2018年4月22日

2018年4月22日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • AACR:キイトルーダは非小細胞性肺癌一次治療の標準療法に 
  • AACR:オプジーボとヤーボイの併用も有効だったが... 
  • Alkermes、FDAが申請拒否したのは間違いだった? 
  • BMS、オプジーボを小細胞性肺癌に適応拡大申請 
  • FDA諮問委員会、大麻由来の抗癲癇薬を支持 
  • 協和発酵創製の希少疾患用抗体医薬が米国で承認 
  • RigelのSyk阻害剤が米国で承認 
  • BMS、腎癌でもオプジーボ・ヤーボイ併用が承認


【新薬開発】


AACR:キイトルーダは非小細胞性肺癌一次治療の標準療法に
(2018年4月16日発表)

MSDの抗PD-1抗体、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)のKEYNOTE-189試験の結果がAACR(米国癌研究会議)で発表された。転移性非扁平上皮性NSCLC(非小細胞性肺癌)の標準的一次治療である白金薬とpemetrexedの併用レジメンに更にKeytrudaを追加する効用を検証したところ、PD-L1発現状況を問わず、全生存期間もPFS(無進行生存期間)も偽薬を追加した群を有意に上回った。

この用法は米国では昨年5月に承認済みだが、第1/2相試験に基づく加速承認で、一次治療薬に求められる延命効果は確立していなかった。また、KeytrudaはモノセラピーでNSCLCの一次治療に用いることも承認されているが、対象はPD-L1高発現(TPS≧50%)のみである。また、ライバルのBMSのOpdivo(nivolumab)はNSCLCの試験ではなかなか結果を出せていない。189試験の成功は、様々な意味で、Kyetrudaの評価を高めた。

尚、この試験は幾つかの除外条件がある。まず、扁平上皮腫。pemetrexedが適応にならないため、407試験で別のレジメンとの併用を検討している。次に、EGFRやALKの活性化変異。白金レジメンではなくEGFR阻害剤やALK阻害剤が第一選択になるからだろう。今回初めて知ったのは、この試験だけでなくKeytrudaの複数の試験で、一定以上の放射線照射歴が除外条件になっていること。肺炎リスクが高まる由だが、この情報は広く共有されているのだろうか?

さて、主評価項目は元々はPFSだけだったが、昨秋、全生存期間も追加することが発表された。結果は、PFSはメジアン8.8ヶ月と偽薬併用群の4.9ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.52(95%信頼区間0.43-0.64)。全生存期間はメジアン未達、偽薬併用群は11.3ヶ月、ハザードレシオは0.49(同0.38-0.64)。

全生存ハザードレシオは、TPS≧50%の高発現サブグループでは0.42、1-49%は0.55、陰性でも0.59で、何れも95%上限が1を下回っており、この三剤併用はPD-L1発現状況を問わず有効であることが示された。

偽薬併用群は癌の進行が認定された後にKeytrudaなどの抗PD-1/PD-L1薬を用いた患者が多かったが、それでも延命効果に大きな差が出た。忍容性に配慮して一次治療は二剤併用で留めKeytrudaは二次治療に取って置く、という治療方針が否定されたことになる。

一方で、一次治療をKeytrudaだけに留める手法は必ずしも否定されていない。TPS≧50%に対するモノセラピーの効用を白金ベース二剤併用と比較した024試験では、PFSのハザードレシオが0.50、全生存期間は0.60と、今回とそんなに差のない数値が出ている。これらの点推定値が真実であったとしても、この程度の差で統計的に有意という答えを出すためには相当な症例数が必要なのではないか。また、モノセラピーは現状ではTPS≧50%だけが適応だが、将来的に50%未満に広がる可能性もありそうだ。

これらのことから、特にTPS≧50%に関しては、Keytrudaモノセラピーを第一選択にするケースも多そうだ。

抗PD-1/PD-L1は副作用の出方が化学療法と異なるので特別な配慮が必要だ。抗癌剤なので命に係わる副作用も少なくない。本試験では三剤併用群で治療関連死が3例発生した。何れも肺炎によるもの。上記のように、放射線治療歴を持つ患者に用いる場合は特に注意が必要かもしれない。

AACRでは黒色腫アジュバント試験の結果も発表されたので、簡単に記しておこう。ステージIII(AからCまで)の黒色腫を完全切除したが再発リスクの高い患者にKeytrudaまたは偽薬を投与したもので、無再発生存のハザードレシオが0.57(98.4%信頼区間0.43-0.74)、1年無再発生存率は各75.4%と61.0%だった。もうひとつの主評価項目であるPD-L1陽性サブグループの分析でもハザードレシオ0.54で統計的に有意な差があった。PD-L1発現状況やBRAF変異の有無を問わず、有効だった。

Opdivoも黒色腫アジュバントに承認されているが、臨床試験の組入れ基準はKeytrudaのほうが広い。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: 同(黒色腫試験について、4/15付)

AACR:オプジーボとヤーボイの併用も有効だったが...
(2018年4月16日発表)

AACRでは、BMSの免疫強化療法薬二剤をNSCLC一次治療に併用したCheckMate-227試験の結果も発表された。TMBという新しい遺伝子分析手法を用いてスクリーニングしたサブグループにおける有効性が明らかになったが、上記のKeytrudaのデータと比べて見劣りするだけでなく、このスクリーニング手法の有益性が曖昧であることや、解析計画が途中で複雑で分かり難いものに変更されたことによる不透明感も重なり、これで答えが出たという印象を持つことが困難である。

BMS/小野薬品とMSDの抗PD-1開発競争は、前者のほうが先行していたはずだが、米国承認はMSDが先んじた。非小細胞性肺癌の臨床試験では、MSDがモノセラピーや白金ベース併用試験を次々と成功させているのに対して、BMSはYervoy(ipilimumab)併用に重点を置いたことが黒色腫などと異なり肺癌では裏目に出ているような印象を受ける。

何れにせよ、MSDが10年以上前から臨床開発をスピードアップすべく取り組んできた成果が、抗PD-L1という開発すべき用途や併用法が滅茶苦茶多そうなテーマの出現で、顕在化したといえるだろう。

さて、227試験に話を戻すと、末期NSCLCの一次治療を受ける患者を組入れて、白金ベースの標準療法(扁平上皮腫はgemcitabine、それ以外はpemetrexedを併用;以下、標準療法)と、Opdivo(nivolumab;以下、モノセラピー)、Opdivo・Yervoy併用(以下、OY)、そしてOpdivo・標準療法併用(以下、OCT)の全生存期間やPFSを比較したもの。

3部に分かれており、パート1aはPD-L1発現癌を組入れてモノセラピーやOYを標準療法と比較、パート1bは陰性を組入れてOYやOCTを標準療法と比較、パート2では組入れ除外条件を緩和して様々なタイプの患者に対してOCTと標準療法を比較した。

今回発表されたのは、まず、パート1aと1bに組入れられた約1740人のうちTMBが10 mut/Mb以上と判定された299人のOY群と標準療法群のPFS解析だ(主評価項目)。ハザードレシオ0.58(97.5%信頼区間0.41-0.81)となり、PD-L1発現が1%以上のサブグループでも、1%未満でも、効果があった。

主評価項目ではないが、TMB≧10 mut/Mbグループの全生存期間の解析はハザードレシオ0.79(95%信頼区間0.56-1.10)で、上記のKeytrudaの数値と比べて点推定値が見劣りするだけでなく、信頼区間が1を跨いでいる(統計的に有意ではない)。

ここでTMBを説明しておくと、Tumor Mutation Burdenの略。腫瘍に関連する遺伝子変異の中には、EGFRやALKの活性化変異のように癌化に決定的な影響を持つ変異もある一方で、個々の変異の影響は小さくても多数重なると癌化するものがあっても不思議ではない。特定の遺伝子一つではなく、多数の遺伝子における変異の数に基づいて癌を分類するのがTMBで、メガバイト当りの変異数(mutation/Megabite)で表す。

閾値を10に設定したのは過去の試験のデータに基づくもので、通常は40~45%が該当するとのことだ。TMB検査はPD-L1検査より費用も必要な検体の量も数倍とのこと。

もう一つの主評価項目であるPD-L1≧1%のユニバースの全生存期間は今年遅くまたは来年初めに結果が出る見込み。BMSは、これを待たずに承認申請する考え。今後の解析で全生存期間で有意差が出ると良いのだが...

