ。Kiteはtocilizumab(ロシュの抗IL-6受容体抗体)やlevetiracetam(UCBの抗癲癇薬)を早期に用いることで重症化を回避する手法を検討するため30名を組入れて試験を行ったところ、発症を2例に抑えることに成功したが、2例のうち一人が脳浮腫を発症し死亡した。

脳浮腫による死亡はJCAR015の試験で5名、JCAR014でも1名発生しているので、CAR-T全体のクラス・イフェクトと疑う余地はある。発生頻度は違うかもしれないが、投与症例数が限られているため現状ではよくわからない。KTE-C19の臨床試験では累計で200人に投与、致死的有害事象は2%とのことなので、血液癌の薬としては特に毒性が高いようにも見えない。

リンク: Kiteの17/3四半期Form 10-Q(この話は31頁に記載)

アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視
(2017年5月10日発表)

アストラゼネカは、tralokinumab(Cambridge Antibody Technology社の開発コードはCAT-354)の第三相重度喘息症試験がフェールしたと発表した。事前に設定された、IL-13活動性が亢進していることを示すバイオマーカーでスクリーニングされたサブグループの解析では喘息増悪回数が臨床的に意味のある減少を示したため、進行中のもう一本の第三相では、このサブグループの解析を主評価項目とすることを決めた。17年下期に結果が出る見込み。

Adaptive designの試験は分かりにくいが、この第三相も、一本目がフェールしたらサブポピュレーションの解析を行い、二本目だけを仮説検証的試験とする計画だったのだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

【承認】


キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認
(2017年5月10日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)を末期非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療薬としてAlimta(pemetrexed)及びcarboplatinと三剤併用することがFDAに承認されたと発表した。EGFR阻害剤が適応になるEGFR活性化変異型やALK阻害剤が適応になるALK再編成型以外が対象になる。PD-L1発現は不問。

KEYNOTE-021試験の123例のORR(客観的反応率)に基づく承認で、三剤併用群は55%とAlimta・carboplatinの二剤併用群の29%を上回った。93%の患者は反応が6ヶ月以上持続した。二剤併用群では81%だった。用量・用法は3週間毎に200mgを30分点滴静注で、化学療法と同日だが先に投与する。

リンク: MSDのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年5月7日

2017年5月7日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗 
  • 回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請 
  • ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請 
  • Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回 
  • エダラボン、米国でもALSに承認 
  • 5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認 
  • 造骨型骨粗鬆症治療薬が承認 


【新薬開発】


大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗
(2017年5月2日発表)

大塚製薬とルンドベックは、非定型向精神薬Rexulti(brexpiprazole、和名レキサルティ)の適応拡大試験結果を発表した。アルツハイマー性認知症の典型的な症状の一つである激越を改善する効果を検討したもので、一本は主評価項目(CMAIトータルスコアの変化)で偽薬比有意な差が出たものの副次的項目(CGI-Sの変化)はダメ、もう一本は真逆で主評価項目はフェール、副次的項目は有意だった。

両社は承認審査機関と今後の方針を相談する考え。家族や介護者にとってunmet medical needsであるため、多少効果が弱くても許容されるだろうが、そもそも、広くオフレーベル使用されている非定型向精神薬が正式に承認されていないのは突然死のリスクがあるからであり、Rexultiも治験データが精査されることになるだろう。

今回の適応拡大試験で意外なのは、二本しかやっていない模様であることだ。一般的に精神症状は客観的評価が難しく、状態が不安定で、偽薬効果が大きく出ることもあるため、偽陰性リスクに備えて臨床試験を三本実施することが珍しくない。また、評価期間は二本とも12週間だが、現実の医療では半永久的に用いるだろうから、長期安全性確認試験をやっても良かったのではないか。統合失調症では長期試験が行われたが、アルツハイマー病は突然死リスクを慎重に吟味する必要がある。

リンク: 大塚ホールディングスのプレスリリース(和文、pdfファイル)

【承認申請】


回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請
(2017年5月1日発表)

英国のAtlantic Healthcare Limitedは、米国でalicaforsenの浣腸用製剤のローリング承認申請を開始した。適応は潰瘍性大腸炎の手術後に好発する回腸嚢炎の治療。