モノセラピーの効果に関しては、二次的評価項目として、TMB≧13 mut/MbかつPD-L1≧1%のサブグループのPFS解析が行われた。結果はハザードレシオ0.95(97.5%信頼区間0.61-1.48)とフェールした。

KeytrudaとOpdivoが異なる薬だと思っている人は少ないだろう。今回の試験を決定版と受け止めるのは早計のように感じられるが、同じことを何度も書くことはできず、どこかの段階で結論を出さざるを得ない。BMS/小野薬品に残された時間は少なくなってきた。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認申請】


Alkermes、FDAが申請拒否したのは間違いだった?
(2018年4月16日発表)

Alkermes(Nasdaq:ALKS)は、FDAがALKS 5461の承認申請を受理したと発表した。先週、受理せずと発表したばかりだが、薬効の立証が不十分なのでよくデザインされた試験を別途行うよう求めたのは、今回の承認申請とは直接関係ない事項に関するものであったらしい。おそらく、受理を拒否する理由としては不適切という話で、正式な承認審査が始まった段階で改めて取り上げられるのではないか。

ALKS 5461は、ミュー・オピオイド受容体に対してはアゴニスト、カッパ・オピオイド受容体にはアンタゴニストとして作用するbuprenorphineに、ミュー・オピオイド受容体アンタゴニストのsamidorphanを追加することで、カッパ・アンタゴニズムだけを生かすアイディア。第三相の最初の二本は主評価項目のMADRSがフェール、三本目は評価項目を10から6に減らしたMADRS-6の期中平均値に切り替えたところ、高用量二群が成功した。

抗鬱剤は試験で一敗、二敗しても二勝すれば合格といわれるが、ALKS 5461の場合は第三相だけでは足りないので第二相試験も含めた総合的な評価に望みを託することになる。承認申請は申請書類が概ね完全なら受理されるので、受理されたからと言って承認されるとは限らない。

buprenorphineはオピオイド依存治療薬として承認されている活性成分なので、申請書類の中には様々な文献データが引用されているだろう。合剤の場合、しばしば、単剤との比較試験が求められるが、単剤では抗鬱剤としての効果は不十分、という文献があったとしても、上記の理由で、一本や二本フェールしても、薬のせいなのか、治験がフェールしたのか、分からない。このため、改めて比較試験を行うべきとFDAは考えているのかもしれない。何れにせよ、単剤との比較よりも、合剤と偽薬の比較のほうが重要な論点になりそうだ。

リンク: Alkermesのプレスリリース

BMS、オプジーボを小細胞性肺癌に適応拡大申請
(2018年4月18日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)を小細胞性肺癌の三次治療に用いる適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は8月16日。エビデンスとなる第1/2相CheckMate-032試験では、BICR(盲検独立中央評価)によるORR(客観的反応率)が11%で、TMB(Tumor Mutation Burden)高位のサブグループでは21%、中位と下位は各7%と5%だった。今回はモノセラピーだけのようだが、Yervoy併用群のBICR-ORRは22%だった。

リンク: BMSのプレスリリース
リンク: 同(032試験の学会発表について、17年10月16日付)

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、大麻由来の抗癲癇薬を支持
(2018年4月18日発表)

FDAの末梢中枢神経系薬諮問委員会は、英国のGW Pharmaceuticals(Nasdaq:GWPH)がレノックス・ガストー症候群やドラベ症候群のアジャンクト(補助的追加)療法として承認申請したEpidiolex(cannabidiol)について検討し、投票権を持つ13人の委員全員が便益が危険を上回る(承認に値する)と判定した。審査期限は6月27日。承認されたら、大麻由来の医薬品もドラベ症候群の薬としても米国初。

GWは大麻の成分を医薬品として開発している会社で、合成テトラヒドロカンナビノールなどに加えて、大麻抽出物のnabiximols(USAN)をSativex名で欧州カナダなどで販売している。今回のカンナビジオール液は、幼小児期に発症する深刻な癲癇であるレノックス・ガストー症候群のアジャンクト試験で失立発作回数が治験前と比べて44%減少した(偽薬群は22%減少)。ドラベ症候群試験では痙攣発作頻度が39%減少した(偽薬群は13%)。

至適用量の検討が不十分と指摘されたので、承認後に追加試験を行うことになりそうだ。肝毒性が見られるためモニタリングが必要。大麻の成分には依存性のあるものもあるが、カンナビジオールはWHOもFDAも薬物依存のリスクは小さいと判断している模様。最終的には米国薬物管理庁(DEA)がFDAなどの評価に基づきスケジュール指定する。

欧州でも昨年、承認申請された。

リンク: GW社のプレスリリース


【承認】


協和発酵創製の希少疾患用抗体医薬が米国で承認
(2018年4月17日発表)

FDAは、Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)のCrysvita(burosumab-twza)をX染色体遺伝性低リン血症(XLH)治療薬として承認した。1歳以上が適応になる。

XLHはくる病の一種でX染色体上の遺伝子変異によりFGF(線維芽細胞増殖因子)23が過剰生産され、尿細管におけるリンの再吸収が減少、リン不足により骨の成長障害を合併する。CrysvitaはFDF23を標的とする完全ヒト化抗体で、臨床試験では9割以上の患者で血清リン濃度が正常化した。米国の患者は小児が3000人、成人12000人と推測されている。

Ultragenyxは正味価格で年20万ドル(小児は16万ドル)程度を計画している模様。また、今回の承認で希少小児疾患優先審査バウチャーを取得することができる。同社はチッカーシンボルが示すように希少疾患に特化しているためこのようなバウチャーは不要なはずであり転売するのではないか。昨年、ムコ多糖症7の治療薬としてMepsevii(vestronidase alfa-vjbk)が承認された時の同様なバウチャーは1.3億ドルでノバルティスに売却した模様。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 二社のプレスリリース

RigelのSyk阻害剤が米国で承認
(2018年4月17日発表)

Rigel Pharmaceuticals(Nasdaq:RIGL)は、Tavalisse(fostamatinib disodium hexahydrate)が慢性免疫性血小板減少症の二次治療薬としてFDAに承認されたと発表した。第三相試験の成績が一本はp=0.03とボーダーライン上、もう一本はフェールしたので結果が危惧されたが、無事ゴールした。

マクロファージやB細胞のIgG受容体の細胞内シグナル伝達に係るSyk(spleen tyrosine kinase)を阻害する経口剤で、100mgを一日二回服用する。アストラゼネカと抗リウマチ薬として共同開発したことがあるが、副作用リスクなどが浮上し、提携解消となった。

主な有害事象は血圧上昇、肝機能検査値異常、下痢、好中球減少症など。

リンク: Rigelのプレスリリース

BMS、腎癌でもオプジーボ・ヤーボイ併用が承認
(2018年4月16日発表)

BMSは、中高リスク腎細胞腫の一次治療にOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を併用する適応拡大がFDAに承認されたと発表した。前者は3mg/kg、後者は1mg/kgを三週間毎に4回投与し、その後は前者だけを二週間に一回、維持投与する。維持投与期の用量・頻度は3mg/kgまたは240mg固定用量を2週毎、または480mg4週毎、の三種類の選択肢がある。

Sutent(sunitinib)と直接比較したCheckMate-214試験では、共同主評価項目のうちORRは41.6%対26.5%で有意に上回ったが、PFSはメジアン11.6ヶ月対8.4ヶ月、ハザードレシオ0.82でフェールした。しかし、第三の主評価項目である全生存期間のハザードレシオは0.63となり、統計的に有意。低リスク患者も含めた全ユニバースの解析でも有意差があった。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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2018年4月16日

2018年4月15日


【ニュース・ヘッドライン】

  • キイトルーダ、肺癌一次治療で化学療法に勝つ 
  • poziotinibがエクソン20変異肺癌に良績 
  • ファイザー、インライタの腎癌アジュバントはフェール 
  • RAGEアンタゴニストのアルツハイマー第三相がフェール 
  • PI3キナーゼ阻害剤の承認申請受理 


【新薬開発】


キイトルーダ、肺癌一次治療で化学療法に勝つ
(2018年4月9日発表)

MSDは、KEYNOTE-042試験が中間解析で成功認定されたと発表した。Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を非小細胞性肺癌の一次治療にモノセラピーで用いたところ、白金ベースの化学療法を施行した群より全生存期間が有意に長かった。データは未発表。

抗PD-1/PD-L1抗体の有効性はPD-L1発現状況により左右されるか、否か?臨床試験の結果は区々で、Keytrudaの場合、非小細胞性肺癌の二次治療に用いる時はTPS(PD-L1発現スコア)が1%以上なら適応になるが、一次治療は50%以上の癌しか承認されていない。一方、非扁平上皮非小細胞性肺癌にPD-L1不問でpemetrexed及びcarboplatinと三剤併用する用法は、米国では承認されたがEUは申請撤回となった。検査アッセイや手法が複数存在することもあり、今後の検討課題が数多く残っている。

042試験では最初に50%以上のサブグループ、次に20%以上、そしてさらにIntent-to-treat(この試験は1%以上のみ組入れた)と、シーケンシャルに解析を行ったところ、すべて延命効果が確認された。非小細胞性肺癌のうち、TPS≧50%は25%のみだが≧1%は60-65%を占めるとのことなので、適応患者が倍増以上することになる。尚、この試験は扁平上皮性も非扁平上皮性も組入れている。

独立データ監視委員会は二次的評価項目であるPFS(無進行性損期間)の解析を行うため治験継続を勧告した由。PFSのほうが先に成功しそうなものだが、抗PD-1/PD-L1抗体は全生存期間の解析が成功してもPFSは有意差に達しないこと時々ある。似たような現象はIL-2やアルファインターフェロンでも見られるので、免疫強化療法の特性なのだろう。

キイトルーダの肺癌は化学療法併用第三相試験なども実施されており、今週末に始まったAACR(米国癌研究学会)で結果発表が期待されている。モノセラピーと併用のどちらも有効ならば、忍容性も吟味した上で、一次治療から三剤併用するのか、モノで初めて白金レジメンは二次治療に取っておくのか、標準療法を決めることになりそうだ。

リンク: MSDのプレスリリース

poziotinibがエクソン20変異肺癌に良績
(2018年4月10日発表)

Spectrum Pharmaceuticals(Nasdaq:SPPI)は、MD Andersonで実施されたpoziotinibの第二相試験が良好な結果になったことを明らかにした。EGFRのエクソン20変異を持つ非小細胞性肺癌に投与したところ、最初の11人の解析でcORR(確認客観的反応率)が64%となった。主な有害事象はラッシュと下痢。

15年に韓国の韓美薬品(Kosdaq:128940)からHM781-36Bの中韓以外における独占開発販売権を取得したもの。エクソン20変異は非小細胞性肺癌の2~3%が該当する由。Spectrumは自社でもEGFRやher2のエクソン20変異を持つ非小細胞性肺癌や、her2陽性転移性乳癌の、第二相試験を実施中。

リンク: Spectrumのプレスリリース

ファイザー、インライタの腎癌アジュバントはフェール
(2018年4月10日発表)

ファイザーは、Inlyta(axitinib、和名インライタ)の第三相腎細胞腫アジュバント試験がフェールしたと発表した。このATLAS試験は、切除術を受けたが再発リスクの高い患者をInlyta群と偽薬群に無作為化割付して無病生存期間を比較したもので、独立データ監視委員会が中間解析で無益性を認定した。

Inlytaと同じVEGF受容体阻害剤の同様な試験では、バイエルのNexavar(soratinib)とファイザーのSutent(sunitinib)を偽薬と比較したASSURE試験がフェール。Sutentは高リスクの患者だけを組入れたS-TRAC試験が成功し、FDAは適応拡大を承認したがEUは今年2月にCHMPが否定的意見と、評価が分かれている。ATLAS試験はサンプル数はS-TRACと同程度だが、リスクがやや小さい患者も組入れ対象だったので、これが影響したのかもしれない。

同じような薬を雁行的に開発するのは奇妙に見えるが、過去の戦略の名残なのだろう。ファイザーは企業買収・合併を活発に行ってきたが、数年前までは、パイプラインの整理統合を行わず研究所同士で競わせる戦略を取っていた。三井住友銀行新宿支店のライバルは新宿西口支店、と日本でも人気のあった戦略だ。

Sutentの開発コードはSU-011,248で、02年に買収したファルマシアがそれ以前に買収したSugenのプリフィックスがついている。InlytaはAG-013,736で、2000年に買収したワーナー・ランバートがその前年に買収したAgouron Pharmaceuticalsの開発品と推測される。

リンク: ファイザーのプレスリリース

RAGEアンタゴニストのアルツハイマー第三相がフェール
(2018年4月9日発表)

vTv Therapeutics(Nasdaq:VTVT)は、TTP488(azeliragon)の第三相軽度アルツハイマー病試験がフェールしたと発表した。他の試験も打ち切る考え。

TTP488はAGE(終末糖化産物)の受容体のアンタゴニスト。ファイザーがライセンスしてPOC試験を行ったが、高用量群で認知機能悪化が見られたためデータ監視委員会が中止を勧告した。糖尿病性腎症試験も思わしい結果が出ず、2011年にライセンス返還した。

vTv社は、上記POC試験のポストホック分析で低用量群の軽度アルツハイマー病患者に対する治療効果のp値が0.008だったことに注目して、軽度患者800人を組入れて第三相に踏み切ったのだが、今回もまた、「事後的サブグループ分析でよい数値が出ても楽観できない」という経験則通りの結果になった。

尚、vTvは15年にTransTech Pharmaから社名変更した。

リンク: vTvのプレスリリース


【承認申請】


PI3キナーゼ阻害剤の承認申請受理
(2018年4月9日発表)

Verastem(Nasdaq:VSTM)は、duvelisib)の承認申請がFDAに受理され、優先審査指定されたことを発表した。審査期限は10月5日。

16年にInfinity Pharmaceuticals(Nasdaq:INFI)から世界開発販売権を取得したホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)デルタ/ガンマ阻害剤で、適応は、再発性難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の本承認と、再発性難治性濾胞性リンパ腫の加速承認を求めた。

前者はDUO試験でPFS(無進行生存期間)がメジアン13.3ヶ月とArzerra(ofatumumab、抗CD20完全ヒト化抗体)群の9.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.52だった。後者は第二相でORR(客観的反応率)が46%、完全反応はなく、期待外れだったのか、14年に開発販売権を取得したアッヴィがライセンスを返還した経緯がある。

リンク: Verastemのプレスリリース






今週は以上です。

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2018年4月8日

2018年4月8日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • サイラムザ、バイオマーカーでスクリーニングした肝細胞腫試験成功 
  • インサイト、IDO1阻害剤のキイトルーダ併用試験がフェール 
  • Paratek社、テトラサイクリン系抗生剤を承認申請 
  • ファイザー、汎erbB阻害剤を欧米で承認申請 
  • アストラゼネカ、新規ADCを米国で承認申請 
  • アストラゼネカ、リムパーザをEUでも乳癌に適応拡大申請 
  • リジェネロン、抗PD-1抗体を有棘細胞癌に承認申請 
  • リジェネロン、デュピクセントを喘息に適応拡大申請 
  • Alkermes、難治性鬱病用薬は審査完了に 
  • クロビス、Rubracaの適応拡大が承認 


【新薬開発】


サイラムザ、バイオマーカーでスクリーニングした肝細胞腫試験成功
(2018年4月4日発表)

イーライリリーは、Cyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)の第三相肝細胞腫二次治療試験が成功したと発表した。4年前に開票した試験では全生存期間が偽薬を有意に上回らなかった。今回はAFP(alpha fetoprotein)が高値の患者に絞り込んだことが奏功したのかもしれない。

この試験は、sorafenib歴を持つ、または不耐で、AFPが400 ng/mL以上の肝細胞腫を組入れて、延命効果を偽薬と比較したもの。AFPは肝細胞腫のバイオマーカーでもあり、5割程度がAFP≧400 ng/mLに該当する模様。データは今後、学会で発表される見込み。

CyramzaはVEGFR-2/KDRに結合する完全ヒト化抗体で、これまでに胃癌や肺癌、結腸直腸癌に承認されている。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

インサイト、IDO1阻害剤のキイトルーダ併用試験がフェール
(2018年4月6日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は、INCB024360(epacadostat)の第三相試験がフェールしたと発表した。悪性黒色腫にMSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)と併用する効果をKeytrudaだけの群と比較したが、主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)は大差なかった。共同主評価項目の全生存期間はまだ成熟していないが、外部データ監視委員会が期待薄と判定し、治験打ち切りとなった。インサイトは、バイオマーカー分析などを進める考え。

INCB024360は、様々な腫瘍細胞で高度発現しているindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)1を阻害して、制御的T細胞やイフェクターT細胞の活性が低下するのを妨げる。癌が免疫を免れるメカニズムに作用する点で、Keytrudaのような抗PD-1抗体と似ており、相乗効果も期待されたが、結実しなかった。BMSのOpdivo(nivolumab)併用など他の第三相の結果が注目される。

他社のIDO1阻害剤の開発も今のところ難航していて、二匹目のドジョウはなかなか見つからない。

リンク: インサイトのプレスリリース


【承認申請】


Paratek社、テトラサイクリン系抗生剤を承認申請
(2018年4月4日発表)

Paratek Pharmaceuticals(Nasdaq:PRTK)は、PTK 0796(omadacycline)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。欧州でも承認申請する予定。

承認されたらほぼ20年ぶりとなるテトラサイクリン系の新薬で、ABSSSI(急性細菌性皮膚皮膚構造感染症)やCABP(地域感染細菌性肺炎)の治療に用いる。経口剤と静注用があり、一日一回投与。臨床試験では何れも実薬に非劣性だった。悪心嘔吐や肝機能検査値異常がやや多いように感じられ、CABP試験では死亡率が2.1%とmoxifloxacin群の1.0%より高かった。