米国のIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)が創製した、ICAM-1の発現を阻害するアンチセンス薬。POC試験では12人の患者に6週間に亘って毎晩浣腸したところ、PDAI(嚢炎疾病活動指数)がベースラインの11.42から6.83に改善した。臨床症状サブスケールも3.75から2.25に改善した。深刻な有害事象は見られなかった。138人を組入れた第三相試験が進行中で年内に成否が判明する見込み。

Ionisは最初のアンチセンス薬であるVitravene(fomivirsen)が98年にCMV治療薬として米国で承認され、前途洋々と見られたが、販売不振で承認返上となってしまった。しかし、13年にコレステロール治療薬Kynamro(mipomersen sodium)、16年には脊髄性筋萎縮症治療薬Spinraza(nusinersen)と、ここ数年は新薬が続々と承認されている。核酸医薬の難点であった薬物動態の改良が成果を出し始めた。

リンク: Atlantic社のプレスリリース

ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請
(2017年5月3日発表)

ファイザーは、抗リウマチ薬として承認されているJAK阻害剤、Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)を中重度活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたことを発表した。12月に審査結果が出る見込み。臨床試験では10mgを一日二回投与する群も設定されたが、5mg一日二回と、11mg一日一回のXeljanz XRだけが申請された。

Xeljanzは元々は臓器移植後の拒絶反応防止薬として開発され、動物試験ではカルシニューリン阻害剤に引けを取らない強力な免疫抑制作用を示した。臨床入り後に自己免疫疾患の治療薬として開発の方向転換が行われたのだが、この用途では、カルシニューリン阻害剤と同様に、強すぎるきらいがある。FDAが乾癬の適応拡大を承認しなかったのは、関節炎ほど深刻な病気ではないため副作用リスクと釣り合いが取れないという判断なのだろう。一方、乾癬性関節炎はQOLに大きく影響するので、承認される可能性がありそうだ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回
(2017年5月1日発表)

Sunesis Pharmaceuticals(Nasdaq:SNSS)は、大日本住友製薬からインライセンスしたキノロン誘導体、vosaroxinを60歳以上の再発性急性骨髄性白血病の治療薬として2015年にEUで承認申請したが、撤回したことを公表した。CHMPが否定的意見を出す見込みであるため。

第三相のcytarabine併用試験はメジアン生存期間が7.5ヶ月と偽薬・cytarabine併用群の6.1ヶ月と大差なくフェールした。最初の30日間の死亡率が7.9%と偽薬群の6.6%を上回り安全性懸念も浮上した。ところが、事前に予定されていた60歳以上の患者451例だけの解析が、メジアン生存期間7.1ヶ月対5.0ヶ月、ハザードレシオ0.755、p=0.006、と良い結果になったため、EUではこのサブグループ限定で承認申請することが認められた。

一方、FDAは再試験を要求した。このような経緯があるため、今回の結果は意外ではない。

リンク: Sunesisのプレスリリース

【承認】


エダラボン、米国でもALSに承認
(2017年5月5日発表)

FDAは、田辺三菱製薬のRadicava(edaravone、和名ラジカット)をALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認した。日本で15年に効能追加されたことを知り、FDAがメーカーにアプローチした由だ。薬効と安全性のエビデンスも日本で行われた試験のようだ。

ALS Associationによると、上市は8月で一年分の価格は14.6万ドルとのこと。日本は数十万円、他にも特許切れした国があるようなので、並行輸入する動きもありそうだ。

日本で16年前に脳梗塞で発症から24時間以内の患者に使うことが承認された時は、臨床試験で24時間超の患者の転帰も有意に改善したことが信じられないというのなら24時間以内のデータも疑うべきではないかと思った。何れにせよ、そのうち治験論文が査読医学誌で刊行されれば真相に一歩近づくはずと思ったが、掲載されたのは私にとって聞いたことのない医学誌だった。抗血栓薬以外の脳梗塞治療試験が続々とフェールする中、唯一の快挙であったことを考えれば、NEJMやLancetでないのが意外だった。

何れにせよ、そのうち米国で臨床試験が行われれば白黒ハッキリするはずと思ったが、実現しなかった。

今回のALSのデータも盤石ではない。臨床試験の裏付けがあるのは状態が比較的良い患者だけだが、PDMAもFDAも適応を限定しなかったので、エビデンスレス・メディスンが行われるリスクがある。だが、ライフサイクルを考えると、改めて薬効確認試験が行われる可能性は低そうだ。