華やかな協業歴を持ち、99年にグラクソ、03年にバイエル、05年にMSD、そして09年にノバルティスがライセンスしたが何れも解消となった。

リンク: Paratekのプレスリリース

ファイザー、汎erbB阻害剤を欧米で承認申請
(2018年4月4日発表)

ファイザーは、PF-00299804(dacomitinib)をEGFR活性化変異を持つ局所進行性・転移性非小細胞性肺癌の一次治療薬として欧米で承認申請し、受理された。米国は優先審査を受ける。

EGFRやher2など、erbB成長因子受容体を阻害する汎erbBチロシンキナーゼ阻害剤。第三相試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が14.7ヶ月とIressa(gefitinib)群の9.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.59だった。忍容性はやや劣り、66%の患者が減量した(Iressa群は8%)。

リンク: ファイザーのプレスリリース

アストラゼネカ、新規ADCを米国で承認申請
(2018年4月3日発表)

アストラゼネカは、moxetumomab pasudotoxを難治性再発性有毛細胞白血病の三次治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。

CD22を標的とする抗体のフラグメントに細胞毒を結合した抗体薬物複合体。アストラゼネカが06年に買収したCambridge Antibody Technologyがその前年にGenencorから取得したもの。米NCIがスポンサーになって実施された第三相試験で主目的(持続的完全反応)を達成した。データは今後、学会発表される予定。

有毛細胞白血病は米国で年1000人が診断される希少疾患で、一次治療の寛解率は高いが、やがて再燃すると予後はあまりよくないとのことなので、市場が小さくても価値がありそうだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

アストラゼネカ、リムパーザをEUでも乳癌に適応拡大申請
(2018年4月3日発表)

アストラゼネカのLynparza(olaparib、和名リムパーザ)はBRCA変異を持つ卵巣癌の薬として14年に欧米で承認された。適応拡大ではBRCAの生殖細胞性有害変異を持つher2陰性転移性乳癌の二次治療試験が成功。17年に日米で承認申請され、米国では今年1月に承認されたところだが、EUでもこの度、承認申請受理されたことが発表された。

臨床試験ではPFS(無進行生存期間)が7.0ヶ月と、capecitabineやeribulinなどを用いた群の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.58だった。

アストラゼネカはMSDとLynparza及びselumetinib(MEK阻害剤)の共同開発共同販売提携を結んでいる。目標達成報奨金を含めると最大で60億ドルの収入も見込める大型提携だ。MSDは、その後、エーザイともlenvatinibの共同開発販売で提携しており、大型協業が相次いでいる。

リンク: 両社のプレスリリース

リジェネロン、抗PD-1抗体を有棘細胞癌に承認申請
(2018年4月3日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィは、REGN2810(cemiplimab)を転移性または切除不能局所進行性の有棘細胞癌用薬としてEUで承認申請し受理されたと発表した。米国も3月までにローリング承認申請を完了する計画だったので、早晩、受理が発表されるのではないか。

有棘細胞癌は米国で年4000~8000人が死亡する。手術と放射線療法が中心で承認された薬はない。cemiplimabはOpdivo(nivolumab)などと同様な抗PD-1抗体。第二相試験で客観的反応率が46.3%だった。

リンク: 両社のプレスリリース(pdfファイル)

リジェネロン、デュピクセントを喘息に適応拡大申請
(2018年4月3日発表)

リジェネロンがサノフィと共同開発販売しているIL-4受容体アルファサブユニットを標的とする抗体医薬、Dupixent(dupilumab、和名デュピクセント)は、軽中度アトピー性皮膚炎の治療薬として昨年欧米で承認され、日本でも年明けに承認されたところだが、次の用途として管理不良喘息症治療薬として適応拡大申請中。米国は3月に申請受理、日本は3月に承認申請、そして、今回、EUでも申請受理されたことが発表された。

臨床試験では重度喘息発作が偽薬比46%減少。FEV1の改善は偽薬比130mL程度なのでそれほど大きくはなさそうだ。

リンク: サノフィのプレスリリース(pdfファイル)


【承認審査・委員会】


Alkermes、難治性鬱病用薬は審査完了に
(2018年4月2日発表)

Alkermes(Nasdaq:ALKS)はALKS 5461(samidorphanとbuprenorphineの合剤)を難治性鬱病治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。薬効の立証が不十分で、よくデザインされた試験を改めて実施すべしとされた。第三相試験は一勝二敗、第二相を含めても二勝二敗だったので、意外な結果とはいえないだろう。

ALKS 5461は、ミュー・オピオイド受容体のアゴニストでカッパ・オピオイド受容体にはアンタゴニストとして作用するbuprenorphineに、ミュー・オピオイド受容体アンタゴニストのsamidorphanを併用することで、カッパ・アンタゴニズムだけを生かすアイディア。第三相の最初の二本は主評価項目のMADRSがフェール、三本目は評価項目を10から6に減らしたMADRS-6の期中平均値に切り替えたところ、高用量二群が成功した。

抗鬱剤の第三相は承認されている薬でもフェールが珍しくなく、「何本フェールしても二本成功すれば承認を取れる」とも言われている。Alkermesは異議申立てする考え。

リンク: Alkermesのプレスリリース


【承認】


クロビス、Rubracaの適応拡大が承認
(2018年4月6日発表)

クロビス・オンコロジー(Nasdaq:CLVS)は、Rubraca(rucaparib)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤で、16年に米国でBRCA有害変異を持つ末期卵巣癌の三次治療薬として承認された。今回の用途は、白金感受性卵巣癌で白金薬による二次以降の治療に反応した患者の維持療法。600mgを一日二回、経口投与する。

PARPは遺伝子複製ミスの修正に係る酵素。BRCAはPARPとは異なるミス修正メカニズムに係る酵素で、生殖細胞系または体細胞系遺伝子変異により機能喪失すると、体内でしばしば発生する複製ミスが上手く修正されず、癌のきっかけになりかねない。そのような人にPARP阻害剤を投与すると、活発に分裂する癌細胞は複製ミスも起きやすいので、毒を以て毒を制すような格好になる。

面白いのは、今回の用途はBRCA正常な患者にも適応になること。第三相のARIEL3試験では、最初にBRCA有害変異サブグループに対するPFS(無進行生存期間)延長効果を検討し、次に別のバイオマーカーに基づくサブグループ、そして全被験者の解析をシーケンシャルに行ったが、全てでハザードレシオが0.35を下回った。BRCA有害変異のない患者だけの探索的解析も良好な結果になった。

主な有害事象は貧血。警告注意事項は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病のリスクと催奇性。

Rubracaは2011年にファイザーからライセンスしたもの。欧州は3月にBRCA有害変異陽性卵巣癌の三次治療でCHMPの肯定的意見を得たところで、維持療法は承認後の6月に申請する予定。

リンク: クロビスのプレスリリース(pdfファイル)






今週は以上です。

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2018年4月1日

2018年4月1日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ファイザー、ATTR心筋症の第三相が成功 
  • テセントリクの4剤併用肺癌試験はOS解析も成功 
  • BiohavenのCGRP受容体アンタゴニストも第三相成功 
  • Lexicon社、SGLT阻害剤を一型糖尿病に承認申請 
  • オプジーボとヤーボイをMSI-H癌に適応拡大申請 
  • 武田が買収する企業の細胞療法がEUで承認 
  • FDA、Blincytoの適応拡大を承認 
  • ヘムライブラ治療患者の死亡が5例に


【新薬開発】


ファイザー、TTR心筋症の第三相が成功
(2018年3月29日発表)

ファイザーは、Vyndaqel(tafamidis meglumine、和名ビンダケル)の第三相トランスサイレチン心筋症試験が成功したと発表した。データは未公表。Vyndaqelは欧州や日本では神経機能改善効果が評価され承認されたが、米国では臨床的転帰改善作用を確認するよう求められた。本試験の成功で米国承認の道が開けたことになる。

トランスサイレチン心筋症は、神経症と並ぶ、トランスサイレチン・アミロイドーシスの典型的な合併症で、発症すると余命3~5年と言われる。今回の第三相は家族性及び後天性の患者441人を偽薬、20mg(欧日の承認用量)、80mgの何れかに無作為化割り付けして30ヶ月間の心血管イベント(心血管関連入院や全死亡)を観察したところ、偽薬比有意な差があった。どの用量の話なのかプレスリリースには明記されていないが、治験登録によると、主評価項目は20mgと80mgのプール分析とのことだ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

テセントリクの4剤併用肺癌試験はOS解析も成功
(2018年3月26日発表)

ロシュの抗PD-L1完全ヒト化抗体であるTecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)のIMpower150試験は、共同主評価項目の一つが昨年1月に成功認定されたが、今回、もう一つも成功した。複雑な試験である上に数値が未公表なので何とも言えないが、抗PD-L1/PD-1抗体は臨床開発競争が激しく、結果の取りこぼしも少なくないので、成功したことは取り敢えずポジティブだ。適応拡大済みかどうかは不明。プレスリリースには、今回のデータを承認審査機関に提出する考えであることだけが記されている。

この第三相は扁平上皮以外の末期・転移性非小細胞性肺癌の一次治療試験で、carboplatin、paclitaxel、bevacizumabの三剤併用療法を対照群に、更にTecentriqを追加する効用を検討したもの。主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)の解析は、メジアン6.8ヶ月が8.3ヶ月に延長、ハザードレシオ0.617で統計的に有意だったことが昨年12月に発表された。。

その時点では共同主評価項目であるOS(全生存期間)の解析はハザードレシオ0.775、p=0.0262と好ましい数値だったが閾値を上回り非有意だった。今回、やり残した宿題を終えたことになる。

この試験はcarboplatin、paclitaxel、Tecentriqの三剤併用群もテストされた。昨年12月のPFS解析は対照群と大差なく、今回のOS中間解析も有意差がなかったが、今後も解析が予定されているようだ。

抗PD-L1/PD-1抗体を開発している会社は多いが、抗VEGF抗体の開発はロシュが、抗CTLA4抗体ではBMSが圧倒的に先行しているので、自社品同士の併用を積極的に開発することが他社品との差別化の点でも、収益最大化の面でも、至適戦略だ。だが、高価な新薬の併用は患者や社会の費用負担が大きい。副作用の増加も見逃せないコストだ。

それだけに、4剤併用だけでなく3剤併用のデータを見たいな、そこその効果があったら良いな、と思う。Avastinは一次治療薬だがYervoyなどは再発治療に取っておくこともできるのだろうから。

リンク: ロシュのプレスリリース

BiohavenのCGRP受容体アンタゴニストも第三相成功
(2018年3月26日発表)

片頭痛の治療や予防では、CGRP( calcitonin-gene-related peptide)やその受容体を標的とする抗体医薬や小分子薬の開発が活発化している。代表的な治療薬であるトリプタン系はCGRPの放出を抑制する一方で血管収縮促進作用もあるため、心血管リスクに気を付ける必要がある。CGRPや受容体を阻害すると血管拡張が抑制されるが収縮促進より悪影響が小さいかもしれない。

抗体医薬は三社が発作予防薬として承認申請中だ。受容体を阻害する経口剤もBiohaven Pharmaceuticals(NYSE:BHVN)がBMSからライセンスしたBHV-3000/BMS-927711(rimegepant)を、アラガン(NYSE:AGN)はMSDからライセンスしたMK-1602(ubrogepant)を、2019年に急性片頭痛治療薬として承認申請する計画。

このうち、BHV-3000の第三相試験が二本とも成功したことが発表された。75mgを経口投与したところ、2時間後に無痛だった患者の比率が一本は19.2%で偽薬群を5ポイント上回り、もう一本は19.6%で7.6ポイント上回った。共同主評価項目である、最も煩わしい片頭痛症状が解消した患者の比率は36.6%と37.6%で、偽薬群を各9ポイントと12ポイント上回った。何れも統計的に有意。

アラガンの第三相のデータと見比べると、治療効果(偽薬群との差)がやや小さい。直接比較試験の結果が出るまでハッキリしたことは言えないのだが、直接比較試験が行われるとは限らないのだから、今、目の前にあるデータを素直に受け止めるしか方法はない。

MSDがCGRP受容体アンタゴニストの開発を止めたのは、リードコンパウンドであったMK-0974(telcagepant)とバックアップのMK-3207の臨床試験で肝毒性懸念が浮上したことが原因だろう。ubrogepantは化学構造が異なるので一緒くたにはできないが、臨床試験で少数ながら肝機能検査値異常(正常値上限の3倍超)が発生した。BHV-3000も一例あったとのことなので、油断はできないだろう。

リンク: Biohaven社のプレスリリース


【承認申請】


Lexicon社、SGLT阻害剤を一型糖尿病に承認申請
(2018年3月29日発表)

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)は、開発販売パートナーのサノフィがLX4211(sotagliflozin)を欧米で承認申請したと発表した。糖の輸送体であるSGLTを阻害して尿中のグルコースが血中に戻るのを妨げる。特徴は、既存薬が主として腎臓尿細管に分布するSGLT2を選択的に阻害するのに対して、小腸にも分布するSGLT1も阻害することと、二型糖尿病ではなく一型糖尿病で最初に承認申請されたこと。

第三相試験では一日一回の経口投与でHbA1cが0.5%程度低下した。体重や血圧も低下した。

先行企業がSGLT2選択性を重視したのは、初期に臨床入りした非選択的なコンパウンドが下痢の副作用で開発中止になったためだ。LX4211も忍容性が疑われたが、下痢はあまり増えなかった。

SGLT2阻害剤は稀にケトアシドーシスという重要な副作用が発生する。高血糖を伴わない症例も少なくなく、インスリン欠乏以外のメカニズムも関わっているようだ。一型糖尿病に経口剤を追加投与する場合は、インスリンを減量しないと低血糖のリスクが高まり、減らしすぎると糖尿病性ケトアシドーシスのリスクが生じるが、SLGT2阻害剤は後者のリスクがさらに高まる懸念がある。

メカニズム的には一型糖尿病にも有効なはずで現にオフレーベル使用されている模様だが、メーカーが正式に開発しないのは、これが理由だろう。

ケトアシドーシス・リスクの点ではSGLT2選択的でないコンパウンドのほうが良いという説もあるようだが、LX4211の第三相の一つではアシドーシス関連有害事象の発生率が8.6%と偽薬群の2.4%を上回った。

先行品と差別化するために一型糖尿病をリードインディケーションに据えたLexiconの戦略が奏功するかどうかは、ケトアシドーシス・リスクの評価次第だろう。尚、二型糖尿病の第三相試験も進行中ではある。

リンク: Lexiconのプレスリリース

Loxo社、TRK阻害剤のローリング申請を完了
(2018年3月26日発表)

Loxo Oncology(Nasdaq:LOXO)と開発販売パートナーのバイエルは、LOXO-101(larotrectinib)のローリング承認申請を完了したと発表した。NTKR変異陽性腫瘍に用いる。NTKRはニューロンの制御に関与するTRK(tropomyosin receptor kinases)の遺伝子で、他の遺伝子と融合してレガンド結合ドメインを喪失すると、レガンドの刺激なしで活性化してしまう。

該当するのは癌患者の1%以下と推定されており少ない。唾液腺癌や分泌乳癌で比較的多いと言われ、このほかに、承認申請のエビデンスとなった単群試験では、乳児線維肉腫、甲状腺癌、結腸癌、肺癌、黒色腫、紡錘細胞肉腫、胆管癌、筋周皮腫などの成人小児が組入れられた。55例の中央評価確認客観的反応率は75%だった。有害事象は神経認知性有害事象が中心だった。

13年に開始したArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)との研究開発提携の成果。バイエルは17年11月に共同開発・商業化で提携、米国は共同販促し、海外はバイエルが販売する。欧州でも年内に承認申請する予定。

リンク: Loxo社のプレスリリース

オプジーボとヤーボイをMSI-H癌に適応拡大申請
(2018年3月27日発表)

ブリストル・マイヤーズスクイブは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)をMSI-H/dMMR転移性結腸直腸癌の再発治療に用いる適応拡大を米国で申請し受理されたと発表した。標準的な一次治療/二次治療薬であるfluoropyrimidine、oxaliplatin、そしてirinotecan歴を持つ患者が対象になる。審査期限は7月10日。

MSI-H(マイクロサテライト不安定性-高)は塩基配列の繰返し箇所の繰返し回数が腫瘍と正常細胞で異なる。同様に、dMMRは塩基配列ミスマッチの修復が異なる。この二つはオーバーラップすることもある。 転移性結腸直腸癌の5%程度が該当する。142試験では、併用群の客観的反応率は55%、1年生存率は85%だった。対照群ではないが、Opdivoだけを投与した群の1年生存率は73%だった。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認】


武田が買収する企業の細胞療法がEUで承認
(2018年3月26日発表)

ベルギーのTiGenix社と武田薬品は、Alofisel(darvadstrocel)がEUで承認されたと発表した。同種異系脂肪由来の幹細胞療法で、非/軽度活動性クローン病の肛囲複雑瘻孔の治療に用いる。 臨床試験では24週寛解率が50%と偽薬群の34%を有意に上回った。米国は別途、第三相試験が進行中。

武田薬品は16年に米国外の開発販売権を取得、今年1月に友好的買収で合意した。総額5.2億ユーロ規模。条件であるEU承認が実現したのでTOBに向けて一歩前進した。

リンク: 武田のプレスリリース(和文)

FDA、Blincytoの適応拡大を承認
(2018年3月29日発表)