二人のALS患者がオランダで設立したTreeway社がedaravoneの経口投与用製剤、TW001を開発中で、欧米で希少疾患用薬指定を受けている。Radicavaは60分点滴静注で、28日サイクルで最初は14日間連続、その後のサイクルは10日間投与する。経口剤なら連続投与することで薬効をパワーアップできるかもしれない。また、Radicavaの深刻な有害事象として蕁麻疹や膨張、呼吸困難、添加物である亜硫酸水素ナトリウムに対するアレルギー反応が挙げられているが、この幾つかは経口剤なら回避できるかもしれない。

承認を取るだけだったら生物学的同等性試験を行えば十分だろうが、もし可能ならば、例えばALS治療薬として承認されている経口剤、Rilutek(riluzole)を活性対照薬として、改めて薬効を確認してほしいものだ(日本の試験は9割の患者がRilutekを服用していたので実質的にアドオン試験となっている)。

リンク: FDAのリリース
リンク: Radicavaの米国向け情報サイト

5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認
(2017年5月1日発表)

アストラゼネカは、Imfinzi(durvalumab)が尿路上皮細胞腫用薬として米国で承認されたと発表した。白金薬治療歴を持つ患者の二次治療として、10mg/kgを二週間に一回、60分点滴静注する。

PD-L1発現状況に関係なく使用することができるが、薬効のエビデンスとなった第2相試験では、PD-L1高発現サブグループ(被験者のほぼ半分が該当)のORR(客観的反応率)は26%、判定不能例では21%、低・無発現サブグループでは4%となっており、コストや副作用を考えると高発現に限定したほうが良いのではないだろうか。

ImfinziはPD-L1を標的とするIgG1カッパ型完全ヒト化抗体で、抗PD-L1抗体としてはロシュのTecentriq(atezolizumab)、独メルク/ファイザーのBavencio(avelumab)に次ぐ三剤目、PD-L1の受容体であるPD-1を標的とするMSDのKeytruda(pembrolizumab)やBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も含めれば5剤目。

膀胱癌は抗PD-1/PD-L1の得意分野で、5剤のうちTecentriqとOpdivoが既に承認、KeytrudaやBavencioは適応拡大申請中で審査期限は各6月と8月となっており、レッドオーシャン状態だ。

薬効を比較する上で厄介なのは、PD-L1発現検査の方法が異なること。Imfinziの試験はTecentriqと同様に、ロシュの子会社であるVentana Medical Systemsのアッセイを用いているが、高発現の評価方法が異なる模様であり、PD-L1サブグループだけのORRを比較することはできない。かといって、全ユニバースのORRは陰性患者の構成比に左右される可能性があり、使いたくない。何とかならないものか。

分かり易い違いは投与頻度。ImfinziとOpdivo、Bavencioは2週間に一回、ImfinziとTecentriqは3週間に一回。末期癌は元々のQOLが低いが、一次治療の患者が限られた日々を有効に過ごすことを考えると、医療施設に行く回数は少ない方が良い。

用量は尿路上皮細胞腫ではImfinziとBavencio以外は体重を問わず同一。体重に合わせて用量を変えるのは血中濃度を同一にするための工夫だが、太っている人は薬剤費が高くなり、また、使い残しが出やすいので、経済的には固定のほうが良い。抗PD-1/PD-L1抗体は用量反応相関があまり明確ではないので、統一する余地はありそうだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

造骨型骨粗鬆症治療薬が承認
(2017年4月28日発表)

Radius Health(Nasdaq:RDUS)はTymlos(abaloparatide)が閉経後骨粗鬆症治療薬としてFDAに承認されたと発表した。骨損壊リスクが高い患者に用いる。

甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)のアナログで、類似薬であるイーライリリーのForteo(teriparatide)と同様に、破骨細胞抑制というよりは造骨細胞を活性化するアナボリック作用を持つ。欠点もForteoと同様。レーベルには、癌原性試験でオスとメスのラットに臨床用量の4倍以上を投与したら骨肉腫が増加したと枠付き警告されている。マウスについては記されていないのでリスクがなかったと考えれば、二種類以上の動物で雄雌両方で増加という癌原性判定基準には該当しないことになるが、気持ち悪い。

Forteoと同様に、二年以上の連続投与は推奨しないことも枠付き警告された。

リンク: Radius社のプレスリリース






今週は以上です。

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