FDAは、アムジェンのBlincyto(blinatumomab)を前駆B急性リンパ芽球性白血病(前駆B-ALL)の地固め的療法に用いる適応拡大を承認した。

Blincytoは白血病細胞の表面分子であるCD19とT細胞などの表面分子のCD3を架橋する二重特異性抗体で、再発性難治性前駆B-ALLの治療薬として14年に米国で、15年には欧州でも、承認された。

今回の承認用途は、他の薬を用いて寛解に成功したが癌細胞がごく少量残っている(minimal residual disease:MRD)患者に投与して再発を防ぐというもの。第二相試験では81%の患者が癌細胞探知不能になった。MRDのある患者は再発リスクが高いと言われるが、この試験ではメジアン無再発生存期間が22ヶ月だった。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アムジェンのプレスリリース


【医薬品の安全性】


ヘムライブラ治療患者の死亡が5例に
(2018年3月27日発表)

HFA(米国血友病財団)は、中外製薬が創製し米国ではジェネンテック、欧州などではロシュが販売するHemlibra(emicizumab-kxwh、和名ヘムライブラ)に関して、治療を受けた患者の死亡例が5例に増えたことを明らかにした。ジェネンテックから連絡を受けたもの。2016年に一名、2017年に二名、2018年に入って更に二名が物故した。うち三例の死因は頭蓋内や結腸の出血、一例は血管手術後に死亡、残りの一例は腹部偽腫瘍の合併症であった模様。

一人は第三相試験、他はCUPやトリートメントINDなどの未承認薬例外的使用制度を通じて投与を受けた。何れのケースも担当医は薬剤との関連性なしと判定した。HFAは、心配な向きはジェネンテックの問い合わせ窓口に電話するようアドバイスした。

何とも中途半端な情報であり、なぜわざわざ公表したのか、訝ってしまう。おそらく、噂を聞いた医療関係者や患者から問い合わせがあり、HFAがジェネンテックに照会したのだろう。新薬は発売後に重要な新情報が出ることがあり、また、競合品メーカー経由で得た情報は念のためということもあるので、財団が窓口になってメーカーに情報を求めるのは有益だ。今回も、現時点で分かっている範囲内で事実を正確に伝えることを重視したのだろう。

リンク: HFA(米国血友病財団)のプレスリリース
リンク: 同(3/28付けアップデート)







今週は以上です。

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2018年3月25日

2018年3月25日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • テセントリクの肺癌一次治療試験成功 
  • CHMPがPARP阻害剤などの販売承認を支持 
  • FDAがアドセトリスの適応拡大を承認 
  • GSK、シングリックスが欧州でも承認 


【新薬開発】


テセントリクの肺癌一次治療試験成功
(2018年3月19日発表)

ロシュとジェネンテックは、Tecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)の第三相IMpower131試験のPFS(無進行生存期間)解析が成功したと発表した。末期扁平上皮性非小細胞性肺癌の一次治療としてcarboplatin及びAbraxane(アルブミン懸濁型paclitaxel、和名アブラキサン)と併用する群(B群)をcarboplatinとAbraxaneだけの群(C群)と比較した試験で、もう一つの主評価項目である全生存期間はまだ中間解析段階で有意差は出ていない。

欲張った試験で、carboplatin及びpaclitaxelと併用する群(A群)とC群のPFS、そして全生存期間の解析も主評価項目に設定されており、上記二項目の解析が成功したら、シーケンシャルに実施されることになる。

二次的評価項目としてPD-L1発現度に基づくサブグループ分析も行われる予定。

抗PD-1/PD-L1療法の肺癌試験は区々な結果になっており、それが薬のせいなのか、組入れ基準や試験デザイン、実施方法のせいなのか、判然としない状態が続いている。今回はまだ数値すら発表されていないので、主評価項目の解析が終了し詳細が公表されるまで、何とも言いようがない。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPがPARP阻害剤などの販売承認を支持
(2018年3月23日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、3月の会合で、クロビス・オンコロジー(Nasdaq:CLVS)のPARP阻害剤などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。一方で、Portola Pharmaceuticals(Nasdaq:PTLA)のXa阻害剤などが否定的意見となった。また、EPA/DHAの心血管疾患再発予防効果の再検討を開始したことも明らかにされた。

リンク: EMAのプレスリリース

クロビスのPARP阻害剤、Rubraca(rucaparib)は卵巣癌の三次治療薬。BRCA遺伝子に生殖細胞系あるいは体細胞系有害変異を持ち、過去の治療でプラチナ薬に感受したがこれ以上繰り返すのは忍容できない患者に用いる。臨床試験では反応率が54%、メジアン反応持続期間は9.2ヶ月だった。生殖細胞系BRCA変異は卵巣癌の約18%、体細胞系BRCA変異は約7%とされる。

BRCAは遺伝子の複製ミスを修正するメカニズムに関与している。複製ミスは頻繁に発生するため、修正できないと癌のリスクが高まる。PARP(ポリ(ADP-リボーズ)ポリメラーゼ)も別の複製ミス修正メカニズムに関与している。癌細胞は細胞分裂に伴う遺伝子複製が活発に行われ、それだけミスも積み重なりやすいので、BRCA変異患者のPARPを阻害することによって、癌細胞の増殖を妨げることができる。

興味深いのはPARP阻害剤の効用は必ずしもBRCA変異に依存しないことだ。Rubracaはプラチナ感受性卵巣癌二次治療後維持療法試験が成功したが、BRCA変異のない患者でもPFSが長期化した。今後、Rubracaや他社のPARP阻害剤のエビデンスが積み重なれば、これがクラスイフェクトなのか、Rubracaだけなのか、はたまた偶然の悪戯なのか、明らかになるだろう。

クロビスは2011年にファイザーから世界開発販売権を取得した。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: クロビスのプレスリリース

ヴィーヴヘルスケアのJulucaも肯定的意見を受けた。インテグラーゼ阻害剤のTivicay(dolutegravir)とジョンソンエンドジョンソンの非核酸系逆転写阻害剤、Edurant(rilpivirine)の活性成分を配合しており、HIV/AIDSの維持療法に用いる。

HIV/AIDSはHAART(高度積極的抗レトロウイルス療法)と呼ばれる多剤併用療法が主流だが、Julucaは二種類だけで足りることが最大の特徴。ウイルスを6ヶ月以上抑制できていて、インテグラーゼ阻害剤や非核酸系逆転写阻害剤に抵抗性のない患者がスイッチできる。米国でも承認審査中。

ヴィーヴ社はグラクソ・スミスクラインとファイザーのHIV/AIDS事業を統合した合弁会社で、今では塩野義製薬も加わっているので、Julucaは4社相乗り製品ということになる。HAARTはプロテアーゼ阻害剤のように毎日たくさんのピルを服用しなければならないレジメンもあるため、患者支援団体や医師が相乗り合剤の開発を製薬会社に呼び掛けた。製薬会社にとっても、先進国や途上国における高薬価批判などにより事業としての魅力が低下したことなどを背景に、事業機会の最大化を求めて相乗りに応じる会社が増加した。

今日では、アルツハイマー病用薬では開発リスク・シェアリングを目的として、抗癌剤では多様な癌種や併用法における開発スピードアップのため、合従連衡が珍しくなくなった。日本の製薬会社も静観してはいられない。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ヴィーヴ社のプレスリリース

適応拡大では、Cabometyx(cabozantinib)を転移性腎細胞腫の一次治療に用いることが支持された。リスク評価が中等度以上の症例が対象になる。第二相のSutent(sunitinib)対照試験では、メジアンPFSが8.2ヶ月とSutent群の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.69だった。

Exelixis(Nasdaq:EXEL)の開発品で、欧州はイプセンが開発販売権を持っている。腎細胞腫の再発治療薬として12年に米国で、14年には欧州でも承認された。日本は武田薬品が開発中。

リンク: EMAのプレスリリース

アムジェンの抗PCSK9完全ヒト化抗体、Repatha(evolocumab)の心血管リスク削減効果も支持された。確立したアテローム性心疾患で忍容最大量のスタチンを服用している患者が適応になる。エビデンスのFOURIER試験では主評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、冠血行再建術)のリスクが偽薬比15%低下した。

リンク: EMAのプレスリリース

否定的意見を受けたPortola Pharmaceuticals(Nasdaq:PTLA)のXa阻害剤は、Dexxience(betrixaban)。米国では昨年6月にBevyxxa名で承認されている。一昨年来、FDAの承認のハードルが下がったような印象だが、EMAは厳しくなったのか、評価の食い違い例が増えている。

Xa阻害剤は先行品が多いせいか、Portolaは急性心不全や脳卒中、肺炎などにより入院した75歳以上で静脈血栓塞栓リスクが高い患者を組入れてAPEX試験を実施、35~47日間経口投与の予防効果をenoxaparinの6~14日間皮注コースと比較した。複数の主評価項目のうち一部のサブグループだけを対象とした最初の解析がフェールしたため、2番目のサブグループ分析のp値が0.029、3番目の全集団の解析がp=0.006となったのに、無為になってしまった。

薬ではなく治験がフェールした、典型的な事例と思われるが、統計学的にはフェールはフェールである。Xa阻害剤の血栓予防効果は出血リスクと裏腹なので、便益と危険のバランスを評価しなければならない。CHMPは統計学的な挙証が不十分であることや、出血リスクを重視した。Portolaは再審査を要求する考え。

Portolaは2002年にミレニアム・ファーマスーティカルズがCor Therapeuticsを買収した時にCorからスピンアウトした会社で、betrixabanはミレニアム時代はMLN-1021という開発コードで呼ばれていた。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Portolaのプレスリリース

Radius Health(Nasdaq:RDUS)のEladynos(abaloparatide)も米国では昨年4月にTymlos名で承認されたがCHMPは否定的意見となった。ヒト副甲状腺ホルモン関連ペプチド(1-34)で、遺伝子組換え型ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)であるイーライリリーや旭化成のteriparatide(テリパラチド)と同様に造骨細胞増強作用を持ち、閉経後骨粗鬆症の治療に用いる。

米国のレーベルでは骨肉腫のリスクが枠付き警告されていて、2年以上の投与は推奨しない旨が記されているが、これはteriparatideも同じであり、teriparatideをリコールしないのならabaloparatideを承認しないと不公平、と考えることもできる。

CHMPの問題意識は、臨床試験実施施設のうち2ヶ所でcGCP(臨床試験基準)違反が発覚し治験データの信憑性が損なわれたことや心毒性の懸念だった。日米欧の承認審査機関は情報提供協定を結んでいるので査察結果はFDAも理解しているはずであり、なぜ欧米で判断が分かれたのか、不思議だ。Radius社は再審査請求する考え。

リンク: EMAのプレスリリース(pdfファイル)
リンク: Radius社のプレスリリース

スペインのPharmaMar(マドリッド証券取引所:PHM)は16年にAplidin(plitidepsin)を多発骨髄腫四次治療薬として承認申請し、昨年12月に否定的意見を得た。再審請求が認められたものの、結局、評価を覆すことはできなかった。臨床試験でメジアンPFSが1ヶ月しか延びなかったことや延命効果が確立していないこと、そして、深刻な副作用が増加することが理由。

リンク: EMAのプレスリリース

アムジェンがAranesp(darbepoetin alfa)の適応拡大申請を撤回したことも公表された。骨髄異形成症候群による貧血の治療に用いるもので、CHMPは、二本の試験のうち一本はデザイン変更や除外症例の多さなどの問題がありもう一本は欧州の医療風土と異なった治療を受けていることから、薬効の挙証が不十分とみなしていた模様だ。

リンク: EMAのプレスリリース

さて、EMAはオメガ3脂肪酸(EPAやDHA)製剤を心臓発作の再発予防に使うことに関して再検討を開始したと発表した。今年、JAMA Cardiology誌に刊行されたAungらのメタアナリシスによると、心筋梗塞や脳卒中などの心臓循環器問題を防ぐ効果は確認されなかった。過去にも同様な研究結果が発表されている。このため、スエーデンの承認審査機関がEMAに危険と便益の再評価を求めたもの。

米国と比べると欧州はEPA/DHAの再発予防効果に肯定的だったが、いよいよ、再検討に踏み切ったことになる。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Aungらの論文(JAMA Cardiol 2018)


【承認】


FDAがアドセトリスの適応拡大を承認
(2018年3月20日発表)

FDAは、シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)のAdcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)を古典的ホジキン型リンパ腫の一次治療に用いる適応拡大を承認した。ステージIIIまたはIVの患者に化学療法と併用する。標準的療法であるABVD四剤併用レジメンとbleomycinに代えてAdcetrisを用いる四剤併用を比較した臨床試験では、2年無進行生存率が各77.2%と82.1%でABVDレジメンを上回った。

FDAのプレスリリース リンク:
リンク:
シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

GSK、シングリックスが欧州でも承認
(2018年3月23日発表)

グラクソ・スミスクラインは、帯状疱疹ワクチンのShingrixが欧州で承認されたと発表した。米国では昨年10月、日本でも今月、承認されている。既存製品であるMSDのZostavaxが弱毒化生ワクチンであるのに対して、ShingrixはVZV gE抗原とMPLアジュバントを用いた遺伝子組換え型ワクチンで、免疫力が低下していてワクチン効果が小さくなりがちな70代でも高い予防効果が得られることが長所。50歳から適応になる。

リンク: GSKのプレスリリース







今週は以上です。

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2018年3月18日

2018年3月18日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アレクシオン、長期作用性C5阻害薬の第三相が成功 
  • MSD、キートルーダを子宮頚癌に適応拡大申請 
  • ACC:フェブリクは死亡リスクを高める可能性 


【新薬開発】


アレクシオン、長期作用性C5阻害薬の第三相が成功
(2018年3月15日発表)

カナダのアレクシオン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、ALXN1210の第三相PNH(発作性夜間血色素尿症)治療試験が成功したと発表した。他の試験の結果を待って今年下期に日米欧で承認申請する考え。

ALXN1210は同社のSoliris(eculizumab、和名ソリリス)と同様にC5に結合する抗体医薬で、補体カスケードの後半過程をブロックし、赤血球が破壊されるのを防ぐ。終末半減期がSolirisの3~4倍と長いことが特徴。

今回の第三相はC5阻害薬による治療を受けていない患者に対する効果や安全性をSolirisと比較した。ALXN1210は8週毎、Solirisは最初の4回は毎週、その後は2週毎に、26週間に亘って点滴静注投与した。結果は、共同主評価項目(輸血回避とLDH正常化)と二次的評価項目(4項目)の全てで非劣性解析が成功。解析計画に則ってブレークスルー溶血の優越性解析に進み、数値上は各4.0%と10.7%で良好だったが、p値は0.074となり、フェールした。

C5阻害薬による治療を受けている患者を組入れたもう一本の第三相非劣性試験は第2四半期(4-6月)に、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の第三相は第4四半期に、それぞれ判明する見込み。

リンク: アレクシオンのプレスリリース


【承認申請】


MSD、キートルーダを子宮頚癌に適応拡大申請
(2018年3月13日発表)

MSDはKeytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)を子宮頚癌の二次治療に用いる適応拡大をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は6月28日。様々な癌種を組入れた第二相試験、KEYNOTE-158試験に基づく申請とのこと(データは未発表なのではないだろうか)。

抗PD-1抗体は様々な癌に有効性を示しており、Keytrudaは今回で14回目の承認申請受理となる。

リンク: MSDのプレスリリース


【医薬品の安全性】


ACC:フェブリクは死亡リスクを高める可能性
(2018年3月12日発表)

痛風患者の高尿酸血治療薬であるUloric(febuxostat、欧州名Adenuric、和名フェブリク)は米国で09年に、日本でも11年に承認された。臨床試験で心血管有害事象の発生頻度が既存薬であるallopurinol群より高かったため、武田薬品が痛風と心血管疾患を持つ約6190人を組入れてallopurinol対照心血管アウトカム試験、CARESを実施。結果をACC(米国心臓学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表した。

主評価項目(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定性狭心症による緊急血行再建術の複合評価項目)で非劣性だったのは良かったが、何故か、Uloric群は死亡者が多かった。全死亡のハザードレシオは1.22、p=0.04、うち心血管死は1.34、p=0.03。心血管死のNumber-needed-to-harmは91なので、100人に投与すると心血管疾患によって死亡する人が一人以上増加する計算になる。昨年11月にFDAが安全性情報を発出済みなのでサプライズではないが、残念な結果だ。

Uloricは帝人が創製、国内では帝人ファーマが、北米では武田が、欧州では帝人と包括提携しているIpsenやそのサブライセンシーであるMerariniが開発販売している。Allopurinolと異なり排出経路が腎だけではないため腎機能低下患者にも使いやすく、過敏反応リスクが小さいことが長所だが、価格はGE薬化したallopurinolのほうが安いため、専ら、allopurinol不適不耐患者に用いられている様子だ。

リンク: Whiteらの治験論文(DOI: 10.1056/NEJMoa1710895)
リンク: FDAが昨年11月に発出した安全性情報





今週は以上です。

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2018年3月11日

2018年3月11日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ACC:プラルエントもMACEを15%削減 
  • 新作用機序コレステロール治療薬の第三相が成功 
  • シャイアが便秘治療薬を米国でも承認申請 
  • 新作用機序の抗HIV薬が承認 
  • オプジーボの4週毎投与が承認 
  • EMA:ゾーフィゴをザイティガと併用するな 


【新薬開発】


ACC:プラルエントもMACEを15%削減
(2018年3月10日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発販売している抗PCSK9フルヒト化抗体、Praluent(alirocumab、和名プラルエント)の心血管アウトカム試験の結果がACC米国心臓学会で発表された。同じメカニズムを持つアムジェンのRepatha(evolocumab、和名レパーサ)と同様に、MACE(主要有害心血管イベント)を偽薬比15%削減した。

事前に計画されていた、LDL-Cのベースライン値に基づくサブグループ分析では、100mg/dL以上のサブグループでは相対リスク削減24%とより良い結果が出たが、80~100mg/dLサブグループでは4%のみ、80mg/dL未満でも14%削減に留まり、効果は判然としなかった。

コレステロール治療の目標はコレステロール値を下げることではなくMACEを削減することなので、今回のODYSSEY OUTCOMES試験の成功によって、Praluentの臨床的な便益が初めて確立したと言えるだろう。尤も、この試験のNumber-needed-to-treatは60と決して高くない。薬剤費を掛けたDollar-needed-to-treatは200万ドル前後に達する。

そのせいか、両社は、値下げに応じる用意があることを表明した。LDL-C値が100mg/dL以上の患者について、医療の費用対効果評価機関であるICERの評価(高リスク患者で年4500~8000ドル)を念頭に置いて交渉する考えの模様だ。これは米国の話で、日本など海外での対応は不明。

ODYSSEY OUTCOMES試験は急性冠症候群を発症してから1~12ヶ月経った、スタチンの最大耐容量を服用してもLDL-Cが70mg/dL以上の患者18924人をPraluent群と偽薬群に無作為化割付けしてMACE発生リスクを比較した。MACEは冠状心疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、または不安定狭心症による入院。Praluent群は75mg(二週間に一回皮注)で開始、LDL-C値が50mg/dL以上に留まる場合は150mgに、25mg/dL未満に下がったら偽薬に、盲検を維持したままスイッチした。

LDL-C値のベースライン値は87mg/dL、一年後には群間で54mg/dLの差が生じた。スタチンの臨床試験ではLDL-C低下幅とMACE削減率の間に相関性が見られるが、PraluentのLDL-C低下幅とMACE削減率の関係はスタチンのデータがおおむね当てはまる。相対リスク削減15%というのは大方の予想通りの結果である。

Repathaの試験と比べて良かったのは全死亡のハザードレシオが0.85、nominal p=0.026と、統計学的には有意とは言えないが数値上はよい結果が出たこと。但し、冠状心疾患による死亡のハザードレシオは0.92と大したことないので、解釈が難しい。

リンク: サノフィのプレスリリース
リンク: 同(価格改定について)

新作用機序コレステロール治療薬の第三相が成功
(2018年3月7日発表)

エスペリオン(Nasdaq:ESPR)は、ETC-1002(bempedoic acid)の第三相試験成功を発表した。今回の試験はハードルが低いので、5月以降に結果が判明する二本や2021年頃と想定される心血管アウトカム試験のデータが注目される。

ETC-1002はコレステロール生合成パスウェイに関与するATPクエン酸リアーゼ(ACL)を阻害する小分子薬。LDL受容体をアップレギュレートする作用もある由。

今回の第三相試験の対象は、アテローム硬化性心血管疾患でLDL-C値が高く、ezetimibeによる治療を受けても十分に下がらない患者。スタチン併用者は最低用量以外は除外。269人をETC-1002(180mg、一日一回経口投与)または偽薬に2対1割付けして12週間のLDL-C値の変化を観察したところ、試験薬群の23%低下に対して偽薬群は5%上昇し、治療効果は28%だった。

hsCRPは各33%低下と2%上昇。面白いことに、LDL-C低下はrosuvastatinのほうが大きく、抗IL-1ベータ抗体のcanakinumabは殆ど下がらないのだが、hsCRP低下は三剤とも同程度になっている。

さて、今回の試験が今一つなのは、中高量スタチンを併用している患者が対象外であることだ。

コレステロール治療の新薬の出番は、中高量スタチンを服用してもLDL-C値が十分下がらない患者の需要だ。最近のコレステロール治療ガイドラインの中にはLDL-C値の目標値を定めていないものもある。スタチンのアウトカム試験では、「Treat-to-Target」的な治療方針ではなく特定のブランドの特定の用量を忍容する限り投与し続ける手法が採用されているからだろう。

「下がらぬなら下げて見せようLDL-C値」という考え方はコンセンサスではなくなったのである。同時に、重要なのは使用する薬でありLDL-C値が下がればどれでもよい訳ではない、という考え方も広がっている。

同社はezetimibe配合剤も並行して開発しているのでezetimibe併用試験が商業的に重要なのだが、患者にとっては中高量スタチンに追加する用途のほうが大事なのではないか?

この点で注目されるのは、ezetimibeと最大耐容量のスタチンを併用する患者に追加投与する二本の第三相だ。atorvastatinの最大用量(80mg)に追加した試験ではLDL-Cがあまり下がらなかったので、結果は今回より見劣りするかもしれない。

会社側は2019年に欧米で承認申請する計画。

リンク: エスペリオンのプレスリリース


【承認申請】


シャイアが便秘治療薬を米国でも承認申請
(2018年3月5日発表)

シャイアはSHP555(prucalopride)を米国で慢性便秘治療薬として承認申請し受理されたことを発表した。審査期限は来年2月21日。

欧州ではResolor名で09年に承認されている。8年遅れの理由は、2000年に販売中止になったPropulsid/Prepulsid(cisapride)の類薬だからだろう。ライセンス元はPropulsidの販売会社であったジョンソンエンドジョンソンで、Resolorは5HT3阻害作用は持たないが5HT4受容体作動は共通する。Propulsidは不整脈や突然死のリスクさえなければ貴重な選択肢だった。もしResolorが安全ならライセンスアウトされなかっただろう。

シャイアは欧州などでの市販後薬物監視データなども活用してFDAを説得する考え。

リンク: シャイアのプレスリリース


【承認】


新作用機序の抗HIV薬が承認
(2018年3月6日発表)

FDAは、TaiMed Biologics(TPEX:TaiMed)のTrogarzo(ibalizumab-uiyk)をHIV/AIDS治療薬として承認した。多剤抵抗性のウイルスに感染していて現在の治療がフェールし始めている患者に用いる。

HIVはCD4陽性T細胞に感染して増殖する。TrogarzoはCD4の細胞外第二ドメインに結合するIgG4型モノクローナル抗体で、ウイルスがCD4に結合した後のプロセスを妨げる、ポスト・アタッチメント・エントリー・インヒビターとされる。

Tanox社が臨床入りさせたが経営が悪化しジェネンテックに買収された。TaiMedはHIV研究の先駆者やTanox出身者などが台湾政府の助成を受けて設立した新興企業で、07年にジェネンテックから権利を取得、16~17年に欧米での販売流通権をTheratechnologies(TSX:TX)に供与した。生産は医薬品開発生産受託会社であるWuXi Biologics(2269.HK)が行う。中国産のバイオ薬が米国で承認されたのは初。

第三相試験(n=40、対照群なし)ではモノセラピーで2000mgを点滴静注したところ、7日後の奏効率(ウイルス量が0.5log10以上減少)が8割を超えた。最適バックグラウンドセラピーと併用で維持療法(800mgを二週間に一回投与)を行ったところ、24週間で1.6log10減少、43%の患者で検知不能(50コピー/mL未満)になった。主な深刻有害事象はラッシュや免疫再構築症候群。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: TaiMedのプレスリリース
リンク: Theratechnologiesのプレスリリース

オプジーボの4週毎投与が承認
(2018年3月6日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を四週間に一回投与する新用法がFDAに承認されたと発表した。240mgを二週間に一回点滴静注する用法の代替策で、一回に480mgを投与する。忍容性で問題がなければ、手間を省くことができるので都合がよいが、Opdivoの用量はがん種や併用薬によって異なり複雑なので、間違えないように注意しなければならない。

リンク: BMSのプレスリリース


【医薬品の安全性】


EMA:ゾーフィゴをザイティガと併用するな
(2018年3月9日発表)

EMA(欧州薬品庁)は、バイエルの放射線核種薬Xofigo(radium-223 dichloride、和名ゾーフィゴ)をジョンソンエンドジョンソンのZytiga(abiraterone、和名ザイティガ)及びprednisoneと併用しないよう勧告した。

何れも前立腺癌治療薬として承認されているが、転移性去勢抵抗性キモナイーブの前立腺癌に対する併用効果を検討した第三相試験で骨損壊や全死亡がZytiga・prednisoneだけの群より多く発生した。発表によると、三剤併用群の死亡率は34.7%、偽薬群は28.2%、骨損壊発生率は各26%対8%。EMAはリスクと便益を再評価中で、今回の勧告は暫定的な措置とのこと。EMAはXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)との併用が確立していないことにも言及している。

この件は昨年11月にバイエルが公表しているが、他の試験ではこのようなリスクは観察されていない由であり、判然としない。EMAの結論だけでなく、FDAや日本がどう評価するかも注目だ。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: バイエルの昨年のプレスリリース




今週は以上です。

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